前回の続きです。今回のコラムは「どんなもんか」のお試しも兼ねて全体公開してます。
ではお楽しみください。
色々とすったもんだがありまして、フロントウイングから離れGROOVERなるブランドを立ち上げる事になり、「グリーングリーン」はそこからリリースする事になった。
元々「グリーングリーン」の企画は、俺とデク、由一、ノボルさんで過去の学生時代の話を出し合った際に俺の全寮制男子校時代の話をした所、「そんな嘘みたいな話ある訳ねえだろ」と言われ「じゃあ証拠見せたらぁ!」という事になり、実際に千葉県のマザー牧場の横に併設されていた学校に取材にいった所から始まったのだ。
俺にとっては青春を過ごした所ではあるが、彼らにとっては実地で数々のエピソードを話したらかなり衝撃だったようで「これゲームにした方が良くね?」という話になり、「男子校に女子生徒が編入してきたら」という企画の骨子が固まった。
タイトルの由来は牧場見ながら「緑いっぱいだからグリーングリーンで良くね?」と誰かが言ってそのままそれになった。あと当時のキャラクターのアイデアは「腐葉土食ってるヒロインって面白くね?」というノボルさんの神がかったアイデアによりメインヒロインの千歳みどりが生まれた。
腐葉土めっちゃ食ってます。
んで曲の話。
Windows95が爆裂ヒットをし、カナリアでも生バンドを取り入れたサウンドを導入していたが、俺が参画したのが楽曲が完成してからなので、ようやく自分が描くゲームのサウンドを自分で手がけれるタイミングが訪れたのだ。
「グリーングリーン」から20年以上の月日が経ち、数々のゲームを世に送りだして来たが、いつも企画をまとめる時はバンドの音と共にあった。「カナリア」のヒットでバンドサウンドがこの業界でも受け入れられる事を確信したので、よりロック色の強い曲でゲームを彩りたかったのだ。またmilktubとしてのバリューもこの業界なら発揮できると思った。
この当時のmilktubは音楽活動というよりも、小学校からの腐れ縁の遊び仲間的な感じで光と俺だけになっており、ゲームの話ばっかしていた。この時、一番星☆光は某国営放送の下請けで教育番組の制作を行っていた事もあり、アダルト関係で顔を出せないという事情もあった。
(初期の頃にガスマスクつけてたのはそういう理由だったのだ)
milktubとしての活動を諦めきっていなかった俺らは、グリーングリーンの楽曲制作というプロとしての第一歩を踏み出す事になった。
このゲームにおける立ち位置はプロデューサーであるが、音楽を目指す者としてはペーペー以下という自己認識だった。だって実績もへったくれもほぼ無いに等しいし、また知らない事も多すぎたのだ。音楽の制作会社というものがある事すら知らなかったのだ。
カナリアからの付き合いのキャバ川さん事、虻川さんに制作窓口を依頼し、グリーングリーンのサウンドを制作する事になった。ちなみに虻川さんは初期の佐藤ひろ美や橋本みゆきのプロデューサー的な立ち位置で彼女達を鍛えた、ある意味「はじめの一歩」の鴨川会長みたいな人である。
んで制作において決めたことがある。
編曲のノウハウも全然ないし、アマチュアの領域を出ない我々milktubが楽曲を担当するという事で、「コンセプトだけはがっちり握る」だ。将来的にはアレンジも含めて自分達で担当できたら素敵だが、そのスタート地点に立ったばかりで、そのノウハウも経験も全くない自分達ができる事は何かつったら「脳内にあるこれだ!ってものを形にするためにブレない事」だったのだ。
ちなみにこれは今でも変わらない。
編曲についてはカナリア時代からお世話になっていた河辺さんが当時率いてたリバーサイドミュージックにお願いをした。数々のヒット曲を手がけ、今をときめく作家集団のElements Gardenの上松や藤間、淳平がまだ丁稚扱いで河辺さんの元で師事をしていた。当時まだ二十歳そこそこの若者だった彼らも今ではベテラン音楽家である。書いてて時間経つの早えなぁとか思ってしまった。
同時にボーカリストも探していた。
当時、俺と由一は「KEMURI」というスカパンクバンドにハマっており、「グリーングリーン」の主題歌はスカパンクで勝負したかったのだ。
当時の美少女ゲームシーンを取り巻く環境として「実名」で参画してくれる人はほぼいなかった。現在は沢山の人が美少女ゲーム音楽を歌いたい!と切望してくれる人がいたが、当時は「はぁエロゲの歌?ふざけんな」的に、なんというか下に見られてたのだ。
その中で唯一佐藤ひろ美だけが実名でエロゲ作品に参加していた。
(彼女のハートの強さと逆境の強さはこの時期に培ったと勝手に思ってる)
YURIA姐さんは歌がベラボーに上手し、佐藤も頑張っていたが、俺が思い描く主題歌の歌声ではなかったのだ。速くてかっこいい曲に声色が甘いが芯の通った歌声が必要だった。
縁あって「セーラームーン」の「乙女のポリシー」でお馴染みの石田燿子さんに波形レベルで歌声がそっくりなNANAと出会う事が出来て、彼女の歌声に惚れた俺はグリーングリーンの主題歌ボーカリストとして起用する事になった。
ここで問題が。
予算が足りなくなったのだ。
せっかくの主題歌をはじめとする作品を彩る曲を作るにあたって、色々わがままを俺が言ってたのだが、そのせいで予算が足りなくなってしまった。
河辺さんが俺が敬愛するバンド「ZIGGY(当時はSHS)」の編曲とツアーサポートをやっていた縁もあり、ドラムの宮脇 JOE 知史さん(当時)にお願いができると聞いて、「グリーングリーン」「星空」「モノクローム」の3曲をお願いしたのだが、わがままにより予算がはみ出てしまったのだ。
どうしたかって?
当時の社長に給料2ヶ月分前借りしてそれを製作費にあててもらった。
めちゃくちゃ恥ずかしながら当時は「ドラムで飯を食ってく」という野望が自分にはあったのだ。現在のように自分で歌を歌うなんてことは思ってもいなかった。
実際にレコーディング現場でレコーディングを立ち会った時はテンション上がりっぱなしだったと同時に、ずぶの素人だった俺にとって覚えなければならない事が多々あった。
立場的にはプロデューサーで偉いっちゃ偉いのだが、心情的には音楽で飯を食いたいと思ってるマンな訳で、逐次やらなきゃいけないことをメモっていた。
現場に入ったらまず何をしなければならないのか?
プレイヤーに対してどう接しなければならないのか?
自分の意見を聞いてもらう為にはどうしたらいいのか?
などなど。
余談だが「モノクローム」は「ZIGGY」のとある曲にめちゃくちゃ似てるのだが、JOEさんに「この曲、○○○に似てるねw」と言われ、テンション上がった俺は素直に「ハイ!」と元気よく答えてしまい、夜枕に顔を埋めて「素直に返事しなきゃよかった…」と痛烈に後悔した。
さらに後年、俺にとっての二大神の一人であるボーカルの森重さんにお会いした際にこの事をお伝えしたら「どんどんやってw」とおっしゃられたので、
セーフぅぅぅ!!!!!!
この頃からでしょうかね。milktubの「著作権の限界に挑戦する」というテーマが生まれたのは。今だったら炎上してんだろうかね。当時SNSがなくて本当によかった(安堵)
実際にプロに叩いてもらって、その帰り道の車中で決めたことがあった。
「プロに叩いてもらった方が上がりが良くて早いな」
である。「ドラマーとしての自分」が吹き飛んだぐらいのすごいプレイとプロの現場だったのだ。仮に自分に置き換えてみた時に「テイク数重ねる=>時間がかかる=>予算が余計にかかる=>しかも上がりが悪い」という様を容易に想像できたのだ。
16歳ぐらいでドラムを始めて、当時27歳だったのだが、めっちゃ諦めが速くついて自分でも驚いた。この業界でゲームを作っていれば、音楽には嫌でも携われるし、作ることになる。
自分なりの音楽との向き合い方を考えればいいや。そう思ったのだ。
こうして「M30」にも収録されてます「グリーングリーン」の主題歌は産まれた訳です。
ただ、やっぱり予算不足は解消できなくて、本当は主題歌にホーンセクションを入れたかったのだ。後年「グリーングリーン〜卒業Ver〜」「GuriGuri」「GREEN DAY」で、それは叶うんだけど当時はホーンセクション(3管)は高くて結果、諦めてしまったのだ。
今でも原曲を聴くと、この当時の悔しさが思い浮かぶのだ。
「M30」のセルフカヴァーVerは、あえてバンドサウンド主体の編曲になっている。
それは「今」のmilktubを投影したかったからだ。
〜次回コラムのネタ〜
○「グリグリ」リリース後のエロゲ業界的音楽事情。
○よもや自分が歌うとは
○なんか仕事になってきたぞ
○I'veサウンドの凄さ
です。
余談ですが、20年前の落とし前を5月5日につけれそうです。
大阪が誇る老舗スカパンクバンドのTHE GELUGUGUとmilktubで対バンするんですよ。
落とし前をぜひ見たい方は、昼の部に来ると良きかもです。
夜の部は配信もあるそうなんでよかったらぜひ見てください。
<チケット購入>
https://tiget.net/events/169611
<夜の部配信チケット>
https://twitcasting.tv/skz_reg/shopcart/146427
ちなみに今年のmilktubはライブにエロゲ曲をセトリにふんだんに取り入れる所存です。
7月24日にM31というワンマンを渋谷DIVEで開催しますが、初の全曲エロゲ曲縛りでライブやります。チケット情報は5月中旬に出しますんで遊びに来れるようスケジュールあけといてください!
あとコラムの感想をtwitterとかで書いてくれるとやる気が出るのでよろしく候です。
#milktubM30つけてください。
では股が機械に!