はじめに・ご挨拶
このたびは本プロジェクトを閲覧いただきありがとうございます。
私は日本中世史を中心に研究をしております工藤克洋と申します(研究業績等はJ-GLOBALでご確認ください)。主に中世の情報伝達や戦国時代に「勧進」をしておりました聖・山伏といった宗教者について研究しております。
また、これまでの研究活動を通じて得た知識を還元していこうという思いから、近年は、歴史の目的をめぐってというホームページを開設し、戦国期を中心とする人物・城郭・寺社・地名の歴史の紹介、文化財や歴史関連の書籍・論文を検索できるシステム、和暦西暦換算・年齢計算・生年計算・中世の貨幣の価値計算ができるなどのウェブコンテンツを提供しております。
プロジェクトをやろうと思った理由① 現在の歴史の活用のされ方
近年、歴史をモチーフにしたゲームや漫画・アニメの作品製作が数多く生み出されております。ヒット作品になると、登場するキャラクターのモチーフになった歴史上の人物や作品の世界観となっている風景・史跡への関心が高まり、その場を一目見ようと関連地域に足を運ぶという人の動きを創りだしています。地方の自治体や企業も、その人の動きをうまく取り込もうとさまざまなサービスを提供しています。歴史は、ゲーム・漫画・アニメの作品づくりの素材となるとともに、観光産業においても利益をもたらしてくれるものとして注目されつつあると言えます。
こういった人の流れは、ゲーム・漫画・アニメの作者が生み出すキャラクターのデザインが人を魅了するからに他なりませんが、歴史の専門家からみて作品を触れて気づくことは、作者が歴史の資料を読み込んでいることです。史実とは異なる話や研究でもわかっていなところを描くに際しても、何らかの史料をベースに描いています。イラストを描くだけでなく、ストーリーを紡いでいくうえで、広く史料を捜索し、よく読んでいるというところに私はいつも感動を覚えています。
なぜなら歴史を描くにあたり歴史の資史料を探すというのはとても時間を要することだからです。伝記がある著名人ならばともかく、著名人の従者等になれば、画像史料はほとんどありませんし、文献資料も極端に減ります。
プロジェクトをやろうと思った理由② キャラクターの宝庫『寛政重修諸家譜』
調べることも作者の努力次第と言ってしまえばそれまでですが、もう少し何かお手伝いできないものか、具体的に言えば、キャラクターのモチーフとなる人物をより発掘しやすくする環境を整備することはできないかと考え、思い至った素材が『寛政重修諸家譜』という史料です(下図参照)。
『寛政重修諸家譜』とは、寛政年間(1789-1801年)に江戸幕府が作成した大名および旗本以下将軍お目見え以上の家 2132家の家譜で、1520巻あり、掲載人物の記載の重複もありますが、10万人以上もの人物の経歴が記されています。採録されている人物のほとんどが江戸期の人物ですが、室町・戦国・織豊期から続く家の場合は、その時代の人物も採録されています。
もちろん、人物によって記載内容の差があり、具体的に経歴や逸話が記されている人物もあれば、名前だけという場合があることや、採録対象の家は、江戸時代の大名・旗本を主としているため、現在著名な武将であっても大名家の家臣クラスであれば採録されていない場合があること、またそもそも記載が史実と異なることといったデメリットがあります。
しかし、この書物の記載を見れば、少なくとも大名・旗本クラスの人物がどのような地位にあり、どのような活動していたのかを容易に知ることができます。逸話の記載があれば、その人物の性格や活躍ぶりをうかがうこともできしょうでしょう。
しかも近年は、本書の閲覧環境も整っています。原本は国立公文書館デジタルアーカイブで、写本および原本を活字にした書物(くずし字を翻刻したもの)も国立国会図書館デジタルコレクションに掲載されており、ウェブ環境が整っていれば、無料で好きな時間に閲覧することができます。
このプロジェクトで実現したいこと 『寛政重修諸家譜』利用の問題点
国立公文書館デジタルアーカイブや国立国家図書館デジタルコレクションの『寛政重修諸家譜』を用いれば、時間とお金をかけずに、キャラクターのモチーフ探しに探しができると私は思っているのですが、実はひとつ大きな問題があります。それは調べたい人物になかなか行きつかないということです。
最も充実した索引である続群書類従完成会編の『新訂 寛政重修諸家』は 、それはウェブ版にはなく、購入するか図書館等に行かなければなりませんが、そもそも同書は、国立公文書館デジタルアーカイブや国立国家図書館デジタルコレクションで閲覧できるものに対応しておらず、人物の検索ができません。
おもしろい情報がつまっている書物であり、閲覧環境が整っているのは間違いないのですが、調べたい人物の情報をすぐに引き出す術がないというのが現状であり課題なのです。
私が解決したいのは、この現状です。すなわち、人名を入力すれば『寛政重修諸家譜』の当該箇所の情報が閲覧できる環境を整備する。これが本プロジェクトで成し遂げたいことです。
これまでの活動 寛政重修諸家譜 人名検索システムの試験運用
『寛政重修諸家譜』に掲載されている人物を検索し、同書(和本・活字本)の該当するページにアクセスできるような仕組みを構築するにあたり、現在、試験的にではありますが、WEB検索システム(寛政重修諸家譜 人名検索 横断検索/詳細検索)を構築し公開しています。
【図1】横断検索画面
【図2】詳細検索画面
【図1】【図2】が検索画面です。『寛政重修諸家譜』には人名、名前のよみがな、別称、官位、氏族(源氏、平氏、源氏の源義家流など)、家(大給松平、深溝松平など)、父、母、配偶者の記載があります。
【図1】は横断検索で、人名なり官位などを入力すれば、上記記載項目に該当するものを表示してくれます。例えば「松平家忠」と入力すれば、下の【図3】のとおり人名が「松平家忠」のものだけでなく、父の名前が「松平家忠」のもの、つまりは家忠の子供たちも検索結果として表示されます。
【図3】横断検索の検索結果(一部)
横断検索は、「松平甚太郎」のように諱(いみな)がわからない場合にも便利です。「松平甚太郎」ないしは氏名と通称の間にスペースを入れる「松平 甚太郎」で検索すれば、「松平家忠」がヒットします。家名・通称・官位名が同じ人物はたくさんいます。そんな時に、同じ官位名をもった人物はどれだけいるのか、そしてそれはいったい誰なのか、どんな人物なのか広く検索したり、人物の目星をつけるときに便利な検索方法です。
【図2】は詳細検索画面です。こちらは、各項目に検索ワードを入力すれば絞り込み検索ができます。例えば人名欄に「松平家忠」と入力すれば、人名が「松平家忠」であるもののみ結果が表示され、横断検索のように松平家忠のこともは表示されません。この場合、【図4】のとおり3件のみとなります。
【図4】詳細検索の検索結果
詳細検索は絞り込みをする時に役立ちます。【図4】のように「松平家忠」の検索結果で松平家忠は3名表示されますが、氏族に「深溝」、人名に「松平家忠」と入力すれば「松平家忠(深溝松平)」のみが表示されます。
ところで、【図3】【図4】 の検索結果画面をみると、各人物の基礎情報の下にオレンジ色のボタンが2つ表示されています。
この2つのボタンの内、上のボタンをクリックすると国立国会図書館デジタルコレクションの『寛政重修諸家譜』和本(写本版)の当該箇所が表示されます。上図の「松平家忠」のオレンジボタンを上をクリックすると表示されるのが【図6】です。
【図6】国立国会図書館デジタルコレクション
では下のボタンをクリックしてみましょう。すると今度は、国立国会図書館デジタルコレクションの『寛政重修諸家譜』刊本(活字版)の当該箇所が表示されます。
【図7】 国立国会図書館デジタルコレクション
このように、人名検索システムを用いれば、知りたい人物の経歴にピンポイントにアクセスすることができます。こういったシステムを構築することで、上述の課題を解決できればと考えております。
ただし、この試験的なシステムは、現在、人物記載のある1520巻中83巻分の人物データ(6328名分)しか入力できていません。人気のある大名家、例えば伊達家や島津家などはまだまだ先です。
すなわち、このシステムの構築において、一番の課題となるのは人物データの入力作業です。残り1417巻分の入力が必要となります。またシステム自体も不備があれば改善していかなくてはなりません。
資金の使い道
ここで支援のお願いでございます。ご助力いただきたいのは、システム構築費用および人物データの入力費用です。
このリターンの製作費および発送費もこめて以下の通り、費用の支出をさせていただきたいと思います。
目標金額 250,000円
CAMPFIRE 手数料 約50,000円(上記目標金額の場合)
システム構築費用 100,000円
データ入力 頂いた金額より上記を差し引いた金額を宛てさせていただきます。
実施スケジュール
2022年5月31日 クラウドファンディング開始(掲載開始)
2022年7月15日 クラウドファンディング終了
2023年8月頃 人物データ入力作業終了=『寛政重修諸家譜』のWEB版人名索引完成 予定
最後に
これまで私は、自身の関心に基づき、史料を読んで学会報告や論文執筆をするといった作業ばかりに従事してまいりました。それはそれで意味のあることだと思っていますが、今回は、ゲーム・漫画・アニメを世に送り出す作者のために歴史を活用していただくための環境整備やレシピづくりをしたく、本プロジェクトを立ち上げました。大学で一時期、歴史学の基礎を教える授業を担当しておりましたが、歴史学を専攻する学生たちのほとんどが、歴史学を学ぼうと思ったきっかけは、ゲーム・漫画・アニメでした。ゲーム・漫画・アニメが歴史学という分野を支えていると言ってもいいかもしれません。実を申しますと、私自身も歴史学を学ぶきっかけはゲームでした。
作者の皆様がより多くの作品を生み出すためのお手伝いができればと思っております。改めましてご支援・ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。本プロジェクトの閲覧にお時間をいただき誠にありがとうございました。
<募集方式について>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。
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