2022/04/17 17:54
クラウドファンディングにご協力いただいている皆さま、これからご協力いただける皆さま、
単に通りすがりの皆さま、こんにちは!
チェロの長南牧人です。


さて今回は脇役たちにスポットを当ててみましょう。


以前の文中にも登場していますが、ペグ(糸巻き)、テールピース(緒止め)、テールガット(緒止め糸)、顎当て、肩当て、エンドピン(チェロ)エンドボタン(ヴァイオリン、ヴィオラ)、エンドピンソケット(チェロの場合)、松脂、弓の毛や弦などについて少しお話ししてみたいと思います。


この脇役たち、脇役といえど、もちろんこれらが無いと演奏不可能です。

そしてその素材によって音質や弾き心地に大きな影響があり、しかもその組み合わせで全く違った結果になり、

弓や楽器本体や奏者との相性もあるので気が遠くなりそうです。


さっそく気が遠くなってしまい、ここでやめたくなってしまいましたがまだ始まったばかり、気を取り直して先を続けましょう。


ペグ、顎当てや肩当て(ヴァイオリンやヴィオラの場合)、テールピース、エンドボタンなどは黒檀、柘植、ローズウッド、スネークウッドなどで作られます。


顎当てや肩当ては軽い材質の物が好まれます。

重たいと疲れますからね。テールピースはカーボンやスチール、プラスチックなどで作られた物もあります。


https://x.gd/Rn32M

https://x.gd/6jY6k

音質や弾き心地は、黒檀など材の密度が高く硬いものは音が引き締まる傾向にあります。

逆にローズウッドや柘植など、軽い物は響き方も軽くなる傾向にあります。


昔はペグとテールピース、テールボタンやエンドピンのソケットはその見映えから同じ材質で揃えられている場合が多かったのですが、最近では違う材質の物がフィッティングされていたりします。


顎当ては材質もさることながら、楽器に固定する部分と固定方法、形状が重要で

固定する部分が2つの物、1つの物、また顎に当たる部分も広いもの、狭いもの、そしてテールピースを跨いで固定するか、しないか、によっても楽器の響きが違うので悩みが尽きないものです。

https://x.gd/3LFJr、


肩当てはバロック時代には無かったので(顎当ても)、今でも古楽器のプレーヤーの方やピリオド奏法寄りの方は使用しなかったりもします。

クルミやアッシュ材、プラスチック、布製のクッションなど、材質も色々あり、

これも材質や固定する場所によって響きが変わります。

https://my-best.com/5697


こんな可愛い肩当てもあります。どなたかお使いにらならいかしら。

https://onl.bz/UwAPZdM


テールガットはその名の通り昔はガット(腸)のものが主流でしたが、今はナイロン、金属などの物もあります。

https://x.gd/4KkO7

このテールガット、本物のガットは切れやすく、昔は本番中に切れて演奏不能になる事件も多々あったようです。

近年では切れにくい材質の物が主流なのでこういった事故は滅多にないですが、

その音質の良さから今もガットを使用している方もいらっしゃいます。



チェロのエンドピンは木製、カーボン、金属等があります。

https://onl.sc/pxFeEav

タングステン等の重たい金属とチタンなどの軽い金属で響き方が違います。木やカーボンも軽い部類に入ると思います。

重たい方は響きが引き締まり、軽い方は楽器の鳴りが軽やかになります。


金属の物は100%の物、混合されたのも、異なる材質の心材の周りに異なる金属を被せたものなどがあります。

有名な物ではタングステン、チタン、真鍮の三層になっているものや、これにカーボンも加えて四層になっているものも

あります。


また、8ミリと10ミリの太さが一般的で、エンドピンソケットもこれに対応したものが多く、10ミリのソケットに8ミリをいれるとグラついたり、もちろん8ミリ用のソケットには物理的に10ミリは入らないので

選ぶときは制約があったりします。さらにややこしいのが、楽器本体に空いている穴のサイズとソケットのサイズが合わない場合が多かったりもします。隙間が少ない時は紙などを挟んである程度は対処できるのですが、一度穴を埋めてもう一度開けなおす、といったような調整をしたりします。こういった修理はガバガバになったペグ(糸巻)の穴を直す時も行われます。


チェロの流れでテールピースにも少し細かく触れたいと思います。

テールピース、ヴァイオリンやヴィオラは楽器を構えた状態で、片手でパパっとチューニングが出来るのでテールピースにチューニングの微調整用のアジャスターはE線(一番高い音の線)にしか付いていませんが、チェロはペグだけだと

チューニングに時間がかかるので、テールピースの全ての弦にアジャスターが付いています。もちろん例外もありますが。

子供用の分数ヴァイオリンは、ペグでのチューニングは難しいので、全部の弦についていたりしますし、チェリストも自分の好みでA線(一番高い音の弦)にしか付けていない人もいます。

もちろん余分な物が付いていない方が良い音はします。が、アンサンブルやオーケストラの場合、あまりチューニングに

時間がかかると他の人を待たせてしまう事になるので全ての弦にアジャスターの付いている物が主流になっています。


チェロのテールピースに関しては一番材質が豊富なのではないでしょうか。

プラスチック、カーボン、スチール、黒檀、ローズウッド、サンダルウッド、紫檀、スネークウッド、ペルナンブーコ、

等々・・・これら材質により音質、弾き心地などまったく違うので、悩ましい限りです。

僕もエンドピンは10本、テールピースは8個、弦は9種類、松脂は10種類、組み合わせを試しました。

おかげでビンボーです。


冗談はさておき、次はその松脂にいきましょう。

松脂はその名の通り、松の木の分泌物で、他に樫の木から取られた物や、違う種の松から取られた物をブレンドしたり

金属粉を混ぜたりします。

https://onl.sc/pKMUCmz

音量、音質、弾き易さに直結するので、色々試したくなります。

メーカー製の他に、楽器職人さんが独自のレシピで個人的に作った物にも

優れたものがあります。



弓の毛は基本的には白馬の尻尾の毛ですが、脱色されたもの、黒馬など、しかも馬の種や産地によってもその性質や太さが異なります。

https://www.shimablo.com/blog/repair-violin/2017/05/26/5

全種類、試してみたくなりますね。

https://www.magico.co.jp/tec.htm#tokucho


弦は、その昔はガットで出来た物だけでしたが、現在ではナイロン、金属の物も数多くあります。

中世ルネサンスやバロック時代は剥き出しのガットがそのまま張られていましたが、その後、耐久性や性能などが重視され、芯材の周りにさらに色々な材質の糸が巻かれたものが主流になっています。

https://x.gd/yC0Jf

https://x.gd/PN8E2


ガット弦は音質が良いのですが、楽器に張ってからピッチが安定するまでにとても時間がかかります。そして温度、湿度の影響を受けやすく、曲を弾き始めてすぐにチューニングが狂ってしまったりします。また、音量もとても奥ゆかしく、雅な雰囲気です。音楽がまだ宮廷内や教会だけのものだった時代はそれでも良かったのですが、より大きな会場で、より多くの人たちに聴いてもらう為、そこで考案されたのが、音量もあり、扱いやすいナイロン(シンセティック)や金属を使った弦なのです。これらは張ってすぐに安定しますが、弾いた感触や音色は好みもありますが、やはりガット弦の代替品、なのでしょうか。


「金属の音がする!」と敬遠なさる楽器製作家の方もいらっしゃいます。筆者はチェロを始めた時からスチール弦だったので、ガット弦を使うようになってから、初めてこの概念が理解できました。

ヴァイオリンやヴィオラの方は、チェリストよりは比較的ガット弦をお使いになっていらっしゃる方が多いように感じます。

特にヴァイオリンのE線は、ガットにするとひっくり返らなくなるので、オススメです。


・・・今回もかなり長文になってしまいましたが、皆さんの気が遠くなってしまわないうちに、この辺で失礼いたします。


活動報告、まだまだ続きます。次もお楽しみに!