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チェロの長南牧人です。
本日はヴァイオリン属の製作について少し触れてみたいと思います。
物への理解が深まると、楽しみ方の範囲も増えますよね。私も楽器に使われている木材の性質を知り、楽器の鳴らし方を工夫できるようになりました。
まず材料ですが、スプールス、メープル、黒檀、柳、ポプラなどが使われています。スプールスは松(唐桧)、メープルは楓です。
表の板はスプールス、横や裏の板にはメープルが使われます。
糸巻や指板、弦をまとめるテールピースなど黒い部分は黒檀が使われています。
糸巻やテールピースは柘植、ローズウッドなど他の材質の物もあり、それぞれ音色が異なってきます。
裏板は単板の物もありますが、表板、裏板とも一枚の板を二枚になるよう切り、それを貼り合わせたものが多いです。
柳は内部の部品(ブロック)、ポプラは裏板に使われることがあります。ポプラは加工が難しいのですが独特の風合いが出るので挑戦したくなるそうです。音はメープルより若干柔らかくなるようです。
さらに、これらの材料の自然由来のクオリティーや乾燥させ具合(シーズニング)、加工技術によって、楽器の出来不出来が決まってくるようです。200年前に切り出された木材、なんていうのもあります。良い楽器が出来そうですね。
作るときの作業工程も「内枠式」と「外枠式」があります。ざっくり言うと形を枠の外側に付けて作るか、枠の内側に付けて作るかの違いがあります。内枠の方が手間がかかり、外枠のほうがはやく作れるそうです。
https://www.sasakivn.com/werkstatt/qa/form.htm
さて、作る工程にまいりましょう。かなり端折っていきますね、全て書くと本一冊書けるくらいな膨大な量になってしまいます。
内枠式で順を追っていこうと思います。
まずバイオリン内部の要であるブロックを作ります。ブロックはネックの付け根、エンドボタンの所、横板の尖った所に入っています。これに沿わせて横板や表板、裏板、ネックが取り付けられています。合計6個あります。ブロックと言われるだけあってブロックの形状をしています。そのまんまですね。
ブロックが出来上がったら次は横板を作ります。木を、あのヴァイオリンの曲がりくねった形にするわけですが、削り出しではなく薄く平らに削った板(ヴァイオリンの場合は1.5ミリ程度、チェロで1.7ミリ程度)を水で濡らして専用のアイロンであの形に曲げていきます。
次に、ブロックと横板をバイオリンのボディーの形ををした内枠に貼り付けます。ブロックは、後に横板と一緒に枠から外さないといけないので枠には接着しませんが、横板はブロックに接着剤でしっかり貼り付けます。
接着剤は何でもよい、というわけではなく膠(ニカワ)が使われます。これは要するにゼラチンですね、絵画にも使われます。膠の良い所は熱や湿気、経年劣化や強い衝撃で剥がれる、という所です。
木は湿度などで伸縮します、その時に剥がれない接着剤で固定されていると割れてしまいます。
また強い衝撃が加わった時に剥がれることによって割れるのをふせいだりします。また修理の時に熱や水分ですぐに剥がせます。
前々回の楽器のカテゴリーの①でお話ししましたが安価な楽器はこの膠ではなく木工用ボンドなどの合成接着剤が使われていたりするので、壊れても修理不可能だったりします。
古い楽器では木目に沿って千切り状態に割れていても元通りに修復されている物もあります。
職人さん達の木工技術は芸術の域に達していますよね。
次は補強パーツのライニングを作ります。これは横板と表板、裏板に接着され、それぞれの貼り合わせの補強に役割を担います。
これも横板のように薄く削りアイロンでも曲げて膠で横板に張り付けます次に裏板を作ります。
先程申したように一枚の柾目板を二枚にして一枚の広い板(元の板の倍の面積)になるよう切った面ではない所を正確に真っすぐにして貼り付けます。木の外側に近い方が楽器の真ん中にくる、という事ですね。
この工程が上手くないと経年劣化で表板や裏板の真ん中から剥がれてしまったりします。
完全に貼りついたら横板をもとに裏板のアウトライン、要するにヴァイオリンの形ですね、を鉛筆などで書いていきその形に切ります。
そしてここからが大変なのですが、ノミをやカンナを使って板の厚みや膨らみをヴァイオリン本来の厚み、膨らみまで削り出していきます。5センチ程度あった板を5ミリ程度まで削ります。
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工場量産品ではこの過程は機械がやってしまうようですね。
職人が注意深く削ったのと機械で削ったのでは、やはり差が出て当然、といったところでしょうか。
チェロのような面積の広い板を削るのはヴァイオリンよりは遥かに肉体労働だそうです。
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コントラバスに至っては「チェストなどの家具を作ってる気分になる」(クレモナ在住の楽器職人談)だそうです。
その方は「コントラバスは家具だ」と仰ってました。まさか笑
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粗削りが終わったら、パフリングを入れる溝を掘ります。ヴァイオリンを近くで見る機会があったら板の端にある黒い線に注目してみてください。あれは線が描かれたものではなく薄く削った黒檀や鯨のひげ、黒く染めた紙、等と薄く削った楓をサンドイッチにしたものが縦長に深く埋め込まれています。これは装飾的な意味と楽器保護の意味があり、象牙が模様で埋め込まれたものや、パフリングが二重になったものもあります。これらはかなり派手な感じに見えます。
https://www.instagram.com/reel/CZCIzoZsNJb/?utm_source=ig_web_copy_link
埋め込むパーツもアイロンで楽器の形にして、溝に膠とともに埋めて固定します。そして、さらに綿密に目標の厚みを目指して、削りすぎないように厚みを測りながら少しづつ小さなカンナで削っていきます。表側も裏側も、アーチ状に仕上げます。
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裏板が出来たら今度は表板を作ります。工程は裏板とほぼ同じですが木の種類が違うので(裏板より柔らかい)、気を付けないと削りすぎてしまったりするそうです。木は削りすぎるともとには戻りませんよね。
次にヴァイオリン属の特徴でもあるF字孔を作ります。美しいF字孔の楽器は惚れ惚れしますよね。
職人さんにとっても緊張感のある作業だそうです、福笑いみたいにならない事を祈ります。
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さてさて、今回もお読みいただきありがとうございました。長くなってしまいましたが、ここまでで全製作行程の6分の2程度です。
いかにヴァイオリンの製作が手間がかかるか感じて頂けた事かと思います。楽器製作も芸術の域ですよね。
ご参考までに、製作工程が詳しく解りやすく書かれているサイトをご紹介します。
https://atelier-eren.com/violinmaiking-schedule/
それでは、次の活動報告もお楽しみに!