こんにちは。
glolabのコーディネータの大山美佳と申します。2022年度パイロット版NEWDOOR進学プレッププログラムの企画・運営をしています。
最初に、代表 柴山から、家族滞在や公用等の在留資格のために日本での暮らし方が限定的で、且つ家庭の経済状況が大変な高校生へのプログラムを作ってはどうか、というアイデアを聞いたとき、私自身が当事者の二重三重の「大変さ」を想像できるようになるまでに少し時間がかかりました。
以前、家族滞在の在留資格を持つ外国ルーツの当事者に高校生時代の話を聞いた際に、「日本にいるためには大学に行くしかなかった。」と言っていました。実はそのときの感想は、そんなもんなんだ、くらいでした。ですが、柴山と話して、在留資格について学びを進めていく中で、ようやく日本でがんばって生きてきたとしても、自分の将来を自由に描くことができない外国ルーツの子どもがいるのだと気づいたのです。
納得した人生の選択だからこそ、人は一生懸命努力し、努力に対する結果を真摯に受け止め、前に進めると思います。ですが、親元を離れて自立することにも、進みたい方向に向かうことにも大きな障壁があるとすると、それをどれだけの子どもが超えられるでしょうか。その危うさと辛さをティーンエイジャーが抱えることに疑問を感じずにはいられなくなりました。
それから、メンバーで議論を重ね、NEWDOOR進学プレッププログラムの中身をどんどんと作り上げていきました。
外国ルーツの子どもたちはそれでなくても限られた情報源から進路選択することが少なくありません。それでいて、在留資格のいろいろな制限がある。そうなると、「自分はこう生きるしかない」と考えがちです。そのため、まずは
(1)毎月1回キャリアワークショップを実施する
ことにしました。今年度は新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点もあり、主にオンラインで実施しています。マネーリテラシーについて学んだり、同じく外国ルーツのセンパイにお越しいただき交流をしたりしています。こういう生き方もあるんだ、を知る機会を作り出すようにしました。
キャリアに対して様々な情報を知ったとしても、もちろん基礎的な日本語能力や学力の底上げも必要です。そのため、
(2)オンラインで日本語学習支援を実施する
ことにしました。このオンライン学習では「日本語の書く力を身に付ける」ことに重きを置いています。なぜ、書くことに注力したのかというと、書くためには、まずそのテーマに対する知識がないと書けません。つまりは適度なインプットが必要です。そして、インプットした知識と先生との話し合いなどで、考えを吟味します。それから自分の意見を醸成し、書くというアウトプットに繋がります。
こう考えると、「日本語の書く力を身に付ける」=「思考プロセスそのものの育成」と言えると思います。そのため、作文の授業を実施しています。
この(1)と(2)に1年間参加することで、受験時に必要な資金(受験支援金)を受給することができる、という流れです。
※受験支援金は10万円を上限に実費支給です。
2022年度のパイロット版は、4名でスタートしました。(途中で辞退者が出たため、現在は3名が参加。)
毎月、盛りだくさんのプログラム内容のため、今後、内容のブラッシュアップは必須ですが、この中で生徒たちの学びが多いことは言うまでもありません。
5月22日の第2回キャリアワークショップの様子をご紹介します。
この回では、マネーリテラシーについての知識を深め、進学後に一人暮らしをしたときの生活費をシミュレーションしてみました。
生徒たちは夢と現実の間を行ったり来たりしながら、想像を膨らませます。ある生徒は、名古屋の大学に興味をもっているので、名古屋で暮らしたらどうなるかを考えました。全体で発表をしたとき、「名古屋は家賃が安いのに、バイトの時給は東京とそんなに変わらない。穴場かもしれない。」と嬉々として発表してくれました。彼ら彼女らは大学に通って勉強を頑張らなければいけないのはもちろんですが、アルバイトをするのも当然で、生活費も学費も自分たちでどうにかしなければならないのをベースに話を進めます。この回の最後には、在留資格と奨学金の話を、glolabが作った動画を見ながら、説明しました。
現実を理解しつつ、そのうえで、自分なりの生き方のイメージを膨らませ、主体的な進路選択へと繋げる。
できそうで、外国ルーツの子どもたちにはできていないことなのかもしれません。その支援がNEWDOOR進学プレッププログラムではできていると、感じています。
彼ら彼女らの状況を私たちはどう考えるべきなのでしょうか。制度のことだから仕方がないというのはあまりにも非生産的ではないでしょうか。次世代に希望を持たせるために、制度に一石投じたいと思っています。そのお力添えをいただければ、大変有難いです。
私たちglolabは、外国ルーツの子どもに係る問題を提起し、その解決策を提案していきたいと思います。その一つが、このNEWDOOR進学プレッププログラムです。
ぜひご理解とご支援をお願いいたします。