2022/03/10 23:56

運営チームの伊藤です。
今回もメンバー紹介の活動報告です。

東京造形大という美大を卒業後、上海にある建築設計事務所に勤め独学で建築を勉強しました。
帰国後に事務所を立上げ、10年ほど前から同大学の友人と共に木曽平沢で空き屋の運営・改修や地域デザインのことなどしています。
設計実務以外でも塩尻市のえんぱーくで趣味で楽しみたい一般者に向けて、誰でもできる建築教室を通年で主宰しています。
1年ほど前までは東京と平沢周辺での生活が半々ぐらいでした。
家庭を持つ運びになり、住いを木曽平沢など活動範囲を含めで現在探している最中です。
良い物件があれば教えてください(笑)


(移住のきっかけやこれまでの仕事など)
木曽平沢や周辺の綺麗な自然環境が気に入ったのは、生まれ育った環境が大きく影響していると思います。
私は埼玉県にある小さな町で、畑と森がほとんどの自然豊かな環境で育ちました。
小さい町特有の、美しい自然があるけれど不便・関係が密で協力を得易いけれど話が広まりやすい。
田舎町の現実を予め知っていたので、そうした良し悪しが一体となった環境も都合のよい部分だけ享受することなく正直に向き合えました。

建築を仕事にする前は少し放浪癖もあり、色々な国や場所をうろうろしていました。
結局何が一番楽しかったか振り返ると、訪れた先での人付き合いやその場所特有の自然や食べ物や出来事です。
都市部や地方の小さな町と人、それぞれに独特な楽しさはありましたが、暮らすのは自然環境が良い場所や食事の素材が美味しい場所が良いかなと思ったりもしてました。
それも小さい頃の環境が多分に影響してそうです。

普段は社会的に意義があるような魅力的な古民家改修の仕事ばかりをしているわけではありませんが、建築物を通しながら様々な人や出来事と接します。
幸いにも建築は場所や人と密に関われるので、空き屋のことに取組むなかで木曽とそこで生活する人達と知り合い沢山のことを教えてもらったり、おいしい食べ物も一杯頂きました。
そこでは多くの支えや助けもありました。
そうした場所や人の魅力を発信できるような活動も続けています。
面目にきちんともの作りをしている職人さん達のお披露目の場を作ったり、大学の学生さんに場所の魅了を伝えに行ったり、漆の世界で働きたい若い人の就業協力等などです。


(木曽平沢に関わりはじめてからの仕事)
自分達発信の仕事が多いと感じています。
建築設計の仕事は発注があってようやく成り立つ仕事ばかりです。
デベロッパーや不動産サイドに身を置く以外で、なかなか自分達から発信できる仕事は多くありません。
私達世代はそうしたもどかしさを感じている建築家も多く、様々なアプローチを試みている最中です。
建築の実務とは世間的に呼ばれないかもしれませんが、空き屋改修を設計やデザインの段階からワークショップ形式で進めてみたり、建築教室を主宰したり、漆職人さんの正当な評価が得られる場所作りをしたり、いわゆる建築物単体の設計やデザイン以外の仕事が多いです。

木曽平沢に わたし市 というイベントを定期的に開催してくれる方がいて、そこに参加させてもらいながら職人さん・作家さんのお披露目の場を設けています。
作品が人の手に渡った時に感謝されたり、お客さんの反応から作品つくりのアドバイスを求められたりすると、とてもうれしい気分になります。
建築教室の生徒さんが図面と模型で一生懸命に計画と設計をした成果を、自分でDIYして実現した時などは私が設計し建築を実現したかのうように感動します。
このあたりの感動は少し伝えるのが難しいですが、自分の知識や技術を使って他人事が自分のことのように喜べる仕事が建築でもできる、そんなところでしょうか。

とおいち でもメンバーそれぞれの出来ることが結果的に誰かや何処かの役に立って、それを自分ごとのように喜べればよいなと思います。
近年はごりごりの設計実務も現場監理以外は昔ほど場所を選ばずにできます。
奈良井や木曽平沢など場所や人と長い時間向き合いながら、これからの仕事をしてければと考えています。


(とおいちをはじめた理由)
佐藤夫妻からお話があった時に、今までの活動の延長だったので直ぐにはじめられました。
10年近く生活もしてきた地域なので、木曽路広域で魅了的な場所や人や食が沢山あることも知っていました。
一人でそれらの魅力を伝えるのは荷が重いですが、仲間と一緒に取り組めばきっとできると思います。

特に漆職人達の不遇や嘆きを近くで見てきたので、真面目にものづくりに取り組んでいる人や目指す人の紹介は力を入れてみたい領域です。
漆を使って仕事をしたり作家活動をする人は沢山いますが、苦しい技術の世界を何年もかけて習得する人は本当に少ないです。
高い技術を目指してさらに作品を作る真面目な職人さん達が、その腕の良さや知識を都合よく利用されている現実も身近で見てきました。
なので職人さんや作り手さん自身にもっと陽のあたる場所を用意しないと、それを目指したいと思う若い人も現れてきません。
職人を利用したほうが上手くいく作家世界なら、多くの若い人がそちら側を志してしまいそうです。
漆に限らず全てのもの作りに共通する問題なので、とおいちで少しでも解決できればと考えています。

職人さんは不器用で正直な物言いをしてしまう人も多く誤解されやすいですが、嘘が苦手で真面目な人たちです。
真面目にものづくりしている作り手さん達の品って本当によいです。
是非そうした品を手にとって体験してもらえるとうれしいです。


(自分の理想はどんな暮らしなのか)
理想、、、考えてみると難しいですね。
今まで生きるのに一所懸命で、一つ一つ良いと思える方向へ登ってきましたというのが実感です。
その一つ一つに何か理想もあったのでしょうが、言語化が全くできません。
木曽地域やそこにいる人達と出会えたことも、そこで生活できていることも、パートナーと一緒に住む場所を探せていることも、地元の食材で仲間と食事をすることも、幸せを感じています。
この先目指す大層な理想が直ぐに思いつきませんが、私生活としては綺麗な場所を散歩したり、優しい気持ちをもった友人達と食事をしたり、家庭の行く末を笑い泣きしてそれぞれが正直さと信頼をもって見届けられれば、幸せだろうと思います。

とおいち も訪れた人が何か幸せを感じてくれる情報や体験や品を提供できるよう運営に励んでいきます。