皆様、いつも応援いただきましてありがとうございます!
前回に引き続き、今回も私・制作スタッフよりお届けします。
本日は「後編」。
記者さんからの質問に、どんどん公演内容や熱い想いが暴かれていきます!!
(※今回、歌舞伎座第一部との合同取材会でしたが、本記事では「森の石松」公演に関する事柄を中心に抜粋してお届け致しますため、ご了承ください。)
前回の記事【前編】はこちら!
本記事だけでもお読みいただけますが、前回からの続きとなっておりますので、前編の皆様からのご挨拶もぜひご覧ください。
質問① 横内先生は先ほど「構想30年...」と仰っていましたが、もう少し作品内容の詳細をお聞かせ願えますか?
横内
とある映画の構造が面白く、いつか使ってやろうと思っていたんですけれど、
猿之助さんが最初に電話してくれた時に
「コロナでみんな場所が失われてしまっていて、彼らに場を作ってあげたい...」という想いを聞いて、その想いがちょうど30年前から構想していたことにハマるのでこれは使うしかないなと思いました。
(ストーリーとしては)たまたま自分の夢を実現させるために劇場を作っちゃった老人が、うまくいかなくなったけど、
劇場に想いを残した(大衆演劇の)一座のものたちが、幻のように劇場に集まってくることで、大事なものが蘇ってくる(というものになっています)。
軽い文化祭ですよ、と(猿之助さんは)仰っていましたが、そもそも(この企画の)始まりのところには熱い想いとか、劇場に対する想いとかがあるので、演劇人として我々は熱をもってやれたらいいな...と思って書きました。
でも、書きあげたのは実質5日くらい(笑)
質問② それぞれの得意分野を生かす、ということは脚本を作る上では大変でしたでしょうか?
横内
現代劇部分があるんですけど、(「森の石松」は劇中劇なので)
そういうところに歌舞伎俳優さんに出てもらいたいなと思っています。
実は、同じ演劇でも(現代劇と歌舞伎では)考え方とか今まで習ったことがずいぶん違うということをすごく体験している。
僕ら(現代劇俳優側)からしたら歌舞伎の演じ方をみんな学んでやってて
浅野さん(『新・三国志』にもご出演中の浅野和之さん)でさえ、事務所の社長に「横を向くな!」と怒られていて(笑)
「横を向いたら(衣裳的に)薄っぺらくなるから前を見なさい!」と言っているのに、
やっぱりどうしても僕らリアリズムの演劇をやっている人間は「喋る人のほうに向かないと気持ちが悪い」(笑)
だから、今度は逆に、歌舞伎役者さんに喫茶店でお茶を飲んで世間話を...みたいな普通の芝居をやってもらうのはすごくいい。
なんだか不思議な節回しとかでやるのかな...と思うと、なかなか見ものなんですよ(笑)
この(『森の石松』の)稽古場自体がいい文化交流で。
お互いの技術のすり合わせも含めて、(良い化学反応が)起こればいいなと。
だから現代劇部分はなるべく歌舞伎俳優をキャスティングしていただきたい。
いくつか楽しみなキャスティングも実現しつつあるので、ご注目いただきたいと思います。
質問③ 改めて、猿之助さんより本作品の見どころをお聞かせください。
猿之助
(今回の公演で使用する)劇場も、たまたま横内先生と一緒にいて、
その勢いで夜の11時くらいに「今から見に行こう!」って言って
劇場に行って、劇場主に「貸してくれー!」と言って予約して...
ほんとに大学生のノリでやったんですけど(笑)
箱(劇場)がきまり、本がきまり...
そして先立つものはお金だ!ということで、猿之助の名前を使っていいからクラウドファンディングをやれ!と言って立ち上げさせて、思わぬことに今600万円くらいおかげさまで集まっているのですが...
本当は1000万円くらいないといけないので、まだまだ足りていないのですが....
彼らからは言えないので僕が言いますけど...本当に演劇はお金がかかるんで。
一応、クラウドファンディングの目標額は200万円にしたんですね。
僕は「1000万円にしろ」と言ったんだけど、彼らは「分不相応だから200万円で...」と。
なので、彼らからは「ありがとうございます」しか言えないけど
猿之助からは「まだまだ足りないぞ」ということを言いたいです(笑)
今、地方の人たちで応援する気持ちがあるけど行けない!っていう人があるので
応援の気持ちをぜひ現金に変えていただいて...(会場一同笑)
ただ、ありがたいことに、そういった方たちが大変多く
その真心で今回舞台ができるということを(座組一同)本当に噛み締めてほしい。
やっぱり大劇場に立っていると忘れがちなことですね。
お客様のチケット代で全部が賄えるということを身をもって学んでほしい。
今回は小劇場ということで嘉島(典俊)さんがスーパーバイザーとして入っていただいてます。チラシ画像になっている "石松" の扮装も全部大衆演劇の衣裳をお借りしている。
お金がないものですから、写真撮影の際には
嘉島さんが着付けをして、僕がメイクをして、写真も僕が撮りまして...全部手作りでやっています。なので手作り感満載です!
見どころとしましては、『新・三国志』や『オグリ』(スーパー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』)でもご出演いただきました、
石橋正次さんに、ようやく舞台の上で「夜明けの停車場」を歌っていただけることになりました。
「夜明けの停車場」で、私が大衆演劇の座長として踊るというところが1つの見せ場。
あとは、毎回日替わりゲストを呼ぼうかと。
人脈はあるので(笑)誰が登場するのか交渉中で、あっと驚くような方々になるかと思うので
お楽しみにしていただければと思います。
質問④ 横内先生は、演出家としての猿之助さんについてはいかがでしょうか?
横内
ビジュアルにしても、音楽にしても
対俳優とのこと以外に絵作りや音の空間作りに関して
単に音のメロディー以外にも音の広がりなども計算して
もちろん技術的には歌舞伎の音の入れ方というのが元になっていると思いますが、
現代的なところに於いても、ここはもうミュージカルだなというような音楽の使い方をする。
こういうところはちょっとびっくりしてます。
ご自分が名優だからどうしてもスターとしての存在感が際立つと思うけど
でも、こんなにちゃんと空間とか音楽とかわかっている演出家、しかも大劇場で...
こんな演出家そんなに実はいないんだけどなと思っています。
特に今回『新・三国志』の音楽に対して、加藤和彦さんの音楽が全てが残っていなかったので断片もうまく使わなきゃ行けない。しかもパート1だけじゃ足りないからパート1〜パート3まで全て使わなくちゃいけない...
全部で1000曲くらい?(猿之助「けっこうありましたね...」)
その曲を(猿之助さんが)全部お聞きになって、色んなところから引っ張ってきて...
本当に素晴らしい演出家だなとそばにいて本当に勉強になります。
最新テクノロジーがどのように使われているかもよくご存じで、それを歌舞伎的なものと組み合わせて、ものすごく新しいことが生まれているのも素晴らしい。
質問⑤ 猿之助さん、みなさんの想いを受け止めて、改めていかがでしょうか?
猿之助
とにかく、演劇を作るってことを(若手に)勉強してほしい。
僕は亀治郎の会をずっとやって苦労してきましたので、それをみんなでやってほしい。
『新・三国志』でも全部僕がやって...
もちろん僕がやらなきゃいけないんだけど
そろそろ自分たちでやって、自分たちで判断してやってみて...と。
やっぱり、歌舞伎や『新・三国志』に出ている若手にも言えることなんだけど...
役を習うというのは当たり前で、僕が伯父から学んだのは「舞台の作り方」「人の動かし方」「判断の仕方」。なので、僕と仕事をするにあたっては、それを見てほしい。
役者だったら役者をやるのは当たり前。あとは演出力がつけば。
演出力っていうのは何かっていうと、人の動かし方。
この目的を達するには誰と誰に指示を出せば、誰がどういう役割でやってくれるかっていうのを学んでほしい。
早く僕を楽にさせてほしいですよね(笑)
歌舞伎の主役っていうのは、ゆったりと構えて、出番なったら来て、出番が終わったら「ああ、おつかれ」って帰る。
だけど、僕は一番最後まで残って打ち合わせをして、朝5時頃まで稽古して
一番疲れた頃に初日が開く(笑)
早くこの重責から解放されたいですよね...
質問⑥ 猿之助という名跡の襲名からまもなく10年ですが、これまでの振り返りとここからのフェーズで実現していきたいことをお聞かせください。
猿之助
これからの10年は演劇の再構築。公演形態をこれからアップデートをする(必要がある)。
松竹さんも毎月歌舞伎座が開いているからみなさん潤っているように見えますけど(感染症拡大の影響で)負債を抱えながら公演をやっている。
席もまだ満席になかなかできないし、やったって赤字。
だけど伝統を絶やしちゃいけないという使命感だけでみなさん(公演を)やっている。
でも、なんとかして黒字にもってかないといけないから、そのためにはどうするかということをこれからの10年は考えていかなければいけないと思っています。
質問⑦ 4月は歌舞伎座から森の石松に駆けつけるということで、歌舞伎と現代劇、そして劇場の規模もだいぶ違いますけど、切替えは大変ではないかなと思うのですがいかがでしょうか。
猿之助
僕は慣れてますけど、歌舞伎のお弟子さんたちは慣れてないからやっぱりそういうことも体験することが必要。
200人のお客様に感動を伝えるのと、1000人のお客様に感動を伝えるのと
やっぱり芝居のやり方も違うし声の張り方も違うし
そういう意味でいうと彼らにはいい経験になるのではないでしょうか。
200席を売ることがどれだけ大変なことなのかということも。(学んでほしい)
質問⑧ クラウドファンディングで目標の3倍も集まっており、先ほどもしかしたら1000万円というお話もありましたが、それはどのような活用を考えていらっしゃるんでしょうか?
猿之助
僕が私的に使っていいのかって聞いたら「絶対にやめてくれ」と言われたんで(笑)
喉から手が出るくらいほしいんですけど...涙をのんで...
でも、衣裳費・かつら、照明等々であっという間になくなりますね。
やっぱり時代物っていうのはお金がかかるんですね。
だから商業演劇からも時代物が消えていく。
「森の石松」も資料を集めると、杉良さん(杉良太郎さん)くらいしか最近(舞台では)やってない。
前回誰がどんな道具を持ってたかとか「つけ帳」(道具や衣裳などが掲載されている帳簿)を調べると、歌舞伎なんかは戦前とか...
杉良太郎さんが清水次郎長と森の石松を1人2役でやったくらい。
近年こういういい芝居がどんどんなくなっている。
なので(1000万円集まったとしても)カツカツです。
質問⑨ 愉快な仲間たちのメンバーにはどういう共通項があるんでしょうか?
猿之助
「芝居が好き」「情熱がある」「利害関係がない」
・・・打算的に付き合っていないってことですね。
仕事の付き合いということでなく、普段から一緒でコロナ禍前は一緒に旅行行っていたし。
あと、メンバーに定員はありません。志が同じ人が集っていって、という自由な団体です。
・・・入会金もないです(笑)
おまけ
久々に顔を合わせた皆さんは、ご支援くださっている皆様に向けてのコメント撮影をしていました!
いつものお互いがお互いを撮影するスタイルで、終始楽しそうなメンバーなのでした。
いよいよ稽古も本格的にはじまります。
この「活動報告」では、稽古の様子もどんどんお届けしていきますよ!
どうぞお楽しみに!