こんにちは!
前回の活動報告で恥ずかしながら登場した廣津志保です。現在北欧デンマークのコペンハーゲンにいるわけですがどうやら日本の方が雪が積もっているようです。。みなさま体調にはお気をつけください。
今回私から紹介させていただく先輩は3期生の樋渡翔太郎さんです。
早速質問をしていきたいと思います!
ーー使節団の経験がどのような影響をもたらしたと感じますか?
使節団の活動を通してお会いする方々は、自身のキャリアを緻密に構築されています。そして同時に、自身の構築した戦略に囚われていらっしゃいません。そのような深みのある方々が纏っている雰囲気に魅せられ、私の行動原理に少なからぬ反映があったものと思います。
特に、自分自身の専門性を確立しつつ、異分野間の連携に心を砕くプロセスの重要性を肌で感じることが出来ました。
[写真:使節団参加当時(大学2年生、19歳)]
——将来の目標に変化はありましたか?
使節団に参加した大学2年生の時点での目標は、「研究者になること」、としていました。この頃に関心をもっていたのは脳科学分野だったと記憶しています。
そして現時点での目標は、科学技術の発展です。
——自らの成長から社会の成長へと変わっていますね。
この目標を実現させる戦略として、3つの主軸を用意しています。
1つめは、科学に直接携わっている、または携わろうとしている人々の社会的基盤(特に給料・福利厚生・労働衛生)の整備です。2つめは、研究資金配分や研究設備の整備です。3つめは、社会と技術をつなぐ科学技術コミュニケーションの活性化と、それらを担う科学技術コミュニケーターの育成です。これらはヒト・モノ・カネの流れに集約できますが、私が最も重視するのはヒトです。特に、優秀な人材が恒常的に生み出される仕組みを作りたいと思っています。
科学技術を育む土壌、システムを開発して社会に実装しようとしているという点で、私は「研究者」としての側面を少なからず有します。
[写真:2017年度現在(24歳)]
——なるほど。使節団参加時点の「研究者になること」という目標は達成されているのですね。現在の研究について教えてください。
日本の若く優秀な研究者が恒常的に生み出され、且つ社会的に評価されるシステムを構築することが私の仕事です。この課題に対し、官学連携を推進する立場から取り組みます。
——と言うと、今現在の日本のシステムの課題は何ですか?
現在、日本で研究者を志す場合は、通常大学院での博士号取得が必要となります。博士号を取得する年齢は標準的には27歳です。この間、大学院生は基本的に無給で、福利厚生もなく、むしろ学費を納めなければならないため、経済的な自立が難しいのが現状です。
——日本はOECDの調査でも34か国中、教育へのお金の割り当てワースト1位という記事を読みました。。。
優秀な研究者の卵は日本学術振興会特別研究員に採用されることがありますが、これも月20万円の給料がボーナスもなく支給されるのみです。苛烈な研究者のホープ同士の競争の末獲得する、年収240万円を26歳前後で受け取って喜ぶ。これが日本の科学の将来を担う優秀な研究者のホープに対する経済的な待遇水準なのです。
——根本的な問題点が見えてきた気がします。
これでは、若く優秀な人材が学術界から流出するばかりでなく、恒常的に新たな人材供給が生み出されません。研究者に対する社会的冷遇の問題を解決する試みは、我が国における科学技術の発展のみならず、教育制度や労働制度、公共の福祉等が抱える諸問題の包括的解決に資するものと考えます。上記課題に対し、私は国家予算の配分決定機構の仕組みを理解するプロフェッショナルになった上で、他法令・他制度のノウハウも踏まえつつ、研究資金配分と研究制度に取り組むという戦略をとります。
——現状に不満を言わず変えていこうとする姿勢の大切さを感じることができました。樋渡さん、ありがとうございました。
文責:廣津志保