2022/06/22 12:44

【応援コメント】

JFP の取り組みを応援しています。映画業界は映画を愛する多くの人たちの有形無形の尽力と努力によって支えられてきました。映画を作るという産業的かつ創造的行為は確かに、事務仕事や工場労働とは質が異なり、オフィスワークと同じ労働形態や条件が可能であるとは限りません。

とはいえ、多くの製作現場ではスタッフの努力と尽力に対して正当な評価と報酬が与えられてきたとは言いがたいのが現状ではないでしょうか。搾取までとはいかなくても、過重労働やジェンダー間の不平等な関係性が続いてきたことは徐々に明らかになってきています。

こうした現場の労働問題の根底にあるのは、制度的問題であるというJFP の認識は正しいでしょう。したがって、産業界を動かすには統計的な根拠が絶対的に必要になります。近年のハリウッドの意識が変わってきたのも、南カリフォルニア大学アネンバーグ・インクルージョン・イニシアティブのようなプロジェクトなどが地道に進めてきた映画業界のジェンダーや人種などの問題を調査した統計的事実を突きつけた各種団体や俳優たちの働きかけがあります。日本の映画業界も少しずつ変わってきているとはいえ、徒弟制度的な慣習がまだ残っており、その現状把握さえあまりできていないのが実情でしょう。

これからの日本映画産業が残っていくためにも、現在も、そして未来にも映画を愛し、映画を作ろうとする人々を支えるためにも、JFP の調査活動と取り組みを支える運営基盤を維持出来るように、より多くの方に理解・賛同していただけることを願っています。

 斉藤綾子(映画研究者/明治学院大学教員)


【プロフィール:斉藤綾子】

上智大学文学部心理学科卒。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)映画テレビ学部大学院博士課程修了、PhD(映画学)。明治学院大学文学部芸術学科教授。専門は映画理論、特にフェミニズムや精神分析理論とジェンダー分析を中心とする。編著に『映画と身体/性』(森話社、2006)、 共著に『映画女優 若尾文子』(みすず書房、2003)、『映画の政治学』(青土社、2003)、『男たちの絆、アジア映画』(平凡社、2004)、『ヴィジュアル・クリティシズム』(玉川大学出版部、2008)、『戦う女たち』(作品社、2009)、『横断する映画と文学』(森話社、2011)、 Reclaiming the Archive(Wayne State University Press, 2010) 、 The Oxford Handbook of Japanese Cinema (Oxford University Press, 2014), Tanaka Kinuyo: Nation, Stardom and Female Subjectivity (Edinburgh UP, 2018), A Companion to Japanese Cinema(John Wiley and Sons Inc., 2022)など。