今月6月20日(月)19:00より、渋谷の「美竹清花さろん」にて、逢坂裕さんのピアノ三重奏曲《乙女と一角獣》(アンサンブル・フリー委嘱作品)がアンサンブル・フリーJAPANのコンサートマスター城所素雅さん、チェロ首席奏者の田辺純一さん、そしてピアノ奏者の井上響子さんによって初演されます。こちらはアンサンブル・フリーの委嘱作品、逢坂裕さんの「交響曲」です。映画音楽のようなドラマティックな音が沢山しますが、それでいて先の展開を読み切ることができません。 逢坂裕さんは、「調性音楽には、まだまだ可能性があると思います」と言い、活動されています。「調性音楽」とは、「ハ長調」や「イ短調」のように「調」の仕組みを使って書かれた音楽で、一般に生活していて耳にする音楽のほとんどは「調性音楽」です。20世紀の初頭、「調性音楽にできることは既に終わった」という観点から「無調」の音楽が書かれはじめました。現在も芸術音楽(現代音楽)の分野で「調性音楽」を書く人は、それほど多くありません。いま「調性音楽を書く」ということは、過去の偉大な作曲家たち、ワーグナーやブルックナー、マーラー、ドビュッシー、バルトークにストラヴィンスキー…彼ら以上のことを成し遂げねばなりません。そうでなければ、「やっぱり過去の作品のほうが良かった」という結論になり、「調性音楽」は過去の遺物になるからです。これが、この21世紀に商業音楽ではなく芸術音楽の分野で「調性」を使って作曲することの厳しさです。 逢坂裕さんは「調性音楽を書く作曲家」として、挑戦し続けているのです。クラシック音楽だけでなく、現在の商業音楽(映画音楽やテレビのCM音楽など)さえも研究し、常に自らの知識を蓄え、作曲の技術を磨いています。私はスコアリーディングで分からないことがあると、真っ先に彼に連絡し、教えを乞います。彼の教え方は素晴らしく、丁寧に解説して下さるし、私が分析に迷っている和声が過去に一体どの作品で使われているか、いくつも例を挙げて示してくれます。この逢坂さんの作品を是非聴いていただきたい。そして戦い続ける彼の応援者を増やしていきたいのです。6月20日の室内楽演奏会の奏者たちもまた、逢坂さんの作品の素晴らしさを最初のリハーサルから理解してくれました。高い技術を身につけた奏者になればなるほど、楽譜を書いた作曲家の技術を瞬時に理解できるものです。作品が奏者に愛されてこそ、真に良い演奏ができると私は思います。私たちの周囲には、「まだ有名にはなっていないだけで、一流の技術を身につけた音楽家」の方々が沢山いらっしゃいます。このような方々が存分に力を発揮できるよう応援してこそ、私たちの国の音楽文化は豊かになるのではないでしょうか。よろしければ6月20日のピアノトリオの演奏会"アンサンブル・フリーJAPAN 室内楽コンサート vol.1”に是非お越し下さい。優れた作曲家と演奏家を応援するクラウドファンディングも引き続き、よろしくお願いいたします。チケットはこちらから逢坂裕さんの「交響曲」