本日は、8月10日の第一回演奏会で演奏する曲の中から『ブラームス(旭井翔一編):弦楽六重奏曲第1番 作品18 (弦楽合奏版/初演)』についてご紹介します。この曲は元々、ヴァイオリンとヴィオラ、チェロがそれぞれ二人ずつの編成ですが、今回は弦楽合奏の編成で演奏するため、旭井翔一さんに編曲していただきました。私の演奏活動において、力を入れている分野の一つが、今回のような室内楽作品のオーケストラ編曲です。これまで、ピアノ版のラヴェルの《クープランの墓》の中から「フーガ」を助川舞さんに、ブラームスのピアノ曲《6つの小品 作品118》の5曲目「ロマンス」を浦部雪さんに、そして、このシューマンのピアノ五重奏を阿部俊祐さんに編曲していただきました。こちらの動画は阿部俊祐さん編曲『ピアノ五重奏曲 変ホ長調作品44[管弦楽版]』より第3楽章です。編曲と作曲は似て非なるもので、「編曲は元々の曲があるから簡単」という訳では決してありません。原曲は、世に名を残した作曲家が「この編成で」と書いた作品であり、余計なパートも、足りないパートもありません。では何故、わざわざ室内楽作品をオーケストラ用に編曲するのか。 それは私がクラシック音楽を愛しているからです。現代音楽には独特のエキサイティングさがあり、近現代の大管弦楽作品を振らせてもらえることは指揮者冥利に尽きます。しかし正直なところ、バッハからブラームスあたりのクラシック音楽が一番好きです。また、やはり学生時代から慣れ親しんだブラームスやチャイコフスキー、モーツァルトやベートーヴェンの音楽への愛着があるのです。シューマンにもブラームスにも、もっと交響曲を書いて欲しかった。でも、彼らに委嘱するわけにいきませんから、一流の技術を持った作曲家にお願いして、彼らの室内楽作品をシューマンの第5交響曲、ブラームスの第5交響曲に改造してもらうのです。私が編曲をお願いする作曲家の方々は、どなたも原曲の作曲者の技術やモードを研究し尽くし、可能な限り世界観を損なわないように作りかえて下さいます。このような能力は、「作曲する」という能力とはまた違った技術とセンスが要求されるのです。今回お願いした旭井さんも作曲者としてはもちろんのこと、編曲者としても数多くの作品を手がけています。 そんな旭井さんが「原曲の六重奏は名人が6人必要な楽曲でしたが、今回の弦オケ版も全員が名人であることは必須条件です」とおっしゃる難曲!この弦楽合奏版のブラームスの弦楽六重奏曲第1番を、是非聴きにいらして下さい!そして「オーケストラは聴くけど室内楽はあまり聴かない」というお客様に「ブラームスにこんな作品があったんだ!」と気づいていただき、原曲を聴いてみようと思っていただけたら、それほど嬉しいことはありません。第一回演奏会チケットは、リターン(良席確保)もしくはこちらからお買い求めいただけます。