国連子どもの権利委員会は昨年、「とくに気候変動に焦点を当てた子どもの権利と環境」と銘打った「一般的意見26号」を公表し、今現在環境破壊の被害を受けている子どもたちのみならず、将来に不安を感じる子どもたちにも寄り添った対策を各国に促しています。この国連の見解で特筆すべきことは、これまでになく世界中の子どもたちの意見を集め、さらには子どもによる委員会も組織されてできたということです。
気候危機に関して、子ども若者たちが声を上げ、世界を動かしています。一方、日本の子どもたちは漠然とした不安は感じているものの、自分たちで何かをしようという意識は諸外国に比べてひじょうに低いという調査結果があります。そういう社会をつくってきてしまった大人の責任もおおいに感じるところです。だからこそ、子ども目線から発想されたこの絵本を、多くの子どもたちに届けようというこの事業の成就を願わずにはおれません。
昨今は少子化や家族状況の変化などにより「墓終い」の相談を受けることが増え、何も遺したくないという傾向が強くなっています。それは仕方のないことですが、「この自然は7代先の子孫からの借り物」というネイティブアメリカン・ホピ族の教えを思い出しつつ、希望を持っていのちを引き継ぐこのプロジェクトのロマンをみなさんと分かち合いたいと思います。
大河内秀人(おおこうち・ひでひと)
浄土宗寿光院/見樹院住職。江戸川子どもおんぶず代表、認定NPO法人パレスチナ子どものキャンペーン(CCP)代表理事、公益財団法人庭野平和財団評議員、一般財団法人ありがとうインターナショナル理事、国際子ども権利センター(シーライツ)監事、原子力行政を問い直す宗教者の会世話人/事務局、ソーシャル・ジャスティス基金企画委員、江戸川区松江地区学童軟式野球連盟会長。
1957年東京生まれ。大学(法学部政治学科)を卒業して仏門に入った1980年にインドシナ難民募金を始めたことをきっかけに、後年、国際協力NGOの活動に参加。国内ボランティアとして母子保健、子ども支援、社会開発、平和構築等の活動に関わる。国連子どもの権利条約の批准、普及、検証の活動に参加し、地域で条約を生かすことを目的に地域の仲間と「江戸川子どもおんぶず」を設立。国際協力活動の経験から地域住民による活動の重要性を痛感し、寺院を基盤にしたコミュニティやNGOとの連携により、持続可能な社会のシステムづくりをめざしている。
共編著訳書として、『市民活動のはじめの一歩~一人ひとりが子どもの権利の支え手として』(エイデル研究所)、『絵本の中の素敵な大人たち』(江戸川子どもおんぶず)、『民主主義をつくるお金-ソーシャル・ジャスティス基金の挑戦』(ハンズオン!埼玉出版部)、『天然住宅から世界を変える30の方法』(合同出版)、『なぜ寺院は公益性を問われるのか』(白馬社)、『戦争をしなくてすむ世界をつくるための30の方法』(合同出版)、『世界は変えられる-TUPが伝えるイラク戦争の真実と非戦』(七つ森書館)、『No War! 立ちあがった世界市民の記録』(岩波書店)、『ECOエコ省エネゲーム』(合同出版)、『検証・子どもの権利条約』(日本評論社)、『小規模社会開発プロジェクト評価』(国際開発ジャーナル社)などがある。