2022/09/27 12:08

荒木珠里メルマガvol.43( 2022年9月27日)から引用on the Passing of Her Majesty Queen Elizabeth II

皆さん、こんにちは。荒木珠里です。僕はお父さんと2人で9月9日から26日の間、APPワールドツアーの第2-3戦に出場するためイギリス・ロンドンと韓国・釜山に遠征し昨夜遅くに帰宅しました。イギリスは17-18日、韓国は24-25日と2週連続の週末で開催されました。ロンドンは総合9位、韓国は総合3位でした。今回は結果以上に価値がある学びの連続でした。イギリスは波の少ない川、韓国もレース当日は風が一切なくなり平水でした。短距離も長距離も風や波がなくなると体格や体力がパフォーマンスに直接影響します。周りの大人選手に比べて体格、特に肺や心臓がまだ小さい僕にとって最も不利な条件になりましたが16歳の日本人でもバランス良い漕ぎさえできれば、平水でも十分に世界で勝負できるということを確信できました。その一方で大人と比較して僕はまだまだパワー不足だということも明確に感じました。またまだ厳格なルールが確立されていないSUP競技で反則ギリギリの厳しいプロの世界も初めて経験し精神的にとても追い込まれましたが全てが良い収穫です。

昨夜日本へのフライトの途中でお父さんと話し合いましたが、パワーが足りないからと言っていきなり筋トレや鏡の前で無理に心肺を追い込む練習は一切考えていません。これからも引き続き地味な基礎練習と、恐怖と向き合う心の強さや、海の変化を読む眼力をつける鍛錬を続けていくつもりです。お父さんからは「追い込めば強くなるのは当たり前だけどパワーをつけることに焦って、心や技術よりも体を先に大きくすることになっては絶対に駄目だ。」と言われています。今世界を見わたすと平水にだけに強い選手、逆に風波だけを得意とする選手と大きく偏りが分かれています。平水で世界に通用した日本人選手は過去にもいますが、一旦海が荒れると世界とは大きく差が開いている現状です。いつも口にしていることですが僕はどんなコンディションでも通用する、なるだけ弱点の無い選手を目指しています。「結果は努力の後に付いてくる。」これが僕とお父さんの合言葉です。だからこそ今は不利な条件下でも自分の良さを活かしながらどう戦えるか?ということがとても大事です。今回周りの選手たちと僕の動きや能力の差もよく理解できましたし、来年・再来年と17-18歳になり骨格が発達すれば今のようなパワー負けはしなくなります。ちょうどバランスが揃う二十歳にはオリンピックで世界の頂点を視野に入れたいと思います。

KAPP opening ceremonyAPPワールドツアーは単体で運営される世界大会とは大きく違います。それぞれの国や地域で水面の状況が変わりますし、季節によって様々な気象条件に対応する能力が問われます。そしてシーズンが長いので体調管理や遠征費調達もとても困難です。これが大会毎に選手の顔ぶれや順位が大きく変動する理由です。今回で前半3戦が終わり世界ランキング4位に付けています。後半戦はフランス、スペイン、そしてサウジアラビアの3連戦です。今回第3戦の韓国大会にはヨーロッパとアメリカ大陸から世界で活躍しているトップ選手約10人以上が参加せず比較的上位を狙えましたが後半は僕が目標としている世界のトップ選手たちが参加します。そして季節も冬へと変わり水面が激しく荒れることが予想されています。僕は昨年末から今年にかけてアメリカ、スペインと世界のトップ選手の中で揉まれながら闘ってきましたし、幼少の頃から沖縄の外洋で鍛えられて育ったので海面が激しくなればなるほど得意で、パワーの差を跳ね返せると思います。(勿論荒れても体格や骨格が不利なことには変わりがありませんが、)後半戦も最後まで諦めずポイントを重ね年間総合ランキングでどこまでワールドチャンピオンに近づけるか?難しいからこそ価値がある挑戦に向け今日からまた改めて気を引き締めなおします。

次は10月15-16に全日本選手権が熊本県で開催されます。今から3週間後、久しぶりの国内レースです。今回平水で負けてしまった同じ日本の田口選手(19才)を倒せるよう頑張ります。そして11月はプエルトリコで、世界サーフィン連盟主催の「ISA世界選手権」があります。ISAはIOC(国際オリンピック委員会)に繋がる将来の僕にとってとても大事なレースです。昨6月に静岡県の南伊豆で行われた日本代表選考会を経て日の丸を背負って出場します。ISAのコースは4月に出場したUSAノースカロライナ州の「カロライナカップ」と似ていて荒れた外海と内海が繋がるコンディションになるので実力を最大限に発揮したいです。僕は16歳なので周りからISAジュニア部門(17歳以下)でタイトルを目指したらどうか?と言われるのですが、ずっと幼い頃から年齢が上の選手の胸を借りて挑戦してきましたし今はジュニアタイトルよりも挑戦することに価値を感じています。APPと同じように全力で世界トップ選手へ挑みます。そして来夏はいよいよ世界最高峰の外洋レース“M2O(モロカイーオアフ海峡横断レース)“が4年ぶりに復活します。小2の頃からずっと沖縄の荒れた海で身につけてきた外洋の能力を発揮できれば史上最年少でM2O世界チャンピオンを狙えると思います。

最後に、今回も今まで沖縄の荒れた海で練習してきた中で磨き上げてきたバランス感覚や、体全体を使ってでの漕ぎを生かして体格の差を乗り越えて表彰台に上ることがができました。ロンドンも韓国もレース展開はとても苦しい場面が多かったですが、それでも最後まで強い気持ちで挑めたので、この結果が付いてきたのだと思います。これからはもっと世界の選手たちを追い越せるように練習を頑張ります。今回も飛行機代やホテル代など遠征費が沢山かかりました。後援会の皆さん一人一人のお気持ちのお陰で僕たちは活動ができています。一人一人に心から感謝しています。そしてAPPワールドツアー後半戦も最後まで絶対に諦めません。どうぞ応援よろしくお願いします!!keep paddling. 荒木珠里

London distance 8th placeAPP Korea 総合3位