2022/11/14 10:00

今年「Innovative Technologies 2022」に採択された、株式会社Shiftallの代表取締役CEOである岩佐琢磨様にお話を伺いました。

事務局:
採択された「MeganeX(メガーヌエックス)」について、アピールポイント教えてください。

岩佐氏:
「MeganeX」の一番のアピールポイントは、とにかく「画質が良くて軽い」というこの2点 。VR空間で長く過ごす人が昨今非常に増えていまして、私もまさに昨日も6時間入っていたのですが、長く入っていると、重さや装着性は一番の課題です。そして当然、中に見えている絵もきれいな方がいい。この2点から「絵のきれいさと装着性」が一番のアピールポイントです。

事務局:
一般的なヘッドセットとは、形がだいぶ異なりますが、装着感についての反応はいかがでしょうか。

岩佐氏:
実際にこの製品を持っていただくと、300gを切るような重さというのは、どなたが触っても「軽いね」と驚かれます。マーケットからも「ぜひ欲しい」という強い声を私もよく聞いているので、とても良い反応ではないかと思っています。

事務局:
この形は、御社のアイデアでしょうか。

岩佐氏:
元々「MeganeX」はパナソニックと共同開発をしていまして、パナソニックのチームがBtoBで使う時に、容易に取り外したり、取り付けたりしたい、そして小型化、軽量化したいという思いから、こちらの形状をセレクトされたと聞いています。

(「MeganeX」の最新の画像はこちらです)

事務局:
これから発売ということですね。

岩佐氏:
そうです。今、まさに開発中でして、今年の年末の発売に向けて、最終調整を行っています。

事務局:
「MeganeX」とともに開発していらっしゃるプロダクトが2つあるようで、そちらについてもお聞きしたいと思います。

岩佐氏:
どちらも世の中的には、ほぼ初に近いような、非常にユニークなものです。

「mutalk」はメタバースの空間の中で、とにかく大声を出して楽しむというニーズが非常に多いのですが、ご自宅にはご家族や同居人の方がいらっしゃったり、薄い壁の向こうには隣人の方がいらっしゃったりする中で、気兼ねなく大きな声を出して、楽しんでいただけるために作ったデバイスです。

「Pebble Feel」はまったく違うユースケースで、メタバースの空間から温かさや冷たさを感じ取ることができるようにしようと考えて作っているデバイスです。

メタバースの空間により深くダイブして行くためには、五感のすべてが現実と同じ、もしくはそれ以上のリターンが返って来るというのが、究極なのですけれども、もちろん、いきなりそこに行くことはできずに、まずは目の視覚をグラスでカバーする。そして聴覚はスピーカーで入れる。では次は何かというと、「HaritoraX」という製品では四肢の動き、腰や下半身の動きをメタバースの空間に持って行くことで、そこに自分の体があるように感じられることを目的にしています。

「Pebble Feel」は同じように、メタバースの空間の中で、本当に暑い所にいるように感じる。そのようなことを目標にしています。没入感を上げるために、五感を次々とメタバースとつないで行っています。

事務局:
メタバースの空間で、大声を出すニーズがあるのですね。

岩佐氏:
ありますね。メタバースの空間の中は、現実と同じなので。現実世界でも声を出すシーンは色々あって。例えばこのオンライン会議でも、それなりに声を張って話している。このオンライン会議を夜の1時、2時まで自室でやっていると、もし同居人やご家族がいたら、この音量でも不快に思われると思う。そして今日はまじめな会議なので笑ったりしないが、例えばこれが友達同士でだべっているとしたら、もっと大きな声で笑い合ったり、「何それ、おかしいー!」と手を叩いて笑ったりすると思う。メタバースも現実と同じように、デジタル空間の中で他者と話したり何かをしたりするので、どうしても声を発することが増えて、こうした静かな電話会議よりも、何倍もうるさくなるのが現状。

また、中でお酒を飲む人とか、中で音楽を楽しむ人とか。中でお化け屋敷のような所に行ってワー、キャーしたり。ジェットコースターに乗ってワー、キャーしたり。例えばトランプを二人でやるだけでも、「わー!ミスったー!」とか「ここじゃなかったー!」とか、大富豪やポーカーをして叫びながら、笑い転げながら、ゲームをする。それがゲームの楽しさでもあるけれども、皆さん大きな声で、長い時間話すというのがメタバースの特徴になっていますね。

事務局:
そこに「mutalk」が役立つ訳ですね。販売はこれからでしょうか。

岩佐氏:
実は「mutalk」はすでに予約を開始していまして、初回の予約の際にけっこうな数を用意したのですが、数日ですべて売り切れてしまいました。今は第二ロットの製造をして予約を受け付けています。第一ロットの出荷が今年中にはされる見込みです。「mutalk」と「HaritoraX」は展示会場のステージで紹介する予定です。

事務局:
将来的なビジョンを教えてください。今後、海外展開を目指している等はありますか?

岩佐氏:
実は私どもはすでにグローバルで販売していまして、直近の売上で言うと、短期的には海外のほうが売上が多い月もあるくらい。

そしてメタバースの世界に入って来る人は、年々増えてくるはずなので、「MeganeX」はハイエンドで高性能だが価格としては最安値ではない、という商品なので、すでにヘッドセットを持っていて、よりグレードの高いものに買い替えたいという需要が、今後出て来ると思う。ハイエンドなヘッドセットというマーケットの中でリーダー的なポジションを取って行きたいと、「MeganeX」の事業としては考えています。

事務局:
Innovative Technologiesに採択されて、いかがでしょうか。

岩佐氏:
展示会で露出する機会があるのは非常にポジティブに受け取っています。実際に「INTER BEE IGNITION × DCEXPO」の場で展示をすると、色々な方からご意見をいただけると思い、非常に楽しみにしています。

事務局:
岩佐様が、どのような思いで今の仕事に関わっていらっしゃるかをお聞きかせください。

岩佐氏:
元々はパナソニックで社員をしていて、大企業では新しいものを生み出すのがなかなか難しいと、入ってから気づきました。新しいものを生み出すことがしたい、世の中にまだないもの、これまでなかったようなものを作りたいと思い、パナソニックを退社して、株式会社Cerevoを立ち上げたのが2008年です。

10年ほどその会社で事業をして行く中で、また新しいことをやりたいなと思った時に、Cerevoという会社の中で、新しいものを何十と生み出すことができたが、その頃に、日本のトラディショナルな大企業であるパナソニックの経営陣と話をして、大企業の悩みを解決するというか、大企業を僕らの力を使ってもっと強くするというのは、非常におもしろいなと思い、Shiftallという形で、会社を一部パナソニックに売却して、今Shiftallという会社の代表をしています。

2018年から2020年の3年くらい、大企業がなかなか新しいものを生めないというところを僕らの特殊部隊、出島を使って生み出す。これがモチベーションだったので、これをやって来ました。

2020年からは、会社は変わっていないが、VRゴーグルをかぶって入って行くメタバースの空間に強く魅せられまして。これは非常に未来だなと。マーケットも大きくなるし、ここの世界がもっと楽しく、快適になって行くようなハードウェアやデバイスを作って、その世界を楽しむ人たちに売って行きたい、そういう思いがあります。彼らを幸せにしたいな、という思いがあります。

今回展示させていただく「MeganeX」もそうなのですが、VR、メタバース関係のデバイスに我々は今、集中している。一つの大きな柱といいますか、想いを持っています。

事務局:
パナソニックさんから、期待されているのは、機動力やスピード感でしょうか。

岩佐氏:
そうですね、機動力やスピード感、そして我々がメタバース分野の専門家であるという所。この3点かなと思います。

事務局:
それでは最後に、ご来場される方々にメッセージをお願いします。

岩佐氏:
今回アウトサイドイン方式のトラッキングに対応した「MeganeX」を、初めて展示します。そして従来、国内でメディアさんを含めて、何人かの関係者に見せていた「MeganeX」とは、レンズも異なるモデルになります。新しいレンズと、新しいトラッキング方式を、DCEXPOで初めて展示します。ぜひレンズのFOVの広さや、アウトサイドインのライトトラッキングシステムの精度などをご体験いただければと思っています。

事務局:
本日はありがとうございました!

皆様、ぜひ会場で新しい「MeganeX」をご体験ください!