2022/09/20 18:00

クラウドファンディングに取り組み始めてから、「結局セルロイドの良さってなんなの!?」というお声をちらほらといただくようになりました。私たちの社名「佐々木セルロイド工業所」にも入っているこの耳慣れない素材。今日は少し詳しく見てみましょう。

セルロイドの歴史

セルロイドは歴史上、初めて人工的に作られたプラスチック素材です。1856年に開発されたと言われており、初めて人工的に造られた樹脂であり、また初めての熱可塑性樹脂(温めると柔らかくなり、冷めると硬化する)樹脂でもあります。セルロイドはおもちゃ、ビリヤード玉、卓球玉、万年筆などに使われ、後に安価でより扱いやすいプラスチックが世の中に出現するまで様々な場所で利用されてきました。その内の一つがメガネです。

セルロイドメガネ造りの難しさ

セルロイドは加工が難しい素材であるということは再三述べてきました。素材の硬さもさることながら、造る工場としての大きなリスクはその発火性です。(発火性という言葉が独り歩きしてしまい危険な印象を与えがちですが、製品になったメガネとして日常的に使う中で発火することはありません。あくまで製造上のリスクです。)

メガネを製造していると、機械を使ってセルロイド板を加工するので、摩擦熱には慎重にならなければなりません。佐々木セルロイドでは安全性を確保するため工場内に冷却装置を備え、また消防署の定期点検も受けておりますので、その点は万全の体制で臨んでおります。なかなかどの工場でもそのような万全な体制を敷くことができない点が、セルロイドメガネの造り難さの一因とも言えます。

セルロイドの特徴

ネット等で「セルロイド」と検索すると、「劣化しやすい」などというデメリットが出てきます。セルロイドの「素材」自体は耐候性のある素材ではありませんので、さまざまな素材と比較した場合には、太陽光・紫外線や温度の変化によって劣化しやすいと言えるため、このような表現が出てくるのかと思われます。しかし、「プラスチックメガネ」に使われている素材として考えてみると、むしろ、「劣化しにくい」(注:もし劣化しても元に戻せる)といえる素材なのです。市場に流通しているプラスチックメガネの約95%が「アセテート」という素材でできていますので、セルロイドとアセテートを比較してみると・・・

1. 頑丈さ:アセテートと比べて素材が固いので、傷がつきにくく折れにくい

2. 美しさ:磨けば磨くほどツヤが出るので、美しさが長持ちしやすい。

3. 復元性:アセテートと比べ白化しにくく、整髪料にも強い。またもし白化しても磨けば元に戻る。

という特徴があります。これらの特徴をより活かすために、「磨き」という工程が非常に重要になってきます。

佐々木セルロイドが誇る「磨き」の技術

今回ご用意している「SASAKI」では、なるべく長く輝きが続くように丹念に時間をかけて磨き上げさせていただいております。ガランの時間を長くし、バフの角度を細かく変えながら丹念に丹念に。頑丈である(=メリット)がゆえに、加工が難しい(=デメリット)セルロイドという素材を一本のメガネに仕上げるためには、実に約200もの工程を踏む必要があります。制作にかかる時間も、アセテートメガネの約3倍。

佐々木セルロイドでは、全行程を社内でおこなっていますが、特に「磨き」の工程には、少なくとも5年〜10年の修練が必要と言われるほど難しい技術のため、ほとんどのメーカーは外注に頼らざるを得ない状況です。今では、メガネ造りを0から100まで社内でおこなっている会社は、弊社を含め全国で2〜3社しかないと言われています。

セルロイドの特徴で挙げたように、そもそもアセテートと比べると白化しにくい素材ですが、もし白化してしまったとしても自社でまた「磨き」をかけて元に戻すことができるので、安心です。素材としては扱いにくい、劣化しやすいと言われてしまいますが、メンテナンスを加えることで「長く使える」。例えるなら、アセテート=合皮の製品、セルロイド=本革の製品のようなイメージを持っていただくと理解しやすいかと思います。

(無期限・年一回メンテナンス付きリターンもご用意しておりますので、気になる方はぜひ!)

▼ガラン=竹チップと研磨剤が入った樽に入れて回すことで表面を研磨


どのような素材とも同じように、セルロイドも長所もあれば短所もあります。しかしながら、「SASAKI」においてはその長所である艶、深い光沢、そして気持ちよさを感じるくらいの肌触りを最大限感じていただくために、丁寧にお造りさせていただきます。まさに我々にしか表現できないセルロイドメガネです。