はじめに・ご挨拶
皆さん、こんにちは!
私たちはmonpersというグループです。
一般社団法人九州オープンユニバーシティ(QOU)(https://qou.jp/)に在籍する研究員や九州大学出身の学生、教員メンバーなどを中心に、現在衰退の危機にある絣(かすり)という伝統工芸のテキスタイル業界を盛り上げるため、2016年から自ら日常生活で絣の着用を実践しながら、フリーペーパー「kasur」やインスタグラムを通じた絣の魅力や情報発信や、絣の紋様(柄)に関する研究活動をしています。
久留米絣の経(たて)絣(筆者撮影・下川織物所蔵)
プロジェクトをやろうと思った理由
皆さんは、絣について、ご存知でしょうか?
絣の着物やモンペなどを見たことがあるかも知れません。
実は、絣は世界中に存在している伝統工芸のテキスタイルなのですが、現在世界的に衰退の危機に瀕しているのです。
絣は、「経(たて)糸か緯(よこ)糸、あるいは双方の糸を染め分けて絣糸(まだらに染めた糸)をつくり、この絣糸で柄をあらわしながら織り上げた」伝統工芸の織物です(中江克己「日本の伝統染織事典」. 東京堂出版, 2013, 43-46p.)。
少し、絣の歴史や現状について説明してみましょう。
絣は8世紀頃にインドで発祥したあと、仏教の伝来などと共に、東南アジアに広まりました。インドネシアは今でも絣のメッカとして知られています。大航海時代の16世紀には、フィリピンから太平洋を超えて、交易品として絣が中米に伝わりました。今でも、メキシコでは、レボソと呼ばれる絣のショールが生産・着用されています。ヨーロッパにも、イスラムの商人や東インド会社を通じて絣が伝わり、フランスでは、18世紀にマリー=アントワネットが絹の絣のドレスを着ていた記録も残っています。
メキシコのレボソ(Rebozo Tenancingoにて筆者撮影)
野村織物が復刻したマリ=アントワネットの絣(筆者撮影)
日本には、15世紀頃にジャワから琉球に絣がもたらされあと、18世紀末に久留米で井上伝という女性が絣を考案しました。その後、江戸時代後期から木綿の絣が流行し、福岡の久留米、広島の備後、愛媛の伊予を三大産地として栄えていました。
岡村吉右衛門の構成による絣の伝播主要ルート想定図(出典:江口久美. 文化伝播の経糸と緯糸─ 絣(かすり)織り文化の世界史における伝播経路. 稲賀繁美編「映しと移ろい 文化伝播の器と蝕変の実相」. 花鳥社, 2019, 120p.)
このような長い歴史と世界的な規模で広がった絣も、洋装化などの社会の変化により、現在は苦しい状況に追い込まれています。日本では、戦後、絣の生産量は激減しています。
また、世界の地域でも、フランスでは絣の生産はほとんど終了し、絣のメッカであるインドネシアを中心とした東南アジアでも、絣は衰退傾向にあることが研究でわかってきています。
消費者・研究者側の私たちは、こうした絣業界を少しでも手助けできればと思い、これまで活動してきました。
これまでの活動
monpersの活動は、2016年に九州大学で始まりました。
私たちは研究者・消費者側の立場から、絣業界を盛り上げようと活動してきました。
大きな活動の一つは、「絣のある日常風景や情報の発信」です。
日常生活で絣のモンペやレボソの着用を実践しながら、フリーペーパー「kasur」やインスタグラム(@monpers.official)などを通じて、絣の魅力を発信してきました。
また、活動の様子を、久留米地域地場産業センターで行われる絣のフェスティバル、藍・愛・で逢いフェスティバル「発見!!久留米かすり市」地域連携ブースにおいて、発表するなどしてきました。
Youtube(kasurTV@kasurtv2471)での絣の魅力に関する情報発信の様子
その背景には、絣を素敵だと思い、着用してくれる人が増えてくれれば良いな、という思いがあります。
kasurは2017年から毎年発行していて、現在6号まで発行されています。
kasurには絣を着用したスナップ写真のほか、染織に使用する植物の紹介など、絣にまつわる情報が掲載されています。
インスタグラムでは、絣を着用した日常生活の様子を発信してきました。
また、久留米大学で毎年行われている絣フェスタでも、絣の製造過程を表した、絣体操などのパフォーマンスを行ってきました。
絣フェスタでのパフォーマンスの様子
もう一つの活動は、「絣のデジタルアーカイブの構築」です。
先に紹介しましたように、絣は世界中に広まって、地域性が色濃く映し出された各地の文化として根付いています。
私たちはこれまで、久留米、フランス・パリ、メキシコ・テナンシンゴ・デ・デガジャドなどにおいて織元やギャラリーなどで調査を行い、絣の紋様のデータ(画像や聞き取り情報)を集めて分析してきましたが、その紋様の多様さには、とても驚いています。
このような貴重な文化遺産である絣ですが、被服の大量生産・大量消費の波に押されて、衰退の危機に瀕しています。
そこで、世界の絣の紋様のデータをデジタルアーカイブとして公開することで、絣文化の再起を目指したいと考えています。
これまで、私たちは世界の絣の紋様の調査と分析を進め、研究成果を日本だけではなく、フランスなどの海外でも発表してきました。
デジタルアーカイブのイメージ(出典:江口久美.須藤竜之介.布施健吾. 鹿野雄一. 久保裕貴. 絣のデジタルアーカイブ構築に向けた取り組みに関する報告:現状に至る取り組みと構想. デジタルアーカイブ学会誌 s2. 2022, 115-118p)
しかし、現在活動を進めていくに当たって困っていることがあります。
一つは、絣の魅力の発信についてで、特にkasur7号の出版についてです。
kasurはこれまで毎年6号まで出版してきました。
次号は7号になり、この1年間7号の出版に向けて取材や原稿執筆をしてきましたが、出版する資金がなく、このままではpdfの作成のみとなってしまいます。
これまでのkasurは、久留米絣の生産地である福岡県筑後地方を中心に、伝統工芸を扱う店舗や八女市役所などで印刷本での配布を行なってきています。
実際に気軽に手に取って印刷したものを読んでいただくことにより、これまで絣を好きでいる方々だけでなく、絣に興味がなかった方々にも、絣の魅力を伝えられているように感じています。
kasur7号をぜひ、印刷して完成させ、より多くの人に配布したいと考えています。
具体的には、150部程度の配布を考えています。
遠方の方にも、郵送で配布したいと考えています。
また、2023年3月18日から19日に久留米地域地場産業センターで開催される第26回 藍・愛・で逢いフェスティバル「久留米絣のネットワーク展」の地域連携ブースなどでも活動の紹介や絣の魅力発信を行いたいと考えています。
kasur7号掲載候補スナップ写真の一つ@長崎ランタンフェスティバル
さらに、絣の魅力をもっと発信するために、久留米絣の織元さんや絣とコラボしたい海外アーティストの方による講演会も企画し、絣の新たな魅力を創出し、海外にも発信したいと考えています。
具体的には、久留米絣の織元さんと、絣に興味を持っているヨーロッパの海外アーティストの方などをzoomなどオンラインで繋ぎ、地元福岡とオンライン空間でのハイブリッド型の講演会を企画したいと考えています。
日本のみならず、海外の方や、絣以外のアート界の方と絣がコラボすることで、絣のポテンシャルを発見できると考えています。
二つ目に困っていることは、「絣のデジタルアーカイブの構築」についてです。
この活動は、世界のデジタルアーカイブを構築してから、絣の紋様の進化系統樹を描き出すことで、絣の価値を再評価しようという試みです。この研究活動は、これまで文化人類学的に研究されてきた分野に、都市工学や生物学、心理学など他の分野からの手法を取り入れるものであり、新しい研究であるために、既存の分野から研究費を取ることが難しい状況となっています。
しかしながら、こうしている間にも、貴重な絣はどんどん失われていっています。久留米絣の織元も年々減少し、現状では約20軒を残すのみとなっています。
これまでにも絣のデータベースとして、Online Museum of Indonesian Ikat Textilesなどがありますが、紋様が部分的に記録されているのみで、記録した場所などは不明確なのです。
そこで、一刻も早くデジタルアーカイブによる絣文化の記録・保全を行う必要があるのです。
私たちはこれまで、全世界(インド・ペルシャ・ウズベキスタン・フランス・インドネシア・メキシコ・グアテマラ・日本(久留米・備後・伊予・琉球))の絣の紋様に関するデジタルデータを約70件収集してきました。
また、絣の紋様の好みに関する心理学の実験もメキシコなど海外で行ってきました。
メキシコでの心理学の実験の様子
まず、これらの総合情報について筑後地方(久留米絣生産地域)を中心に追加調査を行い、1年で300件のデータのオンライン・アーカイブ上への公開を目指したいと考えています。
アーカイブに掲載する具体的な情報としては、既存の生物多様性総合データベースを参考にして、1紋様ごとに、環境(織元名・住所・日時)、メディアファイル(画像)、紋様分類(年代・経、緯または経緯の別・色名・紋様名称(シンボル名))、聞き取り情報(染料・由来・糸・技法)、文献(著者、年、タイトル、ソース、DOI)があります。
すでに、久留米絣の一部の織元さんからは、このプロジェクトへのご協力も承諾していただいております。
また、将来的には、海外の研究者・織元さんとも協力体制を築き、全世界中から絣のデータが集まる総合情報データベースにしていきたいと考えています。
このアーカイブにより、これまで各織元さんの生地見本帖に所蔵されていたデータが大規模にオンライン上に公開され、各国の研究者よる絣の伝播に関する研究が進展することが想定されます。
また、研究者だけではなく、地域の教育現場(小・中学校など)での活用や、都心のアパレルメーカーさんと地方の織元さんをオンラインで繋ぐことで、現代アパレル産業での絣の活用を促進することができると考えています。
このプロジェクトで実現したいこと
私たちの実現したいことは次の3つです。
- ①絣の魅力をより多くの人に知ってもらえるように、第26回 藍・愛・で逢いフェスティバル「久留米絣のネットワーク展」の地域連携ブースでの展示、フリーペーパーkasur7号の出版・配布による情報発信を行います。
- ②絣の魅力をもっと発信するために、織元さんや絣とコラボしたい海外アーティストの方による講演会を企画します。
- ③これまでに集めた世界の絣のデータを中心に絣のデジタルアーカイブを立ち上げ、オンライン上に公開し、絣文化の記録・保全と絣業界の振興を行います。
資金の使い道
皆様からいただいた大切な資金は、下記のmonpersの情報発信・研究活動に使用させていただきます。
●¥500,000の使い道●
・kasur7号の印刷・郵送費 ¥120,000
・地域連携ブースなどへの出展費 ¥80,000
・織元さんや絣とコラボしたい海外アーティストの方による講演会費用 ¥50,000
・絣のデジタルアーカイブ構築費 ¥165,000
・CAMPFIRE手数料 ¥85,000
リターンについて
¥2,000
【応援コース】
kasur7号+織元さんや絣とコラボしたい海外アーティストの方による講演会ご招待(対面/オンライン)+お礼のメッセージ+活動報告をお届けします。
¥4,000
【しおりコース】
絣のしおり※+kasur7号+織元さんや絣とコラボしたい海外アーティストの方による講演会ご招待(対面/オンライン)+お礼のメッセージ+活動報告をお届けします。※画像はイメージです。
¥6,000
【ハンカチコース】
絣のハンカチ※+kasur7号+織元さんや絣とコラボしたい海外アーティストの方による講演会ご招待(対面/オンライン)+お礼のメッセージ+活動報告をお届けします。※画像はイメージです。
¥10,000
【ハンカチ+オンライン講演会コース】
絣のハンカチ+monpersによる絣の研究に関するオンライン講演会ご招待(1時間/アーカイブ配信も可能)※+kasur7号+織元さんや絣とコラボしたい海外アーティストの方による講演会ご招待(対面/オンライン)+お礼のメッセージ+活動報告をお届けします。※画像はイメージです。
¥15,000
【枕カバー+オンライン講演会コース】
絣の枕カバー※+monpersによる絣の研究に関するオンライン講演会ご招待(1時間/アーカイブ配信も可能)+kasur7号+織元さんや絣とコラボしたい海外アーティストの方による講演会ご招待(対面/オンライン)+お礼のメッセージ+活動報告をお届けします。※画像はイメージです。
¥30,000
【ショートエプロン+オンライン講演会コース】
絣のショートエプロン※+monpersによる絣の研究に関するオンライン講演会ご招待(1時間/アーカイブ配信も可能)+kasur7号+織元さんや絣とコラボしたい海外アーティストの方による講演会ご招待(対面/オンライン)+お礼のメッセージ+活動報告をお届けします。※画像はイメージです。
¥50,000
【レボソ+オンライン講演会コース】
メキシコのレボソ(絣のショール)※+monpersによる絣の研究に関するオンライン講演会ご招待(1時間/アーカイブ配信も可能)+kasur7号+織元さんや絣とコラボしたい海外アーティストの方による講演会ご招待(対面/オンライン)+お礼のメッセージ+活動報告をお届けします。※画像はイメージです。
¥100,000
【織元ご案内+レボソ+オンライン講演会コース】
久留米絣生産織元さん半日ご案内(遠方の場合はオンラインで中継します)※+メキシコのレボソ(絣のショール)+monpersによる絣の研究に関するオンライン講演会ご招待(1時間/アーカイブ配信も可能)+kasur7号+織元さんや絣とコラボしたい海外アーティストの方による講演会ご招待(対面/オンライン)+お礼のメッセージ+活動報告をお届けします。※久留米絣生産地までの交通費はご自身でご負担ください。画像はイメージです。
実施スケジュール
2023年3月 第26回 藍・愛・で逢いフェスティバル「久留米絣のネットワーク展」の地域連携ブースへの出展
2023年4月〜6月頃 絣のデジタルアーカイブの追加調査
2023年7月〜9月頃 追加調査したデータのデジタルアーカイブへのアップロード
2023年10月〜2024年1月頃 kasur7号の編集・織元さんや絣とコラボしたい海外アーティストの方による講演会の企画
2024年2月頃 kasur7号の出版・織元さんや絣とコラボしたい海外アーティストの方による講演会
その他リターンの発送・履行
最後に
私たちは、2016年から消費者・研究者側の立場から、絣業界を盛り上げようと活動してきました。
その背景には、被服の大量生産大量消費の波に押されて、衰退する絣業界をもう一度再建する支援をしたい、という熱い思いがあります。
絣はSDGsを体現している究極の製品だと、身をもって感じています。
日常生活で実際着用する中で、柄が個性的で美しいだけではなく、100年もの間、愛用可能な吸水・耐久性に優れた持久性を持っていることを実感しています。
私たちメンバーは、日常生活の様々なシーンで絣のモンペやハチマキなどを着用しています。
普段の研究室での生活だけではなく、海外出張、自転車や農作業、時にはランニング、国境マラソンIN対馬、国境サイクリングIN対馬などにも着用していますが、本当にその耐久性には驚かされます。
愛着を長く持って使い続けることができる伝統工芸品なのです。
こうした絣が、布の幅が狭いことなどから、現代のアパレル産業界においてはまだまだ需要が少なく、衰退していくことが本当に残念です。
しかも、この絣は、世界の交易の歴史とも深く関わってきた文化の体現でもあるのです。
このように素晴らしい絣をなんとかしたい、という私たちの熱い思いがありますので、ぜひ応援いただければと考えています。
必ず、皆様のご期待に応えて、絣業界を盛り上げる活動をさせていただくことを、お約束します!
<募集方式について>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。
最新の活動報告
もっと見るFashionTechNews by ZOZO NEXTへの寄稿について
2023/06/26 14:36支援者の皆様には、いつもご支援いただき、感謝申し上げます。この度、【リレーコラム】「絣の経糸と緯糸がつなぐ世界と歴史〜インドからマリー=アントワネットを経て現代まで」をFashionTechNews by ZOZO NEXTに寄稿させていただきました。下記からご覧いただけます。https://fashiontechnews.zozo.com/series/series_fashion_technology/kumi_eguchi?fbclid=IwAR3hmcGrvtICL4O47PTHhc80XDP6r0waRjM28f6ta0_rUudwKxKNJLnimaUよろしければご一読ください。引き続き、ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。 もっと見る
野村織物さんにて
2023/04/25 15:23クラファン支援者の皆様には、ご支援をいただき、大変感謝しております。monpersは4/23に野村織物さんの125周年祭を視察させていただきました。野村織物https://www.nomura-orimono.com/最終日のとても盛り上がっており、たくさんのモンペや洋服のほか、着物や反物などもありました。筆者は野村織物さんと下川織物さんの生地を使った、久留米絣研究舎さんのワンピースと着物を購入しました!素敵な服がたくさんあって、選ぶのが本当に大変でした。そのほかに、井上らんたい漆器さん、坂田織物さんのcafe、下川織物さんを訪問させていただきました。井上らんたい漆器https://inouerantai.jp/坂田織物http://sakataorimono.com/下川織物https://oriyasan.com/井上らんたい漆器さんは、久留米の伝統工芸で、素敵なお盆などがたくさんありました。坂田織物さんのカフェは、ギャラリーも併設させており、世界の絣のコースターなどと共に、美味しいランチやコーヒーをいただくことができます。下川織物さんでは、下川さんと、4月からインターンに来ているフランス人のマティス君とお話をさせていただきました。余談ですが、偶然にマティス君は筆者の研究対象地であるフランスのAngoulemeのご出身でした。引き続き、どうぞよろしくお願いします。 もっと見る
野村織物125周年祭
2023/04/22 22:19クラファン支援者の皆様にはいつも応援いただき、感謝しております。monpersは明日、現在開催中の久留米絣の野村織物125周年祭を視察させていただく予定です。また、monpersのメンバーが、現地でスタッフもさせていただいている予定です。周年祭は明日まで開催予定ですので、ぜひお近くの方は、チェックされてみてください。詳細情報は、こちらをご覧ください。https://www.nomura-orimono.com/information.html#20230413up引き続き、よろしくお願い申し上げます。 もっと見る
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