あれは今から20年も前の事である。
2003年の9月14日快晴の札幌大通公園で第7回レインボーマーチ札幌が、そして「プライド集会」が開催され、招きを受け歓迎の挨拶をさせて頂いた。
セクシュアルマイノリティの方々が、日々差別を受け悶々とした日々を送らねばならない社会に対して、せめて一日だけでも仲間たちと本当の自分を・自分らしさを表現しようと全国から700名もの参加者が札幌に集った。
弁護士のキャリア25年の間「自由や人権」問題に意識的・積極的に携わってきたつもりであった私は、招きを受ける迄「レインボーマーチ札幌」が6年も前から札幌で毎年開催され「不当な差別と闘っている」ことを知らなかったことを恥じ、声かけを得たことに感謝し参加する旨即答した。
当日のMCによる私の紹介は「日本の自治体首長として初めての参加者である」というものだった。
悲鳴にも似た歓声と拍手により歓迎を受け、気を良くした私は「性的少数者に向けられた不条理な世間からの目に苦しみ、毎日悶々とされている方々が、今日一日晴天の札幌に集い、自らの本当の姿を発現し仲間とともに共勧する皆さんがたを、札幌市民を代表して心から歓迎します。」
https://youtu.be/_goBbqLKiGA(2/3)
https://youtu.be/WqC298eKhC4(3/3)
「セクシュアルマイノリティばかりではなく、少数者である故に差別される人々がいる、障害や人種・外貌・所得や階層格差、様々ないわれなき差別と闘うことができるのは少数者である。人権は(被抑圧者である)少数者のための形成された人類の叡智である。参加された皆さんの勇気と闘う姿に敬意を表します。」「親御さんたちに、性的少数者たる息子たち娘たちを恥じないでほしい。人権実現のために闘う彼らを誇りにしてほしい」など精一杯の想いを挨拶とした。
それから毎年参加しながら同旨のメッセージを送り続けたが、特に自治体として何ができるかについてno ideaであったものの、2年後には道知事が応援メッセージを寄せることとなり、旭川市長・釧路市長・函館市長など次々をプライド集会にメッセージを寄せることとなった。
北海道には35の市があるが2020年には全35市長全員から応援メッセージが届くこととなった。その意味では「理解増進」の役には立てたかもしれない。
想わぬことも起こった。
2006年第10回「プライド集会」で尾辻かな子(大阪府議)さんがステージに立ち挨拶をされた。彼女は2003年の集会に参加し私の挨拶を聞き、カミングアウトを決意したとのことだった。
参加者も1200名と順調に増え、「親の会」も設立され元気なお母さんがステージで「作ってきたおにぎりは完売した。来年はもっとたくさん作り、多くの方々の元気の支えになりたい」との趣旨の挨拶があった。
2013年レインボーマーチ札幌は一旦終了することとなったが、札幌のLGBT解放の気風は一定程度根づき、秋元市長誕生まもなく「パートナーシップ制度」導入された。
このような経歴を持った私が、「結婚の自由を全ての人に」訴訟の存在を知り、弁護団に参加させて頂くこととなったのは必然である。人権思想に造詣の深い尊敬する弁護士たちの議論を聴き、多くを学びながらの日々が続いている。しかしどんな理屈も、それを支え説得力のある論理になるためには、当事者の社会的実態を訴える力、心ある人々の声の存在がなければならない。
さっぽろレインボープライドが今年も元気に開催されると聞き、嬉しく心躍るものを感じている。久しぶりにネットで「上田市長 レインボーマーチ」を検索し数々のYOUTUBEを見て、自らの立ち位置を再確認しながら、さっぽろレインボープライドの盛会と成功を心から祈念している。
「結婚の自由を全ての人に」
札幌弁護団(渉外係)弁護士 上田文雄