島田先生からの言葉
作品紹介
ミステリー界のレジェンド、島田荘司による1983年の連作短編集『改訂完全版 網走発遙かなり』(講談社文庫・今冬刊行予定)は、島田荘司ファンだけでなく、広くミステリーファンに「知られざる名作」として語り継がれてきました。 中でも、江戸川乱歩の知られざる秘密に迫る「乱歩の幻影」は、島田荘司のリアルな体験から発想された、幻の名作です。島田荘司自身の手で書かれた脚本は、「20歳のソウル」監督、秋山純の手に渡り、2年の準備期間を経て、映画化されることとなりました。
新進気鋭の女優、結城モエが初主演。乱歩の魅力に取り憑かれた主人公弓子を、感性豊かに演じます。江戸川乱歩役を、高橋克典。一枚の写真からミステリーを呼び起こす謎の女性、芙蓉を、常盤貴子が演じます。共演に、山口大地、嘉島陸、高橋努、加藤雅也。弓子の恋人里見役は、小貫莉奈が「イケメン」を演じます。また、メタシアターの手法を取り入れた劇中劇演出を、二十歳のソウル原作脚本の中井由梨子が担当。島田荘司は、原作脚本だけでなく、劇中で使用されるオリジナルオペラの作詞作曲も手がけます。
ストーリー
「彼女を愛してるさ、だから殺してみたいんだよ」
弓子は、江戸川乱歩の愛読者。生前の乱歩が吐いた「僕は殺人快楽症になりたい」という言葉を巡り、彼が実際に人を殺しているという話がネット上で蔓延しているのを目にする。しかも殺したのは女。美しい女。乱歩はその女を、今も表参道に片鱗を残す、同潤会アパートの壁に埋め込んだという……。
祖父の写真館のアルバムから出てきた古い写真。写る美しい女、文子。彼と江戸川乱歩との接点が紐解かれ始める。弓子はまるで熱に浮かされたようにこの話にのめり込み、乱歩の親族、ひいては明智小五郎のモデルとなった人物、そしてそのすぐ傍にいた謎の美女までたどり着く。やがて弓子の前に、乱歩の幻影が現れ、彼女に囁くようになる。
乱歩「浅草の劇場の娘、芙蓉。分かるかね?彼女、ハルピンの出身で天涯孤独なんだ。親兄弟はいない。踊り子仲間からは孤立していて、何度も失踪事件を起こしている。今、突然いなくなっても、みんな誰も不思議がらない。(薄く笑い)彼女を愛してるさ、だから殺してみたいんだよ」
ついに弓子は夢遊病者のように、ノミを手に入れ、たった一人で真夜中の同潤会アパートへと向かう。壁に刃を突き立てる。ボロボロと崩れる壁の破片の中からわずかに見えた着物の―…!
弓子「まさか、…本当に…」
キャスト
結城モエ 弓子
〈profile〉1994年5月18日生まれ、福岡県出身。慶應大学法学部を卒業後、2017年にデビュー。主な出演作品に、「探偵が早すぎる」(18/ytv・NTV)、「ドクター X 外科医・大門未知子」(21/EX)、「おいハンサム!!」(22/THK・CX)、「連続ドラマW だから殺せなかった」(22/WOWOW)、「インビジブル」(22/TBS)、「僕の大好きな妻!」(22/THK・CX)、「Get Ready!」(23/TBS)、「夫婦が壊れるとき」(23/NTV)、『嘘喰い』(22/中田秀夫監督)などがある。
〈comment〉「最初に本を読んだときと、2回目に読んだときとで、自分の中で全く異なる感覚を覚えました。その後、監督とお話しをして、監督が作りたいと望むモノの面白さに共感し、何故自分の中で読むに連れて新しい見え方が生まれるのか、納得がいきました。そして、島田先生が描く世界観を、このチームで再現したいと強く思いました。作品中にも出てくる、江戸川乱歩の蟲。とても狂気的なお話ではありますが、私は人間という生き物の持つ、紙一重の性質のリアルさに引き込まれ、主人公、弓子が抱く疑念にも、大変共感出来ました。この役を頂けて、本当に嬉しかったです。文学を愛する皆さまに楽しんで頂ければ幸いですし、この作品が文学への新たな一歩となるきっかけになれば、更に嬉しく思います。」
高橋克典 江戸川乱歩
〈profile〉神奈川県横浜市生まれ 。1993年『抱きしめたい』で歌手デビュー 。俳優として『サラリーマン金太郎』『特命係長 只野仁』などのヒット作を得る。最近では2020年大河ドラマ『麒麟がくる』、22年NHK『正直 不動産』、22年秋NHK朝ドラ『舞いあがれ』にはヒロインの父 ”岩倉浩太"役として出演。23年1月クール 関西テレビ『罠の戦争』、7月クール テレビ朝日系『警部補ダイマジン』に出演中。出演映画22年5月『20歳のソウル』、22年8月『バイオレンスアクション』が公開。BSテレビ東京『ワタシが日本に住む理由』レギュラー出演、bayfm78「GROOVIN' ON THE ROAD」ではメインパーソナリティとしてレギュラー出演中。
〈comment〉「一人の文学好きの少女が江戸川乱歩の倒錯の世界に踏み込んでいく物語。乱歩の世界により深く嵌りこんでいきたい気持ちに纏わりつかれる。とにかく考える暇を与えてくれない秋山監督の撮影現場に振り回されるまま、まるで煙に巻かれたままのように撮了。秋山監督の世界は一体どう描かれているのか。」
常盤貴子 芙蓉
〈profile〉1972年4月30日生まれ、神奈川県出身。俳優。93年女優デビュー。以後数多くの作品に出演。代表作にドラマ『愛していると言ってくれ』(95/TBS) 、『Beautiful Life~ふたりでいた日々』(00/TBS)、『グッドワイフ』(19/TBS)など。多くのドラマで主演を務め、エランドール賞 新人賞 第1回大賞を受賞(96)。映画にも活躍の場を広げ、『赤い月』(04/降旗康男監督)で第28回日本アカデミー賞 主演女優賞 優秀賞を受賞(05)。その他の映画作品に、『もういちど逢いたくて ~星月童話~』(99/ダニエル・リー )、『20世紀少年』3部作(08.09/堤幸彦監督)、『CUT』(11/アミール・ナデリ監督)、『だれかの木琴』(16/東陽一監督)、大林宣彦監督とは『野のなななのか』(14)、『花筐』(17)、『海辺の映画館 キネマの玉手箱』(20)と、3作品でタッグを組んだ。
〈comment〉「いつの頃からだろう。薄々は感じていたけれども、そこに近づきすぎてはいけないよ、と自分自身に言い聞かせているところがあったように思う。でも、やっぱり・・・。 「江戸川乱歩先生の世界観、私、大好物です」 そんな私の潜在的な嗜好を感じ取り、芙蓉の役で呼んでいただけたのでしょうか。 何もかもが豊かに用意されている現場ではなく、ない中でどう撮るか工夫する。インディーズ魂 溢れる撮影環境も、昔から憧れていた「アングラ」を垣間見れたようで、心躍る日々でした。 さぁさぁモノクロームを彷徨う皆々様。 色彩豊かな「乱歩の世界」へ一歩踏み出そうではありませんか。」
山口大地 福島萍人
〈profile〉1988 年4 月21 日生まれ鹿児島県出身。2011年にドラマ『俺の空~刑事編』(11/テレビ朝日)主役オーディションで準グランプリを期に俳優デビュー。以降ドラマや舞台、広告など数々の作品にて活躍。近年の主な出演作は映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編-運命-&-決戦-」(23/英勉監督)、「ラブソング」(23/児玉宜久)、「叢雲 ~ゴースト エージェンシー~」(23/原田光規監督)、「たまつきの夢」(23/田口敬太監督)、「グッドバイ、バッドマガジンズ」(22/横山翔一監督)、「それぞれの花」(22/中前勇児監督)、ドラマ「今際の国のアリスSeason2」(23/Netflix)、「刑事7人Season9」(23/テレビ朝日)、「好感度上昇サプリ」(23/テレビ東京)など。2019年「仮面ライダーゼロワン」と「RIDER TIME 仮面ライダー龍騎」で一年以内に別作品の別の仮面ライダーに変身した、史上初の俳優となった。秋山純監督作品には、ドラマ「匿名探偵」、映画「刑事JACOK the Movie file1~よさこい慕情~」に参加している。
嘉島陸 二山至
〈profile〉1998年11月12日生まれ、沖縄県出身。子役時代を経て、2018年ドラマ「花のち晴れ〜花男 Next Season〜」(18/TBS)で活動再開。「セイレーンの懺悔」(20/WOWOW)、「SUPER RICH」(21/CX)、「HOTEL -NEXT DOOR-」(22/WOWOW)、「イチケイのカラス」スペシャル(23/CX)などに出演。
小貫莉奈 里美新造
〈profile〉2001年5月29日生まれ。茨城県出身。「超十代オーディション2017」で約15,000人の応募者の中からグランプリに選ばれる。「東京マラソン2018」のオフィシャルドリンクポカリスエットのWEBムービーに出演する「3代目ポカリガール」に就任。FODドラマ「こんな未来はきいてない!!」“菊池明日香” 役で、女優として本格デビュー。以降、映画「仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐」をはじめ、ドラマ、舞台のほか、CM、MV、バラエティ番組などにも出演し、幅広く活躍中。
スタッフ
原作・脚本・音楽 島田荘司
〈profile〉
1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』でデビュー。『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を得る。2008年日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や台湾にて中国語による「島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力し日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介も取り組んでいる。複数の著作が中国やインドネシアなどアジア以外にイタリアやロシア、チェコなど欧州でも翻訳されている。近年ではオペラも作詞作曲し、2022年には郷里である福山市の「福山城400年博」のイベントとしてオペラ「黒船~阿部正弘と謹子(きんこ)」が上演され好評を博す。
〈comment〉
映画「乱歩の幻影」への思い
日本ミステリーの黎明、これは江戸川乱歩さんによってもたらされたものだが、ミステリー好きにとって、この時代ほど摩訶不思議なものはほかにない。同じ探偵小説を追求しながら、欧米の原点と遥かにかけ離れた場所に漂着していて、過去多くの常識人を戸惑わせた。欧米のミステリーが、科学の台頭によって生じた新思想の理知的産物であったことに反し、日本にはまだ科学の台頭が皆無だったので、江戸期の見世物小屋や、黄表紙や春画への民の欲動を、殺人事件への吸引にいわば利用した。大正期の浅草や上野界隈の空気も、これを後押しした。浅草十二階は、当時時代の最先端を行く、科学技術の象徴として都市を彩りつつ、足もとに生じた巨大な暗がりを、貧困と性病が渦巻く一大娼窟に変えた。
理知的だったはずの輸入品、ミステリーは、こうして日本ではポルノグラフィの咲き乱れる日陰の花園となった。しかつめらしい顔をした近代的科学警察、しかし彼らが膝まで浸かる世俗は、度し難いまでに猥雑な都市の闇で、それが乱歩ミステリーであり、大衆が「乱歩」というミステリー記号を耳にする際、たいてい変態紙一重の危な絵が、無言で期待される光景となった理由である。西洋の原点とあまりにかけ離れた見知らぬ終着駅、その二律背反。しかし道徳を理由に葬り去るには惜しい、わが妖しい日陰花だった。
乱歩・清張以降の日本ミステリー史の交通整理に携わってきた者は、日本に独自の乱歩ミステリーの世界、そのよってきたる理由と性質を熟知することになった。こうした光景を紙上に開陳することは少々むずかしい。が、映画なら、十二階を遠景にしながら、妖しく美しい夜の浅草を花開かせることも得意であろう。しかしポルノグラフィすれすれの水面下で、妖しく蠢くこの隠微な光景を支えるには、日本に二人とはいないほどに傑出した女優と、まれな監督の鬼才が必要だ。到底無理なことと諦めていた。
ところが、ある日飄然と、一人の女優が現れた。高貴な血筋を感じさせる気品と貴族性、まれな清潔さ、これに加え、妖しい趣味にも平然の表情で身を浸してみせる、とんでもなく魅力的な女が日本にいた。自分も監督も、彼女ならできると、思わず口を揃えたものだ。それが常盤貴子との出遭い。そう思っていたら、乱歩役に高橋克典氏、現在からこの覗きカラクリを凝視する娘役に結城モエさん、次々に有能な演技者が勝手に集合をはじめて、さらに、浅草オペラを再現せんとアリアを作曲したのだが、これを日本歌曲を歌わせれば当代一の志摩大喜氏が歌おうと言ってくれて、これ以上ない絢爛の才がみるみる集った。
この映画は自分にとってひとつの夢の具現で、これでようやく自分はこのイメージにきりをつけ、次のステージに進めるという気分で、今いる。
プロデュース ・監督 秋山純
〈profile〉元テレビ朝日の演出家・プロデューサー。2018年に独立し、映像制作会社 JACOを設立。主な監督作品として、「特命係長只野仁」シリーズ(03〜17/主演:高橋克典)、「同窓会~ラブ・アゲイン症候群」(10/主演:黒木瞳 他)、「陽はまた昇る」(11/主演:佐藤浩市)、「ママが生きた証」(14/主演:阿部サダヲ)、「ハッピー・リタイアメント」(15/主演:佐藤浩市)、「狙撃」(16 /主演:尾野真千子)、「就活家族〜きっと、うまくいく〜」(17/主演:三浦友和)、「ネット歌姫」(19/主演:荻野目洋子)など多数。JACO設立後は、映画、CM、舞台など、多岐に及び取り組んでいる。最新のCM演出は、湖池屋ポテトチップス、GOETHE:x_黒太字:BMW、ヨーロピアンシュガーコーンなど。企画、監督した映画「20歳のソウル」(22/主演:神尾楓珠)は、報知映画賞5部門でノミネート。2024年1月に、脚本監督した映画「TOKYO RED 鉛丹」(主演:蘭乃はな)の公開も控えている。
〈comment〉
「映画の脚本を書いたんです。監督、この脚本差し上げますので、映像化出来ませんか?」二年前、島田荘司先生から、書き上げたばかりの脚本を手渡されたのが、全ての始まりでした。以来、「乱歩の幻影」に心を奪われる日々。脚本に書かれていたのは、現代と昭和初期を行き来する、壮大なる物語。実在した人物も登場するストーリーは、ミステリーや、ラブストーリーなどのジャンルを超えた、島田荘司ワールドとしか言えないものでした。原作は、30年以上前に講談社から発売された連作短編集『改訂完全版 網走発遙かなり』(講談社文庫・今冬刊行予定)に収録されている70ページの短編です。映像化不可能としか言えない、唯一無二の世界観。御手洗シリーズ含め、一千万部以上の著作を国内だけで売り上げた島田荘司先生ですが、映像化された作品は、実は数少なく…それは島田先生が著書の後書きに記しているように、映像化するために自ら高いハードルを決定めていらっしゃるとの事。そんな大切な著作を預けてくださるとは大変光栄なことで、かつ、こちらも全身全霊で向き合うしか道は無い。何が何でも映画化したいと、片っ端から仲間たちに声をかけ、お世話になっている俳優部、事務所にプレゼンして、実現への道を探りました。高橋克典さん、常盤貴子さん、加藤雅也さんと、錚々たる俳優陣が参加にOKをくださり、新進気鋭の女優、結城モエさんとの出会いで、主人公弓子が決まり、一気に撮影まで辿りつきました。20歳のソウルを観て、連絡をいただいた、岡崎市フィルムコミッションの皆様の心強いバックアップもあり、岡崎市にてクランクイン。東京では、浅草オペラ実行委員会の皆様にご縁をいただき、浅草東洋館(旧フランス座)での、ロケーションも実現しました。島田文学と浅草オペラ。現代と昭和。洋装と和装。様々な文化をカオスのようにミックスさせながら、撮影は進んでいます。実現不可能とも思える弓子の心中描写は、演出家中井由梨子さんの力を借りて、劇中劇として描きました。メタシアターという手法です。この映画とともに、メタシアターという言葉が、市民権を持てば嬉しいです。島田荘司先生からいただいた挑戦状のような脚本に、スタッフ、キャスト一体になって挑んだ。そんな表現しか見つからないかも知れません。映画化にあたり、島田先生に、リクエストをしました。唯一無二の世界観を表現するために、オリジナルオペラを使わせて欲しい…と。新作「ローズマリーのあまき香り」執筆中の時期にも関わらず、島田先生は、五作のオリジナルオペラを作詞作曲してくださいました。その和風オペラが司る空気感が、乱歩の幻影の色彩を、より鮮やかに味わい深くしてくれました。島田荘司先生のライフワーク、オペラ黒船とともに、乱歩の幻影オリジナルオペラたちも、一刻も早く世に出したいと思います。ご期待ください。
スケジュール
劇場公開:2024年春(予定)
2023年12月 クラウドファンディング終了
2024年1月 随時リターン開始
資金の使い道
集めた資金は映画の宣伝配給費用、リターン制作費、送料、CAMPFIRE手数料に使用いたします。
最後に
クラウドファンディングを成功してより多くの方にこの作品をお届けし、日本文学の面白さ・エンタメの力を発信したいです。
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<募集方式について>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。
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