このプロジェクトは、「映画を観た後に、思いをシェアすることで“自分ごと”にする場」としての映画(=kino)と対話(=dialogue)のワークショップを運営しているkinologue(キノローグ)が、映画『かもめ食堂』を舞台となったフィンランドの食堂で上映し、日本の食文化を伝えるワークショップを開催するための資金を募るプロジェクトです。
■はじめに
私は長年、映画の配給・宣伝の仕事に携わってきました。洋画・邦画を問わず、制作者の思いが込められて作られた映画を、世の中の人に興味を持って貰えるような形にして送り出し、観て貰う仕事です。買付や制作から公開まで、最短で半年、長いと2〜3年かけて、子どものように育てていくのです。
映画は公開されると、制作や配給した者の手を離れ、観た人のものになります。長い時間をかけて育ててきた映画がどのように観た人に届いているのか、観た人の人生とどう関わったのか、映画館での反応やネット上のレビューでは飽き足らず、実際に話を聞いてみたいと思うようになったのは、ごく自然な流れです。そして、1人の観客として、映画を観た後に必ずしも一緒に観た人と共有できないこと、1人で観た後に誰かと話したくなることの実感から、「映画を観た後に、思いをシェアすることで“自分ごと”にする場」として、映画と対話のワークショップ・プロジェクト「kinologue(キノローグ)」を2011年10月に立ち上げました。
記念すべき1本目は、フランスの子どもたちが“哲学する”ドキュメンタリー『ちいさな哲学者たち』。この作品で参加者を変えて数回開催しましたが、毎回全く異なる熱い対話の場となり、このプロジェクトの面白さに自信を持ちました。その後、当時大ヒット中だった『モテキ』では「モテ」について真剣に語り、社会派ドキュメンタリー『イエローケーキ クリーンなエネルギーという嘘』では、私たちのこれまでとこれからの「選択」について様々な意見をじっくり交換し合い、世界の子どもたちを描いたオムニバス映画『それでも生きる子供たちへ』は、東京と被災地・南相馬をつなぐプロジェクトに発展しました。どの回も、映画が人から引き出すパワーと、シェアすることでの予想のつかない化学反応に、誰よりも圧倒されっぱなしでした。
昨年、フィンランドに長期滞在していたことをきっかけに、今年は<フィンランドのまなびシリーズ>として、フィンランドのNPOが作成した映画教育教材を使ったワークショップを開催しています。色彩豊かでクリエイティビティが刺激される『ムーンライズ・キングダム』では大人の工作ワークをしたり、『ル・アーブルの靴みがき』ではマインドマップから映画の続きのストーリーを作ったり、対話とワークを組み合わせる試みを続けています。
これまでのワークショップに参加して頂いた方々からは、
「ここで出た自分の問いを共有できる場がまた欲しい」「やりたいと思っていたことが、ここで確かなものになったので、実現させたい」(『ちいさな哲学者たち』)、
「周りの普段関わっている友達とはまた違った視点の方達と今日のようなディスカッションが出来て、とても楽しかったです。私生活では“モテ”について自分なりの考えはあっても、意識して実践することはなかったので、今後機会があれば今日をバネにがんばります☆笑」(『モテキ』)、
「映画の後に話すことで、色々と感情が整理された」(『それでも生きる子供たちへ』)、
「初対面なのに、同じ映画を観ることで、こんなに打ち解けられるのが驚きだった」「色んな人と一つのものを作りあげていくことが楽しかった。心地よい達成感」(『ムーンライズ・キングダム』)といった声を頂いています。
■『かもめ食堂』の魅力
過去11回のkinologueのワークショップの中で、毎回キャンセル待ちが多数出るほど人気だったのが『かもめ食堂』。フィンランドの首都ヘルシンキで日本食の食堂をオープンした日本人女性サチエさんと、そこに集まってきた人々が紡ぐ、オール・フィンランドロケの映画です。
自分を投影しやすく語りすぎないストーリー、サチエさんが作る美味しいごはん、シンプルで心地よいフィンランドの空気感や北欧デザインが受け入れられ、公開から7年経った今でも熱烈な支持者がいます。2年連続で開催したワークショップの1回目(昨年2月)には五感で楽しむというテーマで、最後にみんなでおにぎりを作って食べました。
2回目(今年3月)には、シナモンロールを食べながら映画を観た後に「『かもめ食堂』がフィンランドに伝える日本の食文化」というテーマで話し合い、サチエさんがひとつひとつ丁寧に握った日本のソウルフード=おにぎりから伝わるものは「美味しさ」だけではないことに、対話の中で気づかされました。そして、日本の食文化をフィンランドの人たちに伝えていくために、フィンランドの人たちが自分たちのソウルフードを改めて考えて貰うきっかけ作りや、日本と比較してお互いに理解を深め合うことなど、具体的なアイディアが色々と出ました。どのアイディアにも通じているのが、日本の食文化に流れる精神、おもてなしの心、「いただきます」「ごちそうさま」を伝えること。
そして、ワークショップの参加者の中から「一緒に考えて企画したい!」というメンバーが集まってアイディアを実現する企画チームが生まれ、約5ヶ月後、映画のロケ地となった実在する“かもめ食堂”での上映ワークショップが形になりました。人の思いが1本の映画をきっかけにつながって、アクションを起こす力になることを実感しました。
★3/23開催『かもめ食堂』ワークショップレポート
http://kinologue.jimdo.com/13-03-23かもめ食堂ws/
■『かもめ食堂』を舞台となったフィンランドの食堂で上映する!
映画の舞台となった、ヘルシンキに実在する“かもめ食堂” ことKahvila Suomi(カフェ・スオミ)は、オシャレなカフェというより、地元の人に愛されている街の食堂です。映画の公開以来、日本人観光客のヘルシンキ観光人気スポットの1つとなっています。映画の最後のシーンにちらりと出演されているご夫婦が経営していて、素朴で美味しいフィンランドの家庭料理を食べることができます。この企画の申し出に、ご主人のTopaniさんは「Very interesting!」と快諾してくれました。普段は平日しか営業していないにも関わらず、このイベントのために特別に土曜日にお店を開けて頂けることになりました。
■上映後は日本の食文化を伝えるワークショップを実施。南三陸町からの「伝えたい」気持ちも届けます
今回のワークショップの基本テーマは、3月に東京で開催した時と同じく「『かもめ食堂』がフィンランドに伝える日本の食文化」。当日は、フィンランドの人たちに『かもめ食堂』を観て、日本の食文化がどんなものなのか、知って貰えるようなワークショップを企画しています。実際にどんなことをやるか、3月のワークショップで出たアイディアを参加者の中から生まれた企画チームで練り直し、絶賛検討中です。また、イベント参加者全員にプレゼントするお箸を入れる箸袋を、企画の趣旨に賛同してくれた南三陸町のおじいちゃん、おばあちゃん、子どもたちに作って貰いました。「いただきます」の心を知って貰えるように、「ITADAKIMASU」とローマ字でも書いてくれました。南三陸町からの「伝えたい」気持ちも一緒に届けたいと思います。
■同日に東京・中目黒の食堂で『かもめ食堂』上映ごはん会を開催
フィンランドまで行けないけど、イベントに参加したいという方のために、中目黒の食堂「KIRARA」にて、同日に『かもめ食堂』の上映ごはん会を開催します。「KIRARA」は、旬の食材を選んで“自分定食”が食べられる食堂で、今回特製の『かもめ食堂』ごはんを用意してくれます。上映後はフリータイム。食堂で観た『かもめ食堂』の感想を、まわりの人たちとシェアしてみる時間。そして、上手くいけば、フィンランドのワークショップの模様を中継する予定です。
★『かもめ食堂』上映ごはん会
<日時>
8月10日(土)
19:00開場/受付開始→特製ごはんを食べましょう!
20:00-21:45 『かもめ食堂』上映
21:45- フリータイム
<会場>
食堂KIRARA(東急東横線・東京メトロ日比谷線中目黒駅下車徒歩3分)
http://kirara.gr.jp/

■ご支援頂きたいこと
フィンランドでの上映のために配給元に支払う上映料、上映機材レンタル並びに設営費など諸経費のサポートです。現在1回のみの上映を予定していますが、資金が集まりましたら、2回上映も検討したいと思っています。
ご支援下さるパトロンの方へのリターンとしては、フィンランドでの上映ワークショップ(渡航費・滞在費は自己負担です)や東京での上映ごはん会・9月開催予定の報告会のご招待、スタッフがチョイスする『かもめ食堂』にまつわるフィンランドのお土産(Kahvila SuomiオリジナルTシャツなど、支援金額によってpieni(小)とsuuri(大)の2種類のセット)、現地に行かないと手に入らないKahvila Suomiのショップカード、フィンランドでの上映ワークショップの模様をまとめた報告書、支援を頂いたお礼のメッセージなど、『かもめ食堂』ファンの方に喜んで頂けるものをご用意しています。
▲『かもめ食堂』ごはんイメージ
▲Kahvila SuomiオリジナルTシャツ
▲Kahvila Suomiショップカード
▲フィンランドのお土産イメージ
(写真はすべて実物とは異なる可能性がありますので、ご了承下さい)
■映画がもたらす、「つながり」を大事にしたい
今回のフィンランドでのワークショップを実現させるにあたって、様々な「つながり」が生まれました。ふんわりとしているようで実は奥深い『かもめ食堂』が持っている力に引き寄せられるように、ものごとが動いていくのを感じました。このプロジェクトをきっかけに、フィンランドで、東京で、人と人とがつながったり、フィンランドと日本の食がつながったり、映画の中に自分の過去と未来のつながりが見えたり、映画がもたらす「つながり」を、少しでも感じることができたら、何よりもうれしいです。映画は観るだけじゃ終わらない。私はそんな映画の力を信じています。
ここまでお読み頂いた皆様、ありがとうございました。ご支援のほど、どうぞ宜しくお願いいたします。
主催: kinologue
協力: 日活、雲母
(c)かもめ商会 PHOTO 高橋ヨーコ
最新の活動報告
もっと見る「いただきます!」を届けたい。
2013/07/28 16:13ヘルシンキのワークショップまで2週間に迫り、様々な準備を進めています。ヘルシンキに持っていく大事なものの1つが、このお箸たち。3月に一緒にワークショップを行なった「いただきますの日」推進委員会から頂いたお箸を、南三陸町のおじいちゃん・おばあちゃん・子どもたちが作ってくれた袋に入れました。「自然、いのち、労働、知恵、周りの人」の5つに感謝する、日本ならではの「いただきます」の文化を届けたいと思います。 もっと見る
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