
今年1月、珠洲市蛸島の仮設住宅団地集会所にお邪魔して、「奥能登を走るブックカフェ」を開かせていただきました。
地震、そしてその後の豪雨による水害。 幾重にも重なる被害は、地域の方々の暮らしに深く、長く影を落としています。

その中で、民宿を営む女将さんがこう語ってくれました。
「震災では心が折れそうだったけど、その後の水害では心が折れてしまったの」
避難生活が続くなか、水も物資も足りない日々。 ようやく再開できた宿でも、食事の提供はできず、タオルや寝間着も持参してもらわざるを得ない。
そんな中で女将さんが、涙ぐみながらこう言いました。
「来てくれるだけで、忘れないでいてくれるだけで嬉しいです」
このような言葉に出会うたびに思い出すのは、2003年末に起きたイラン・バム地震で出会った、当時10歳の少女・ピルーズのことです。
震災で家族を失い、孤児院で暮らしていた彼女は、沈んだ顔をしていた私を見て、こう言いました。
「どうして悲しい顔をしているの?笑顔を見せてよ」
笑顔を失っていた大人の自分に、笑顔で語りかけてくれたあの子のことを、私は今も忘れられません。
そのとき私は気づきました。ボランティアができる支援とは、物を渡すこと以上に、「そばにいること」「耳を傾けること」なのだと。
被災地で何度も繰り返し感じてきたことがあります。
それは、「なくても生きていけるけれど、ほんとうはとても大切な支援」がある、ということです。

本を手にして、少しだけ気持ちが落ち着いた。笑顔が戻った。誰かと話すことができたー
そんな“なくてもよいように見えるもの”が、実はその人にとって、今いちばん必要な「心の支え」になることがあります。
だからこそ、私たちはブックカフェを続けます。
来月9月には、再び奥能登に向かう予定です。
今回のクラウドファンディングは、奥能登だけでなく、そしてカンボジアやラオスの村々でも、そうした“寄り添い”の時間を届けるためのものです。
心が折れそうなとき、そっと横にいてくれる誰かの存在。 たとえその場にいなくても、その「誰か」になってくれる。
そんな仲間を、探しています。 ぜひ、この活動を、私たちと一緒に感じていただけたら幸いです。
エファジャパン事務局長
関尚士
写真右。左はいろは書店の八木さん





