ご報告が遅くなってしまいましたが、7月1日に 姿勢制御実験機 LEAP の打ち上げを行いました!
今回の実験は前回のLEAP3と同様に、100km機「モモ」で行う
真上に打ち上げ → 海に向かって傾けて、陸から離す → 再び真上近くに姿勢変更
という姿勢制御を模擬した実験を行いました。
機載カメラの映像を見ると、打ち上げ後5秒くらいから少しだけ川の方に向かって傾いて、10秒くらいからエンジンを止めるまでの2秒ほどで傾きが戻り始めています。
今回目標にした最大の傾きは8度でしたが、映像ではわかりにくいかもしれません。
ですがこの8度という角度が、実際の打ち上げの時にはかなり効いてきます。
姿勢制御のヒミツ
何か飛行に異常があった時に、燃焼をストップさせて自由落下させたらどこに落ちるか?を表すIIP (Instantaneous Impact Point)という言葉があります。
ずっと真上に打ち上げた場合は、何秒後であろうと燃焼を止めた後打ち上げ地点に落ちてくるので、IIPはずっと打ち上げ地点のままです。
また、打ち上げ後小さい角度でずっと傾け続けるとIIPは徐々に徐々に打ち上げ地点から離れていきます。
ですが、今回行ったLEAP4のように序盤で大きく傾けると、最初のうちにIIPがグッと打ち上げ地点から離れ、傾きが戻った後も横向きの速度はついたままなので緩やかにIIPは離れ続けます。
ということで、モモの打ち上げでは「何かあったときに途中で止めても、出来るだけ遠くに落ちてくれる」一番安全な姿勢制御を行います。
LEAP3、4はその実証実験、という位置づけで行ったわけです。
LEAPの形のヒミツ
LEAPシリーズの機体は、少しずつ変わってはいますが基本的には長方形の箱に斜めの脚が付いた構造です。
箱の中には推進剤タンクや角速度センサなど、飛行や制御に必要な部品がむき出しで配置されています。
LEAPを見た方によく言われるのは、「ロケットっぽくない…」という言葉です。
ロケットと聞いて普通皆さんはトップページのモモのように、先の尖った円筒形状を思い浮かべるでしょう。
ではなぜLEAPは普通のロケットとかけ離れた形をしているのか?
そのわけは、「その方が制御が難しいから」です。
LEAPはモモと違い、音速より遥かに早く飛行して成層圏を脱出するような機体ではありません。
そのため、音速を超えるような高速での大気の影響、上空の横風の影響などなど(これらを"外乱"と言います)を再現することはできません。
その代わりに、空気抵抗が非常に大きく、かつ非対称な形状にすることで、わざと外乱を大きくして、制御を難しくしています。
これにより、制御システムがモモで予想される外乱の大きさでも十分に機能するかを試している、というわけです。
姿勢制御吊り下げ試験機HOPに続き、制御システム実験機として4回の飛行を行ったLEAP。
その4回目が終わった今、開発はいよいよ飛行用エンジン(フライトモデルエンジン)へと入っています。
近いうちにその報告も行いますので、お楽しみに!