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オホーツク発、農と漁の連携による循環型農業を普及させたい

産業廃棄物であるホタテ貝殻を利用して作った土壌改良剤の効果を学術的に実証するため、実際の畑を利用してオホーツク地域の特産の一つである玉ねぎの栽培を行います。既存の土壌改良剤との比較をして、土壌改良効果だけではなく、収穫量についても評価して、「農と漁の連携による循環型農業」の普及を目指します。

現在の支援総額

1,040,039

104%

目標金額は1,000,000円

支援者数

67

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2024/05/28に募集を開始し、 67人の支援により 1,040,039円の資金を集め、 2024/07/19に募集を終了しました

社会課題の解決をみんなで支え合う新しいクラファン

集まった支援金は100%受け取ることができます

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オホーツク発、農と漁の連携による循環型農業を普及させたい

現在の支援総額

1,040,039

104%達成

終了

目標金額1,000,000

支援者数67

このプロジェクトは、2024/05/28に募集を開始し、 67人の支援により 1,040,039円の資金を集め、 2024/07/19に募集を終了しました

産業廃棄物であるホタテ貝殻を利用して作った土壌改良剤の効果を学術的に実証するため、実際の畑を利用してオホーツク地域の特産の一つである玉ねぎの栽培を行います。既存の土壌改良剤との比較をして、土壌改良効果だけではなく、収穫量についても評価して、「農と漁の連携による循環型農業」の普及を目指します。

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自己紹介

北海道津別町で有機農法を用いた玉ねぎ栽培に実績がある矢作農場は、自然と調和の取れた農業を長年取り組んできました。その取り組みの中、同じ北海道道東の北見市常呂自治区において、地域で発生した産業廃棄物であるホタテ貝殻を農業用資材として再利用するため、貝殻粉末から作った土壌改良剤を用いた循環型一次産業に取り組んでいることが分かりました。また、この取り組みに近隣の国立大学法人である北見工業大学が参画し、製糖プロセスで発生する製糖副産液を用いて貝殻粉末を造粒し、より使いやすい土壌改良剤が開発された事を知りました。そこで北見工業大学で実際に開発を担当した研究者に話を詳しく聞いたところ、この新しい土壌改良剤をより普及させるためには、その効果を実際の畑を用いて実証試験する必要があるとの話があり、その実証試験を矢作農場が行いたいと考えました。


そこで今回、北見工業大学や近隣農協・漁協などの協力を経て、貝殻粉末から作った土壌改良剤の効果を実際の畑で実証試験を行い、最終的に「農業と漁業が連携する循環型農業の普及」を目指したいと考え、このプロジェクトを立ち上げました。またこの試みを通して、ホタテ貝殻の農業用資材としての有効活用について、より多くの人に知ってもらいたいと思っています。

今回のクラウドファンディングの舞台は、自然豊な北海道のオホーツク海側です。

解決したい社会課題

北海道でのホタテ貝殻廃棄の課題

既にニュースなどでも話題となっていますが、北海道の各地区でホタテ漁が盛んに行われており、2022年度の北海道全体の漁獲高は約42万 tでした。また北海道の東側のオホーツク地域では、ホタテの養殖も盛んに行われており、安定的な漁業として定着しています。しかしホタテの水産加工工程において、貝殻やウロ(中腸線)が廃棄物として出るため、この処理や有効活用が大きな課題となっています。

北海道の各地で見られるホタテ貝殻の堆積場

皆さんがオホーツク海沿岸部分を車で移動する事があれば目にする事になると思いますが、様々な場所に上の写真のような貝殻の山が存在しており、これらの有効活用がいかに大きな課題となっているかを実感することが出来ます。そのため現在大学などを中心に、このホタテ貝殻の再資源化に関する研究が様々な分野で進められています。

ホタテ貝殻の主成分は炭酸カルシウムで、貝殻の中でも特にホタテはカルシウム成分の割合が高い事で知られています。炭酸カルシウムは化学的な処理などにより、酸化カルシウムや水酸化カルシウム、さらにはヒドロキシアパタイトとしても利用可能なため、医薬品としての利用も想定できるのですが、数万トン単位の廃棄物の再資源化には、より大量に消費する形での再利用が強く求められます。そのため最近では道路建設用資材としての利用や、今回のプロジェクトにも関係する土壌改良剤としての利用が行われています。


土壌改良剤としての利用における課題と、ホタテ貝殻を利用して作った粒状の土壌改良剤

北海道道東の常呂町(現在は北見市常呂町)では、1979年頃にホタテ養殖が安定的漁業として成長し、現在に至っています。そして当時より貝殻の課題に注目していたため、ホタテ貝殻を粉末状に微粉砕して土壌改良剤として利用するため、JAところ・常呂漁協・北見市が出資して1979年12月に常呂町産業振興公社を設立し、貝殻粉末を地元農家を中心に販売していました。他地区でもホタテ貝殻を土壌改良剤として一部利用していたようですが、貝殻をそのまま、もしくは粗く粉砕した程度での利用では、貝殻特有の形状の問題から作物を傷つける恐れがあるとされ、その利用は制限されていました。そのため、当時から貝殻を微粉砕して大規模に貝殻粉末を土壌改良剤として利用していた常呂町は、現在にも通じる環境に配慮した先進的な農業を行っていたとも言えます。

北見市常呂町の農地の風景
オホーツク海に面した自然豊かな町です

しかし時代は進み、農業の大規模化に伴い様々な機械が利用されるようになると、このホタテ貝殻粉末の散布に関連する課題が顕在化してきました。一般的に粉末状の農業用資材はライムソワーと呼ばれるシャワーのような機械を利用して散布するのですが、この場合は約3m程度の幅で散布する事になります。しかし大規模農家が多い北海道では、近年ブロードキャスターと呼ばれる羽を利用して散布する装置が普及しており、この場合は約30m幅で農業用資材を散布することができます。そしてブロードキャスターで粉末状の物を散布した場合、その多くは風によって飛散してしまうため、ブロードキャスターを利用するためには粉末状の物を直径数mm程度の粒状に加工する必要が出てきました。

ホタテ貝殻粉末を散布している写真 (上)ライムソワーを用いた散布風景
(下)試験的にブロードキャスターを使用した散布風景

粒状の農業用資材をブロードキャスターで散布している写真
風に飛ばされず、一度に30m程度の幅で効率良く散布可能です

工学の分野ではこのような操作を「造粒」と呼ぶそうですが、この造粒が非常に難しかったのがホタテ貝殻粉末だったようです。北見工業大学に協力の依頼が来るまで農協を中心に様々な検討がされていましたが、なかなか均一な大きさに造粒する事が出来なかったそうです。実際に北見工業大学で最初に試した造粒操作でも、均一な造粒は出来なかったと聞きました。

ホタテ貝殻粉末の走査型電子顕微鏡観察像

そこで北見工業大学では、専門分野である「粉体工学」と呼ばれる粉を取り扱う学問領域の知識を利用する事で、原料粉末自体に工夫をする事で造粒が可能となる技術開発を行い、これに成功しました。現在この技術を用いて常呂町産業振興公社で新工場が建設され、ここで量産が進められており、近隣農家を中心にホタテ貝殻粉末から作った粒状の土壌改良剤の利用が始まっています。

実験室レベルでの造粒技術の開発に成功しました
直径2-5mm程度で大きさが揃っています。

工場の建設が終わり、直径3mのパンを使った造粒技術に技術移転しました。
かなり苦労しましたが、ホタテ貝殻粉末を用いた粒状の土壌改良剤の量産に成功しました。

またこの技術開発に当たり、糊としての役割を行う「バインダー」と呼ばれる原料には、常呂で栽培される甜菜(砂糖の原料)から砂糖を作る際に発生する製糖副産液(一般的には廃糖蜜と呼ぶ場合が多いです)を利用する事で、常呂で発生したホタテ貝殻と、常呂で生産した作物の加工で発生する製糖副産液を両方とも使用した新しい土壌改良剤としました。そのため、北見市常呂町では下のイラストで示すような循環型農業が完成し、これを「常呂式循環型一次産業」として掲げています。

常呂で現在実施中の循環型一次産業の模式図 この循環図の核となる貝殻粉末の造粒技術開発が大変だったようです。(オリジナルサイズのイラストは、こちらからどうぞ)


持続可能な循環型農業の普及に向けた課題

しかしこの資源循環型の農業を更に普及させるためには課題が存在します。

1.常呂漁協の貝殻は既にほぼ全量を再資源化している

既に常呂漁協が出しているホタテ貝殻はそのほぼ全量を再資源化する事に成功しており、これ以上の普及を目指す場合、他の地区で同様の試みをしてもらう必要があります。


2.貝殻粉末から作成した土壌改良剤の効果の検証

昔からホタテ貝殻粉末を土壌改良剤として利用してきた常呂町以外の場所に、これと同様の農業を普及させるためには、その土壌改良効果をきちんと学術的に示し、農家さんに安心して使用してもらう必要があります。これまで常呂町では貝殻粉末の利用を長年行っており、優れた作物を送り出してきているため、貝殻粉末そのものには問題ないと言えるのですが、粒状にした事で即効性や持続性が大幅に変化しました(下記にその評価を研究室レベルで実施した例を示しています)。また上でも説明したように、今回「糊」として製糖副産液を使用しているため、この部分の効果についても検証が必要です。

現在、常呂町産業振興公社で生産中の貝殻粉末を原料とした粒状石灰です

実験室で測定した貝殻原料粉末と粒状土壌改良剤の土壌矯正効果の経時変化の図
特に地中のpH変化において、粒状土壌改良剤の持続性が大変優れている点を確認しました。
(T. Ohno et al., 粉体工学会誌 59(2022) pp.276-282より)

そのためホタテ貝殻を使った「農と漁が連携する循環型農業」を普及させるためには、貝殻粉末から作った土壌改良剤の効果を、大学の力を借りて学問としてきちんと検証し、他の地区で安心して使ってもらえることを示した上で、参加を呼びかけるというプロセスが必要になります。そこで今回私達はこの試みの最初の一歩を踏み出すために、このプロジェクトを立ち上げました。そして最終的には「農と漁が連携する循環型農業」として、北海道の様々な地区でこのような形の農業を普及したいと考えています。


このプロジェクトで実現したいこと

既存の鉱物(石灰石)から作られる土壌改良剤と、ホタテ貝殻粉末から作った土壌改良剤を別々に圃場に散布し、その土壌改良効果とそこで得られた生産物(玉ねぎ)の収穫高などの評価を実施します。今回の目的は、貝殻粉末から作った土壌改良剤が既存の土壌改良剤とほぼ同等の効果が得られる事を実証することにあります。

今回実証試験を行う予定の北海道津別町にある矢作農場 
(有機栽培による玉ねぎを生産している農家です)

より優れているという効果を目指さないのか?という意見もあるかと思いますが、既存の物と同等の効果が未利用資源で得られるのであれば、そこには大きな社会的意義があると私達は考えています。また近年、約50億トンの埋蔵量と言われている国内の石灰石が、建設資材などとしての需要が大きいため約30年程度で枯渇する恐れがあるとも指摘されており、その代替材料として農業分野ではホタテ貝殻が有効だという事を示す事が出来れば、この観点からも社会的意義が大きいと考えています。


今回は単年度でのプロジェクトを想定していますが、このプロジェクトが目標金額以上で成立した場合は、2年目、3年目と同じ圃場を使用して、長期に渡る比較検討試験を実施することも計画しており、農業従事者から信頼してもらえるデータの採取を考えています。


プロジェクト実施担当者

代表:矢作 芳信 (矢作農場)

これまで長年に渡って、有機農業を始め自然と調和の取れた農業を北海道津別町にて行ってきました。そしてその試みを続けている中で、今回の貝殻粉末から作られた新しい土壌改良剤を知り、その開発者である北見工業大学の研究者達と交流を持つようになりました。そして大学研究者達が、貝殻粉末を再利用した土壌改良剤の更なる普及を目指している事を知り、その協力をしたいと考え、今回自分の畑を利用してその実証試験を行う事を考えました。今回のプロジェクトには、実際にこの土壌改良剤の利用や普及を行っているJAところや、自身が所属するJAつべつなど様々な組織の協力が不可欠になりますが、大学研究者と協力してそのような環境を整えて、実証試験が出来る環境が出来上がりました。常呂地区で始まった農業と漁業が連携する循環型農業の更なる普及を目指して頑張りますので、皆さんの支援をお待ちしております。


大野 智也 (北見工業大学 機械電気系 教授)

今回のプロジェクトで使用するホタテ貝殻を原料とした粒状土壌改良剤の開発を行い、その社会実装に携わりました。研究者としての専門分野は、今話題になっている車載を想定した全固体型リチウムイオン二次電池の材料開発で、現在国の大型プロジェクトのメンバーとしても活躍しています。2017年頃、粉体を取り扱う事が可能な研究者として(全固体電池開発でも粉体を取り扱っています)、カーリングで有名な常呂のJAところなどが出資する公社より依頼を受けて、粒状の土壌改良剤の開発を行い、その事業化にも協力しました。今回、同僚の浪越准教授と共に、土壌改良剤の効果を調査します。


浪越 毅 (北見工業大学 応用化学系 准教授)

高分子材料の開発を専門とする研究者です。現在、北見工業大学における農工連携の中心となり活躍中の若手教員で、高分子を利用した様々な先進農業に関わる共同研究を地元農協等と実施しています。その中で、今回の研究代表である矢作農場と関係を持つようになり、今回のプロジェクトの農家さんと大学の橋渡しを行いました。今回、同僚の大野教授と共に、土壌改良剤の効果を調査します。


協力者:JAつべつ、JAところ、常呂漁業協同組合、常呂町産業振興公社


スケジュール

8月 クラウドファンディング終了

10月下旬 土壌改良剤の圃場への散布

4月 土壌pHの評価

5月 玉ねぎの植え付け

8月 土壌pHの評価

9月 玉ねぎの収穫とその評価

11月 成果の取り纏めと報告


リターン品について

今回は購入型クラウドファンディングの実施を考えているため、本プロジェクトに関連する商品をリターン品として準備しました。また支援者の皆様を対象として、今回利用する「ホタテ貝殻粉末から作製した粒状の土壌改良剤の開発秘話」について、北見工業大学の大野教授によるweb公開講座を実施します。さらに「北海道農業と工学連携の取り組み」として浪越准教授からポリマーコーティング種子による発芽制御などの近年実施されている農業と工学の連携研究の紹介をweb公開講座として実施します(登録していただいたe-mailアドレスに、web公開講座に関する情報を送ります)。


1.1.5万円の支援者

今回の原料となるホタテ貝殻を出している常呂漁協が、直轄工場で生産している乾燥ホタテ貝柱300gを、クラウドファンディング返礼品のためのパッケージにしてリターン品として準備しました。そのまま口に入れても大変美味しいですし、乾物として料理に利用しても、大変美味しく料理を楽しめます。(商品の詳細はリターン品のページに記載)


2.1万円の支援者(1)

既にホタテ貝殻から生産した土壌改良剤を利用して作物を栽培しているJAところから「ところピンクにんにく」をふんだんに使用した万能タレとピリ辛いジャンの2本セットを、クラウドファンディング返礼品のためのパッケージとして準備し、リターン品としました。「ところピンクにんにく」の辛さと香りをお楽しみいただける商品です。(商品の詳細はリターン品のページに記載)


3.1万円の支援者(2)

今回クラファンを実施する圃場で生産された[特]玉ねぎをリターン品として準備しました。(商品の詳細はリターン品のページに記載)



資金の使い道

リターン品の準備、圃場(畑)の管理費、土壌や生産物の調査費(北見工業大学に委託)、事務管理費、人件費、消耗品


目標金額を超えた場合は期間を延長して土壌pH測定などを行い、より精密なデータが採取可能な長期に渡る実証試験に充てます。また集まった金額によっては評価項目を追加して調査したいと考えています。



最後に

今回のプロジェクトは、大学で開発した研究成果の実証試験を行うためのものです。大学での研究成果が直接社会実装される例は少ないのですが、今回私達農家が直接大学に協力することで、実証試験を行います。現在常呂町で行われている常呂式循環型一次産業は、産業廃棄物を資源化するという点において大変優れた方式であると考えており、この取り組みの輪を是非他の地区にも広めて、北海道ならではの循環型農業の普及に努めたいと考えています。これは大変長い道のりになると思いますが、その最初の一歩を進めるための支援を皆様にお願いします。


<募集方式について>

本プロジェクトはAll-or-Nothing方式で実施します。目標金額に満たない場合、計画の実行及びリターンのお届けはございません。

最新の活動報告

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  • 浪越准教授のWeb公開講座の連絡(10/7(月))(支援者の皆様)

    2024/09/07 21:41

    こちらの活動報告は支援者限定の公開です。

  • Web公開講座に関する連絡(支援者の皆様)

    2024/08/06 09:42

    こちらの活動報告は支援者限定の公開です。

  • 今年の活動のスケジュール

    2024/07/22 09:06

    こちらの活動報告は支援者限定の公開です。

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