2018/07/09 22:33

優れた起業家の特徴とは、その製品がいつの間にか、その国に浸透し、文化の一つとなっていることではないだろうか。
スウェーデンでのアーリング・パーションはまさにそういった起業家の一人である。
彼の考案した発明にアドヴェント・スターというものがある。今日はこの製品について書いた章から抜粋して紹介したい。

『アーリング・パーションをまず一躍有名にしたのは、アドヴェントの時期に各家庭の窓に飾る、アドヴェントスターだった。アドヴェントスターとは、中に小さな電球が入っている星形の飾りで、スウェーデンでは、11月25日頃から1ヶ月間窓辺に飾る。(現在では日本でもイケアで入手できる)。ティンドラ・クリスタル(きらめくクリスタル)”と名付けられたその星飾りは、20年以上に渡って長く愛されるロングセラーとなった。元々アドヴェントの時期に一般的に売られていたのは、ドイツのヘルンフーター・シュテーンという複雑な構造の星飾りだった。アーリング・パーションとその友人のビョーン・ベリィは、この星飾りを元に、より簡略化した形でしかも折りたたみのできる星飾りを制作した。この工夫にのおかげで、場所を取らずに輸送ができ、また国内だけではなく国外にも販売できるようコストを掛けずに生産できるようになると二人は踏んだ。七つの角がついた赤と黄色の星は、まもなくほとんど全ての家の窓に飾られるようになり、以前は手作りによる贅沢品(ひん)だったアドヴェントシーズンの星飾りが誰もが手に入れられる冬のインテリアとして普及した。第二次世界大戦の真っ只中、ドイツ軍が少しずつ戦線を拡大していて一層暗く寒々しく感じられるスウェーデンの冬に、アーリング・パーションは少しでも家々を飾り、灯(あか)りをともしたいと願ったのである。』