* これまで未書籍化だったSF長編『エルギスキへの旅』出版のためのクラウドファンディングです。
* 目標金額に未達成の際でもプロジェクトは成立となり、決済されます。不足分は発起人が自己負担し、書籍を発行します。
* 目標金額を達成した後も、プロジェクト終了時まで募集は継続されます
* 紙書籍の発行:2025年4月(予定)/ 電子書籍の発行:2025年5月(予定)
🌲『エルギスキへの旅』とは🌲
世界中が《騒乱》と呼ばれる大災厄に見舞われてから数年後、未だその爪痕がなまなましく残る近未来の日本。混乱の中で母と離ればなれになった主人公の少年は、その消息を求めようとする父に半ば無理矢理つれられ、山間の寒村エルギスキを訪れます。《騒乱》の前後に極東ロシアから日本に移住してきた移民たちの村エルギスキではシャーマン文化が今も息づいており、父親はそこで行われる特別な儀式で行方不明の妻の情報を得ようと考えたのです。自らの意思とは関係なく秘密の儀式に参加させられた少年は、自分にもシャーマンの資質があると気づくのと同時に、《騒乱》の原因にシャーマンたちが関わっていたことを知ります……
森下一仁さんの『エルギスキへの旅』は雑誌『SFガジン』の1991年6月号に掲載された短編「エルギスキへの旅」を皮切りに、1993年5月号「下降する魂」、1993年10月号「治療師」、1994年1月号「精霊のダンス」、1994年6月号「小舟のシャーマン」、1994年9月号「蘇るエレジー」、そして1994年12月号「転生」の全七話をもって完結した長編SFです(1992年1月号掲載の「丘を下って」という本編には含まれないスピンオフ作品が一編ありますが、今回の書籍には未収録となります)。
《エルギスキ・シリーズ》はこれまで上記の雑誌に掲載された以外、単行本としてまとめられたことは一度もなく、全編を通して読めるのはこの本が初めてとなります。(余談ですが、SF作家・編集者の日下三蔵氏による架空のSF全集の態をとったブックガイド『日本SF全集総解説』(2007年 早川書房)の第3期第11巻『森下一仁』の項には《エルギスキ・シリーズ》が全編(番外編「丘を下って」を含む)が収録作として選ばれています)
🌲作者の森下一仁さんについて🌲
森下さんがご自身のHPに掲載されている自己紹介文を転載させていただきます。
「森下一仁(1951- )もりした・かつひと
SFの創作と批評とをやっています。高知県佐川町出身。大学ではネズミを使う心理学の初歩をやりました。大学卒業後は郷里の高知放送に就職。制作、報道などの仕事を経験する。1978年末に退社し上京。
1979年、〈SFマガジン〉3月号に「プアプア」でデビュー。ほぼ同時に〈奇想天外〉誌などに書評を書き始める。日本SF作家クラブ会員。日本推理作家協会会員。
現在、〈小説推理〉(双葉社)に書評を連載中。」
〈著作リスト〉
『コスモス・ホテル』 短篇集 1980.10.31 ハヤカワ文庫
『ふるさとは水の星』 書き下ろし長編 1981.04.15 コバルト文庫
『あした・出会った・少女』 書き下ろし長編 1982.01.15 コバルト文庫
『宇宙人紛失事件』 短篇集 1984.03.15 徳間文庫
『天国の切符』 短篇集 1985.10.25 新潮文庫
『夢の咲く街』 連作ショートショート集 1986.06.15 コバルト文庫
『縄の絆』〈森と岩の神話〉① 1987.05.30 ソノラマ文庫
『思考転移装置顛末』 連作短篇集 1987.07.20 講談社Jノベルズ
『汚れた太陽』〈森と岩の神話〉② 1988.04.30 ソノラマ文庫
『大地の環』〈森と岩の神話〉③ 1989.07.31 ソノラマ文庫
『ラグ 宇宙からやってきたともだち』 書き下ろしジュブナイルSF 1990.02.28 ペップ出版
『虚空の響き』〈森と岩の神話〉④ 1990.10.31 ソノラマ文庫
『沈む島』〈森と岩の神話〉⑤ 1991.12.31 ソノラマ文庫
『平成ゲマン語辞典』 ショートショート集 1992.08.25 双葉社
『初恋のウィーン』〈ヤング・インディ・ジョーンズ〉⑥ 原案:ジョージ・ルーカス 1993.04.10 文春文庫
『ひとりぼっちの宇宙戦争』 ノベライゼーション 原作:藤子不二雄 1994.07.20 小学館SQ文庫
『現代SF最前線』 書評集 1998.12.05 双葉社
『思考する物語』 SF評論集 2000.01.20 東京創元社
『魔術師大全』 西洋魔術思想に関する長編エッセイ 2002.06.25 双葉社
『「希望」という名の船にのって』 ジュブナイルSF 2010.07.01 ゴブリン書房
🌲このプロジェクトを立ち上げた理由🌲
わたしが森下一仁さんの作品に初めて出会ったのは17歳の時、『SFマガジン』1983年2月号に掲載された短編「スキンク・キンクス」でした。カナヘビと心が入れ替わった少年の意識の流れを描いたこの作品は、シンプルな詩的ファンタジーのように読める一方で、自分よりはるかに小さい脳を持つ生物と入れ替わったことにより遅くなってしまった思考力や認識力にとまどう主人公の心の動きが緻密に描かれており、これは後年になって気づいたことですが、謂わば『アルジャーノンに花束を』の変奏曲のような優れたSFだったのです。
「スキンク・キンクス」で森下さんのSFに魅せられたわたしは、作品の冒頭にこれが実は「コスモス・ホテル」という短編の続編だと書かれていたことから、同作が収録されている短編集『コスモス・ホテル』(早川文庫JA)を購入。以後、森下さんの作品を追いかけていくようになります(そして、森下さんのブログにコメントを書き込み始めたことで、敬愛する作家ご本人と交流が持てるようになるのですが、長くなるのでそれはまた別の機会に)。
その後、ひょんなことからチェコと深い関係ができたわたしは、チェコのSFとファンタジー(チェコ語で言うところの「ファンタスチカ」)を日本で出版したいと、2023年に〝ひとり出版社〟プターク書房を立ち上げました。そんなある日わたしは気づきます。「個人商店レベルとはいえ、まがりなりにも出版社なのだから、チェコのファンタスチカだけにこだわらず日本の作品も出そうと思えば出せるのではないか」。そして、森下一仁さんの《エルギスキ・シリーズ》が書籍化されてないことを思い出しました。早速、森下さんに連絡をとり、自分の考えを打ち明けたところ、ご快諾をいただき、こうしてすべてが始まったのです。
わたしが『エルギスキへの旅』を出版したい理由。それは端的に言ってしまえば、『エルギスキへの旅』が傑作で、日本のSFファンがこれを読めない状態におかれているのは日本SF界にとって大損失であると考えたからです。
🌲このプロジェクトで実現したいこと🌲
今回のクラウドファンディングの目的は、以下の三つです。
① これまで出版されることのなかった傑作SF小説『エルギスキへの旅』を出版すること
② 新しく立ち上げた出版社としての「プターク書房」の存在を広く知ってもらうこと
③ 新出版社の活動を通して日本のSFを盛り上げること
わたしにとって本の出版は未知の経験です。『エルギスキへの旅』の発行部数は1,000部を予定していますが、出版物第一弾ということもあり、引き続き出版活動を続けていくために、わが社のような〝ひとり出版社〟にとってどの程度の発行部数が適正なのか、今回のクラウドファンディングを通して先行予約という形で見込みを立てたいと考えています(このプロジェクトが商業的に成功することができれば、チェコのファンタスチカを中心に、わたしのもう一つの大きな関心事である映画の本などを、年に三、四冊のペースで刊行したいというのが希望です)。
🌲作者のことば🌲
この物語はシャーマンになることを運命づけられた少年の旅を描いたものです。
シャーマニズムはヒトが自然と交感することによって生まれる始原的宗教で、根底には不思議な宇宙観が隠されています。
それを自分なりの物語にしてみたいと、かつて断続的に雑誌に書き継いだのですが、出来栄えがどんなものなのか、自分では見当がつかず、そのままにしてありました。
それをプターク書房の幸重善爾さんが本にしてくださるという。書き手としてこんなにうれしいことはありません。
この試みが実を結びますよう、皆さまのお力添えをお願いいたします。
2024年初冬 森下一仁
🌲プロジェクトへの応援コメント🌲
⌛梶尾真治さん⌛
(SF作家 代表作『サラマンダー殲滅』、『黄泉がえり』、エマノン・シリーズ他)
森下一仁さんのSFを初めて読んだのは「コスモス・ホテル」からだ。
カナヘビと心が入れ替わるだけの話なのに、繊細なめくるめく描写で完成されている。
私も、そんなふうに書けたら、いいな!と嫉妬、羨望した記憶がある。
その短編にならんで「シナモンドロップス」「若草の星」と好短編がならんでいた。
以降、これほど端正なSFを書く作家は生まれていないのではないか?
そんな森下一仁さんの作品で単行本化されていない作品群があることを知る。
なんて、こった! 何故、単行本化されていないんだ! いや、事情はどうでもいい。
その連作長篇『エルギスキへの旅』がこれから出版されようとしている。
興奮さめやらない。一刻も早く出版されることを願う。
そして、これこそが正統なSFだと皆が知る日を鶴首している次第だ。
日々に楽しみができました!!
祈・クラウドファンディング成就!!
🐢北野勇作さん🐢
(SF作家 代表作『かめくん』、『きつねのつき』、百字劇場シリーズ他)
あの「森下一仁」だ。
SFアドベンチャー誌で『森下一仁のショートノベル塾』という読者投稿のコーナーが始まったとき、
私はつぶやいたのだった。あの『コスモス・ホテル』の森下一仁に読んでもらえる。
あんなふうに自分のSFを書きたいと思っていた。
その短編集に入っていた「プアプア」であり「若草の星」であり「コスモス・ホテル」だ。
そして私は毎月投稿しようと決め、会社帰りに喫茶店で小説を書くようになったのだ。
あの「森下一仁」の本になってない長編? 読みたいに決まってる。
🌲発起人について🌲
こんにちは。このプロジェクトの発起人、プターク書房の幸重善爾(ゆきしげぜんに)と申します。
わたしは幼い頃からSFやファンタジーが大好きで、小学校低学年の頃から子ども向けにリライトされた作品やジュヴナイルを読み漁り、小学校5年の時にE・E・スミスの『ファースト・レンズマン』(小西宏 訳 創元SF文庫)を買って本格的にSFを読み始め、早や半世紀近くになります。
とはいえ、SFファンダム活動にはわずかしか参加したことがなく(SF大会にも二回参加しただけです)、自分で小説を書いたこともなく、長年単なる一読者、一愛好家でした。
しかし還暦まであと数年という年齢になった頃、「もっと自分の好きなことを積極的に行ってもよいのではないか」と考えるようになりました。「自分の好きなもの」、それはSF・ファンタジーと映画です。「それらに関する本を出したい」と。
幸いなことに近年は《惑星と口笛ブックス》、《Rikka Zine》、《Kaguya Books》等、お手本を示してくださる先駆者・先行レーベルが充実しており、そのあとに続く勇気をわたしにくださいました。こうしてわたしはプターク書房を設立しました。
わたしの基本的な出版姿勢は「自分が素晴らしいと信じるものをできるだけ多くの人に届けたい」。それだけです。
出版業の知識も経験もなく(編集の経験はあります)、まるで大海に小さな帆掛け船で乗り出していく、まことに覚束なく心細い船出でありますが、その蛮勇・心意気をお感じとりいただいた皆さまのご支援ご協力をいただけましたなら、これに勝る喜びはありません。
🌲現在の進行状況🌲
森下一仁さんからほぼ完成状態の原稿を既にいただいております(今後、編集の過程で若干の手直しは入るかもしれませんが)。現在は編集作業が進行中です。
🌲リターンについて🌲
リターンには出版される書籍(著者のサイン入り、サインなし)他、表紙に使われている写真(中谷次郎(二科展写真部会員)撮影)や、中谷次郎さんが独自に編み出した手法で撮影した植物をあしらった絵葉書セット、そして森下一仁さんの作品リスト(全短編を含む)や『エルギスキへの旅』事典(どちらもPDFを予定)などをご用意します。
CAMPFIREには集まった支援総額の12%(消費税別)が利用手数料として、同様に5%(消費税別)が決済手数料として支払われます。
🌲スケジュール🌲
2025年1月 クラウドファンディング終了
2025年4月 紙の書籍出版。リターンとともに発送
2025年5月 電子書籍版の発行(作品リストと事典も同時に発送)
🌲最後に🌲
『エルギスキへの旅』はコーマック・マッカーシーの『ザ・ロード』のようなポスト・アポカリプスの世界を舞台にした父と息子の関係、マイクル・スワンウィックの『大潮の道』のようなテクノロジーと魔術の融合、マイクル・ビショップの『樹海伝説』のような文化人類学的設定、マイクル・コニイの『ハローサマー・グッドバイ』のような少年の愛と性のめざめを描いたほろ苦い青春譚、そして萩尾望都の『スターレッド』のような個人の意識の覚醒による世界の変貌といった様々なSFテーマが一本一本の糸として物語の中に巧みに織り込まれ、それがラストにおいて細密なタペストリーとなって読む者の眼前に拡がります。そしてSFでしか味わえないこの結末に、あなたは驚きと心地良いめまいのような感覚をおぼえるでしょう。
もしこの文章をお読みになっているあなたがこのプロジェクトの意図に賛成し、参加してくださったなら、それはあなたに大きな喜びをもたらすと同時に、(自画自賛をお許しいただければ)この未刊の傑作の出版プロジェクトに加わることで日本SFへの貢献に繋がることも間違いありません。ご支援のほど、よろしくお願いいたします。
最新の活動報告
もっと見る森下一仁さんの短編をnoteにて公開します
2024/12/07 19:50この度は『エルギスキへの旅』出版支援クラウドファンディングにご参加いただき、まことにありがとうございます。支援者の皆さんにお礼の意味を込め、同時に、森下さんの作品にまだ馴染みがない方(特に若い世代の)、あるいは「最近、森下一仁が足りてない」とお感じの長年のファンの方々に森下さんの作風を理解してもらうことを目的に、森下さんのご許可のもと、短編一編を無料公開することとなりました。森下さんの作風というと「詩的」「リリカル」といった印象が強いですが、実は「ユーモアもの」から「心の奥底に分け入った心理分析もの」、「文化人類学もの」まで多種多様。時に驚くほど冷徹な作品もあります。それら幅広い作品の中から今回は「『エルギスキへの旅』に通底するものが感じられる」とわたしが思った「島」(「SFアドベンチャー」1988年5月号 No.102掲載)を選びました。精緻な風景描写が登場人物たちの心の動き、物語の運びと深く結びついている森下ワールドをご堪能ください。https://note.com/ptakbooks2023/n/n96570151631cそして、今回のプロジェクトのことを更に多くの方に知っていただけるよう拡散のご協力をお願いします。プターク書房幸重善爾(ゆきしげ・ぜんに)拝 もっと見る
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