群馬から、“多文化共創の介護”を広げる挑戦
前回の活動報告では、フィリピンの送り出し機関とのネットワーキングツアーや、外国人スタッフへの認知症ケア研修、SNSを通じた情報発信など、皆さまからのご支援を礎に進めてきた第一歩の取り組みをご紹介しました。
そして今回、私たちミヤマリンクにとって、次の大きな節目を迎えることができました。それは、代表取締役・天田が運営する社会福祉法人三山会が、群馬県より正式に「多文化共創カンパニー」として認証されたことです。
この成果は、皆さまの応援が形になった象徴的な出来事でもあります。ここでは、その背景と意義、そしてこれから群馬全体へ広がりつつある新しい動きについて、詳しくご報告いたします。
1. 群馬県からの正式認証:「多文化共創カンパニー」へ
令和7年度、群馬県が実施した「多文化共創カンパニー認証制度」では、12社の申請がありました。その中で、厳正な審査を経て認められたのはわずか3社。そして、福祉分野での認証はたったの2法人。私たち社会福祉法人三山会が、そのうちの1社として認証を受けることができました。
この認証は単なる制度上の評価ではなく、「多文化共創」という理念を日々の現場で体現してきた証です。県庁で行われた認証式では、これまで共に歩んできたスタッフ一人ひとりの顔が思い浮かびました。どんなに小さな変化でも、一つずつ積み重ねてきた時間が今、形となった――その実感に胸が熱くなりました。
介護業界はいま、2025年問題の真っただ中にあります。急速に進む高齢化と、働き手の減少。「人手不足」という言葉が、業界の代名詞のように語られる時代です。
しかし、私たちはこの現実を「嘆く」だけでは終わらせません。むしろ、この状況を“未来を変えるきっかけ”にしたい。その想いが、ミヤマリンクや三山会の原動力となっています。
2. 「補充」ではなく「共創」へ ― 優秀だから迎える仲間たち
私たちが大切にしているのは、「外国人を人手不足の補充としてではなく、優秀な仲間として迎える」という考え方です。
フィリピンをはじめとする外国人スタッフたちは、言葉よりも先に「心を感じ取る力」を持っています。認知症の利用者さまに優しく語りかけ、笑顔で手を取りながら、その人の気持ちを察する――。その“非言語コミュニケーション”の高さは、日本の介護現場に新たな価値をもたらしています。
彼らは家族を支える覚悟を持ち、南国の陽気さと共感力(エンパシー)を兼ね備えた存在です。利用者さまとの自然なふれあい、笑い声のある日常、そして現場の空気を明るくする力。そうした一人ひとりの魅力が、確実に介護の質を支えています。
私たちは、ロボットではなく“人”を選びました。技術の進歩がどれほど進んでも、介護は「人のぬくもり」と「まなざし」が中心にある仕事です。この信念をもって、多文化共創の介護を前進させています。
3. 「国際介護リーダー」制度 ― 多文化チームを支える仕組み
文化の違いや言語の壁を超えて共に働くためには、“仕組み”が欠かせません。そこで、三山グループでは、日本語が堪能で文化理解の深い永住者・定住者を「国際介護リーダー」として配置しています。
彼らは、外国人スタッフと日本人スタッフをつなぐ架け橋。日常業務の通訳や文化調整だけでなく、「どう伝えたら相手が前向きになれるか」「どうすれば誤解を生まないか」という現場レベルのサポートを行っています。
この制度によって、外国人スタッフが安心して働ける環境が整い、日本人スタッフも“多様性”を前向きに受け止められるようになりました。結果として、チーム全体の信頼関係が深まり、離職率の低下にもつながっています。
介護の現場で最も大切なのは、「顔なじみのスタッフが変わらずそばにいること」。この安定が、利用者さまにとって何よりの安心であり、ケアの質の礎です。「国際介護リーダー制度」は、その安定を支える大きな柱になっています。
4. 群馬県内で広がる新しい動き
今回の取り組みや認証を通じて、群馬県内の介護施設から新たな反響が生まれています。特に、デイサービス・介護老人保健施設・特別養護老人ホームなどから、「外国人材の採用を検討したい」「受け入れ体制を相談したい」という具体的なオーダーが増えています。
多くの施設長や管理者がミヤマリンクを訪問し、実際の支援体制や現場を見学されています。外国人スタッフが働く姿を自分の目で見ることで、「これなら自分たちの施設でもできる」と前向きに感じてくださる方が増えてきました。
SNSやブログでの情報発信も相まって、「外国人雇用=不安」という固定観念が少しずつ薄れ、「多文化共創=チームの成長」という理解が県内全体に広がりつつあります。
群馬から始まったこの動きが、地域全体での人材確保と介護の質の向上に貢献できるよう、今後も支援と連携を強化してまいります。
5. 次なる挑戦:「多文化共創のテーマホーム」を群馬から全国へ
私たちが描く未来は、“介護施設”という枠を越えた「多文化共創のテーマホーム」です。
それは、国籍や年齢、立場に関係なく、スタッフも利用者も、家族も地域の人も、笑顔で交わり合える場所。まるでテーマパークのように、「ここに来ると元気になれる」「ここが好き」と思える空間を、群馬から生み出していきたい。
このビジョンは、三山グループの経営理念「いま幸せです、ともに想える人生に。」にも通じます。私たちが目指すのは、“共に想い合い、共に創り合う福祉”。その実現に向けて、今後も群馬県と連携しながら、モデルケースとしての施設運営・人材育成・教育支援を展開してまいります。
今回の認証は、ゴールではなくスタートです。「群馬から世界へ」――日本の介護を、世界中の笑顔へとつなげていく。その挑戦の中心に、皆さまからいただいたご支援と共感があります。
◎ 結びに
人員不足を埋めるためではなく、優秀な人材と共に未来をつくるために。そして、誰もが「いま幸せです」と言える人生を支えるために。
皆さまの一口一口のご支援が、確実に地域の新しい風を生み出しています。この挑戦を支えてくださったすべての方々に、心より感謝申し上げます。
これからもミヤマリンクは、地域と世界をつなぐ架け橋として、“多文化共創の福祉モデル”を群馬から発信してまいります。
引き続き、温かく見守り、応援していただけますようお願いいたします。




