
皆様、こんにちは。
ミッドナイトガールズRプロデューサーのフジヤマビルヂングです。
本日は最終章を迎え、寂しい気持ちがあるかと存じますので、
その後地獄についてのミニシナリオをお届けできればと思います。
大変申し訳ございませんが、メインストーリー最終章「真なる星」後編の
ネタバレを含むため、未読の方はお気をつけいただけますと幸いです。

●本日のミニシナリオ●

――地獄。
灼熱の中、魂をマナに還す場所。
大地でマナに戻れなかった魂たちの行き着く場所。
かつて賢者たちによって救済のために作られたそこは、今やあまり意味を為さない場所となっている。
救済は、地上で。
それが今世の常識であった。
魂は、音を発さない。
だからこそ、無念を抱く魂は集合となり、魔物の体を得ようとするのかもしれない。
だからこそ地獄は静けさに包まれている。
その静けさを、一匹の堕天使の叫びが打ち破った。

[ラストス]「だめ! 連れて行くのは禁止!」
[リネッタ]「悪いが、お前ではなくこの科学者に話をしている」
[ギヨタン]「え、えーっと……」
ギヨタンの研究所は常にないくらい、賑やかだった。
かつて旅するサキュバスや人間たちが訪れてきた時以来――
最近は賑やかな時が多かったことをギヨタンは思い出す。
[リネッタ]「私も無理強いするつもりはない。だが、あなたに興味があるなら、一度砂漠の国を訪れてみてはどうだ?」
あまり感情の読めない表情で、堅い態度のリザード、リネッタはそう告げる。
[ラストス]「地獄から悪魔たちも減っちゃって、運営が大変なの。連れて行かれたら困るよ!」
そう息巻くのは、かつて地上を汚染していた堕天使、ラストスだ。
黒い翼をぶわりと広げ、まるで威嚇するように自分より圧倒的に上背のある相手に食って掛かる。
[ギヨタン]「興味……なくは、ないけど……で、でも……」
地上では変わり者扱いされて、忌避される存在だったアンデッドのギヨタンだが、
今となっては自分も井の中の蛙、もっと変わった奴等がこの世には跋扈していることを思い知らされている最中である。
[大嶽丸]「今更運営を気にしだすって、どういう風の吹き回しだよ」
地獄の門番、大嶽丸は酒を流し込みながら茶々を入れるが、ラストスはそれにも律儀に応えてしまう。
[ラストス]「これまでは、私達が取り込んでたからよかったけど、悪魔が減ったから魂が溜まり始めちゃってるのよ!」
[大嶽丸]「お前たちが堕天したのだって最近だろ。どうせ魂が溢れたら地上に押し戻されて、地上の奴らがなんとかするだけだ」
[ラストス]「もう! そういうのが可哀想だから、私が彼氏にしてあげてたのに!」
[ラストス]「それに魂を循環させる新しい方法をニカが天界と相談してるから、どっちにしろテスト運用が終わるまであなた達にはいてもらいたいの……!」
[ギヨタン]「ラストス……なんか、性格変わったよね……?」
[ラストス]「堕天使化のメリットは、このアップデートの速さにあるの♪」
[ラストス]「私の思想の根本は変わってないけど……でも、やり方は変えられると思ったから……」
[ギヨタン]「そっか……」
――
[リネッタ]「いい話をしているところ悪いが、ギヨタンの招聘は女王陛下たってのご希望だ。私もおいそれと諦めるわけにはいかない」
[ラストス]「はぁ~……」
[リネッタ]「そこで、砂漠の国の歴史や魅力を、叙事詩にしてもらってきた。これを是非読んでくれ」
[ギヨタン]「えっ、えっ、すごっ、そして分厚っ!」
リネッタは立派な装丁――見事な職人技によって、金で装丁され、宝石を埋め込まれた本を取り出しギヨタンに渡す。
渡されたギヨタンはあまりにも立派なそれをわたわたと受け取り、大嶽丸は横からそれを覗き込む。
[大嶽丸]「うーむ? 難しすぎねぇかこれ」
[リネッタ]「見事な四行詩の押韻散文で、我が国の哲学を示している」
[ギヨタン]「お、お酒の話ばっかり……書いてある気がするけど……」
[ラストス]「まぁ、読むくらいは問題ないけど……でも行っちゃだめだからねギヨタン」
[ニカ]「あら? 皆さんこちらにいらっしゃったんですか?」
自身を半天使と称する、複数の種族の遺伝子を融合された存在のニカはその白と黒の羽に慣れないのか不器用に畳みながら研究室に入ってくる。
[ラストス]「ニカ! もう戻ったの」
[ニカ]「はい……あの……」
ニカは笑顔を一瞬作ってみたが、すぐに眉を下げる。
[ニカ]「ふ、振られちゃったので……」
[ラストス]「ああ~……」
[ギヨタン]「あ、に、人間くん、に……」
[大嶽丸]「んだよ、そんなの奪い取って犯せ。あれくらいの年頃のオスならイチコロだぞ」
[ニカ]「で、できませんよそんなこと! 私、まだ処女だし……」
[ラストス]「ふふ♥ かわいー♥」
[リネッタ]「…………」
[リネッタ]「きちんと、伝えたんだな」
リネッタの優しい声色に、ニカはこくりと頷きつつも涙を浮かべる。
[ニカ]「あの子にとって、一番がリルムさんだって分かってたけど……でも、伝えたくて……」
[リネッタ]「私は、その勇気を賛美しよう。伝えねば、なかったことになってしまうからな」
[ニカ]「…………ぐすっ」
[ギヨタン]「あ、あ、な、泣いちゃう……」
[大嶽丸]「おお、泣け泣け。女は泣いても強くなる」
[ギヨタン]「ほ、ほら、おいで……」
[ニカ]「うう~……!」
ギヨタンが広げた腕の中にぽすりと収まり、肩を震わせるまだ幼い少女を笑い飛ばす魔物はいなかった。
[ラストス]「ニカも堕天使が混ざってるだけあって、どんどん本能に素直になってきたね!」
[ギヨタン]「あなたも……そう、だけど……」
[リネッタ]「いきなり守護天使になって戻ってきて、しかも地獄を守護するなどと言い出したときには驚いたが、無謀な挑戦ではなさそうだ」
[リネッタ]「……これからもニカは成長するだろう。彼女をよろしく頼む」
[ニカ]「ぐす、んんっ……リネッタさん……帰っちゃうんですか?」
[リネッタ]「いや? 後数ヶ月は粘るつもりだ」
[ラストス]「数ヶ月ぅ~~!?」
[大嶽丸]「じゃあ何で今、良い感じに締めたんだよ」
[リネッタ]「いけなかったか? 伝えておこうと思っただけなんだが……」
[大嶽丸]「別に悪かぁねぇけどよ……オマエも大概天然ボケてんな」
[リネッタ]「??」
[ギヨタン]「さすが……あの一味の、仲間……」
[ニカ]「あ、あの、私もそうだったんですが……!」
珍しく一行は互いに吹き出して笑った。
突然の出会いは、運命の歯車を少し狂わせたのかもしれない。
だが、それが悪いものではないと、長い時を生きた魔物たちは知っていた。
若い堕天使や守護天使は、今からそれを知っていくだろう――。
おしまい。





