
表紙デザインA
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表紙デザインB
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表紙デザインC
「写真提供:Pool/ABACA/共同通信イメージズ」
本書について
反骨の知の巨人・塩原俊彦による2024年度岡倉天心記念賞受賞後の第1作。
政権発足以来100日の間で米トランプ大統領は140以上の大統領令を発布した。そのすべては、ヨーロッパで培われてきた理性や科学に信を置く啓蒙主義のめざす方向性を否定しているようにみえる。あるいは、民主主義や自由の尊重といった普遍的と思われてきた価値観を壊そうとしているようにも映る。

このトランプの破壊力を批判するのは簡単だ。だが、その破壊しようとする力は既存の力のインチキ、欺瞞をさらけ出す面をもつ。本書は、トランプによる新しい「はじまり」が新たな原理を提示しようとしている点に注目し、そこに光を当てている。そう、これまでの「騙(だま)す人」の欺瞞をあぶり出すことで、新たな地平を築こうとする「壊す人」、トランプの野望を積極的に評価するのである。
それは、これまで当たり前であるかのように人々を洗脳してきた、環境保護や人権重視、民主主義の尊重といった見方の影の部分を照らすことを意味する。そして、その影をあえて報道しないことで、こうした価値観のもつ欺瞞を隠蔽してきたリベラル系主流メディアの嘘を暴くことでもある。
具体的には、海外支援を大幅削減するトランプ政策をまるで失策のようにメディアは報じている。だが、これまでこうした予算によって、ウクライナの過激なナショナリストを支援してきたことがウクライナ危機の根本原因となったことを伝えない。民主主義を輸出するために、外国の内政に干渉し、クーデターさえ支援してきた米国の外交政策を転換しようとしているトランプ政権の真のねらいを知る人は少ない。
あるいは、新型コロナ渦以来の米国の保健政策もワクチンでなく日本発の再利用薬イベルメクチンを推奨してきたロバート・ケネディ・ジュニアを保健長官に据えたことも、著者は評価し、最大の課題は米国でも増え続ける発達障害児対策だと指摘する。既存メディアは、「ケネディ=陰暴論者」と報じることで、既得権をもつ者を守ろうとしている。
ウクライナ戦争をめぐっては、「プーチン=悪」「ゼレンスキー=善」と決めつけて報道している日米欧のメディアの嘘を徹底的に暴き、敗勢にあるウクライナ軍兵士の命を救うためにも一刻も早い完全停戦から和平合意が必要とし、トランプの現実を踏まえた判断を著者は支持する。
(株)南東舎としては「ネオ・トランプ革命の衝撃」(半沢隆実著)に続く、角度を変えたトランプ本第2弾。
目次(仮)と一部抜粋
はじめに
第一章 ネオ・トランプ革命を探る
(1)ネオ・トランプ革命の全体像
(2)短期的な観点からの復讐・報復
(3)トランプ外交
(4)就任日に出した大統領令
第二章 芸術の政治化
(1)ケネディ舞台芸術センター
(2)狙われるブルータリズム
第三章 言語の政治化
(1)言葉狩り
(2)消えたDEI
(3)米国の公用語としての英語指定
第四章 科学の政治化
(1)科学の政治化をめぐる基礎知識
(2)狙われる国立衛生研究所
(3)ロバート・F・ケネディ・ジュニアの保健福祉長官就任
(4)AI規制
第五章 トランプ関税
(1)いわゆる「相互関税」
(2)各国別適用について
(3)関税をめぐる考察
第六章 ウクライナ戦争の停戦・和平
(1)恥ずべきマスメディア
(2)情報操作:露骨にウクライナの味方をするオールドメディア
(3)恥ずべき学者
(4)恥ずべき政治家
第七章 鉱物資源をめぐる争奪戦
(1)ロシアの天然資源を窃盗した米国
(2)ウクライナ
(3)グリーンランド
第八章 リベラルデモクラシーという「仮面」
(1)リベラル派の矛盾
(2)USAIDとNED
(3)民主主義の虚妄
第九章 復讐・報復
(1)恨み骨髄:「盗まれた選挙」
(2)先制恩赦
(3)「法の支配」への挑戦
(4)復讐・報復をどう考えるか
第十章 新しい地政学的地平
(1)揺らぐ「国家の安全保障」
(2)日本への問いかけ
あとがき
「はじめに」から抜粋
ここで紹介した「はじまり=原理」という条件をトランプの新政権がもっていると考える最大の理由は、トランプがヘゲモニー(覇権)国家アメリカの構築してきた秩序や価値観の体系のようなものを壊そうとしている点にある。そう、トランプは「壊す人」(disrupter)なのである。
その結果、そうした秩序や価値観への信頼もまた揺らいでいる。それは信頼に支えられた「知」の体系そのものもまた崩しつつある。「多様性、公正性、包摂性」を意味する“diversity, equity and inclusion”(DEI)という言葉の「言葉狩り」をも生み出し、少しずつ言語にも大きな変化を引き起こそうとしているようにみえる。
あるいは、これまで使われてきた言葉の意味に明らかな変化が生じている。2025年2月17日付のワシントン・ポストは、たとえば、連邦政府における透明性(transparency)は、データ、連邦契約書、政府報告書へのアクセスを意味していたのに、トランプ政権になって、トランプ大統領が記者からの質問によく答えるので、政権は透明だというようになったと報じている。
こう書くと、トランプがとんでもないことを仕出かしているという印象をもつかもしれない。いわば、近代化以降に培ってきた西洋文化そのものを否定し、近代以前に引き戻そうとする「反革命」をしている感じさえもつかもしれない。だが私はこうしたトランプの仕掛けている変革を高く評価している。もともとの中国語の革命がイメージする、虎の毛の抜け変わりによって虎の美しい紋様が引き出されるような印象をもっている。だからこそ、あえて革命という言葉を使いたいと思った次第である。
第3章 言語の政治化から抜粋
企業の「嘘」
「多様性、公正性、包摂性」(DEI)騒動は、企業のいい加減さやいかがわしさを教える契機になっている点も指摘しておきたい。これは、「ピンクウォッシング」(pinkwashing)または「レインボー資本主義」(rainbow capitalism)と呼ばれている現象だ。前者は、「真実を覆い隠し、悪いことを良く見せかけること」という意味の「ホワイトウォッシング」(whitewashing)と、同性愛者のシンボルとされる色、「ピンク」を組み合わせた言葉で、企業などが「LGBTQ+」などの性的マイノリティの包摂や権利保障の面で他企業よりも先進的であることをアピールすることで、その他のマイノリティの排除や人権侵害から目をそらそうとしていることを批判するために生まれた表現だ。後者は、とくにLGBTQ+の人たちのためのプライド月間やLGBTQ+のイベント期間中に、企業が利益のためにLGBTQ+のアイデンティティやシンボルを流用し、消費者にアピールする現象を指し、他方で、LGBTQ+の権利や問題に対する真の支援を欠き、運動そのものを商品化することで金儲けに利用しようとしている。
トランプ政権がDEIに厳しい姿勢を示しただけで、セクシャル・マイノリティのパレード・イベント(プライド)への支援から多数の企業が離脱しているのだ。ニューヨーク・タイムズは、2025年のサンフランシスコ・プライドに企業スポンサーから230万ドルを集めることを期待していたが、3月中旬の時点で確保できたのは100万ドルのみだったと報じている。つまり、企業は自分たちに金銭的な利益をもたらす場合にのみ、そのコミュニティを支援しているようにみえる。まさに、「ピンクウォッシング」や「レインボー資本主義」という企業の不誠実、嘘に多くの消費者はだまされてきたのではないか。そんなことをネオ・トランプ革命は教えてくれている。

第6章 ウクライナ戦争の停戦・和平から抜粋
欧米諸国や日本のオールドメディアは、ウクライナの敗戦が濃厚であることを報道してこなかった。欧米諸国などからのウクライナ支援があれば、ロシアを圧倒し、ウクライナ東部はもちろん、クリミア半島まで奪還できるかのような報道を3年間もつづけてきた。だが、実際には、もはや何年戦争をつづけても、それらを取り戻すことは困難であり、悪くすると、より大規模な領土を失いかねない絶望的な状況にある。だからこそ、トランプは、「君は数百万人の命を賭けている。第三次世界大戦を賭けている」とのべ、戦争を継続することで人命を弄んでいるゼレンスキーを厳しく批判したのだ。「私は停戦を望んでいる。なぜなら、停戦は合意よりも早く実現できるからだ」と語ったトランプは一刻も早く戦争を停止することで、ウクライナ国民の死を少しでも減らそうとしているのである。
<参考記事>
トランプの「ウクライナ植民地計画」をなぜゼレンスキーは容認したのか?
現代ビジネス・塩原俊彦
https://gendai.media/articles/-/151892
出版概要
ページ数 380ページ
定価 2,500円(予定)
刊行予定 2025年7月下旬
※ソフトカバー、帯付き
著者略歴

塩原俊彦、1956年生まれ。学術博士(北海道大学)。評論家。1981年慶應義塾大学経済学部卒。同年、日本経済新聞社入社。1988年一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。同年朝日新聞社入社。1995~1998年モスクワ特派員、2000年高知大学人文学部准教授、2022年同退任。。『帝国主義アメリカの野望』によって2024年度「岡倉天心記念賞」を受賞。以下の著書がある。
【ウクライナ】『ウクライナ戦争をどうみるか』(花伝社、2023)、『復讐としてのウクライナ戦争』(社会評論社、2022)『ウクライナ3.0』(同、2022)、『ウクライナ2.0』(同、2015)、『ウクライナ・ゲート』(同、2014)
【ロシア】『プーチン3.0』(社会評論社、2022)、『プーチン露大統領とその仲間たち』(同、2016)、『プーチン2.0』(東洋書店、2012)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(岩波書店、2009)、『ネオ KGB 帝国:ロシアの闇に迫る』(東洋書店、2008)、『ロシア経済の真実』(東洋経済新報社、2005)、『現代ロシアの経済構造』(慶應義塾大学出版会、2004)、『ロシアの軍需産業』(岩波新書、2003)などがある。
【エネルギー】『核なき世界論』(東洋書店、2010)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局、2007)などがある。
【権力】『なぜ「官僚」は腐敗するのか』(潮出版社、2018)、『官僚の世界史:腐敗の構造』(社会評論社、2016)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた:官僚支配の民主主義』(ポプラ社、2016)、Anti-Corruption Policies(Maruzen Planet、2013)などがある。
【サイバー空間】『サイバー空間における覇権争奪:個人・国家・産業・法規制のゆくえ』(社会評論社、2019)がある。
【地政学】『知られざる地政学』〈上下巻〉(社会評論社、2023)、『帝国主義アメリカの野望:リベラルデモクラシーの仮面を剥ぐ』(同、2024)がある。
リターンについて
2,500円 本書1冊+御礼メッセージ
5,000円 本書2冊+御礼メッセージ
5,000円 本書1冊+御礼メッセージ+塩原俊彦講演会ご招待
10,000円 本書4冊+御礼メッセージ+塩原俊彦講演会ご招待
20,000円 本書5冊+御礼メッセージ+塩原俊彦講演会ご招待+著者との出版記念懇親会ご招待
50,000円 本書10冊+本書著者サイン入り1冊+御礼メッセージ+塩原俊彦講演会ご招待+著者との出版記念懇親会ご招待
スケジュール
6月 クラウドファンディング開始
7月31日 クラウドファンディング終了
8月中旬 リターン発送
9月中旬 都内にて塩原俊彦講演会、出版記念懇親会(食事付)開催
最後に
(株)南東舎は2017年に創業登記後、2023年より本格始動した出版社です。一般書のほか、外国語による出版、外国語原書の日本語翻訳出版に力を入れています。23年から25年にかけてビジュアル季刊誌「REAL ASIA」、「Ivermectin-Testimonials by Clinicians Worldwide」(ポール・マリック編・英語版)、「ネオ・トランプ革命の衝撃」(半沢隆実著)、「14字からの作文術」(大西督人著)などを発行してきました。また、代表取締役・石山永一郎は元共同通信編集委員で「ルポ・戦争と平和 彼らは戦場に行った」(共同通信社)「ペルー日本大使公邸事件」(同)「日めくり日米開戦と終戦」(文芸春秋)「ドゥテルテ」(角川新書)など、自身も著作が多数あります。
2025年5月14日から南東舎として初めて挑戦した「イベルメクチンー世界の臨床医の証言」の日本語訳出版プロジェクト(下記アドレス参照)は、おかげさまで多くに皆様にご支援いただいておりますが、何卒当プロジェクトにつきましても温かいご支援を賜りますようよろしくお願いいたします。
https://camp-fire.jp/projects/847236/view
南東舎
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現代ビジネス・塩原俊彦連載より(2025.06.25掲載)
2025/07/08 14:02※画像は生成AIによるイメージ画です兵士不足のウクライナ軍が外国傭兵部隊と化していく現実6月20日、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムの全体会議に出席したウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナの兵員不足について興味深い指摘をした(下の写真)。「戦闘部隊の人員配置は47%だ。全部で47%だ! 彼らは基本的に戦闘態勢を失っている」この47%という数字の根拠は示されていない。それでも、ロシア側からみて、ウクライナ側の兵員の数があまりにも少ないというのが実感であることが想像できる。つまり、このサイトで何度も書いてきたように、ウクライナは敗色濃厚なのだ。そもそも、戦うべき兵士がいないのだから。拙稿「【信じられない真実】3年目の新年、すでにウクライナ戦争の勝負は決している」において紹介したように、もはや戦争に勝てると思っているウクライナ人は少数にすぎない。2022年2月24日以降のウクライナ戦争勃発直後には、侵略された側のウクライナの軍隊の士気はたしかに高かった。ゆえに、志願してウクライナのために戦おうとする若者も多かった。だが、戦争が長引くにつれて、あるいは、負け戦になるにつれて、ウクライナの人々のなかには、兵役を忌避したり、国外に脱出したりして、何とか兵士への動員から逃れようとする者が急増している。兵士になっても、「脱走」という手がある。前述の拙稿で紹介したように、脱走兵数が「20万人に上る可能性がある」。こうした厳しい「現実」に対応するため、ウクライナ政府は、路上強制連行(「バス化」)を黙認してきた。だが、不条理な暴挙への風当たりは強く、各地で、強制連行を働いている地域募集センター(TCC)と地元民の騒動が頻発している(拙稿「ウクライナで恐ろしい「バス化」=路上強制兵役連行が頻発中!」を参照)。外国人傭兵への依存が増す一方ロシア軍もすでに「多国籍軍」深刻なウクライナの兵員不足ウクライナで腐敗が蔓延副首相にも嫌疑がかかったウクライナのラスプーチン※記事全文は下記アドレスにてご覧いただけますhttps://gendai.media/articles/-/153884?imp=0 もっと見る
現代ビジネス・塩原俊彦連載より
2025/06/27 15:152025.06.18トランプがカリフォルニア州に激怒した背景を明かそう6月6日、少なくとも44人が拘束された米移民税関捜査局(ICE)の強制捜査を受けて、ロサンゼルスで大規模な抗議デモがはじまった。6月7日、ドナルド・トランプ米大統領は、州兵2000人をロサンゼルスに派遣するよう命じた(写真(1))。「合衆国政府の移民局とその他の職員を一時的に保護するため、連邦軍兵士と州兵部隊を要請する」と、ホワイトハウスのウェブサイトに掲載された関連覚書に記されている。この騒動に刺激されて、別の州でもICEの行動に抗議する声が広がった。6月14日には、アメリカ陸軍250周年(ドナルド・トランプ大統領の79回目の誕生日でもある)を称える祝典(写真(2))の一方で、反トランプを呼びかける団体連合によって組織された 「No Kings」運動の一環として、全米50州で2000を超す集会が開催された(写真(3))。就任日に署名した大統領令1980年代に始まった聖域運動「聖域なき都市救済法」制定の動き昨年11月「聖域都市」となったロス注目されるトランプの署名ネオ・トランプ革命の深層このように、トランプの政策には、その背後にそれなりの理由がある。もちろん、その理由に疑義があったり、政策に欠陥があったりすることもある。そうであっても、「トランプ=悪」といった偏向報道は決して認められない。そう考えると、日本のオールドメディアによるトランプ報道は大いに非難されるべきだろう。何よりも、読者のなかに、私のここでの説明を知らなかった方がいるとすれば、いかにオールドメディアがひどいかを実感してもらえるのではないか。この許しがたいオールドメディアへの挑戦状として、7月に拙著『ネオ・トランプ革命の深層』が刊行される。オールドメディアによる偏向報道のせいで、トランプが懸命に行おうとしている「革命」の真意を多くの日本人が誤解している。そうした誤りを糺すために、拙著では、オールドメディアの情報にはない、もっと真っ当な情報や視角が提供されている。ただし、こうした態度をとっていると、必ずや目の敵にされる。本を上梓するにしても、さまざまな妨害に出合う。そこで、今回は、出版社が「キャンプファイヤー」というクラウドファンディングに頼ることにした(下を参照)。この記事や過去の記事を読んだうえで、支援をいただけるのであれば、アクセスしてほしい。そして、多いに拡散してほしい。オールドメディアに対抗するには、SNSのもつ潜在力を示す必要があるからだ。※記事全文は下記アドレスにてご覧いただけますhttps://gendai.media/articles/-/153646?imp=0 もっと見る






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