自己紹介

近年、海ごみの増加にともない、マイクロプラスチック(5 mm以下の小さなプラスチック片)が大量発生しています。海ゴミの量は、2050年までに魚の量を上回る可能性があるとも指摘されています。実際、海洋生物がゴミを誤飲・誤食してしまうといった被害は既に深刻な事態にあり、市販の食品からもマイクロプラスチックが見つかる例が報告されています。プラスチックによる汚染は食卓をはじめとし、私たちの生活に少しずつ近づいています。人間への有害性はまだはっきりしない点が多いものの、研究が進むにつれて懸念が示され、今注目される環境問題となっています。
なぜ、さまざまな分野で科学技術が目覚ましく発展しているのにもかかわらず、プラスチック問題はなかなか改善しないのでしょうか。その理由の一つは、環境中に散らばったプラスチックを回収して分別するだけで膨大なコストがかかることです。もう一つは、プラスチックは化学的に非常に丈夫な構造を持っており、自然環境では分解されにくい性質をもつことです。このように頑丈なペットボトルは、自然界に放置すると450年も分解されずに残ると言われています。そのため、薬品などでまとめて処理する方法も、現時点では簡単ではありません。
そこでミジンコPETは、いきものの行動を利用してマイクロプラスチック問題の解決に挑みます。生き物は自分で動き、えさを選んで食べるため、回収して分別するプロセスを簡略化できる可能性があります。ただし当然のことながらミジンコはプラスチックを消化できません。そこで、近年発見されたプラスチックを分解できる酵素を応用し、ミジンコの腸内細菌がこの酵素を作れるようにします。私たちは、プラスチック問題を解決するための強力な手段になりうる、独創的で画期的な技術開発を目指しています。
沖縄の浜辺 海がきれいな観光地でもプラスチックゴミが目立つ
ミジンコPETはNPO法人のOpen PETaseという団体の活動から派生したプロジェクトです。発案者である学生がメインで研究活動、および教育活動を行っています。現在も大学のラボで、ミジンコの腸内細菌に関する研究を進めています。
なお、この研究は、茨城県つくば市にあるミジンコ屋さん「きずなみじんこ」さんによるミジンコの無償提供などの支援を受けて活動を行っています。
このプロジェクトで実現したいこと
このプロジェクトの目標はマイクロプラスチック問題の解決に貢献することです。そのために、技術開発につながる研究に取り組むと同時に、ミジンコを題材としたワークショップを通して科学への関心を広げ、プラスチック問題を社会へと発信していきます。
なぜミジンコなのか
色付き粒子を食べたミジンコ ミジンコは「濾過摂食動物」といって、水の中に浮かぶ小さなプランクトンを濾し集めて食べる性質を持つ生き物です。ミジンコと一口に言ってもさまざまな種類がいますが、大きい種類では体長が3~5 mmほどになり、一日におよそ100mlの水を濾すことができます。条件が合うと、ミジンコが増えることで水中の細かな粒が減り、水が澄んで見えることがあります。この性質をよく表しているのが上写真の色付き粒子を食べたミジンコです。食べた色付き粒子によって腸がわかりやすく染まっています。このように見て楽しいミジンコを使ったワークショップも考えています。
蓄光ラメを食べさせたミジンコ
環境中に大量にあって回収が難しいマイクロプラスチックも、ミジンコたちがぱくぱく食べてくれたら問題が解決すると思いませんか?マイクロプラスチックの大きさはさまざまですが、その中にはミジンコが普段食べている植物プランクトンと近いサイズのものもあり、ミジンコはそれを餌と間違えてかき集めて口に入れます。もちろんミジンコはプラスチックを消化することはできませんが、もし、腸の中にプラスチックを分解できる腸内細菌がいたらどうだろうと考えました。
ミジンコの腸内細菌がプラスチックを分解するには、分解のための「酵素」という働きを持つタンパク質が必要になります。そこで注目したのが、プラスチックの一種であるポリエチレンテレフタラート(PET)を分解できる、イデオネラ・サカイエンシスという細菌です。この細菌は、PETを分解するのに役立つPETaseとMHETaseという二つの酵素を作り出します。私たちはこの仕組みを応用し、ミジンコの腸内細菌にも同様の酵素を作らせ、腸の中で働かせることを目指します。この酵素、実は日本の大阪府堺市で発見された"サカイ"エンシスという細菌から見つけ出され、その後の研究は世界中で急速に広がっています。日本発の発見が国際的に発展していく流れの中で、私たちもこの分野に貢献したいと考えています。
この研究の価値は、マイクロプラスチック問題への貢献だけにとどまりません。腸内細菌に着目し、生き物に新しいはたらきを持たせるという考え方がうまくいけば、応用の可能性が広がります。例えば、ミジンコで仕組みが成立すれば、貝やフジツボなど、同じように水中の粒子を集めて食べる生き物にも応用できる可能性があります。さらに将来的には、別の生き物に別の分解能力をもたせることで、土壌汚染など他の環境問題にも目を向けられるかもしれません。社会に役立つだけでなく、新しい研究の道を開く“可能性のある研究”だと私たちは考えています。
一方で、人間が手を加えた生き物や微生物を環境中に広げてしまうことは避けなければなりません。そこで、倫理面と安全面を重視し、まずは人間が管理できる閉じた環境の中で段階的に検証し、拡散を防ぐ方法を含めて慎重に研究を進めます。
プロジェクト立ち上げの背景
このプロジェクトは、たくさんの教授や研究者の方にフィードバックをいただき、理論上は可能といわれています。そしてコンテストなどでたくさんの評価を受けて実現しました。

この研究はまだ誰もやっていない「新しい」試みです。実はこれには、マイクロプラスチック問題が無視されやすいという残念な背景が関係してます。マイクロプラスチックは、現時点で人の健康への影響がはっきり断定できる段階ではないこともあり、「今すぐの危険」として実感されにくい側面があります。そのため、対策の優先順位が下がったり、議論が後回しになったりしがちです。加えて、目に見える即時的な被害が少ない問題は、短期間で成果が見えにくく、研究や対策に資金が集まりにくい傾向があります。
しかし私たちが「いま」不便を感じていないとしても、影響が積み重なった結果として負担を背負うのは将来の世代です。問題が十分に深刻化してから解決策を探し出すのでは手遅れになってしまいます。目に見える即時的な被害がないことを理由に、「プラスチックが混入した食物を摂取せざるを得ない日常」を次世代に強いることにならないため、私たちは「いま」この問題に取り組みます。どうしても目先のことばかり考えがちな世の中ですが、業績や儲けにとらわれない、こういった「大人がお金を出さない」ような研究に責任と自信をもって取り組んでいきたいと考えています。
研究計画
本研究はすでに実施段階にあり、ミジンコの腸内細菌の培養・単離までは進んでいます。今後の計画は、次の3つのステップで進めます。

ステップ1. ミジンコ腸内細菌の定着法の確立
最初のステップではミジンコのをミジンコの腸内に安定して住まわせる方法を確立します。せっかくプラスチックを分解できる腸内細菌が完成しても、それがミジンコの腸内に住んでくれなければ意味がないからです。このためには、ミジンコの腸内細菌をいったん減らしてから新しい菌を入れるプロセスが必要になります。既にミジンコの腸内細菌の培養、単離には成功しており、次の段階として定着条件の最適化に取り組んでいます。
ステップ2. 腸内細菌の機能のデザイン
次に、腸内細菌にプラスチック分解のはたらきを持たせることを目指します。このために、腸内細菌にプラスチック分解酵素を作らせる設計を行います。作らせる酵素は改良をすることによって性能を高めることができるので、より分解効率のよい酵素の作製も進めます。
ステップ3. マイクロプラスチック分解能力の評価
最後のステップでは、ステップ1と2を組み合わせ、腸内に定着した細菌が実際にプラスチックを分解できるかを評価します。腸内に細菌が定着できること、かつ、定着した細菌が分解酵素を十分に作り出せることの2つの条件を同時に満たす必要があります。ミジンコにマイクロプラスチックを与え、取り込まれたプラスチックが腸内でどの程度分解されるかを測定・検証します。
研究費、学会での発表やワークショップを通して社会への発信をしていくための資金が必要といった状況です。
リターンについて

5000円以上の寄付からは、研究者自らが浜辺で拾ったマイクロプラスチックで作成した作品を提供いたします。こちらはアスカさんという美大の学生さんが手がけて下さりました。マイクロプラスチックを込めて紙をすき、ミジンコの形に切り抜いた作品です。
スケジュール
2026年
2月 クラウドファンディング開始
4月 クラウドファンディング終了
5月 リターン発送
8月 ミジンコを通して科学に触れるワークショップを開催
(子供向けに自由研究の時期に合わせる予定)
12月 研究成果報告
最後に
このプロジェクトを"面白い"とおもっていただける方に、ぜひともご協力をお願いしたいです。
応援よろしくお願いします。






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