
今日は、昨年のフジテレビヤングシナリオ大賞で二次通過した作品についてお話します。
『しきなみ』というタイトルで太平洋戦争の出来事を基にフィクション作品を書きました。大変用戦争中期~末期において南太平洋戦線で日本軍は劣勢を強いられ、米軍に制空権を奪われたため、南の島に逗留していた一部の輸送船団は完全に孤立してしまいました。
敵の制空権下で無防備の船を移動させるのは、ただガソリン缶を大海原に浮かせているようなものです。結果多くの船が沈没し、多数の戦死者を出しました。その船の中には国際条約で守られているはずの病院船も含まれていたのです。
これも実は伏線があり、日本軍は国際条約を守られているのをいいことに傷病人以外の軍人や兵器を隠して病院船で移動させていた経緯があり、米軍はその事例から病院船も攻撃していました。※当然、日本軍は激しく抗議しますが、米軍はやってないと言います。構図がウクライナとロシアの戦争に近いですね。
その南太平洋で沈んだ病院船から脱出し、5日間漂流の末、幸運にも日本に帰還した人々がいたのです。しかし、その人たちの証言は戦意高揚の妨げとなるため、絶対に他言を許されません。
当時、大阪商船(現・株式会社商船三井)という海運会社があり、大阪商船の船も例外なく甚大な被害を負いました。当時の広告は絵の広告が主流だったので、大阪商船では画家を雇っていました。「歴史の事実を残そう」という重役のはからいから南太平洋から生還した人々の証言を集めて画家に絵を描かせたのです。
これらの絵画はすさまじく、ショッキングな内容の絵も多く含まれおり、戦争の惨禍を伝える絵画として歴史的価値のあるものでしたが、世相から世に出ることはありませんでした。
戦後になり、大阪商船のビルが大雨で浸水被害に遭いました。浸水した地下を掃除していた社員が、沈没しそうな船ばかり描かれた異様な絵画の一部を発見したのです。
絵画は保管状態が悪く、挙句浸水したため、ほとんどボロボロの状態で見つかりましたが、奇跡的に数枚の絵は復元をすることができそうな状態でした。
絵画はすぐに復元され、見る者の多くの心を打ちました。『戦時徴用戦の最期』という画集で今も見ることができます。
戦時中2500隻以上の船とともに6万人以上の命が失われました。私の祖父の兄も輸送船での移動中に亡くなっています。海で死んでも何も残りません。この画集は海の証言を集めた貴重な絵画です。
その亡くなった方々の思いを脚本にして書いたのが『しきなみ』という作品でした。



