はじめに
和歌山県・広川町。
青い海と緑の山が寄り添い、潮風がそよぎ、ゆったりとした時間が身体に馴染んでいく小さな町。海沿いの道を歩くと、寄せては返す波の音が足元から響き、風には潮の香りが混じって肌をやさしく撫で、心が静かに落ち着いていきます。季節が移り変わるたび、この町はまったく違う表情を見せてくれます。
夏の朝、蝉の声が山に響き、海風が木々の葉を揺らす音が聞こえてきます。秋になると、収穫を終えた畑の土の匂いが風に乗り、冬には、海面に反射する朝日が町全体を淡く照らし、人々の営みのぬくもりを感じさせます。
そんな広川町に、古くから地域に根付く建物を丁寧に再生して生まれた、全4室の小さなオーベルジュ「潮香・いさり」があります。
訪れる方が土地の記憶や人々の営みに触れ、五感をゆっくりとほどいていくための“静かな時間の入口”です。
梁や建具には、この建物が過ごしてきた年月の痕跡がそのまま残っています。風が通り抜ける音、波のさざめき、器が触れ合うかすかな響き、木が軋む柔らかな音。
日常では気にも留めない小さな音たちが、ここでは不思議と豊かに聞こえ、心をゆったりと落ち着かせてくれます。朝の縁側には光の粒がこぼれ落ち、夕暮れには、庭の木々の影が静かな夜の準備を始めます。
ここでの時間は、慌ただしい日常とはまったく違うリズムで流れていきます。
今回のプロジェクトでは、この空間がもつ「静かな豊かさ」をより深く味わえるように、広川町の自然・文化・暮らしに触れる体験アクティビティを新たに整備し、滞在価値を更に豊かにすることを目指します。ハンモックに揺られて夜空を見上げ、薬草香る足湯で心身を温め、地元農家で季節の恵みを収穫する。それぞれの方が、自分のペースで選び、楽しみ、心を整える時間を生み出していきます。
宿の成り立ちと想い

「潮香・いさり」がある建物は、かつて漁網工場でした。広川町では昔から海とともに生きる文化があり、江戸時代には広浦の漁民が出漁していた記録も残っています。近代に入ってからは製網業がこの地域を支える産業のひとつとなり、昭和40年頃まで、ここでも毎日のように網を編む音が響き、木の道具が触れ合う音が日常のリズムを刻んでいました。漁師たちは早朝に海に出て、戻ると網の手入れをし、町の人々と収穫を分かち合う。網を編む手の動きや木の道具のぶつかる音は、この家の空気に刻まれ、町の営みとともに生きてきました。
時代は移り、建物は静かな空き家となりました。しかし、梁や柱、建具に触れたとき、そこには確かに人々の手の温もりや気配、仕事の記憶が残っていました。
木の香りとともに、当時の空気がふっと蘇る瞬間があったのです。この場所が紡いできた歴史に敬意を払いながら、「もう一度、この家に人の笑顔と灯を取り戻したい」その思いから、古民家再生プロジェクトが始まりました。
梁や壁、床を丁寧に修復し、古き良き木の温もりを残しつつ、水回りや寝具は新設。懐かしさと快適さが共存するように、細かな部分まで手をかけ、時間をかけ、安全で清潔、かつ心地よく過ごせる空間を整えました。
宿の名前“いさり”とは、夜の海で漁火を灯して魚を誘う漁(いさり)のこと。自然と人との営みがが静かに交わる様子をこの宿の名前に重ねています。
客室にはテレビを置いていません。
風の香り、木々の揺れる音、器の微かな響きが、この宿での物語を静かに彩ってくれるからです。訪れた人は、ここで自分自身の呼吸や心のリズムを取り戻し、心の深いところにある“静けさ”と再びつながっていきます。
宿に滞在するだけで、広川町の豊かな四季や生活の香りを全身で感じられるのです。
プロジェクトの目的

今回のクラウドファンディングを通して実現したいのは、
「宿泊という行為を、広川町の自然・文化・人の営みと結び付け、より深い記憶として残る体験にすること」です。そのための3つのテーマがこちらです。
1. 自然と調和する体験づくり
ハンモックに揺られながら満天の星空を眺める夜、足元には小さな虫たちの声が響き、遠くには海面に反射する月明かりが揺らめきます。訪れる方は、人工的な光や音に邪魔されることなく、夜空の広がりと時間の流れを肌で感じられます。また、季節ごとの海や山の恵みを収穫する体験も提供します。みかん畑では、太陽を浴びて色づいた実を手で摘み、果皮の香りを楽しみ、収穫の喜びを感じます。春には新緑の山道を散策し、野生のハーブや花々に出会いながら自然を観察。夏には海辺の風に吹かれながら潮風の香りを胸いっぱいに吸い込み、秋には落ち葉の香りや肌に触れる風の涼しさを体感できます。自然に寄り添う時間は、都会の生活では得られない“心身の回復”に繋がります。
2. 安心して楽しめる体験環境の整備
ハンモックの安全性、庭の導線、足湯設備、アクティビティの道具、すべてを「どんな方でも安心して楽しめる」ように整えていきます。
悪天候時の代替体験も用意し、室内での仕込み体験やクラフト体験など、季節を問わず楽しめる時間を設計します。
訪れた方が迷うことなく自由に選べるように、スタッフのサポート体制も整えていきます。
3. 地域とつながる滞在の構築
広川町の地元農家や生産者と連携し、収穫体験や仕込み体験を通して「地域の暮らし」に触れられる機会を生み出します。
仕事を手伝いながら地元の人と交わす何気ない会話が、旅の思い出をより深くし、その土地が持つ文化や空気を“身体感覚”として残してくれます。地域と宿泊者がつながることで、滞在が単なる旅行体験ではなく、町と人々の記憶を共有する場に変わります。
プロジェクトを通じて整備された環境は、訪れる方々に他では得難い体験を提供し、広川町の活性化にもつながると私たちは信じています。
レストラン「潮香」・ホテル「いさり」の魅力
■ ミシュラン星付きレストラン出身シェフによる料理

潮香・いさりの滞在の中心には、食があります。約6年半にわたりフランスのミシュラン星付き店を含むレストランで腕を磨いたシェフが手掛ける料理は、華美な装飾や派手な演出ではなく、素材そのものの味わいを最大限に引き出すことに重点を置いています。
広川町の自然が育んだ食材を厳選し、その季節の最も美味しい瞬間を見極めて調理します。新鮮な地元野菜、海で揚がったばかりの魚、手間を惜しまない下ごしらえ――すべてがひとつの皿に集約されます。例えば、旬の魚を軽く炙り、皮の香ばしさと身の柔らかさを両立させる。野菜は火入れの温度や時間、切り方や盛り付けの角度まで計算され、口に運ぶと、素材の甘みや香りが瞬時に広がります。
一皿を前にしたとき、目で見て楽しみ、香りで誘われ、口に入れた瞬間に舌と心で味わう――その一連の体験が、訪れる方に「土地の記憶」を呼び起こします。皿の余白や盛り付けさえも、料理の一部として五感に響き、食事の時間そのものが感覚の旅になります。
さらに、料理の背景にあるストーリーも大切にしています。地元農家の人々が育てた野菜の色や形、漁師が手にした魚の鮮度、季節の移ろい。それらすべてを知ることで、食卓での一口がより深く記憶に残る体験になります。
「潮香・いさり」の食卓は、滞在者が町や自然との距離を縮め、
日常から離れ、感覚を研ぎ澄ます時間の中心です。
料理を通して、広川町の風土や歴史、そして人々の営みを五感で味わうことができる体験を目指しています。
■ 歴史の息遣いと快適性

水廻りや寝具は新設し、古民家の趣を残しながら快適に過ごせるように整えました。
DNAに刻み込まれた懐かしい落ち着きと現代的な清潔感が同居する空間で、心身がほどけていくような時間をお過ごしいただけます。
■ 宿泊中に楽しめる体験の数々
「潮香・いさり」では、滞在中に体験できるさまざまな活動をご用意していく予定です。
訪れる方はご自身のペースで自由に過ごすことができます。

(※アクティビティの一例のイメージ画像です。)
滞在中のひとときを通じて、広川町の自然や文化、そして町の暮らしを肌で感じることができます。
体験の一例
- 星空ハンモック体験
宿の静かな庭に設置されたハンモックに身を預け、夜空を見上げる時間は、日常では味わえない特別な瞬間です。人工的な光の少ない広川町の夜空には、天の川や流れ星がくっきりと浮かび上がり、星々の輝きが心に静かな感動を与えます。風に揺れるハンモックと、夜の虫の声が重なり、五感が研ぎ澄まされるようです。星空を眺めながらゆっくり呼吸を整え、静けさの中で心を解放するひとときは、日常の喧騒から離れ、自然との一体感を体感する時間です。
- 自然由来の薬湯の足湯体験
みかんの皮やしょうが、ハーブなど、自然の恵みを使った薬湯の足湯は、足元から体全体を温め、血流を促します。
湯に漂う柑橘やハーブの香りがふんわりと鼻に届き、リラックス効果を高めます。寒い季節には、湯気の向こうに見える星空や街灯の柔らかな光が、静かで幻想的な時間を演出します。
- 農家での収穫体験
和歌山県は、みかんの生産量日本一を誇る地域です。
宿泊者は、地元農家の畑で旬の果物や野菜を収穫する体験ができます。
手で摘み取ったみかんの香りや、木の枝に触れる感覚、果実をそっと抱えたときのずっしりとした重み――
五感で感じる体験は、単なる観光では得られない喜びをもたらします。
収穫した果物は、宿の食卓にも反映され、食べることで町とのつながりを直接感じることができます。
- マクラメハンギング × 生け花体験
海辺の街をイメージしたガラス浮き球のマクラメハンギングを手作りし、そこに生け花を施す体験もあります。
手を動かしながら、自分だけの作品を完成させる時間は、静かで集中力を高めるひとときです。
完成した作品はレストランの壁に飾られ、ディナーの時間に眺めることができます。
もちろん、お土産として持ち帰ることも可能で、宿で過ごした記憶が形として残ります。
- その他の季節限定体験
釣りと干物づくり、地元食材を使ったドレッシング作り、書初めや季節の手仕事体験なども計画中です。
どの体験も、訪れる方が町の文化や生活に触れ、自然の変化や季節感を実感できるよう設計されています。
体験の内容は季節や天候によって変わりますが、いずれも滞在者の五感と心を満たす時間になることを目指しています。
なぜクラウドファンディングに挑戦するのか
「潮香・いさり」は、地域の人々の手と想いによって生まれた宿です。古民家としての建物は、かつて漁網工場として町の生活を支えてきました。長年の営みの中で刻まれた時間や、手仕事の痕跡は、単なる建物の構造ではなく、町の歴史そのものを語る存在です。
しかし、建物が再生された現在も、訪れる方々に広川町の魅力をより深く伝えるためには、宿泊だけでは不十分です。宿が持つ可能性をさらに広げるには、地域と宿泊者が出会う“体験”の整備が不可欠だと感じています。
このプロジェクトを通じて、宿と地域が一体となった新しい価値を創造したい――その思いが、クラウドファンディングに挑戦する理由です。支援者の皆さまとともに、宿の滞在体験を充実させ、地域の文化や暮らしを次世代に伝える場を育てていきたいと考えています。
また、宿泊者の体験や感動が、町の活性化にもつながると信じています。収穫や手仕事、星空観察や足湯など、一つひとつの体験が訪れた方に小さな喜びを届け、地元の生産者さんや職人さんにとっても価値のある時間になります。宿と町、訪れる人と地域の人々が互いに関わることで、より豊かな滞在が生まれ、町全体に新たな価値が広がります。
このプロジェクトは、この小さな古民家から始まる「広川町の記憶を体感する旅」を共に作る参加でもあります。一人ひとりの応援が、地域の魅力を発信し、宿泊者と町の人々を結びつける力になります。
あなたの支援が、ここに新しい「静寂の文化」を育てていきます。
プロジェクト立ち上げの背景
この古民家は長年、漁網工場として地域を支えてきました。
しかし時代の流れとともに役目を終え、空き家となっていました。「歴史ある町並みと文化を生かし、地域に新しい賑わいをつくりたい」そんな思いから、私たちはこの建物を“網のオーベルジュ”として再生しました。
ここでしかできない体験を提供することで、お客様に地域の歴史や文化を感じていただき、持続可能なまちづくりの一端を担いたいと考えています。
現在の準備状況

(※アクティビティの一例のイメージ画像です。)
「潮香・いさり」は、古民家オーベルジュとしてすでに営業を開始しています。宿泊施設としての整備は完了しており、快適で清潔な客室と、歴史を感じられる建築空間を提供することができています。庭や縁側などの共用スペースも整え、訪れる方が自然を感じながらゆったりと過ごせる環境を整備しました。
体験アクティビティの一部はすでに試作段階にあり、トライアルを重ね今後内容をブラッシュアップしています。ハンモックや足湯、収穫体験、手仕事のワークショップなど、それぞれのプログラムが安全かつ快適に楽しめるよう、備品や導線を工夫しています。さらに、地元の農家や職人の方々とも連携を模索し、体験を通じて地域の暮らしや文化に触れられる仕組みを作っています。
クラウドファンディングの準備と並行して、体験内容の詳細設計や安全管理、運営スタッフの研修も進めています。訪れる方が、安心して滞在中に心から楽しめる体制を、着実に整えていきます。
リターンについて

支援してくださる皆さまには、心を込めたお礼の品をご用意しました。
• サンクスメール+限定ポストカード
感謝の気持ちをお届けします。
• 焼き菓子詰め合わせ
潮香の焼き菓子を、味わいと香りとともにお届けします。
• 日本遺産ガイド付き宿泊券(1泊2食付き)
広川町の歴史や文化を知りながら、まちを歩く特別な体験をセットにしました。
• ウェルカムドリンク付き宿泊券(1泊2食付き)
滞在開始から、町の自然や風土を感じるひとときを楽しめます。
• 選べる体験付き宿泊券(1泊2食付き)
星空ハンモック、足湯、収穫体験、マクラメ生け花など、滞在中に自由に体験できます。
• 特別セットプラン
まち歩き・ウェルカムドリンク・デザート・選べる体験付き宿泊券に加え、館内木札にお名前を刻印。支援者の記憶として宿に残ります。
資金の使い道は、主に以下の通りです。
• アクティビティ開発費(材料費・講師費など)
• 備品・設備費(ハンモックや足湯、道具類)
• 広報・制作費(パンフレット、ウェブサイト、動画制作など)
• 運営費(スタッフ育成や運営体制の整備)
• CAMPFIRE手数料
スケジュールは以下の通りです。
• 2025年12月中旬:クラウドファンディング開始
• 2025年2月上旬:クラウドファンディング募集終了
• 2026年3月〜:アクティビティ試行・本格導入(※一部アクティビティは先行導入)
• 2026年春〜:リターン発送
最後に
「潮香・いさり」は、ただ泊まるだけの宿ではありません。
静寂の中で五感を整え、土地の記憶を味わい、心に余白を取り戻すための宿です。
あなたのご支援が、この町での新しい旅の形をつくります。
ともに“広川町の記憶を味わう滞在”を育てていきましょう。
潮香・いさり
和歌山県有田郡広川町広128
全4室・古民家オーベルジュ
<募集方式について>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。




