

家賃、光熱費、食費、通信費、交通費、保険料。
社会人になると、当然のように多くの費用がかかってきます。
おそらく、多くの方は「なんとなくわかっていた」か「親が払っていたから考えたこともなかった」のではないでしょうか。

でも、施設育ちの若者は違うんです。
生活をするのに費用がどれだけかかるかなんて、知っているわけがない。
なぜなら、児童養護施設では、そんなことを教わらないから。
団体生活から個人生活に変わる。
そんな概念すら、十代では知る由もないんです。

画像右:川向圭一
一般社団法人ハートノコル代表の川向圭一と申します。
25年間、京王線沿線でダーツバー「moon37」を運営してきました。
そして私自身も児童養護施設で育ち、18歳で卒園しました。

だから、わかるんです。
施設を出た若者たちが、どれだけ困難に直面するか。


言葉の通りなのですが、初めてのお給料18万円は全て好きなことに使いました。
家賃や光熱費を支払わなければならないなんて、考えもしなかった。
1ヶ月後、家賃が払えない。
どうしよう。
友達の家に転がり込んだことがあります。
公園で野宿をしたこともあります。

これは、児童養護施設を卒園した若者たちにとって決して珍しいことではありません。
私はこのような状況を「マイナス1からのスタート」と呼んでいます。

同じ道を歩んできた私だからこそ、彼らの苦しみが痛いほどわかります。
私の体感ですが、昭和でも令和でも若者の性質は変わらないように思えます。
特に、親のいない子どもが世の中にポンと出される姿は同じなんです。
親のいない子たちは、社会のことなど右も左もわからないように思えます。

ここは、ただのダーツバーではありませんでした。
児童養護施設の子どもたちが集まり、ダーツを通じて、挨拶を学び、大人と会話し、社会に出るための準備をする場所だと考えています。
「飯が食えないやつ、うろうろしているやつは、うちにこい」
私はそう言い続けました。

口コミでバーの存在が広まり、これまで多くの若者が集まってきてくれました。
16歳の若者は、本当に右も左も分からない。
大人に何かしてもらっても「ありがとうございます」のタイミングがわからない。
仕事をするにしても、挨拶の仕方がわからない。
お客さんと目を合わせられない。

でも大人との出会いを通じて、少しずつ挨拶ができるようになり、仕事をもらえるようになりました。
社会の歯車として機能していけるようになった姿を何度も見ています。
これが、何より嬉しかったです。

moon37では、もう一つの取り組みとして未成年練習会がありました。
当時はインコイン制度(1ゲーム100円)でしたのでその制度を無償にて提供していました。
そこには後にプロとして活躍する子供達も多く足をはこんでいました。

「moon37」からは、プロダーツプレイヤーも誕生しました。
金子憲太選手と、野毛駿平選手です。
彼らは「moon37」でダーツと出会い、技術を磨き、プロの世界へと羽ばたいていきました。
今でも、後輩たちに影響を与え続けています。
ダーツを通じて自分の居場所が見つかり、彼ら彼女らが少しづつ変わっていく。
その様を目の当たりにできる。
それが、私の何よりの喜びでした。

施設で生活する若者たちの背景は、それぞれ異なります。
親兄弟がいる子もいれば、いない子もいる。
その中で、私たちが向き合わなければならない現実があります。
小学校高学年くらいから、親が手を離してしまう。
疎遠になってしまう。
施設で生活している自分の子どもに会いに来ない親もいます。
冬休みも夏休みも会わない。
それは、決して珍しいことではないのです。

親になりきれない親。
仕事よりも遊びを重視してしまう親。
様々な事情があり、親元に戻れないケースは珍しくありません。

だからこそ、一歩引いた目線を持つ大人がいるところで、社会を学んだほうが良いのではないか。
家族という枠組みだけでなく、もっと広い視野で子どもたちを見守り、支え、社会へと送り出していく。
それが施設から社会へと巣立つ若者たちにとって、本当に必要なことではないかと考えています。


ここで、皆さんは疑問に思うかもしれません。
ダーツバーという、大人が集まる場所でなぜ若者が育つのか。


まず、ダーツは「計算」を必要とするスポーツです。
20点を取るには? 60点を取るには? 残り点数を0にするには?
足し算、引き算、掛け算。
ダーツをしながら、自然と数字に強くなっていきます。
算数が本当にできない子どもたちでも、ダーツを通して、頭の中で数の組み立てができるようになるんです。
これは、私自身が実際に目の当たりにしてきたことです。


そして、ダーツバーには、大人が集まります。
施設で育った若者たちは「社会で働く大人」と接する機会が圧倒的に少ない。
施設の職員さんは「保護者」であり「社会で働く大人」とは少し違う。
若者たちが本当に学ぶべきは「社会で働く大人」との接し方です。
彼らと会話することで、若者たちは学ぶんです。
挨拶の仕方。
当たり前のようで、施設育ちの若者には当たり前じゃない会話のマナー。
どこまで踏み込んでいいのか、どこで線を引くべきか。
これらは、教科書では学べません。
実際に大人と接することでしか、身につかないんです。


何より大切なのは、居場所ができること。
疎外感を感じると、大人になれない。
居場所があることが、何よりも大切だと考えています。
施設を卒園して、一人暮らしを始める。
仕事で失敗する。
人間関係がうまくいかない。
お金が足りない。
そんな時「帰れる場所」があるかどうか。
これが、若者の人生を大きく変えると考えています。


しかし2年前。
私はとあるきっかけで店を手放しました。
理由は割愛しますが、私はまた若者たちのために動けるようになりました。
夜な夜な、公園で遊び歩いている若者を助けようとする人は、この世にはいません。
もう一度、彼らと歩みたい。
もう一度、彼らの居場所をつくりたい。
その想いで、私は再起を決意しました。

調布市には、北と南に児童養護施設が1件ずつあります。
私は数ヶ月に一回はコンタクトをとり、関係を続けてきました。
施設と連携しながら、若者たちをサポートしていきます。


ここまでご覧くださり、ありがとうございます。
マイナス1からスタートする子どもがいるということ。
そこから0に持っていく努力は途方もなく、本当に大変なことです。
しかし理解のある大人と接して、社会を学ばせてもらうことで、彼らは社会に溶け込んでいける。
ダーツを通して、大人との会話ができるようになる。

そして、社会人として羽ばたいていく。
もう一度、彼らと歩みたい。
もう一度、居場所をつくりたい。
その想いで、私はこのプロジェクトを立ち上げました。
どうか、皆様のお力をお貸しください。
一般社団法人ハートノコル
代表 川向圭一







プロジェクト公開:2月25日11時〜
プロジェクト終了:4月30日23時59分
リターン配送:5月順次発送予定

moon37の再建費用として大切に使用させていただきます。
※本プロジェクトは川向圭一 個人が起案したプロジェクトです。
集まった支援金の使用や、リターンのお届けなどは川向圭一が責任を持って実施します。




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