ギリシャに到着し20日ほど、残り日数は7日程度となりました。
この投稿では主に企画の支援者向けに、旅の現在地点について共有できればと思っています。
良くも悪くも色々と起きる旅ですが、全てを終えてからでなく、今旅の最中の未確定の段階からお送りしよう、という趣向でございます。
日々の感想はインスタのストーリーかそのハイライトで投稿していますが、今回の投稿ではそのあたりをざっくりとまとめられればとキーを叩いています。
なお、支援者に向けたリターンの提供等の情報は含まれません。そちらはまた帰国後に落ち着いてご報告させてください。
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さて今回のギリシャ旅。現時点でまとめるのなら、「嫌いになったギリシャを好きになる旅」と言えるかもしれません。元はと言えば1年前の春ヨーロッパ旅行で一番好きだったのがギリシャでした。が、そのぬくもりのある思い出が、6月炎天下の今回の旅でズタズタに上書きされたような出来事が立て続けに発生します。
≋描き始めたサブ壁画の制作を中止させられる
メインとして確定していた学校での壁画制作が、①学校の都合により延期に。渡航前から仮押さえだった野外映画館の外壁での制作をサブ壁画として急遽先に制作することになりました。ラフスケッチを急ぎ作成&オーナーの承認を得ます。一方で、負担してもらうはずだった②塗料の決済が保留とやらで、実費で賄い塗料を持って現場へ。
昼から壁に描き始めますが、③夕方にティーネイジャー達からイチャモンをつけられます。いわく「もとあったタグ&ピース(スプレーで違法的に描かれた簡単なスケッチや名前)を消しやがって。明日来るのを楽しみにしてろよ」とのこと。現場のオーナー代理に話をするも、「対策の仕様がない」とのこと(まー、それもそう)。
気持ちが萎えてたところ、彼から「オーナーの意向で制作自体をストップしてほしい」と告げられます。理由としては④壁にもとからあったひび割れや剥落のせいで、これを補修してほしい、でなければ中止、とのこと。もう夜です、制作は急ぎ足で進めていました。あと2日で完成の予定です。
僕は現状での引き渡しをされていますし、画家ですから壁の補修は出来ません。スプレー若者の件もあります。愛されていない環境での制作や交渉は馬鹿げているので、—それにこの制作自体は棚ぼた的なもので、クラファンの支援者に迷惑はかけたことにはならないので—、アホらしくなって制作を中止することにしました。
≋描く予定のメイン壁画でトラブルが続く

サブ壁画をキャンセルし、気を取り直してメインの学校での壁画制作の段取りを進めますが、こちらもうまく行きません。約束していた建設用の⑤足場を準備できないようです。子供がよじ登る危険性、僕が落下した際の保障、今年から予算が削減された、などの理由を行政が挙げます。
僕はこの企画のために、クラファン公開の時点で仲介のASAFと契約書を交わしていますし、齟齬があってはいけないのでその後も都度都度確認をしています。それを現地で突然「事情が変わった」と言われるのなら、こちらは何のために計画を積み上げてきたのか。
「これがギリシャ。責任の所在を攻める場合ではなく、解決策を探るべき」とASAFは言いますが(誰が言うてんねんと思いましたが)、それが許されるなら、全ての都合が向こう次第でこちらは受け入れるしかない、ということになります。ただ厳然たる事実として、マジで受け入れずに強情を張れば、このまま描かずに帰ることになります。時間と機会を人質に取られて頭が煮える思いでしたが、「絶対絵でひっくり返す」という—ガラにもなく熱く冷たい—想いで、飲み込むことにしました。
結果としては脚立で届く範囲での制作です。アプローチできる面積は当初の半分程度になりました。これに関しては俺が残念っていうより、支援してくれた皆さんに申し訳ないです。人を動かして支援してもらっておいて、約束どおりのことが出来ないことを恥じています。すみませんでした。
この2つの大きなトラブルは、原因としてはASAFと行政との契約が曖昧だったことと、僕への伝達に誤りがあった点だと振り返っています。責任としては明確に自分にあります。得られた機会に、慎重にとはいえ飛びついた自分の軽率さ、それに人を巻き込んで企画化したことは、紛れもなく自分の楽観的な姿勢に拠るものだと反省しています。
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坂ばかり、想像と違うギリシャのピレウス港近くの街並み
えっと、一応ここまでがギリシャに振り回されて「嫌い!」となった編で、
こっからは色々愛されて「好き!」となっていく編であります。一度嫌いになったせいで、プラスの出来事が全てまばゆくばかりに美しく、かがやくばかりに祝福のように思える効果がありました(えーんか)。
長い記事になってきましたが、こっからは良いことが続くので付いてきて下さい。。
≋塗料は全て提供してもらった
改めて動き出した学校での壁画制作。決定した条件下ではASAFはもちろんですが行政も応援姿勢です。ギリシャの塗料メーカーKRAFTにかけあって、指定塗料の全量を提供してもらえることになりました(あえて言うなら当初は行政が負担予定でした)。
絵描き用に言いますが、完全マットなオペークカラーです。質感はタカラ塗料や通常のペンキに近いものの、仕上がりはネオカラーのようにサラっとしています。原色は混色にも強い。かなり気に入りました。
≋学校から愛されてる
また、制作する環境は恵まれたものでした。
夏休みの終業に際した時期だったため(そこに合わせて制作が急遽延期になったようです、これも半年前に分かるはずですが)、毎日こどもたちが校庭に遊びにきます。バスケにサッカーに、なんか痴話喧嘩してたり。みんな沢山、ほんとに沢山声をかけてくれます。「うまいね、がんばって、手伝おうか?アニョハセヨ、ありがとう」毎日話すので、馴染みの顔も増えてきて。ステッカーを渡した親御さんが現れたり。掃除婦さんも行政担当官もお弁当を差し入れてくれます。「どこから来たの?なんで来たの?どういう絵?」
感情表現がストレートで、聞きたいことはなんでも聞いてくるし、おたがいカタコトの英語でコミュニケーションを取ります。あえて今まで体験してきた国と比べるなら、アメリカよりスレてないし、メルボルンよりイけてない、台湾みたいな内気さはまるでありません。他のどの国より素朴でナチュラルだし、シンプルだ、と感じました。壁画制作を見るっていう珍しい体験を、率直に楽しんで、楽しんだ分声をかけてくれる、そんな印象でした。
制作自体は6/9から、数日間の半日作業を経て、フルタイムの時は朝6時から夜9時までというとんでもないビジネスアワーで制作していました。いろんな障害を乗り越えたあとの制作だったので、壁に向かって描いていると心が湧き上がるような幸せを感じていました。
壁画は先日完成しました。
この条件下で出来る、最大限の絵を描いたつもりです。完成した絵についてはまた別の機会で話しますね。
≋専門家へのインタビュー
旅の目的の1つに「ギリシャ版の羽衣伝説の調査」があります。史跡や博物館めぐりとは別に、各分野の専門家にインタビューする機会を狙っていました。
・日本とギリシャの両文化に詳しい人
・ギリシャ星座に詳しい人(ギリシャ版羽衣伝説の特徴)
・ギリシャ神話に詳しい人
の3名をアサインできると嬉しいね、なんて言いながらツテを辿ってアプローチしました。結果から言うと、この3分野の専門家全てのアポイントを得ることができました。順にご紹介します。
日本とギリシャの両文化に詳しい人
マリア・アルギラキ さん
国家公認観光ガイド・日本文学翻訳家
左からhitch /日本大使館 白鳥さん/マリア・アルギラキさん/ASFA クリスティーン
ガイドとして30年のキャリアを持ち旭日双光章を授与されています。文科省の教員、ドラえもんの藤子・F・不二雄の藤本宏氏、森元首相、小泉元首相など要人のガイドも勤められました。また翻訳家としても村上春樹の「1Q84」や、宮沢賢治作品を愛して翻訳されています。今回は後援の在ギリシャ日本大使館からご紹介いただき、インタビューの機会が得られました。
詳しくは公開する動画に譲りますが、やはり数十年にわたってギリシャと日本の文化を見てこられた方が捉える羽衣伝説には、新たな気づきが多くありました。
天体・星座に詳しい人
フィオリ=アナスタシア・メタリヌー博士
アテネ国立天文台/IAASARS広報担当官
奥に見えるのがアイコニックな国立天文台の天蓋
テッサロニキのアリストテレス大学で大気・環境物理学の修士号を取得し、「地球空間における磁気嵐の発生と回復」に関する博士号を取得。研究分野は、磁気嵐時の地球磁気圏におけるイオン加速のシミュレーションです。また、クラシック声楽の学位も取得しています。ギリシャを代表する国立研究機関の研究者、ということになります。
当日は歴史ある天文台でお話を聞かせていただきました。
ギリシャ版羽衣伝説の特徴は、物語と天体の結びつきです。日本版が羽衣を掛ける松や泉を拠り所にするのに対し、ギリシャ版ではプレアデス星団を7姉妹(日本で言う天女)に準えて語ってきました。博士には科学的な側面と、物語の文化的な側面の両方から大変に興味深いお話を聞くことが出来ました。
ギリシャ神話に詳しい人
ベン・キャッセル さん
British School at Athens RBマコーネル奨学生 / キングス・カレッジ・ロンドン古典学部博士課程
ギリシャ考古学・古代ギリシャ史など、ギリシャ研究において世界最高機関の一つに所属する研究者です。実は氏へのインタビューはまだで、明日お約束をいただいています。その筋の第一線の研究者と話せる機会が得られ、書いている今も緊張と興奮で、動悸が激しくなってきました。
氏は神話を具体的な体験として捉え直すような、解像度を上げた研究を専門にされています。僕の疑問である「なぜ人は何千年も同じ物語を語り続けるのか?」をまさに尋ねるべき人物だと言えるでしょう。
いや〜。こうして、文化・天体・神話と異なる角度からギリシャの羽衣伝説をつまびらかに出来るかと思うと、本当にここまで来た甲斐があるなと目頭が熱くなります。
高名な御三方にインタビューのアポイントが取れたり、その場の判断で書類手続きなく事態が好転するのは、人との距離が近く、率直なギリシャ人の魅力だと思います(僕は元来から計画的でパーソナルスペースが広めなので…まったく対照的なわけですな)。
「面白い企画してるな、話するから話聞かせろよ」と返事が来るたび、撮影のKoskくんと声をあげて喜びました。
みなさん企画の説明をすると、「そんなアーティストには初めて会った」と胸襟を開いて惜しげもなく専門知識を披露してくれました。壁画を描くアーティストは数いても、資金を集めて持ち込み企画で、地域の伝承同士をつなげて可視化させる企画、というのは自分で立ち返っても…相当変わっています。
時間とお金のかかるプロジェクトに手をつけてしまいましたが、自分の創作活動の根幹です。アポイントが取れるたび、企画を肯定してもらえるようで、報われるような思いでした。
本当にギリシャに来て、羽衣伝説を通じて、人類とかコミュニケーションについて、考え方が(それと人生観がちょこっと)変わってきました。後々公開するプロジェクトムービーではその結論をあますことなくお伝えするつもりです。
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ギリシャ後でも松ぼっくり、点が線でつながります
さて。ざっくりと、以上のような良いことが起きています。
ラブコメの筋書きみたいに、「最初ヤだった奴がどんどん魅力的に見えてくる」的な展開が起きております。
絵を描き終え、調査もいよいよ大詰め。のこり7日間を(トラブルに翻弄されようとも)ギリシャと肩を組んで楽しく乗りこえてやろうと思っています。
良い話ばかりが出来たら良かったんですが、支援者に向けて赤裸々な現状を語ったつもりです。どうぞ残り1週間も見守ってください。ではまた!





