ごあいさつ
はじめまして。ケイオス出版の石井高弘と申します。出版社から独立して一人で版元をつくり、書籍の出版をしている編集者です。
現代という時代は、多くの方が感じているように、様々な困難を抱えていると思います。
厄介なことにその困難というのは、現代人にとって当たり前になっているものの見方や考え方、価値観によってもたらされている面があるように思います。たとえ別の見方や他に取りうる道があったとしても、それが見えなくなってしまっているように思うのです。
この状態を解きほぐすには、時代を超えて受け継がれてきた古典的な思想や文化、その見方・考え方を教えてくれる書籍を出版し、いったん立ち止まって考える機会をつくることが必要なのではないかと考え、これまで出版活動を行なってきました。
そして今回、折口信夫の講演録『神道と民俗学』をネット書店で誰でも購入でき、すぐに絶版にならない紙の本「プリントオンデマンド書籍」(※)として世に送り出すプロジェクトを立ち上げました。
(※)「プリントオンデマンド書籍」とは、読者の購入がある度にネット書店が印刷・製本してお届けするペーパーバックの本です。原則、書店の店頭には並びません。下の写真はケイオス出版で刊行したプリントオンデマンド書籍の一例です。

このプロジェクトを始めた理由
折口信夫という名前を聞いたことがある方も多いと思います(※)。国文学・民俗学の巨人として知られる彼の思想はきわめて独創的であり、その名を冠して「折口学」とも呼ばれています。
特に「神社神道」に整理される以前のいわゆる「古神道」について、〈魂信仰〉あるいは〈霊魂信仰〉というキーワードで論究する視座は独特の鋭さがあり、現代に生きる我々にも腑に落ちる不思議なリアリティをもっています。
しかしその著作の多くは、全集に収められたままであり、文庫や選集、電子書籍で読めるものは一部であって、一般の書店やネット書店では手に入りにくい状況が続いています。
私自身が折口信夫の考えに触れたとき、『古事記』や『日本書紀』に語られ、『万葉集』に歌われ、皇室が守り伝え、地方の祭りや行事で我々も経験する神道祭儀や民俗習慣が一気に一つにつながるような感覚を覚えました。それは私たちの心の奥底に眠る、懐かしい記憶を呼び覚ますような体験でした。
この発見の喜びや感動をもっと多くの方々に味わってほしい。またそのことを通じて――「我々はどこから来たのか、我々は何者か、そしてどこへ行くのか」――という問いを深めるきっかけになれば、意義があるのではないか。そう思ったのが、このプロジェクトの原点です。
(※)折口信夫の略歴は以下をご参照ください。
折口信夫(おりくち しのぶ)
1887~1953年。国文学者、民俗学者、詩人、歌人(創作活動の筆名は釈迢空)。大阪生まれ。国学院大学卒業後、中学校教師を経て、国学院大学、慶応大学で教鞭をとる。島木赤彦、柳田国男との出会いで歌誌「アララギ」、民俗学雑誌「郷土研究」と関わることとなり、その後の生涯が決定づけられる。民俗学、国文学研究で独自の領域を開拓。その独創的な業績は後に「折口学」と称される。代表作に『口訳万葉集』『古代研究』『死者の書』などがある。

実現したいこと
今回出版を目指しているのは、ケイオス出版の「折口信夫セレクション」の第2弾となる『神道と民俗学』です(第1弾は『古代日本の魂信仰』 https://www.amazon.co.jp/gp/product/4909507043/ )。これは昭和8年(1933年)に信州下伊那で行なわれた講演をもとにした作品です。
3日間の連続講演であるため、系統立てて構成され、かみ砕いたわかりやすい内容になっており、折口信夫の思想に負担なく触れられる貴重な一冊です。四六判、150~160ページぐらいのプリントオンデマンド書籍で出版する予定です。定価は1650円(税込)~1760円(税込)程度を考えています。
この講演録は、日本人ならなじみのある神道祭儀や地方に今も残る習俗を読み解き、原初的な姿を蘇らせ、本来はどういう意味だったかを一つ一つ明らかにしていきます。神社神道に収まりきらない古代人の信仰世界を再発掘するなかで、「日本人の宗教性の原点」が見えてくるのです。
古神道の信仰世界は「古代人のコスモロジー(自然観/宇宙観)」そのものです。これをそのまま現代に適用することは勿論できませんが、我々のかけている眼鏡から今見えているのとは、幾分違った光景がそこから見えてくるはずです。
以下が、目次です。
[神道と民俗学 目次]
第一章 神道の意義
第二章 宮廷儀礼
第三章 禊祓(みそぎはらへ)と罪障と
第四章 霊魂信仰
第五章 神遊(かみあそび)及び葬式
第六章 誓詞と倫理観念と
第七章 神職と民俗芸術と
[神道と民俗学 本文の一部公開]
また、本書の冒頭2ページを公開します。この本の基本的なスタンス、わかりやすい語り口であることが、おわかりいただけるかと思います。
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:16cf5a32-ec29-4706-8183-6409f8b10e83
途中の4ページも公開します。この部分だけからでも、興味深い内容であることを感じていただけると思います。
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:6383e306-6b9e-4403-9389-53d7cac7d3fe
「神道と民俗学」は昭和9年(1934年)に『古代の研究』という本に収録されましたが、現在は文庫や選集、電子書籍にも収録されておらず、『折口信夫全集 別巻一』(1999年、中央公論社)を図書館で借りるなどしなければ、読むことはできません。
また、全集では本文が旧かなづかいで表記されていますが、これでは読みにくいので新かなづかいに改め、最近あまり使われない漢字表記についても、文意が損われない範囲で修正しています。用語などの注も入れ、できるだけ読みやすくなるよう編集作業を進めています。
私がこの挑戦をする意味
出版業界は今、本や雑誌の流通を独占的に担ってきた大手取次の経営不振、書店数の大幅な減少、出版社の倒産や買収といった、危機的といってもいい状況に直面しています。
このような状況に至った背景として、マクロ的には1995年以降の長期にわたる日本経済の縮小、2000年代以降のインターネット化・スマホ化による情報環境の構造変化という二大要因があると思いますが、ミクロの経営的には、売上を増やすためにはたくさんの新刊を出さざるを得ず、しかしそうすると大量の返品により不良在庫を抱えざるを得ないという、出版社経営のジレンマがあったと思います。
新刊点数や返品冊数の過剰さは大きなコストとなるので、業界全体の問題として指摘されてきましたが、上記の二大要因が本格化する前は「規模の経済」で成り立っていたこのやり方を、ある程度以上の規模の出版社では急に変えることができないのだと思います。
私自身、出版社に長く勤めてこの問題は身に沁みて感じていたので、独立後に設立したケイオス出版では、読者の購入がある度にネット書店が一冊ずつ印刷してお届けする「プリントオンデマンド」という出版形態を採用することにより、本の在庫をもたず、返品も発生しない出版モデルを試してきました。
このやり方は「採算部数が見込めない」という理由で、出版の意義のある本を世の中に出せなかったり、苦労して出した良い本を「あまり売れなくなった」という理由だけで、すぐ絶版にしなくて済むというメリットがあります(返品/在庫リスクがないからです)。
他方で書店には並ばないため、読者に本を見つけてもらうこと自体が容易ではありません。また本の売上からネット書店に払う手数料と印刷費を引いた1冊当たりの販売収益は、価格の10~20%になってしまうため、販売収益だけでは版元を維持するのは困難です。
そこで、著者の方々にお願いして「本の執筆や出版をお手伝いする仕事の報酬」という形で、制作費をいただいていました。ただ、今回のように亡くなられた著者の場合、制作費をいただくことはできません。
しかしクラウドファンディングによって多くのご支援をいただくことができるとなれば、話は違ってきます。亡くなられた著者の本はもちろん、予算の問題で制作費をいただくことが難しいケースでも、はじめから出版を断念しなくても良くなるのです。もちろん、「折口信夫セレクション」を今後も継続していく目途も立ちます。
「学術書のアーカイブ」としての役目がある他社の文庫などでは、文庫内で絶版になった本をプリントオンデマンドで再刊してくれています。これは素晴らしいことだと思います。しかし出版の意義はあるが採算ベースに乗るかわからない本を、最初からプリントオンデマンドで出してくれているわけではありません。それはこれまでのやり方では難しいはずです。
ケイオス出版がクラウドファンディングによる支援を募り、今回の挑戦をすることの意義はここにあると思っています。折口信夫の「古神道論」のような、埋もれているが深みのある本を返品/在庫リスクを抱えずに、また著者の予算に頼ることなく世の中に出すことができ、それがすぐに絶版になる心配もないという状態が実現できるからです。
折口信夫の思想は、やや難解に思われるかもしれません。しかし講演録という形であれば、語りかけるような文体で書かれ、内容もかみ砕いたものになっているため、専門知識がない方でも十分に楽しめるはずです。
古代日本の精神世界に興味がある方、神社巡りが好きな方、日本文化のルーツを知りたい方にとっても、きっと新しい発見のある一冊になると思います。
これまでの歩みと実績
ケイオス出版では、すでに「折口信夫セレクション」の第1弾として『古代日本の魂信仰』を刊行しています。今回と同様、四六判151ページのプリントオンデマンド書籍です(下記参照)。
文庫や選集に入っていない「魂信仰」に関する論考を講演録を中心に厳選したもので、入門者でも折口信夫の思想の核心に触れられる内容となっており、おかげさまで好評をいただいています。今回の第2弾はこの流れをさらに発展させ、より広い読者層に届けたいと考えています。
『折口信夫セレクション1 古代日本の魂信仰』(ケイオス出版/税込1573円)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4909507043/
[古代日本の魂信仰 目次]
神々と民俗
剣と玉
鳥の声
古代日本人の信仰生活
産霊(むすび)の信仰
上代(じょうだい)葬儀の精神
万葉集に現れた古代信仰
編集後記
[古代日本の魂信仰 試し読み]
以下のケイオス出版のサイトで「試し読み」ができます(クリック後、画面を下の方へ『古代日本の魂信仰』のところまでスクロールしてください)。
https://www.chaos-publishing.com/blank
プロジェクトの価値
このプロジェクトは、単に一冊の本を世に出すということ以上の意味を持っていると考えています。皆様からのご支援は、書籍の出版による「古代からの智慧の継承」を支えることだと思います。また「埋もれている深みのあるコンテンツを、すぐに絶版にならないプリントオンデマンド書籍で出版する」という活動を支援して下さることにもなります。この本の誕生に直接関わることで、こうした事業の担い手になっていただけるのです。

リターンについて
ご支援とそのリターンは大きく分けて4種類のコース、6つの選択肢を用意しました。ご関心に応じて、選んでいただければと思います。
【御礼のメールコース】(カジュアルに応援したいという方向け)
①[3,960円] ご支援に対して、御礼のメールをさしあげます。
【御礼のメール + 書籍提供コース】(折口信夫や古神道・民俗学に興味のある方向け)
②[5,500円] ご支援に対する御礼のメールをさしあげ、完成した『神道と民俗学』を1冊お送りいたします。
③[7,700円] 同じく御礼のメールをさしあげ、『神道と民俗学』と『古代日本の魂信仰』を1冊ずつ、計2冊お送りいたします。
(※本の送料はリターンの価格に含まれています。また実際に本をお届けするまでには、印刷発注・本の取寄せ・梱包・郵送等のプロセスがあるため、『神道と民俗学』の出版(発売開始)後、2週間ほどお時間をいただく予定です)
【御礼のメール + 出版完了の報告コース】(本は必要ないが、応援はしたいという方向け)
④[10,000円] ご支援に対する御礼のメールをさしあげ、本の出版が完了し発売が開始されたら、そのご報告のメールをさしあげます。
⑤[20,000円] 同じく御礼のメールをさしあげ、本の出版が完了し発売が開始されたら、そのご報告のメールをさしあげます。
(※④と⑤のリターンの内容は同じです。ご支援の額のみ異なります)
【御礼のメール + 出版完了の報告 + 書籍提供コース】(すべてのリターンが揃った選択肢です)
⑥[30,000円] 御礼のメールをさしあげ、本の出版が完了し発売が開始されたら、そのご報告のメールをさしあげます。後日、完成した『神道と民俗学』と『古代日本の魂信仰』を1冊ずつ、計2冊お送りいたします。
(※本の送料はリターンの価格に含まれています。また実際に本をお届けするまでには、印刷発注・本の取寄せ・梱包・郵送などのプロセスがあるため、『神道と民俗学』の出版(発売開始)後、2週間ほどお時間をいただく予定です)
現在の準備状況とスケジュール
本書の編集作業は順調に進んでおり、組版や校正の準備も並行して進めています。クラウドファンディングは1カ月半ほどの期間を予定しており、目標金額は78万円です。
この資金は、編集、校正、組版、デザイン、装幀など本の制作費および広告宣伝費、提供書籍の仕入れ費、発送費として大切に使わせていただきます。プロジェクト成立後は速やかに制作を進めて出版し、本の提供を希望された支援者の皆様へ順次お届けする予定です。


最後に
折口信夫の語る「古神道」の世界には、忘れかけていた日本人の心の原風景が宿っています。それは決して古臭いものではなく、今を生きる私たちの琴線に触れ、どこか懐かしささえ感じるものです。この本を通じて、一人でも多くの方に折口信夫の世界に触れていただき、新しい気づきや発見を得ていただけたら、これ以上の喜びはありません。
どうか皆様のお力で、折口信夫の「古神道論(≒古代人のコスモロジー論)」を未来へとつないでいくお手伝いをしていただけませんでしょうか。温かいご支援を、心よりお待ちしております。





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