
食後のお皿に残された、一枚のパセリ。
それを見たことから、ひとつのジュエリーが生まれました。
本物のパセリやトマトのヘタ、コーヒー豆などを型取り、その繊細な「かたち」を金属へと置き換える。
料理の脇役だった素材が、身につけるジュエリーへと生まれ変わります。
はじめまして。
ジュエリーブランド「nico」を運営する、株式会社nicodesign 代表取締役・デザイナーの奥村仁幸(おくむら にこ)です。
2010年にジュエリーブランドを立ち上げ、本物の野菜や植物などを型取り、その繊細な形を金属へと置き換える「現物鋳造」という技法を用いてジュエリーを製作してきました。

きっかけは、ある日の食事でした。
レストランで食事をしていたとき、お皿の端に寄せられたパセリが目に留まりました。
「こんなに美しい形なのに、食後には捨てられてしまうのか」
と思ったのが始まりです。
料理の彩りとして添えられ、その後は捨てられてしまうことの多いパセリ。
次はジュエリーとして輝かせたい!
食卓で役目を終えた植物を、もう一度、新たなかたちで収穫する。
そんな想いを込めて、『Harvest』と名付けました。
2026年5月1日発行の日経MJ新聞の裏表紙でHarvestを大きく取り上げていただきました。
どんな商品を作っているのか
捨てられてしまうトマトのヘタがピアスに!
商品が出来上がるまで
今から15年以上前にさかのぼります。
「パセリをジュエリーとして輝かせよう!」と決めたものの、当時の自分には形にする技術がありませんでした。
そこで、現物鋳造なら可能ではないかと、ある職人さんに相談することに。
しかし、
「そんなの出来るわけない。忙しいから帰ってくれ!」
何度訪ねても断られました。
それでも諦めきれず、時には缶コーヒーやお菓子を持って工場へ通い、何かと理由を見つけては会いに行く日々。
そんなことを半年ほど続けたある日、突然、職人さんから電話が。
「明日の朝一で工場まで来い!」
ここから、パセリジュエリーの物語が動き始めました。
そんな電話をもらえば、「ついに完成したのか!」と期待してしまいます。
一方で、また怒られるのでは……という不安も。
期待と不安が入り混じり、いや、不安多めで(笑)
そして翌朝。
なんとパセリが金属になっていました!
そして、初めて現物を見た瞬間。
そこにあったのは、パセリそのものの形を残した、美しい金属の輝きでした。
細かな葉の一枚一枚。裏側にある葉脈まで、驚くほど繊細に再現されています。
そして、手に取ってさらに驚きました。
金属なのに、パセリそのものの薄さや繊細さが残っていました。
あの小さなパセリが、形を変えずに金属へと生まれ変わっている。
初めて手に触れたときの金属の冷たさと感触は、今でも鮮明に覚えています。
後から聞いたことですが、職人さんは「出来ない」と言ったことが悔しくて、何度も何度も挑戦していたそうです。時には朝まで試行錯誤を繰り返していたと聞きました。

パセリから始まった挑戦は、やがてトマトのヘタへ、そしてコーヒー豆へ。

新作が少しずつ増え、ようやく世界観が見えてきた、その時でした。
……職人さんが引退。
定年退職を迎え、あの技術を受け継ぐことができないまま、Harvestシリーズは一度、幕を閉じることになりました。
その後も、何人もの職人さんに相談しました。
しかし、なかなか引き受けてくれる職人さんは見つからず、気づけば10年以上、制作が止まっていました。
そんなある日、ようやく話を聞いてくれる職人さんと出会います。
そして、
「出来るかわからないけど、やってみようか!」
その言葉に、止まっていたHarvestが、再び動き始めました。

こうして、Harvestの作品は少しずつ増えていきました。
現在では、70種類にまで広がっています。



野菜や植物の「かたち」を、じっくり見ることは意外と少ないのではないでしょうか。
例えば、コーヒー豆の表面にある細かな凹凸。メロンの皮に広がる複雑な網目。力強く広がるトマトのヘタ。そして、葉の一枚一枚に刻まれた繊細な葉脈。
それらは、誰かがデザインしたものではありません。時間の中で生まれた、ひとつひとつ異なる造形です。
そして、その多くは食べられる部分を取り除いたあと、何気なく捨てられてしまいます。
けれど、葉や茎、皮などには、人の手ではつくり出すことが難しい、独特の形や質感があります。
そんな普段見過ごしてしまう美しさを、ジュエリーとして残したいと考えています。
応援メッセージをいただきました。

なぜ、クラウドファンディングなのか。
そして今、次の挑戦として取り組んでいるのが、花の型取りです。
花は柔らかく、繊細で、水分も多い。
野菜や葉とはまた違う難しさがあり、今もまだ「これだ」という形にはたどり着いていません。
それでも、職人さんと試作を重ねながら、どこまで花の繊細な表情を金属に残せるのか、可能性を探っています。
パセリを金属にすることさえ、最初は「できるわけない」と言われました。
それでも、挑戦を重ねたことで、ひとつの形が生まれました。
だからこそ今回も、まだ形になっていないものに挑戦したい。
このクラウドファンディングでいただいた応援を、花をはじめとする新しい素材の試作や、次のHarvestを生み出すための力につなげていきたいと思っています。
この先、花がどんなジュエリーになるのか。
私自身も、まだわかりません。
「こんなものまでジュエリーになるのか」
そんな驚きの先にある、新しいHarvestを目指します。
制作について
「本物のパセリを、そのまま金属にする。」
そう聞くと、「パセリに金属をコーティングしているの?」と思われるかもしれません。
実は、そうではありません。
本物のパセリを型取りし、その繊細な形を金属へと置き換える。
そのために使っているのが、『現物鋳造』という技法です。
これまで何気なく見過ごされてきた野菜や植物の、細かな表情や特徴を、そのままジュエリーとして残していきます。
ただ、食材をそのままジュエリーへと置き換えるには、通常の鋳造とは異なる難しさがあります。
制作に入る前に、まず素材を選びます。実は、この「素材選び」も大切な工程のひとつです。
鮮度が良く、形が美しいもの。葉の広がり方や茎のバランス、細かな表情まで見ながら、ジュエリーの原型としてふさわしいものを選びます。
中でもパセリは、これまで数多くのパセリを見てきたことで、今ではかなり目利きができるようになりました。
どんな形が美しいのか。どの瞬間が一番いい状態なのか。
長年見てきたからこそわかる感覚には、自信があります。
そうして選んだ素材を、型へと移し、金属へと置き換えていきます。
なぜ、これほど時間がかかったのか。
現物鋳造は、本物の植物や野菜をそのまま型取りするため、ひとつひとつの素材によって結果が変わります。
細かな葉脈がうまく再現できなかったり、鋳造の途中で形が崩れてしまったり、完成した金属に欠けや巣が出てしまったり。

「型を取れば、そのままジュエリーになる」という簡単なものではありません。
何度も試行錯誤を重ねながら、素材の選び方、型の作り方、鋳造条件、仕上げの方法まで、一つひとつ調整してきました。
特にパセリやトマトのヘタ、ローズマリーは、複雑で繊細な形状のため、量産用の型を取ることが難しい素材です。
だからこそ、素材ごとの状態を見極め、自然がつくり出した造形を損なわないよう、職人さんとともに細かな調整を重ねながら、ひとつひとつ仕上げています。

すべてが思い通りに仕上がるわけではありません。
それでも、本物だからこそ生まれる微細な葉脈や、ひとつひとつ異なる自然の造形を残したい。
その思いから、15年以上この技術と向き合ってきました。
Harvestシリーズをリターンとしてご用意します。
クラウドファンディング限定ジュエリーの原型に選んだのは、ガラパゴス諸島で栽培された一粒のコーヒー豆。
その独特なフォルムに惹かれ、実際の豆を型取りして、金属へと置き換えました。
私自身コーヒーが好きなこともあり、この豆の柑橘系の爽やかな酸味と香り、まろやかな味わいにも惹かれました。
そのコーヒー豆の形をもとに、トレーや小物入れを製作し、今回のクラウドファンディングではネックレスもご用意しています。
コーヒーを楽しむ時間とともに。
コーヒーが好きな方への贈りものとしても、手に取っていただけたら嬉しいです。




ジュエリーは、身近なものを見つめ直すきっかけに。
ジュエリーを身につけたとき、
「これは何の形なんだろう?」
「こんな模様をしていたんだ」
と、ふと元になったものを見返したくなる。
そんな小さな気づきを生み出すジュエリーです。
普段は何気なく見ているものにも、よく見ると驚くほど個性的な「かたち」があります。
そのかたちに目を向けることで、いつもの風景が少し違って見えるかもしれません。
今後について
『Harvest』は、食材から植物へ。さらにその先へ。
地元・熊野の檜の葉を型取りしたピアス。

2枚の葉が重なり合うことで生まれる陰影が、熊野の森に漂う静けさを表現しています。
バラの枝を型取りしたリング

枝の先に咲く、赤いバラをイメージして赤いガーネットとルビーをセッティング。
これまでの活動
和歌山県新宮市という、海と山に囲まれた自然豊かな場所で生まれ育ちました。
ジュエリーの専門学校を卒業後、オリジナルブランドを立ち上げました。
当時は、山梨県の温泉旅館で働きながら、空いた時間にジュエリーを制作。少しずつ作品を発表し、活動の拠点を東京へ移していきました。
国内の展示会や百貨店、セレクトショップ、ミュージアムショップなどで作品を発表するほか、イタリア・ミラノで開催された展示会「Mi Milano Prêt-à-Porter」への出展など、海外でも活動してきました。
現在は、国内外での展示や取り扱いなど、活動の場を広げています。
ジュエリーの原型になったもの
展示会では、実際に型取りに使用した素材を、完成したジュエリーと一緒にディスプレイしています。
POP-UPイベント
初めての海外での個展は、フィリピン・セブ島のアートギャラリーで開催しました。


フィリピンの新聞社SunStarにも取材していただき、紙面で大きく取り上げていただきました。

現地TV取材。
最後に
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
私が作りたいのは、野菜をジュエリーにすることだけではありません。
普段なら見過ごしてしまうものに目を向け、そこにある美しさに気づくこと。
それが、この活動を続けている理由です。
そして、素材を無駄にしないことも、私にとって大切なことのひとつです。
ジュエリーとして選ばれなかったパセリや食材も、捨てることはありません。
サラダやパセリソースなどにして、最後までおいしくいただいています。



