2020/05/17 12:17

川崎に住む当時15歳の小林空雅さんと会ったのは2010年8月のこと。甘いものが好きだと聞いていたので、ケーキがおいしい駅前のカフェを指定しました。母親に付き添われて現れた本人を見て少なからず驚きました。とてもかわいい魅力的な子だったからです。

その後数十人の性別に揺れている人たちに会うことになるのですが、共通して言えるのはとても魅力的で人格が深い方が多いということ。性別は人格の根幹ですから、その根幹が揺れていることによって、人一倍「自分とは」「自分らしさとは」ということを深く考えている人たちだと思います。深い悩みをもつことで、優しさも兼ね備えている方が多いと思います。そしてその魅力は表面にも表れていることも多いのです。

ただ、そんなことを知らない当時の私は、テレビ局に雇われているディレクターでしたから、空雅さんを見て浅はかなことに、「これは良い被写体になるな」と思っただけでした。

男の子とも女の子とも言えないとても不思議な魅力。女性の遺伝子を持っているからか、とても肌がきめ細やか。一部メッシュを入れたさらさらな髪。ファッションからもセンスの良さが滲み出ていました。表情はまだ暗く、ときおり視線を下げながら話します。それがまたういういしくて、共感を呼びそうだ、と。

当時の空雅さんは、まだ自分の思いを言葉ではっきりと表現できるほどの語彙をもっておらず、たどたどしく話していました。それでも「全国の同じ悩みを持つ子どもたちの助けになれば」と自分のことを伝えたいという強い意思を感じました。名前も顔出しも大丈夫だと言う。そして自分にはタブーはないから、なんでも聞いてほしいと言う。私はまた浅はかなことに「理想的な被写体と出会った」と思いました。

そのときは、まさかそれから10年間のお付き合いになるとは知らず、そして被写体と捉えていた子どもが、その後、自分が本当に伝えたいことを伝えるための同志になっていくとは露ほども想像しなかったのです…(続く)


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映画が作られるまで、そして完成してから、たくさんの方のご縁やつながりやご支援をいただき、感謝するばかりです。本当に不思議でたまりません。

映画が初めて公に公開されたのは2019年4月27日。そのときに観客として来ていた1人の方が、それから映画を広めるお手伝いをしてくれることになりました。

藤本加奈さん。

5月22日の映画の劇場公開が延期となり、心底がっかりしていた私を励ますように、加奈さんはオンラインイベントをやりましょう!と提案してくれました。チームであれやこれや構想を練って、ついに公開予定だった5月22日にイベントを立ち上げます。

まだまだつたない私たちが企画するイベントですから、不備があるかもしれません。でももしご興味をもってくださったら、ぜひいらしてくださいませ。本音でお話をさせていただきます。

https://peatix.com/event/1487757/view