▼はじめにご挨拶

はじめまして、NPO法人Child First Lab.代表の髙岡昂太(たかおかこうた)と申します。私は、子どもの虐待やDV、性暴力などの医療-福祉-司法-教育現場に、10年以上かかわってきました。

今は、北米で実践・研究・技術開発をしていますが、その状況と比べて日本の子どもを守る現状に強い危機感を抱いています。理由は、日本では子どもの安全に関わる人材の数や予算が圧倒的に少ないこと、そして専門性のバラツキが非常に大きいことです。システムのアップデートなども必要ですが、まずは支援者の専門性を高め、少しでも効果的な対応ができるよう、今回現在研究を進めているAIを用いたプロジェクトをスタートしました!

▼このプロジェクトで実現したいこと

このプロジェクトの目的は、子どもの命を支えている現場の支援者をサポートすることです。そのために、モバイルアプリケーション(例:スマホアプリ)と、人工知能(AI)を活用した、「意思決定支援プラットフォーム」を作ります。このプラットフォームは、支援機関に蓄積されている過去の子ども虐待のデータ(個人情報は完全に削除されたデータ)を解析し、今起こっている事例にどう対応するのがよいか、子どもの属性や状況に応じて、最適な支援方法をガイドします。


具体的には、

 ・一般の方や支援者向けに子どもの安全を疑った時に何をすべきかガイドするアプリ

 ・子ども、一般の方、支援者向け、それぞれのニーズに応じた通告用アプリ

 ・安全なクラウドデータベースで通告データの集積と即時の調査/捜査機関へ情報共有

 ・AIを用いたリアルタイム解析(再発率の予測や必要な多機関連携の手段)

 ・調査/捜査機関に所属する支援者に即時に分析結果と望ましい対応をフィードバック

といった内容を予定しています。

▼プロジェクトをやろうと思った理由



虐待対応件数が10万件を超えた!年間100人の子どもが亡くなっている!
 

 2016年9月現在の最新の統計では、児童相談所の虐待対応件数は全国で10万件を超え、警察でもわずか半年の間にすでに虐待対応件数が2万件を超えています。他にも市区町村でも年間約10万件前後対応していると言われます。現在18歳未満の子ども達の人口は約2,200万人とされ、100人に1人は子どもの安全が疑われるのです。しかし、これはまだまだ欧米に比べて、数が少ないのです。何故少ないのでしょうか?それは子どもの虐待を疑うには、専門性が必要だからです。

 

 例えば、私が現場で見聞きしたよくある事例では

・「虐待ではない」「大丈夫」という親や子ども本人の話を、すべて真実だと思い込む。

・勇気を持って子どもが開示した性虐待被害を支援者が疑ってかかり、結果子どもが撤回する。

といったことが起こっています。いずれも十分な教育・研修を受けていない職員が、誤った直感や善意で対応したために、虐待を発見することができない事例でした。

このような専門性の不足を筆頭に、およそ日本の虐待対応の現場は、法律や予算面、組織、個々人のスキルの面などで、欧米に比べて30年遅れていると言われます。これを解決するために、私はAIが活用できると考えました。その理由を以下に述べます。
 

1点目:システム改変や人材を増やすことを待てないし、今すぐに、支援者不足を解決しなければならないから

 法律やシステムを整備し、専門性の人員を増やすことが最も喫緊の課題です。例えば、日本の児童相談所では、特に大都市部では児童相談所の職員は1人当たり担当ケースは常時100件を越え、虐待だけでなく、非行や障がい支援も請け負っています。しかも担当時間は無制限で、最終決定も各児童相談所のみで決めなければなりません。


 一方、欧米の児童保護局(Child Protection Services)では、1人当たり担当ケースは20-30件にコントロールされ、初期初動で決められた時間(州によって異なる。おおよそ72時間-1週間以内)で調査と保護を行っています。その後は、児童保護局の調査結果に基づき、裁判所が客観的に最終的な意思決定をします。


 誤解を恐れず言えば、日本のシステムは子どもの安全を守るのに非効率なのです。


 業務を効率化することがもっとも重要ですが、それを待つには、行政規模や法改正などで多くの時間がかかります。今現在苦しんでいる子どもを助けられません。喫緊で使えるシステムが必要なのです。


2点目:専門性の維持が難しいのに、現場では支援者の即時スキルアップが求められているから

 欧米では、子どもの安全に関わる機関は、ほぼ修士学位以上のレベルが求められ、地方部でも最低限子どもの安全に関わる大学卒業レベルを求められます。つまり、現場に入った際には、危機管理から支援についての専門性がある程度身についた状況で仕事に就きます。


 一方、日本では、人材不足から専門職採用ができない、働きながら専門性を高める余裕がないなど、予算や人材リソースの制限があります。一部の現場では全く専門外(例:事務職や全く違う部署からの異動)の方が子どもの安全を守らなければ、組織として運営できないなどのハードルがあります。さらに、そのような状況の負担から心身に不調をきたしたり、短期間での異動によって専門性を高く保てない状況もあります。


3点目:ケースバイケースの現場に、科学的根拠のある意思決定が求められているから

 どのようなケースも、様々な要因があり、一概に同じ対応はできません。同様に、支援者の考え方や質によっても、その対応は様々です。しかしながら、すべてのケースの対応を、そのときの判断に委ねてよいのでしょうか?


 同じような身体的虐待のリスクのケースでも、Aという機関では保護し、Bという機関では保護されないという違いが生まれます。もちろん個々のケースの事情や、地域のサポート資源によって判断は異なります。


 ただし、これまで安全を守れなかった事例(例:虐待による死亡事例など)については、いくつかの共通する要因が含まれていることが明らかになっています。

 例えば、情報共有が遅かったことや、各支援者の判断が甘かったこと、システムとして上手く対応ができなかったなどがそれに当たります。


 全ての判断は人間が絡み、一対一のやりとりがあります。ケースバイケースでもちろん良いところもありますが、そこに科学的根拠(エビデンス)によるサポートがあれば、より客観的な判断に活用できます。

 科学的根拠は研究者が生み出すべき仕事で、現場支援者はそれを利用する仕事です。


 しかしながら、研究者の論文投稿から査読、公開までには時間がかかり、現場では最新の研究結果にアクセスするには時間がかかり、かつ大学などにつながりがなければ読むことすらできません。


 より正確な情報提供ができ、リアルタイムで最新知見を活用できる、頑健な科学的根拠を生み出す仕組みを創り、誰もがそこにアクセスできる環境が必要です。


 以上のことから、AIを用いたリアルタイムで分析結果を活用する方法で、全国で知見を共有できるプラットフォームを開発することにしました。

 

▼これまでの活動

私達は全メンバーが、現場に関わる実践者であり、また最新の科学的知見を持つ研究者のグループです。 

髙岡昂太(University of British Columbia / NPO法人Child First Lab.代表理事 / 臨床心理士 / 司法面接士 / 教育学博士)

このプロジェクトの企画者です。子どもをより効果的に守れるよう、これまで培ってきた現場での臨床経験、研究歴、教育歴、そしてカナダで現在開発中のAIとスマホアプリについて日本でも発展を目指します。

 

小倉加奈子(東京大学大学院 教育学研究科博士課程 / NPO法人Child First Lab.理事 / 臨床心理士)

”どうすれば虐待を食い止められるか?”という問いをずっと持ってきました。現場で家族の支援に携わる日々で、家の内と外(社会)の両方を変える必要性を痛感しています。今回のプロジェクトでは、皆さんと一緒に「社会を変えること」に挑戦したいと思います。


先光毅士 (公的支援機関 / NPO法人Child First Lab.理事 / 臨床心理士)

福祉現場で働きつつ、子どもも家族もハッピーでいられる社会をつくるために、自分にできることから取り組んでいます。

伊角彩(東京医科歯科大学 / NPO法人Child First Lab.理事 / 米国Certified Family Life Educator / 国際公共政策博士)

子ども虐待予防の研究をしている伊角彩です。早期支援によって子どもの虐待が予防できるエビデンスをつくりたいという想いから、研究と虐待啓発に関わっています。

福永宏隆(信州大学医学部 / NPO法人Child First Lab.理事 / 臨床心理士 / 医学生)

子どもや親に対して社会がより優しくなれるよう、子どもや育児に関する人々の認識を少しずつ変えていきたいと思いながら、この活動に取り組んでいます。

安藤絵美子(東京大学大学院 医学研究科公衆衛生 博士課程 / NPO法人Child First Lab.理事 / 精神保健福祉士)

私は疫学・公衆衛生の立場から、子どもの虐待の1次予防に向けた科学的根拠の構築を目指しています。

Patrick Boutet (University of British Columbia / データベース&システム開発:バックエンド・スペシャリスト)

これまで携わった専門的なシステム開発の技術を元に、新しい技術で子どもの安全を守ることに貢献してみせます。

▼協力者・機関


山本恒雄 先生(愛育研究所)

本村陽一 先生 (産業技術総合研究所 人工知能研究センター)

三重県児童相談センター

▼これまでの活動 

 これまで、現場の実状や最新の知見を広く一般に理解されやすい形へ変えて、Twitterや、YouTubeを通して社会へ伝える活動を続けてきました。

子ども虐待対応たん(虐待対応啓発Tweet bot)

・性暴力を受けている子どもたちへ(2014/2015年企画・作成)


・妊娠・・・?どうしよう(2016 企画・作成)


・【1分でわかる】所在不明児童対応に必要なこと


 所在不明児童に対するオンライン署名活動


▼資金の使い道

1:安全性の高いクラウドへデータを蓄積する費用

ー傷やアザなどの外傷の画像保存
ーリスクを見積もるデータ
ーその後の支援策を検討するデータ


2:AI利用のためのサーバー管理費

得られたデータをクラウドサーバー上で分析アルゴリズムを動かす費用

例:IBM Watson、Microsoft Azure、またはAmazon AWSなどでPythonによるリアルタイム解析を行う


3:現場の支援者向けのアプリ開発のための費用

基本的に私達NPOの研究班でアプリ開発を目指します。
ただ、より使いやすいユーザーインターフェイスやデザインにするためのコンサルタント費用、または情報共有や各スマホのネイティブ環境に対応するための専門家へのコンサルタント費用を含みます。


4:現場支援者の方々との打ち合わせ費用・旅費

このプラットフォームを使うには、各行政や団体の方々との綿密な打ち合わせが必要です。支援機関・支援者の皆様のご理解とご協力が何よりも重要だからです。

また、特に個人情報保護を遵守し、データの安全性についてもきちんと各組織の情報セキュリティ担当者の方、専門家の方と打ち合わせる必要があります。

さらにはシステム開発だけでなく、どのように運用するかの説明や現場との協働が必要です。そのためには、顔を合わせての打ち合わせが大事になります。そのための交通費や旅費に使わせて頂きたいと思っています。

▼リターンについて

このプロジェクトは、All inと定期的な支援のGood morning両方でスタートします。

ご支援頂いた方には、具体的に進捗について、定期的にご報告いたします。

また、ご支援額に応じて、私達がこれまで作成してきたデザインのクリアファイルやTシャツ、または代表による特別講演会や、皆様との特別な意見交換会、一般ユーザー向け機能のハンズオンセミナー会も企画しております。

高額支援者の方にはさらに特別な企画をご用意しております。

詳しくは、右記リターンをご覧下さい。

▼最後に

安全な子育ては、どこの国も、どの時代も、誰もが請け負うことです。今このページをご覧頂いている皆様も、昔は誰もが子どもでした。

子どもの安全を守るための早期の支援は、その後の子どもの安全や安定に貢献できることが既にこれまでの研究で明らかになっています。

私達は、このプロジェクトで、今の世代そしてこの後に続く子どもの世代に、より良い安全な世界を構築します。

このプロジェクトが成功し、現場で即役立つプラットフォームができれば、その仕組みは、DVや性暴力、子どもの貧困など様々な分野にも水平展開が期待できます。


日本には、”子どもの支援後進国”という現状からの新しい打開策が必要です。


そのために、皆様のご支援が必要です。
何卒ご支援の程、宜しくお願い申し上げます。

企画・代表 髙岡昂太

 

このプロジェクトの問題報告はこちらよりお問い合わせください