▼ご挨拶

こんにちは。国際協力NGOダイヤモンド・フォー・ピースの村上千恵と申します。私達はダイヤモンドが人道環境配慮の上、採掘・カット・製造される社会をめざして、日本と西アフリカのリベリアで活動しています。

リベリアで手掘りダイヤモンド採掘者との会合の様子
(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影)

私達はリベリアで極度の貧困に苦しむ手掘りダイヤモンド採掘者達を対象に自立支援活動を開始しました。その一環として、コーチング・プログラムを開発・実施するために必要な資金150万円を集めるため、このクラウドファンディングを行っています。

なぜ、私がダイヤモンド・フォー・ピースの活動を始めたのか、なぜリベリアで活動を行っているのか、ダイヤモンド採掘現場の現状と課題、資金150万円の使い道について、順にご説明いたします。

▼きっかけ

私は自分に贈られた婚約指輪をきっかけにダイヤモンドに興味を持ち、ハッピーでワクワクするストーリーを期待してダイヤモンドについて調べてみました。すると期待とは裏腹に、映画「ブラッドダイヤモンド」にも描かれているような、ダイヤモンドを資金源とするアフリカの内戦で何万人もの人々が亡くなったり手足を切り落とされた人がいる現実を知ったのです。それだけでなく、児童労働、強制労働、債務労働、環境破壊など多くの問題があることを知り、愕然としました。

ダイヤモンドを資金源とする内戦で、右手を切り落とされた男性(村上撮影)

婚約指輪、結婚指輪、記念日など人生の幸せな節目に贈る・贈られるものが、実は世界の裏側の誰かの人生を犠牲にして生産されることが許されてよいのだろうか?この事実を知った私は、それを知らないふりをしてこれからの人生を生きていくのだろうか?

様々な葛藤が心の中に渦巻き、やがて私は、自分にできることは何かを考えるようになっていました。数年が経ち、発展途上国の生産者を支える貿易の仕組みであるフェアトレードの概念をダイヤモンドにも適用できると考えるようになりました。また、ケニア等のアフリカ地域で国際協力の仕事もしていたため、自分の経験をダイヤモンド採掘が盛んな西アフリカで生かせると思うようになりました。

リベリアとのご縁

2014年5月、私は友人の友人を頼りに西アフリカのリベリア共和国のダイヤモンド採掘地域に視察と基礎調査を兼ねて行きました。国連開発計画(UNDP)が発表する人間開発指数で、リベリアは189カ国中181位。2003年までの内戦の影響により教育を受けられなかった大人が多く、識字率は国民の47%。インフラも整っておらず、国にある幹線道路は3つ程度、ほとんどの道は舗装されていないため雨季は通行が困難になります。リベリアは世界で最も降雨量が多い国の一つで川も多いのですが、橋が少ないため、移動に大変な時間がかかります。電気が通っているのは首都とその周辺の一部のみで、停電も頻発します。また、政府機関で働く人の多くが腐敗していると言われており、政治や組織が正常に機能しているとは言いがたいのが現状です。

リベリアでは幹線道路以外は舗装されていない道ばかり
(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影)

西部地域でダイヤモンド採掘をしている人々の家は土壁の簡易な作りで、トイレやお風呂があるのはお金持ちの家だけでした。人々の様子を見ても、苦しい生活のためか暗い雰囲気が漂っていたのが印象に残っています。

ダイヤモンド採掘者の家
(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影)

首都に戻ると幸運なことに、土地・鉱山・エネルギー省の当時の副大臣に面会することができ、フェアトレードの概念をダイヤモンドに応用することで、採掘している人々の暮らしがよくなるアイディアを伝えました。フェアトレードの認証にはどんな産品であっても労働者の組合化が必要なのですが、リベリア政府は鉱物採掘者の組合化を国として推進する予定であることが判明しました。リベリアが国として進みたい方向が、私がめざす方向と一致していることから、リベリアで活動することを決意したのです。

エボラ出血熱の流行

よしリベリアだ!と思って帰国した直後、リベリアをはじめとする西アフリカでエボラ出血熱が流行し始めました。何万人もの人々が亡くなるという非常事態に私達も危機感を覚え、人々の命を守るため緊急支援活動を行うことにしました。人が密集している首都の学校には、国際機関の支援で体温計や手洗い設備が入っているはずでしたが、小さな学校や地域住民が設置した学校には国際機関の支援は全く入っていなかったのです。私達は国際機関の支援から漏れている学校を対象に、非接触体温計、手洗い用の水桶、せっけん等を寄付し、手洗い方法を説明しました(リベリアの人々には手を洗う習慣がないのです)。また、エボラ出血熱の正しい知識を住民に啓発していたボランティアグループを支援し、より多くの人々が正しい知識(エボラは悪魔のしわざではない、予防する方法等)の啓発を推進しました。(当時ご協力頂いたみなさま、ありがとうございました!)

寄付した設備で手を洗う生徒たち
(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影)

世界保健機関(WHO)がリベリアでエボラ出血熱の終結を宣言したのが2016年春。私達はようやく本来の目的であるダイヤモンドの活動を始められるようになったのです。

手掘りダイヤモンド採掘の実態

私達は、2016年から2017年にかけ、手掘りダイヤモンド採掘の実態を把握するための詳細な調査を行いました。まず、リベリア人スタッフが数ヶ月かけて西部地域の村を一つずつ訪ね、ダイヤモンド採掘をしている村の基本情報リストを作成しました(政府はそのようなリストを持っていなかったのです)。その中の6村を調査チームが訪問し、採掘者、彼らの家族、村人達に聞き取りを行い、採掘や村の生活の状況を調査しました。

インタビューの様子
(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影)

その結果主に以下のことが判明しました。
・採掘権保有者の年収の中央値は1044米ドル(約10万円)、採掘労働者の年収の中央値は300米ドル(約3万円)。
・採掘権保有者、採掘労働者共に、ダイヤモンドを見つけ販売した時のみ利益が分配される。過去1年間に1つもダイヤモンドを発見できなかったと答えた者もいた。
・過半数の採掘者は、「サポーター」と言われる投資家に採掘費用の一部を支援してもらっている。ダイヤモンドが見つかった際、自分を支援するサポーターが提示する低い言い値で彼らにダイヤモンドを販売しなくてはならない。そのため、適正な利益を得ることができず、サポーターへの依存から抜け出すことができない貧困の悪循環に陥っている。
・各人が個別に働いており組織化されていない。そのためサポーター等の利害関係者と団体交渉をすることができない。
・ダイヤモンドの価値を評価することができない。そのため自分が発見したダイヤモンドをいくらで販売するべきかがわからない。
・1日の食事の回数は2回が最も多く、次いで1回。3回と回答した者はいなかった。
・訪問した6村のうち2村には小学校がない。

リベリアの手掘りダイヤモンド採掘の様子。
(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影)

採掘者と実際に話した中で最も頻繁に聞いたのが、「サポーターとの関係を断ちたい」「ダイヤモンドの価値を自分で判断できるようになりたい」つまり、そうすればダイヤモンドの販売価格を上げることができ、人間らしい暮らしができるという声でした。

惨状を訴える採掘者たち
(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影)

ダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)が考える解決策とめざす姿

下の図は、採掘者が陥っている上述の悪循環と価格交渉ができない主な理由を示したものです。

ダイヤモンド・フォー・ピース作成

ダイヤモンド・フォー・ピース作成

以下は私達が介入し解決を支援しようと考えている活動です。サポーターへの依存を断ち切ることを目標に、収入を上げるための効率的な採掘手法の研修、効率的な副業の研修の他、採掘者たちが組合として組織化し組織としての能力を向上させるための一連の研修を計画しています。最初の研修として、現在チームビルディング研修を開発しているところです。

DFPの介入(オレンジ色のボックス)が成功した暁には、採掘者の収入が向上し、サポーターへの依存を断ち切り、法に則った採掘を行い、彼らが採掘したダイヤモンドを正規国際市場に流通できるようになります(「めざす姿」の赤のボックス)。

ダイヤモンド・フォー・ピース作成

ダイヤモンド・フォー・ピース作成

最終的に将来フェアなダイヤモンドを実現するには、採掘者たちが民主的かつ透明性のある組合運営を行えるようになる必要があります。言うのは簡単ですが、実際にこれを実現するのは大変なことです。実現には単に研修を開発・実施するだけではなく、日々の活動に寄り添うコーチングを通して彼らを勇気付け、継続して取り組んでいける土壌を醸成していく必要があります。

採掘者が自立することで、彼らの子ども達が学校に通えるようになります。
(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影)

採掘者組合の運営を支援するコーチング・プログラム

ダイヤモンド・フォー・ピースのリベリア人スタッフがコーチとなり、毎月対象村を訪問し、彼らの組合活動の進捗を確認します。現在重点的に取り組んでいるのは、会合を行った時に話し合った内容を記録するための議事録を作成することです。採掘者たちは読み書きできない人も多く、議事録等の記録を作成する習慣がありません。そこで、プログラムでは、なぜ議事録を作成する必要があるのか、誰が作成するのか、担当者がいない場合はどうするのか、どのように議事録を作成するかということをコーチしています。少しずつ彼らの技術は向上していますが、きちんとできるようになるには、まだまだ時間が必要です。また、少しでも進歩があった場合には評価し、彼らのやる気を高めるきっかけとするようにしています。

コーチング・プログラムで取り組む主な活動として、以下を考えています。
・組合の定期会合開催の習慣化
・組合員同士の信頼関係の醸成
・議事録作成の習慣化
・組合員会費納入記録作成の習慣化
・サポーター等、誰かの支援を受ける場合の条件の事前確認及び交渉と契約書作成
・ダイヤモンド販売記録作成の習慣化
・組合内の民主的な選挙の実施とリーダー層の任命
・組合の事業計画の策定
・組合開発庁への組合申請と必要条件のクリア

彼らにとって決して簡単な取組みではありませんが、組合として活動していくには欠かせない活動です。これらの活動を通して、採掘者が自らの能力を向上させ、民主的な組合運営につなげていくことを目的としています。

▼対象村について

私達は、リベリア西部にあるウィズア村を対象に活動を開始しました。上述した実態調査後、以下の基準にあう可能性の高い候補村を4村抽出し、各村の個別の状況を調べ、ダイヤモンド・フォー・ピースの介入について採掘者や村人達と合意形成を図ってきました。その結果、私達の介入を望んでおり、かつ自主的に会合を開き自分達である程度の事を進められるウィズア村を対象村として選定しました。

【対象村選定】


ウィズア村からのダイヤモンド・フォー・ピースへの介入依頼の手紙。自分たちが置かれている現状と課題からの脱却への支援を求めている。

▼コーチング・プログラムを担当するリベリアのスタッフ

コーチング・プログラムは、ダイヤモンド・フォー・ピース・リベリアのウインストンが担当します。ウインストンはリベリアで複数のNGOのプロジェクトに従事後、2016年からダイヤモンド・フォー・ピース・リベリアに勤務しています。私達日本人スタッフと一緒に実態調査を行い、その後の候補村の調査や合意形成で大きな役割を果たしています。ウィズアの状況も熟知しており、採掘者や村人との信頼関係を作ってきましたので、コーチとして適任だと考えています。奥さんと子ども4人の家族。サッカー観戦が好きです。

ダイヤモンド・フォー・ピース・リベリアのスタッフ、ウインストン

▼費用について

今回協力をお願いしているコーチング・プログラム実施(1年間)にかかる150万円の内訳は以下のとおりです。

・リベリア人担当スタッフ人件費 40万円
・リベリア国内 首都から対象村への移動費用・宿泊費 30万円
・コーチング・プログラム マニュアル作成 10万円
・日本人専門家派遣にかかる渡航費 30万円
・モニタリング及びプログラム改善にかかる費用 15万円
・本クラウドファンディングにかかる費用(CAMPFIRE手数料、リターン等) 25万円

▼さいごに

平和とはどのような状態のことを言うのでしょう?単に戦争が起こっていない状態のことでしょうか?私達ダイヤモンド・フォー・ピースは、平和とは「人が人としての尊厳を保っている状態」のことだと考えています。つまり、物理的に戦争や内戦が起こっていない状態のことではなく、誇りを持てる仕事をし、家族を養い、子どもに教育を受けさせることができ、自らの自己実現を追求できる状態が「平和」であると考えています。 

私達がダイヤモンド・フォー・ピースの活動を始めた頃、多くの人々に「そんな難しいことできるわけない」と言われました。また、ダイヤモンド業界の方には「ダイヤモンドにはそんな問題は存在しない。何を言っているんだ!」と怒られたこともあります。

私達は自分達ができることを一つずつ積み重ねてきました。その結果、最近はそのようなことを言う人はおらず、逆に私達の活動に可能性を見出してくださる方が少しずつ増えてきたと感じます。これからも小さな歩みを一つずつ積み重ね、平和を生み出すダイヤモンドが国際正規市場に当たり前に流通する日を目指して努力して参ります。応援の程、どうぞよろしくお願い申し上げます!

リベリアの手掘りダイヤモンド採掘地域訪問の様子
(ダイヤモンド・フォー・ピース撮影)


本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。


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