はじめに、旧絵鞆(えとも)小活用プロジェクト代表よりご挨拶

 北海道室蘭市、旧絵鞆小活用プロジェクト代表の三木真由美と申します。結婚に伴い17年前に室蘭に移住。10年前に開局したコミュニティFM「FMびゅー」設立にボランティアとして関わったのをきっかけに市民活動に巻き込まれ、現在はNPO法人室蘭NPO支援センター理事長兼市民活動センター長として、各種ご相談などに対応する仕事をしています。

FMびゅーにて、市民活動の大先輩で老舗のお米やさん・白川晧一さん(右)と、社長の沼田勇也さん(左)と。

 6年前、室蘭の歴史の証人である古い建物を広く知ってもらいたいと任意団体を立ち上げた時、絵鞆小円形校舎もいいよ!とおすすめされました。滑らかな螺旋階段、扇形の教室、体育館のドーム屋根…こんな学校に通っていたら、常識にとらわれない発想が育ちそうです。

2棟の円形校舎が並ぶ旧絵鞆小学校

螺旋階段

 美しいでしょう?(株)福本工業さんが絵鞆小学校をパノラマVR撮影したデジタルアーカイブもぜひご覧ください。

旧絵鞆小学校のパノラマVR 

 閉校し使われなくなったこの校舎、ドーム屋根の体育館棟は耐震性がないことを理由に11月以降解体される予定です。しかし、体育館棟も残してほしいという声は根強い。この校舎を残したい!と思う皆さんの力を集約して、プロジェクトを成功させたいと思います。

 とはいえ、室蘭市は11月から体育館棟を解体する予定を変えていません。市が解体に着手する前に、資金を確保することはもちろん、この建物を維持できる実現可能な事業提案を示し、納得してもらわなければなりません。
 このクラウドファンディングで1000万円以上、できればその倍くらいの資金を集め、実現可能性を示したいと思います。資金が集まらなければ実行できないプロジェクトのため、All or nothing方式で行います。(1000万円に達しない場合は事業ができないため、皆様のお申込みいただいた金額は決済されず、ご負担もリターンもありません)。
皆様のご理解、ご協力を心からお願い申し上げます。


2棟並ぶ円形校舎を、室蘭の魅力を発信する拠点に

 2015年3月に閉校した「室蘭市立絵鞆小学校」。円形校舎が2棟並ぶ、魅力あふれる建物です。卒業生の写真家・関浩勝氏が閉校前に撮影したこの夜景写真には、宇宙ステーションのよう、との感想もいただきました。この建物を知らない方にも広く心を寄せていただくきっかけとなった、関さんの愛があふれている写真です。

 体育館棟は3階(体育館)部分の耐震性がなく、市長が解体やむなしと判断しました。ただ、そこに至るまで、具体的な耐震設計や官民協働で活用を検討する場を設ける、などの残すための行動がなく、残す努力が尽くされたとは思っていません
 8月に1日だけ一般公開された際には公式発表で900名の見学者が訪れ、「残してほしいな…」というため息のような声をたくさん聴きました。
8月13日の公開の際に書きくわえられた、黒板。

 体育館棟を解体しても耐震性のある教室棟は残り、「縄文文化の展示施設」として市が1階部分を活用する予定となっています。この小学校の敷地には縄文時代の貝塚があり、2015年の発掘調査では縄文時代の人骨も見つかっているためです。

 少なくとも1棟が残り、活用されることには感謝しています。しかし建築様式の違う2棟が並ぶことが絵鞆小円形校舎の最大の魅力であり、体育館のドーム屋根の鉄骨の美しさも残していきたいのです。体育館の天井

 市側と協議を重ねましたが、耐震性のない体育館棟を市が持ち続けることはできない、という原則は覆りませんでした。ただ、耐震改修を行うまで原則的に立ち入り禁止とし、教室棟と一体で2棟の活用を行う現実的な事業計画を、体育館棟解体の入札前に提示すれば売却の可能性はゼロではない、と示していただいています。

 私たちは、2棟を市から譲り受け、老朽化した屋根や外壁を改修し安全を保ち、室蘭の魅力を発信する拠点として活用したい。将来的には体育館棟の耐震改修を行い、宿泊事業などを展開したいと思います。
 当面、耐震性のある教室棟を活用し、楽しい室蘭をつくる事業者・起業家を応援する貸事務所や、一般の方にもご覧いただける展望台や展示スペースを整備し、教育委員会と協力して縄文文化の展示を行いたいと考えています。
 観光で訪れる方にも、移住して来られる方にも、室蘭が地元の方にも、室蘭の魅力を伝えていく拠点としたいのです。


円形校舎は文化財に匹敵、でも解体

 この2棟並ぶ円形校舎は、全国で100以上の円形校舎を設計した坂本鹿名夫氏の「作品」であり、昭和33年・35年に建てられました。鳥取県倉吉市でフィギュアミュージアムとして活用される日本最古の円形校舎・旧明倫小学校、三重県朝日町でいまだ現役校舎として大切にされている登録有形文化財の朝日小学校と同じ設計者の手によるものです。
 ドーム屋根を支える構造が力強さを感じさせる体育館棟と、一面のガラス窓や基礎が目につかない浮遊感が軽やかさを感じさせる教室棟の2棟が1対となっています。私たちが2棟1対での現存を確認したのは、全国でも絵鞆小と小樽の旧石山中のみです。建築関係者からは2棟そろってこその建築的価値を強調されています。


 室蘭の歴史的建造物を調査発信する市民団体「蘭歴建見会」では2014年に体育館棟の保存を求めて署名活動を開始、約2800筆の署名を翌年教育委員会に提出。2棟の魅力を発信する講座やパネル展を開催し、この建築の価値啓発に努めてきました。
2017年4月、建築史家・駒木定正先生(小樽在住)の講座


 地域の有識者で構成する室蘭市の文化財審議委員会も「校庭を含めた2棟の保存が望ましい」との立場を崩しませんでした。過去の議事録で当時の教育長も、円形校舎を「文化財」と認識した発言があります。

 しかしその後、具体的な保存の動きはなく、地元からは体育館棟の屋根の傷みなどが問題視されました。改修には多額の費用が掛かり、特に3階部分の耐震性がないと判断された体育館棟の解体が現実的と考えられたのです。

 市は最終的に売却先を公募しましたが、企業などの応募がなかったため、私たちが市民団体として手を挙げ事業計画を提出しました。しかし市の見積もり(耐震改修以外の安全を保つだけでも2億円以上)を参考に耐震改修も含めて出した初期費用の高額さが壁となり、資金面を不安視され、売却してもらえませんでした。これが昨年11月までの経緯です。

 ところが今年の8月になって「最低限安全を保つ改修」の参考額を出してくれる方が現れ、3300万円程度で2棟の「屋根が飛ばない、外壁が落ちない」最低限の改修ができるのではないか、と専門的な見地から助言をいただきました。歴史的建造物のリノベーションも行っている設計事務所の1級建築士なので、参考といえども信頼できる額です。2億と思っていたものが3300万円!という条件の変更を受け、再始動したのが8月。

 しかし、行政手続き的にはすでに終わった話で、体育館棟の解体費を含めた補正予算は、9月議会で承認されました。そして11月半ばには、解体の入札が行われます。

 今となっては、私たちがその前に待ったをかけられる事業提案を出すしか、体育館棟を残す道はありません。
 つまり市が一度通した予算をひっくり返さなければならない。相応の実現性が求められるのです。

 それでもチャレンジするのは、この魅力あふれる建物がまだ残っているから。あきらめたらそこで試合終了ですよね。体育館棟の耐震改修費用は誰も正確な計算をしていません。もしかしたら低廉に耐震性が上がる方法があるかもしれない。
 建物の魅力は様々な方が認めており、こんな風に使えば…という夢はいろいろな方が持っています

 例えば、絵鞆小出身で(一社)むろらん100年建造物保存活用会の代表、工学博士でもある村田正望さんは、
「現在建て替えが進められている青少年科学館は少し狭くなるようなので、置ききれない設備を移して科学教育に使うのはどうか。自分も科学館の科学クラブの出身で、科学館が実践するものづくり教育はSTEM教育に通じ、世界水準であると感じている。体育館棟でのびのびと学び、世界に羽ばたく人材が育つのではないか

と、本業での経験も踏まえて熱く提案しています。いつも2時間くらい語られます(笑)

その他にも「宿泊に利用しては」「室蘭にも遺跡があるアイヌ文化について発信する拠点にしては」など、魅力的な使い方の提案があります。

実は残す方法があったのに…ということを、壊してしまってから知っても遅いのです。
私たちは、まだそれを調べつくしていないのです。


私たちのこれまでの活動

 本プロジェクトの代表の三木は、コミュニティFMのボランティアやボルト人形「ボルタ」を製造販売しているNPO法人テツプロの事務局などを経て、なぜか育休中に古い建物に着目した市民団体「蘭歴建見会(らんれきけんけんかい、通称けんけん)」や「一般社団法人むろらん100年建造物保存活用会」の立ち上げを行いました。本プロジェクトはこの2団体の共同プロジェクトとして行っています。

「蘭歴建見会」は室蘭の古い建物に心を寄せる市民が、街歩きなどを通して建物に親しみ、調査を行い情報発信のためのマップを作り、歴史的建造物の価値を楽しみながら知ってもらおうと活動しています。

「一般社団法人むろらん100年建造物保存活用会」は、先ほど話に上がった村田正望さんを中心に、旧三菱合資会社という築100年以上の木造建造物を解体目前に取得し室蘭の歴史を発信しています。
空知の石炭を中心に北海道の近代産業遺産をつなぐ「炭鉄港」という取り組みに尽力し、日本遺産認定に大きな役割を果たしました。

 本プロジェクトの写真を提供していただいている関浩勝氏も、絵鞆小出身。工場夜景やドローンによる空撮、写真を通して室蘭の魅力を発信し、室蘭で開催される24時間滞在型写真コンテスト「撮りフェス」の運営にも協力しています。なお、このプロジェクトに使用しているすべての写真は掲載許可を得ております。
朝日から星空、工場から自然豊かな風景まで、室蘭を被写体にすると撮ることが面白くてたまらない、と関さんから聞いたことがあります。物静かな中に情熱があふれている方です。

 そのほかにも、この校舎に思い入れを持つたくさんのメンバーや、経営の専門家・税理士などの助言を得ながら、プロジェクトを進めています。

資金の使い道・実施スケジュール

 前述したとおり、11月半ばの解体工事入札の前に、私たちがこの校舎を譲り受け事業を継続的に行うことができる、と室蘭市や金融機関に納得していただく額、つまりクラウドファンディング、自己資金や有志からの出資を含め、少なくとも2000万円以上を集めることができなければ、この事業のスタートラインに立つことすらできません。しかし、地域の市民団体や市民の皆様、地元新聞社や企業の皆様の理解をいただき、具体的に500万円程度は集める目途がついています。広く支援いただくことで、ぜひ後押しをしていただきたいのです。
 並行して金融機関の融資を検討していただいたり、協力してくれる企業などを探したり、あくまでも解体を予定している室蘭市側を説得するハードルは低くありません。もし目標金額に達しながら、諸事情により事業ができなかった場合には返金させていただきます。

 事業に必要な初期額は、少なくとも3000万円。

 262万円 不動産取得税
1000万円 防火水槽の新設(未確定)
1700万円 体育館棟の屋根・外壁改修

 また、プラスして、教室棟の屋根・外壁改修1600万円程度もかかってきます。

このほかに物件の購入費用があり公募の際には2棟で1256万円の値がつきましたが、これは議会の承認があれば減額可能と聞いています。

 今回のクラウドファンディングでお寄せいただいた資金は、体育館棟のドーム屋根の板金、外壁改修に充てる予定です。北海道でも台風被害を受ける昨今、傷んだ屋根が近隣に被害を及ぼさないように最優先で取り組みたいと思います。

 また、並行して耐震性のある教室棟の活用を行います。安全改修の工事自体は来年度以降を予定していますが、1階に教育委員会の縄文文化展示が入っていただけるのであれば、その発信をお手伝いしたり、それにかかわるミュージアムグッズの企画製造・販売などを行いたい、と思います。

 教室棟の2階・3階は貸事務所として、室蘭の魅力をつくる、発信する事業者・起業家の拠点となるような運営を行いたいと思います。1階を含めて貸室が12室あり、1室5万円で満室になれば年間720万円の収入となります。今後の維持補修、また体育館棟の耐震改修も現実的に考えることができます。

 3階・R階は、一般の方も入ることができる展示・展望スペースを設けたいと思います。室蘭港に浮かぶ白い灯台のある島・大黒島や、東日本最大のつり橋・白鳥大橋が間近にみられ、夜景スポットとしても注目を集めることと思います。入場料300円で、室蘭の観光客数120万人の1%である12,000人が入ったとすれば360万円の収入。実際にはもうすこし入場者数を多く見込んで、イベント収入やコワーキングスペースの設置などを検討し事業計画を作っています。耐震改修費用を見込むと厳しいものですが、事業を進める間にさらなる協力者を得て実現できるものと考えています。

 今ならまだ、間に合うかもしれません。この2棟を守り、室蘭をワクワクさせたい!私たちにぜひ力を貸してください。

室蘭の魅力を発信したい!

 この取り組みが絵鞆小や室蘭市と関係ない方にまで届いたら、きっと「室蘭って、どんなまちなの?」と思うことでしょう。魅力は語りつくせませんが、簡単に紹介します。

 北海道室蘭市は、北海道で唯一の製鉄所があり、大型の鉄鋼製品を作る製鋼所がある「鉄のまち」として知られています。絵鞆小のそばには、造船所があります。

 その反面、鳴り砂の浜があったり、道内有数の渡り鳥のメッカでハヤブサが営巣していたり、夏にはイルカ・クジラが子育てをする噴火湾に面していたり、海底火山の断面図と言われる美しい断崖絶壁が連なっていたり、多数の巨木を有する山林が広がっていたり…と、重工業都市のイメージを覆す美しい自然もあります。 工場と自然が一体となる景観は日本中探しても稀なもので、この街を舞台に写真を撮影する24時間滞在型フォトコンテスト「撮りフェス」でも美しい風景が切り取られています。

去年の撮りフェスでは旧絵鞆小がライトアップされ、人気を集めました。

 室蘭は北海道内では雪が少ない地域で、夏は海霧が発生する冷涼な気候。避暑地に最適です。隣には温泉で有名な登別市、温暖で農業が盛んな伊達市があります。

 室蘭は北海道で唯一の重工業都市として栄えましたが、そのきっかけは、明治時代に夕張などの空知地方で産出する石炭を鉄道で運び船に積む「積出港」となったことです。
 今年5月には、近代北海道を築く基となった三都(空知・室蘭・小樽)を、石炭・鉄鋼・港湾・鉄道というテーマで結び人と知識の新たな動きを作り出そうとする取り組み「炭鉄港」「日本遺産」に認定され、今後、産業の歴史を取り入れた観光にスポットがあたることでしょう。

登録有形文化財「旧室蘭駅舎」横にはSLが移設され、今後、室蘭の歴史の発信に活用されます。

 絵鞆小学校には、船や橋などを作る会社の子どもたちが多く通いました。高度経済成長を下支えした施設の一つともいえます。ピーク時には1600人の児童がここで学んでいたそうです。

 室蘭の人口はピーク時から半減していますが、にぎやかだった時代の記憶を楽しみながら、ゆったりと暮らすことができる素敵なまちではないかと感じています。このプロジェクトに協力してくれるたくさんの方のように、まちを想って行動する人がたくさんいて、それも室蘭の魅力です。
 室蘭に来たことがない、という皆さんも、ぜひ室蘭を訪れてみてください。

リターンのご紹介

・関浩勝さん/室蘭の美しい風景の写真ポストカードや絵鞆小写真集「円形校舎に雪が舞う」

・松本浦さん/イラストポストカード・絵本「円形建築要覧」など
(路地裏や古い建物を味わい深く描く室蘭出身、札幌在住の挿画家)

・坪川夏織さん/オリジナルTシャツの絵
(ACジャパン北海道地域キャンペーン「ちゃんとやらなくちゃ」のイラストなど、精緻なドローイングを描く室蘭在住のイラストレーター)

・てつまち写真館/「むろらんの建物」(室蘭市民の思い出に残る建物を紹介。今はない建物を多数収録)

・蘭歴建見会/室蘭の歴史的建造物ガイドマップ冊子

 書籍はすべて、提供者の自費出版物で、販売許可を得ております。また、Tシャツなどに使う絵についても、販売許可を得ています。
 その他、事業を開始することができたら利用できる券や、代表が案内する街歩きなどをリターンとして提供いたします。
 ただ、室蘭市側は11月解体の予定を変更していません。もし諸事情によりクラウドファンディングで目標金額を達成したのち、事業ができなかった場合は返金いたします。あらかじめご了承ください。

最後に

 この2棟を守りたい!という、たくさんの方の想いを実現したい。

 この12年間、様々な市民活動の企画書・事業報告などの書類作りや会計、時にはバスツアーのガイド役まで、夢や理想を現実に落とし込む「作業」に携わってきました。きっとこのプロジェクトを担う準備期間だったんだと、今は思っています。

 あなたの想いを、あなたの応援を受けて、必ず実現させます。ご協力よろしくお願い申し上げます。


本プロジェクトはAll-or-Nothing方式で実施します。目標金額に満たない場合、計画の実行及びリターンのお届けはございません。

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