中国奥地の生物調査行と作品化に当たっての援助のお願い

 

 企画を思いついた背景 

 

私はNature-photographerの青山潤三です。中国の、主に四川省と雲南省で、昆虫や植物の撮影・調査を行って、今年で30年目になります。中国の生物相を知ることが、日本の自然の成り立ちを理解するための必須事項である、というのが、私の基本的な考えです。しかし中国の自然は奥が深く、いつの間にか30年が経ちました。

小生、いわゆる「不登校児」のはしりで、中学2年以降、正式な学業に就かないで来ました。そのこともあって、どこの大学や研究機関にも属さず、個人での活動を行っています。

主要研究対象は、蝶(交尾器の構造比較)と蝉(鳴き声の分析)、および植物(主に野生アジサイ)の、それぞれ系統関係の考察です。

私の活動は一見「マニアック」なものと見えるかも知れませんが、それとは対極にあると信じています。人類(ここでは日本人と中国人)が住み着く(数1000年前単位以前)より遥かな昔(数100万年単位以前)から、それぞれの地に生を育んでいる日本と中国の生物たちを比較することにより、両地域のアイデンティティの本質を理解し、将来の日中のより良き関係を模索する指標と成したいのです。

並行して写真撮影も行っています(本職はこちらです)。ただし蝶や植物のコレクションは(最低限の研究対象サンプルは別として)一切行っていません。そのような行為に魅力を感じないからです。

    

これまで20冊余の単行本を、「小学館」「北隆館」「平凡社」「白水社」「岩波書店」などから刊行してきましたが、その大半が、「屋久島の植物」「小笠原の自然」「日本の高山植物」「日本の蝶」などを対象とした内容で、中国をフィールドとしているにも関わらず、中国関係の本は一冊(「中国のチョウ」東海大学出版会1998年、504頁)を刊行しただけです。植物に関しては(「朝日新聞」などでの連載を除いては)どこにも発表していず、膨大な資料や写真が埋もれたままになっています。

それら30年間に亘って蓄積してきた資料や写真は、ある意味「地球の財産」だと思っています。それを世に表すことは、単に個人の問題ではなく、使命であると考えています。

「中国のチョウ」の刊行後、20年が経ち、私自身来年で70才になることもあり、集大成の作品刊行を行いたいと望んでいるのですが、出版業界不況の折、既存のメディアからの発表が困難な状態にあります(殊に中国の自然を対象とした活字本の出版はほぼ不可能)。

そこで、自主制作による、中国(主に西南部山岳地帯)の「野生植物」と「蝶」の生態図鑑を、CDおよびアマゾン電子書籍で発表しようと考えています。おおむね、植物は「科」、「蝶」は「族(科と属の間の分類単位)」ごとに纏め、それぞれ100巻前後(各100~400頁)になる予定です。ちなみに現時点で、「植物」「蝶」とも、10巻ほどの試作品が完成しています。

それとは別に、「植物」「蝶」とも、一般の自然愛好家に向けて、主要な種をピックアップして紹介する、簡易なフィールドガイドブックを、それぞれ1巻づつ刊行する予定です。こちらは、各200頁前後の印刷本です。

蝶:シロチョウ類 蝶:ベニシジミ類 蝶:ルリシジミ類 植物:ユリ科 植物:ハマウツボ科 不思議な植物

 
計画の進行と完結に向けて

 

作品を完成するには、まだまだ足りない部分が数多くあります。ことに、未踏査地域の「独龍江」の調査は必須です。

独龍江は、ミャンマーに流れ出るイラワジ河の源流で、ミャンマーのカチン州から源頭のチベット東南部に至る途上、雲南省の最西北部を通過します。

この一帯は、西に向かって、インドのアッサム地方からヒマラヤを経て西アジア(その延長はヨーロッパ)に至る、ユーラシア大陸西半部の生物相と、東に向かって、四川西部の高山地帯から四川盆地・長江中流域を経て日本に至る、ユーラシア大陸東半部の生物相が重なるジャンクションとなっています。

両地域の祖先的形質残した遺存種や、両地域集団の交雑個体群の存在など、非常に複雑で興味深い生物相を成しています。この地域の生物の探索・研究は、「日本の生物相の源流」を探るうえにおいても、必須の事項なのです。

以前は、主に道路事情から、一般観光客の入境は非常に困難でした。しかし、ここ数年の間に、現地にアクセスするいくつかの道路が建設され、一般人も比較的容易に訪れることが可能となりました。

この機会に、独龍江(イラワジ河流域)の私自身の初調査を行うとともに、その東最短50㎞程の至近距離の間に踵を接して流れる、怒江(サルウイン河流域)、Ran-tong江(メコン河流域)、金沙江(長江流域)を加えた「四江併流域」を、南北に走る5000~6000m級の山脈を横断して再調査を行おうと考えています。

調査対象は、植物(主に野生アジサイ)と蝶類各種。写真撮影による、生態と形態のチェックです。野生アジサイに関しては、独龍江のみが対象となります(以東の山岳地帯には、系統の異なる種しか分布していない)。

雲南省最高峰・梅里雪山6740mとメコン河(河岸の海抜は2000m)。山頂の反対側はチベット省で、サルウイン河の流域。その西のイラワジ河流域はミャンマーのカチン州ですが、一部が雲南省に食い込んでいます。撮影地点の背中側間近に四川省(長江流域)。 

 
独龍江調査の主要対象・野生アジサイについて

 

私たちになじみの、園芸植物「アジサイ」は、伊豆諸島に自生する野生個体群がヨーロッパに持ち出され、改良を重ねて見栄えのする品種となり、再び日本に里帰りしたものです。

しかし、その野生種の一群については、よく調べられていません。伊豆諸島の集団を含む「ヤマアジサイ~ガクアジサイ」の一群は、ほぼ日本の固有種で、ごく近い種が中国大陸からインドアッサム地方にかけて断片的に記録されていますが、その実態も全くと言って良いほど分っていません。私は、博物館に残る古い標本のデータを頼りに各地を探索し、広西壮族自治区の湖南・貴州省境近くの山地で、この一群に属する自生集団を突き止め、「ヤナギバハナアジサイ」と名付けました。

日本の西半分には、ヤマアジサイとは別に、ヤマアジサイやガクアジサイに近い血縁のガクウツギとコガクウツギ(「ウツギ」の名前は付きますが真正のアジサイです)が分布し、四国の一部などでは、ヤマアジサイとの交雑集団もみられます(やはり詳細実態は不明)。屋久島以南の西南諸島では、ヤクシマコンテリギ、トカラアジサイ、ヤエヤマコンテリギなどに置き換わり、台湾や中国南部ではカラコンテリギとなります。この一群の分布の西端は中国雲南省西部(ユンナンアジサイ)。私は、高黎貢山の南部産地で、数多くのユンナンアジサイを観察しています。

一方、インドのアッサム地方から雲南省西北端の高黎山北部山地(今回の調査地域の独龍江)にかけての地域には、ヒドランゲア・スティロサという、ヤマアジサイやガクアジサイにより近い類縁の種が分布することになっています。しかし海外の高名なアジサイ愛好家によって成されたアジサイ図鑑に掲載されている「ヒドランゲア・スティロサ」の(写真から読み取ることのできる)基本形質は、明らかにガクウツギ群の「ユンナンアジサイ」です。

独龍江に分布するらしい「真正野生アジサイ」は、本当にガクアジサイ群の「ヒドランゲア・スティロサ」なのでしょうか? それとも高黎貢山南部産同様に、ガクウツギ群の「ユンナンアジサイ」なのでしょうか? 両者が混在する可能性もありますし、両者が交雑している(あるいは共通祖先集団が残存する)ことも考えられるでしょう。もとより「ガクアジサイ群」と「ガクウツギ群」の種は極めて近縁で、日本でも上記したように、四国の一部などでは帰属の決定が難しい場合もあるのです。

独龍江などの(「ヒドランゲア・スティロサ」とされる)集団は祖先的な形質を包有していて、中国大陸(大半の地域で絶滅?)を経て日本列島とダイレクトに繋がる「ヤナギバハナアジサイ~ヤマアジサイ~ガクアジサイ」の一群、雲南や華南から台湾・南西諸島を経て、島伝いに日本に繋がるのが「カラコンテリギ~トカラアジサイ~ガクウツギ」の一群、と考えることも出来るかも知れません。

日本から見れば、独龍江をはじめとする中国西南部山岳地帯は、遠く遥かに離れた「辺境」ですが、実は様々な生物にとってのルーツの地である可能性も考えられるのです。

四国や九州ではガクアジサイ群とガクウツギ群の交雑集団がみられる。

           

アジサイ科アジサイ属アジサイ亜属コアジサイ節2集団(ガクアジサイ類とガクウツギ群)の分布パターン。
左:ガクウツギ類、本土の西半部や南西諸島にも分布する。右:ガクアジサイ類、国外での分布は不確か。

          

↑基本形質の模式図:ガクウツギ類       ↑基本形質の模式図:ガクアジサイ類

           
ユンナンアジサイ(ガクウツギ類)の花序  雲南省高黎貢山南部 

 
ヤナギバハナアジサイ(ガクアジサイ類)の花序 広西壮族自治区融水県九万大山

ユンナンアジサイの正常花と子房 雲南省高黎貢山南部



ヤナギバハナアジサイの正常花と子房 広西壮族自治区融水県九万大山 

 

具体的な調査地と日程

 

以前に作った略図です。踏破した地域のみを示したので、今回の第一目的の「独龍江」は示されていません。図の「梅里雪山」の左方50㎞の間に(西から「独龍江(イラワジ河)」「怒江(サルウイン河)」「Ran-tong江(メコン河)」「金沙江(長江)」が併流しています(独龍江を除く三川一帯は「三江併流」として世界自然遺産に登録)。

今回の行程の第一段階が、独龍江から白馬雪山まで(この時点で四大河横断自体は完結)。うち独龍江~貢山間は未踏。第二段階は、香格里拉を経て雲南四川省境の「中旬大雪山(この地図では貢千山と表記)」まで。貢千山の山上部と雲南側山麓の翁水村は、ぜひとも詳しい再調査を行いたいのです。第三段階は、四川省側を成都まで。距離は長いのですが、何度も訪れているので、調査・撮影は比較的楽です。

なお、これまでの知見では、ガクウツギ類(例:屋久島のヤクシマコンテリギや雲南のユンナンアジサイ)の最盛花期は5月中~下旬、ガクアジサイ類(例:本州のヤマアジサイや広西のヤナギバハナアジサイ)の最盛開花期は6月下旬~7月上旬。そのことから考えれば、6月上旬の探訪が最も理に適っているのではないかと思われます。

6月01日 東京→香港

6月02日 深圳→昆明

6月03日 昆明 [情報収集]

6月04日 昆明→大理→保山

6月05日 保山→福貢

6月06日 福貢→貢山

6月07日 貢山 [情報収集]

*サルウイン河流域の貢山を起点に、西へイラワジ河流域の独龍江を往復します。

6月08日 貢山(サルウイン)→独龍江(イラワジ) ● ⇒タクシーまたは包車をチャーター [途中調査]

6月09日 独龍江 [停滞調査]

6月10日 独龍江 [停滞調査]

6月11日 独龍江 [停滞調査]

6月12日 独龍江→貢山 [途中調査] ●

メコン河上流域                      新たに開通したメコン~サルウインを結ぶ道路の入り口

*ここまで(第一段階)が、今回の第一目的の地域です。獲得資金が15万円以下だった場合は、徳欽~香格里拉経由(その間にメコン、長江流域に至り、四河の横断は完成)で帰国します。
 

6月13日 貢山(サルウイン)→徳欽(メコン)[途中調査] ●

6月14日 徳欽→明永 ●

6月15日 明永(梅里雪山) [停滞調査]

6月16日 明永→徳欽→白馬雪山 [途中調査]→迸子欄(長江)→香格里拉 ●

梅里雪山6740m         白馬雪山とシャクナゲの群落

6月17日 香格里拉 [休息日]

6月18日 香格里拉→翁水 [途中調査]  ●

6月19日 翁水 [停滞調査]

6月20日 翁水 [停滞調査]

6月21日 翁水→中旬大雪山(省境) [途中調査] →郷城 ● *旬の中は日ではなく田

           

中旬大雪山(貢千山)                             中旬大雪山(貢千山)
[林の中から鋸歯のような岩が突き出る]  [白く見えるのは雪ではない]

*ここまで(第二段階)が、今回の第二目的の地域です。獲得資金が20~35万円だった場合は、省境(中旬大雪山)から香格里拉に引き返し、昆明経由で帰国します。獲得資金が40万円以上の時は、このあと理唐から国道318号線周辺で再調査を行いつつ、成都に向かいます(第三段階)。

 

6月22日 郷城→峠 [途中調査] →理唐 ●

6月23日 理唐→巴唐 [格業山麓で終日調査] ●

6月24日 巴唐→理唐 [格業山麓で終日調査] ●


格業6204m                              雅江~新都橋間の天然草地

6月25日 理唐→雅江

6月26日 雅江→康定 [途中調査] ●

6月27日 康定→峠→海螺溝(ミニャコンカ) [途中調査] ●

6月28日 海螺溝 [停滞調査]

6月29日 海螺溝 [停滞調査]


ミニャコンカ前衛峰6440m       ミニャコンカ主峰7556mと海螺溝の氷河

6月30日 海螺溝→二郎山→宝興 [途中調査] ●

7月01日 宝興→来金山→四姑娘山 [途中調査] ● *来の下の棒は不要

7月02日 四姑娘山 [停滞調査]

7月03日 四姑娘山 [停滞調査]


四姑娘山6740m        巴郎山峠の岩峰群

7月04日 四姑娘山→成都

7月05日 成都→深圳/香港

7月06日 香港→東京

*かなりゆったりとスケジュールを組んだが、天候・体調などの状況次第で、さらに最大10日ほどの延長を考えている。

 
 
 成果の纏めと発表

 

これまでに成した膨大な資料の再編とともに、アマゾン電子書籍での発表を予定しています。それとともに、各200頁ほどに縮小再編した、簡易な自然観察本(印刷本)の自主制作を行います。

◆作品B「中国西南部の野生植物」「中国西南部の蝶」各全100巻予定(CD及びアマゾンでの電子書籍)[随時]

◆作品A 同上の対象をセレクトして1冊にまとめた「ハンディフィールドガイドブック」(印刷本)[2017年内]

 

 
必要経費の内訳 

 

ビザ取得5000円

日本からの往復交通費 4万円

現地移動費(調査を兼ねた地は包車・タクシー利用)1日2万円*として14日分28万円(+公共交通機関2万円)

宿泊費・食費など 1日3000円*として35日間 10万5000円

印刷代 1セット(植物+蝶)2500円 100人分として25万円

計70万円

*中国奥地での活動は、予測不能のアクシデントが極めて高い確率で発生します。そのことを含めて、卓上計算による実際の数値よりも、やや多めの金額で計算しました。

 
皆様へのお願い

 

月3万8000円の年金や、飲食店清掃作業などのアルバイトによる僅少の自己資金は、一人暮らしの日本の家賃支払いのほか、数年前の怪我のための治療費、パソコンの修理費などに予定外の出費が嵩み、取材や作品作成のための資金捻出が叶いません。

そのような次第で、クラウドファウンティングによる資金調達に取り組んだ次第です。どうかご協力のほどをよろしくお願いいたします。

目標金額に達しない場合も自力で企画を遂行いたします。

 
協力して頂いた方へのお礼 

 

★3000円

ポストカード6枚を贈与

メールによる成果(写真付き)の報告

著者の中国関係自主制作本40作品を収納したDVDを贈与

ポストカード3パターン(左から:アラカルト/蝶/野生植物)の中から選択

 

★5000円

ポストカード12枚を贈与

メールによる成果(写真付き)の報告

著者の中国関係自主制作本40作品を収納したDVDを贈与

 

★1万円

ポストカード12枚を贈与

メールによる成果(写真付き)の報告

著者の中国関係自主制作本40作品を収納したDVDを贈与

作品に協力者としてクレジットを記入

作品A(ハンディフィールド図鑑)のうち「植物」か「蝶」のどちらかを贈呈(2017年内)

 

★3万円

ポストカード12枚を贈与

メールによる成果(写真付き)の報告

著者の中国関係自主制作本40作品を収納したDVDを贈与

作品に協力者としてクレジットを記入

作品A(ハンディフィールド図鑑)の「植物」「蝶」両方を贈呈(2017年内)

作品B(DVD収納の図鑑全体)を贈与(完成時)

屋久島・樹と水と岩の島(岩波ジュニア新書)サイン入り贈呈 

 

★5万円

ポストカード12枚を贈与

メールによる成果(写真付き)の報告

著者の中国関係自主制作本40作品を収納したDVDを贈与

作品に協力者としてクレジットを記入

作品A(ハンディフィールド図鑑)の「植物」「蝶」両方を贈呈(2017年内)

作品B(DVD収納の図鑑全体)を贈与(完成時)

屋久島・樹と水と岩の島(岩波ジュニア新書)サイン入り贈呈 

オリジナルTシャツ(著者撮影の写真をプリント)を贈与

 

★10万円

ポストカード12枚を贈与

メールによる成果(写真付き)の報告

著者の中国関係自主制作本40作品を収納したDVDを贈与

作品に協力者としてクレジットを記入

作品A(ハンディフィールド図鑑)の「植物」「蝶」両方を贈呈(2017年内)

作品B(DVD収納の図鑑全体)を贈与(完成時)

屋久島・樹と水と岩の島(岩波ジュニア新書)サイン入り贈呈 

同行調査(部分可、経費は各自で負担)

帰国後の対面報告、または無料講演などの受諾(交通費半額負担)

原版写真20枚の提供

 

 

 

 

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