旧富士山測候所存亡の危機:NPOの主要収入源である夏季観測が中止に…
富士山は日本人にとって象徴的な意味をもつ山であり、かつ自然の厳しさと壮大さを教えてくれる場所でもあります。旧富士山測候所は、明治時代から関係者の情熱により、日本最高地点での気象観測を通して人々の安全な生活に貢献してきました。
しかし、旧富士山測候所では気象庁の有人気象観測が2004年に終了し、無人化されました。この貴重な施設を活用し、温室効果ガス、越境大気汚染などの観測を行うために、研究者が中心となりNPO法人富士山測候所を活用する会を立ち上げました。毎年、夏季の7月と8月の2ヶ月間は有人で観測し、延べ400人を超える研究者・学生に利用されており14年目を迎えました。
富士山頂は夏季でも過酷な環境ですが、今年は研究の舞台となる旧測候所内では三密環境が避けられないことから、利用者の命を守るために夏季観測を断念せざるを得ない状況に追い込まれました。気象庁の有人観測終了時、東日本大震災のときにも研究者が力を合わせて凌いできましたが、特に今回は収入源であり、当NPOの最大のウリである夏季観測を行うことができず、力尽きそうな状況です。
日本で一番宇宙に近い地点で研究を行う理由
富士山頂でなぜ研究をするのでしょうか?その理由は多岐にわたっています。
1. 地球規模大気汚染の実態解明
富士山頂は高度約4000mにあるため、国内大気汚染の影響を受けない地球大気観測に最適です。当NPOでは温室効果ガスに加えて、国境を越えて運ばれてくるPM2.5など様々な大気汚染物質の観測を行ってきました。最近では、マイクロプラスチックが上空に浮遊していることを解明しました。アジア大陸は大気汚染物質の主要排出源ですが、日本はその風下に位置していることから、富士山頂の大気観測により地球規模大気汚染の実態をいち早く知ることができるのです。
富士山頂で大気中マイクロプラスチックを発見(協力:柴田科学/PerkinElmer/日本分光)
2. 富士山頂は雷の名所:放射線やNOx発生メカニズムを解明
富士山頂では1キロ以内という近距離での落雷が珍しくなく、雷の仕組みなどの研究データを得ることができます。また、雷によって窒素酸化物が生成することが知られていますが、富士山頂であれば地上では難しいその発生メカニズムや発生量の観測も行えるのです。このような観測は雷による災害防止や大気汚染予測に繋がります。
雷や雷雲のすぐそばで観測できる環境は富士山頂ならでは
3. 富士山の大噴火に備える
300年前の宝永噴火以降、沈黙を続ける富士山ですが、次の噴火がいつ起こるかは明らかでなく、また噴火には大地震発生も関わっています。富士山は人口が密集する首都圏から100 kmほどしか離れておらず、富士山噴火は新型コロナウイルス以上に大混乱を引き起こすことは間違いありません。そのためにも、富士山噴火の監視態勢の充実が必要です。当NPOでは、火山ガスや地磁気モニターによる観測を行って噴火予測に貢献を目指しています。
4. 高山病の解明・高所トレーニング・永久凍土の研究など
平地の3分の2の気圧と平地より20度も低い低温下で、高山病の研究や高所トレーニングの研究、本州唯一の永久凍土の存在を利用した研究など、幅広い分野の研究を行っています。
学生教育や社会貢献も担う場
夏季観測のうち参加者の約40%は学生です。学生にとっては、『過酷な自然観測の現場経験を通して互いに交流すること』がそのまま成長の場にもなっています。そして、私たちはこれらの活動を通して、学術的成果や育成された人材を社会へ還元することができるようになってきました。
旧富士山測候所は最高地点剣ヶ峰に建設されており、まさに日本最高地点3776mの地点にあります。そのため、多くの登山客が夏季期間中、山頂を目指して登山されるため、その安全管理、登山道整備なども行っています。さらに、得られた科学的成果などもYoutubeなどで一般向けに解説を行うなど、広く市民への社会貢献を行っています。
富士山をフィールドにして学ぶ学生たちは、ひと夏で目覚ましい成長を見せる
極地・富士山頂での施設のメンテナンスは待ったなし
建設後50年を経過した測候所の施設は老朽化が著しく、今夏に手入れができないのは致命傷になりかねません。雨が降ると建物内部は沢山のバケツで雨漏りを受けてしのいでおり、夏の間にボランティアや山頂班(ベテラン登山家の安全管理者)が補修にあたっています。
夏でも氷点下の気温になり、冬の平均風速20mを超える極地でもある富士山頂の施設を安全に管理するには膨大な経費がかかります。気象庁、環境省、文部科学省を含めてどこからも公的な援助は得られないため、私たち研究者を主体としたNPOが、寄付や民間の助成金などに応募することでその経費をまかなっているのです。
資金の使い道
通常の年であれば4500万円の収入があり、ほぼ同額が支出となります。収入内訳は富士山測候所利用者の施設利用料、NPO会員会費、寄付金、そして競争的研究費などです。支出は天候に左右されます。雪崩や台風により送電線が切れたり、測候所が破損すると想定外の費用がかかり、赤字になります。翌年には負債を支払うために多数の公的研究費に応募したり、研究者が私費を投じたりしながら、まさに自転車操業で14年間、日本の至宝である旧富士山測候所を守り抜いてきました。
今年は、新型コロナウイルスの影響で、富士山頂での夏季観測中止によって測候所の利用料収入が絶たれることになりました。しかしながら、当NPO活動を支える人々の雇用費用、旧富士山測候所の整備費用などは必要であり、活動費用として1800万円(事務局家賃および人件費:1100万円、旧富士山測候所維持管理費・送電線維持管理費用:400万円、富士山麓基地維持管理費(借地料・電気代):200万円、その他雑費:100万円)の資金が必要となります。競争的研究助成金も新たに申請していますが、これらが獲得できたとしても300万円が確実に不足する状況です。助成金が獲得できなければ、赤字は膨らみます。
現在、当NPO会員の皆様にご寄付を募っておりますが、会員外の皆様にも広くご支援を賜り、研究助成で対応できない運営費のために、不足する300万円に使わせていただきたいと考えています。
最後に
富士山測候所の灯を消さないために、ご支援を切にお願いします。
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。
最新の活動報告
もっと見る3000円以上のご支援のみなさま
2020/08/24 15:48こちらの活動報告は支援者限定の公開です。
御礼:ファイナルゴール達成!!
2020/08/16 07:27ご支援いただきました皆様へ昨日,クラウドファンディング期間が終了いたいました.424名の皆様にご支援いただきまして,ファイナルゴールである200%を達成致しました!皆様に心から御礼を申し上げます.リターンのご連絡はこれから順次致しますので,いましばらくお待ちください.来年度の富士山頂での研究活動再開に向けて,コロナ感染に細心の注意を払いながら,来週から富士山麓での夏季集中大気観測を行います.活動報告も行っていきます.重ねて御礼を申し上げます. もっと見る
旧測候所の将来に向けて
2020/08/15 19:54クラウドファンディングもいよいよ残り4時間となりました。この活動を通して400人も超える皆さまから想像を超える力強いご支援をいただき、研究者一同深く御礼を申し上げます。富士山を活用した科学研究は、江戸時代の測量目標地点から、明治から平成までの気象観測、平成から今は環境科学をはじめとした広域の研究まで、時代とともに変移していきました。また、その時々の成果は日本、世界に貢献する成果になっております。長い期間に渡る山頂での観測点維持は、先人達の死に物狂いの結果であり、その上で現在この場所での研究が出来ております。このたび、皆さまのご支援は時代に残る活動であることは間違い無いことかと思います。国家の支援が極限までなくなっている今、将来の人間活動を支えるための科学研究の場所として維持、発展をして参りたいと思います。最終目標は、初期目標の200%、あと約11万円までとなっております。みなさまのお知り合いなどさらなるお声がけによるご支援をお願いいたします。 もっと見る
微力ながら応援させて頂きました。