はじめに
未来に向けたギフト、“The Moment“。
日本から世界に発信するに値する情報は、ジャーナリズムに限らず、多岐にわたります。
日本の安全な社会や環境、豊かな資源、自然、文化は、世界共通の財産です。これらを次世代につなぐ活動を続けている個人や団体を、紙面やWebを通じて国内外に発信することに加えて、中長期的にその活動を見守り、応援していきたいと言う読者の皆さんからの共感を形にするのが、クラウドファンディング“The Moment“です。
“The Moment“は、未来に向けたギフトです。
歴史を継承し、未来への継承に挑戦している皆さんを、“The Moment“を通じて一緒に応援していきましょう。
今回、“The Moment“が最初の応援プロジェクトとして取り上げたのは、新潟県佐渡市にある尾畑酒造さんです。
尾畑酒造さんは、酒造りを軸とした社会貢献度の高い取り組みの数々が評価され、第2回The Japan Times Satoyama & ESG Awards 2020のSatoyama部門の大賞に輝きました。このアワードは、Satoyama、ESG活動に顕著な取り組みを行った企業・団体・個人にフォーカスし、成功事例を広く国内外に紹介することで社会に貢献するためにThe Japan Timesにより創設されたものです。
第一回“The Moment”プロジェクト、尾畑酒造さんへの期待
1892年に創業された酒蔵で、地酒「真野鶴」で知られる尾畑酒造。佐渡の地で米作り、酒造り、人づくり、まちづくりを一貫して行い、近年では、海外市場の開拓にも取り組まれています。今回は日本の伝統文化である「日本酒」を軸に、酒造りと日本の地域とのつながりを考え、100年先にも残していきたい日本独自の里山景観、酒文化や生活様式の素晴らしさを皆さまと一緒に応援していきたいと思います。
尾畑酒造とは?
新潟県佐渡市に本社のある尾畑酒造は、1892年(明治25年)の創業以来、128年に渡り手造りによるクラフトスタイルの酒を醸造してきた歴史ある酒造です。
そのモットーは、酒造りの三代要素と言われる「米」「水」「人」に、生産地である「佐渡」を加えた「四宝和醸(しほうわじょう)」。四つの宝の和をもって醸す意味合いをもっており、尾畑酒造の家紋“四ツ目”にも象徴されています。
米、水、人、そして佐渡。「四宝和醸」の酒造り。
・米
佐渡は新潟において魚沼と並ぶ日本一の米どころです。そんな最高の稲作地である佐渡の中でも、尾畑酒造では、山間部で穫れる冷たい清水で育った良質な酒米、人にも環境にも優しい農法で作られた酒米などを中心に使用しています。
・水
海にも山にも恵まれた島、佐渡には、毎冬大陸から日本海を越えて寒波がやってきて雪を降らせます。豊かな大地に染み込んだ雪解け水は、自然の濾過の恩恵を受けてたくさんの栄養を含み、鮮度を保ったまま山の麓に湧き出します。尾畑酒造のお酒「真野鶴」には、深い井戸から汲み上げられた、地中70メートルから湧き出す地下水が仕込みに使われています。
・人
平成12年に尾畑酒造の杜氏に就任した工藤賢也氏は、最近では、大半の蔵で合理化のため廃止されてしまった冬期間蔵人泊まり込みによる早朝仕込みを実践しています。これは、寒い冬の間でもより温度の低い早朝に仕込みを行い、少しでもいい酒を醸し出そうという強い姿勢、そして手間隙を惜しまず頑なに「手造り」を守り続けるという、工藤杜氏はじめ尾畑酒造の蔵人たちのこだわりの表れです。
こうした姿勢は、国内外での評価にも結び付いており、日本最大の全国新酒品鑑評会では2001年以来13回の「金賞」を受賞。また、毎年ロンドンで開催されている世界最大のワインコンテストである「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」日本酒部門でのゴールドメダル、フランスで開催される日本酒コンペティションKura Masterでの純米大吟醸部門最高評価賞のプラチナ賞受賞など、数々の実績を残しています。
・佐渡
米・水・人を育み、さらに酒を磨くのが生産地である佐渡の自然です。佐渡は透明度の高い美しい海に四方を囲まれ、南北には豊富な山の幸をもたらす高い山々がそびえます。新潟県の中でも海流の関係から、本土に比べて夏は涼しく、冬も極端な低温にならないのが特徴です。特に酒造りの季節である冬は日本海側特有の曇天から日中と夜の温度差が少なく、安定した低めの温度となるため醸造には最適な環境といえます。そして、その環境のシンボルが、佐渡の空を舞う絶滅危惧種、朱鷺です。
朱鷺の舞う環境に寄り添う取り組み
佐渡では現在(2020年9月)約450羽の朱鷺が生息し、島の自然環境のシンボルにもなっています。島の農家の方々は朱鷺の住む環境を守るために低農薬低化学肥料など自然に優しい農法を取り入れ、一定のルールに則って栽培したお米は「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」として認められます。尾畑酒造が使用する酒米の越淡麗を栽培する佐渡相田ライスファーミングでは、この認証制度に則って栽培されているばかりではなく、佐渡の加茂湖(汽水湖)で養殖されている牡蠣の殻を用いた牡蠣殻農法も取り入れ水田に引く水をこの牡蠣殻でフィルタリングしています。すなわち、海の牡蠣殻、そして山からの水というダブルのミネラルが稲穂に加わり、健康で高品質な酒米が育ちます。海、山、田、これらの資源を循環することで真野鶴が生まれます。
棚田保全とジアス支援を目指した酒造り
「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」制度など、農業上の生物多様性を育む農法への取組みを評価され、佐渡は日本で初めて世界農業遺産ジアス(*注1)に認定されました。尾畑酒造はこの佐渡ジアス支援と棚田の保全を目的とした“棚田米コシヒカリでの酒造り”にも取り組んでいます。
圧巻の棚田の風景が見られるのは佐渡島の南東部。岩首と呼ばれる集落から望む標高約470メートルの里山の斜面には500枚弱の大小様々な田んぼがあります。その間を曲りくねりながら上る棚田道がまるで龍が空に向かう姿に見えることから、「昇竜棚田」と呼ばれているそうです。
しかし、この美しい棚田は変形田のため人手がかかる一方で将来の担い手不足に直面しています。尾畑酒造はその困窮を知り、この景観と棚田文化を後世に残したいという思いから、棚田米を買い取り日本酒にすることに決めました。毎年一定量の棚田米を酒造り用に購入することで、安定した経営が見込まれるようになれば、農家を目指す若者が出てくるのではという期待しているとのことで、今年は棚田米1,200kgを仕入れました。
この昇竜棚田のコシヒカリで作るお酒、「龍のめぐみ」は、次にご紹介する学校蔵で仕込まれました。
日本で一番きれいな夕日が見える廃校を「学校蔵」に再生
佐渡の真野湾を見下ろす高台の上に佇む西三川小学校。ここは“日本で一番夕日がきれいな小学校”と謳われながら、少子化のため2010年に廃校になりました。136年の歴史と思い出を持つこの古い木造校舎と景観をなんとか残したいと、尾畑酒造はこの廃校を二つ目の酒蔵として再生することに決め、2014年より酒造りを運営をはじめました。ここは「学校蔵」と名付けられ、本社の酒造りが終わってから5月から9月までの期間、仕込み部屋を冬の環境にして酒造りを行っています。オール佐渡産を掲げ、酒米はすべて佐渡産。そして酒造りのエネルギーも佐渡産にすべく、太陽光パネルを敷いて自然再生エネルギーを取り入れています。加えて、尾畑酒造では「学校蔵」を酒造りの場だけではなく、学びや交流の場としても活用しています。
「酒造り体験プログラム」で世界に広がるアンバサダー
学校蔵では、一週間通って頂くことを前提として酒造りを学びたい人の受け入れをしています。一本の仕込みタンにつき、三段仕込みというエッセンシャルな部分を中心とした一週間に1チーム3~4人。体験者は酒造りだけではなく、田圃視察で酒と地域とのつながりを学び、ティスティングを通して酒の個性など学びます。
一週間佐渡に滞在し、生活や文化を肌で感じながら酒造りを学ぶことによって、ブランド、酒、そして佐渡のファン作りにつなげることも重要な目的のひとつです。2017年はスペインでSAKEを造る醸造家、アントニオ・カンピンス氏も参加し、2019年は参加者10人中7人が外国人であるなど、海外からの参加者も年々増えているそうです。学校蔵では様々な企業とのコラボレーションによる酒造りも行っており、日本酒をきっかけに佐渡との関わりを持つ人や組織を増やしています。
また、子供から大人まで参加するワークショップも実施しています。それが毎年6月に開催している「学校蔵の特別授業」です。
多くの人が集う「学校蔵の特別授業」
学校蔵では運営をはじめた2014年から、「学校蔵の特別授業」という一日限りの白熱ワークショップを毎年6月初旬に行っています(2020年は中止)。
講師陣には下記のようなスペシャリストが名を連ね、毎年の参加者が集います。
<講師陣>
藻谷浩介さん(日本総合研究所主席研究員)
出口治明さん(立命館アジア太平洋大学学長)
玄田有史さん(東京大学社会科学研究所教授)
授業に共通する大テーマは「佐渡から考える島国ニッポンの未来」。佐渡島は自然、文化、歴史の多様性から「日本の縮図」と言われていますが、高齢化、少子化など社会が抱える課題が集約していることからも「日本の縮図」であり、課題先進地であります。だからこそ、ここから佐渡、そして日本の未来を考えていこうと考えたのだそうです。
この特別授業では佐渡島の高校生から地元の人、東京の会社員や大学生、70代の方まで多様性のある人たちが一緒に授業を受けます。この多様性から多くの気付きを生み、参加者が明日への活力やヒントを得ていくのです。
「日本で一番夕日がきれいな小学校」と謳われた廃校で開催される1日限りの特別授業はその立地や理念も相まって年々人気を集め、2019年度はおよそ120人が参加しました。
尾畑酒造では、酒造り、環境との共生、学び場の提供、交流事業などを通して、人作り、地域創りに貢献しているのです。
Satoyama大賞受賞に際し、尾畑酒造の五代目蔵元、尾畑留美子さんは語ります。
「日本酒は里山の恵みから生まれ、里山の物語を伝える語り部です。日本酒を通して、佐渡と世界をつないでいきたいと思います」
第2回The Japan Times Satoyama & ESG Awards 2020のSatoyama部門大賞の受賞者であり、The Japan Timesのクラウドファンディング、The Momentがさらなる期待と応援の気持ちを込めてご紹介する記念すべき第1号事業者である尾畑酒造のお酒を、ぜひみなさんと楽しみたいと思っています。たくさんのご参加をお待ちしています。
注1)世界農業遺産(GIAHS:ジアス)とは:世界農業遺産は、自然と共生する農林水産業が育む、豊かな生態系や美しい景観、伝統文化・芸能などが残されている世界的にも重要な地域(農林水産業システム)を、FAO(国連食糧農業機関)が認定する制度です。
リターンのご紹介
●The Japan Times Satoyama大賞受賞記念特別限定酒
「真野鶴・純米大吟醸原酒・越淡麗」
佐渡相田ライスファーミングの牡蠣殻農法で栽培した「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」越淡麗を35%まで磨いて仕込んだ純米大吟醸を、原酒のままボトルに詰めた特別限定酒。ハチミツやシナモン、熟成したフルーツの香りが特徴の深みのある味わいです。ラベルには朱鷺の舞う相田さんの田圃をデザインし、特別限定酒でご用意いたしました。
●The Japan Times Satoyama大賞受賞記念特別限定酒
「真野鶴・大吟醸・佐渡山田錦」
酒米の最高峰と言われる山田錦。その一方、栽培が難しいことでも知られます。尾畑酒造では佐渡で唯一、この山田錦の栽培を契約農家の方々とチャレンジしています。今回、貴重な佐渡産山田錦を35%まで磨いて仕込んだ大吟醸をご用意いたします。桃やオレンジの柔らかくソフトな甘み、透明感のあるまろやかな味わいが特徴のエレガントなお酒です。ラベルには契約農家の長原さんの田圃をデザインし、特別限定酒でご用意いたしました。
●「真野鶴・純米吟醸・朱鷺と暮らす」
佐渡相田ライスファーミングの越淡麗を55%まで磨いた純米吟醸。「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」にも指定された酒米で仕込んでおり、田圃の芳ばしい香り、ハーブ感のある爽やかさが特徴です。
●「学校蔵・山廃純米」
廃校を酒蔵に再生させた「学校蔵」で仕込んだ山廃純米(火入れタイプ)。リンゴの爽やかな酸とお米の旨みがバランスよくまとまっています。
●「学校蔵・純米酒」
廃校を酒蔵に再生させた「学校蔵」で仕込んだ純米酒(火入れタイプ)。レモングラスのような爽やかな柑橘系の香りを楽しめます。
※<All-in方式のプロジェクト>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。
最新の活動報告
もっと見るThe Japan Times Satoyama & ESGアワード2020受賞 尾畑酒造
2020/10/12 18:00The Japan Times Satoyama & ESGアワード2020受賞 尾畑酒造のプロジェクトを新聞紙面でも公開されました。(左下)1892年(明治25年)創業、新潟県佐渡市に本社を置き、手造りによるクラフトスタイルの酒を醸造する歴史ある尾畑酒造は、酒造りの三代要素と言われる「米」「水」「人」に生産地である「佐渡」を加えた「四宝和醸(しほうわじょう)」を大切にし、酒造りを通して環境・景観の保全、循環型農法の導入、佐渡のブランド化など地域への貢献にも努める酒蔵です。 もっと見る
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