はじめまして。映像作家の逢坂芳郎です。

私は十勝の幕別町出身で、高校生までの時期を十勝で過ごしました。
卒業後アメリカへ留学して映画制作を学び、帰国してからはフリーランスの映像作家として活動しています。
しばらく東京を拠点としていましたが、2022年に地元・十勝に戻り現在は帯広市で暮らしています。
20年近く映像作家として活動しながらいろんな国に行って映像を撮る中で、生まれ育った十勝で映画をつくる暮らしが自分にはあっているんじゃないかと思うようになりました。

今は地域に映像を残していくことにとても興味を持っています。
きっかけは、2013年に十勝の魅力を発信することを目的とした短編映画『my little guidebook』(マイ・リトル・ガイドブック)の映像制作依頼をいただいたことでした。
その頃から十勝をテーマにした映画をつくりたいとぼんやりと考えていて、『my little guidebook』を2本製作し地元で上映されると、観てくださった方が声をかけてくれるようになり、永く地元に遺される映像を作りたいと強く思うようになりました。

引き続き映像制作を続けながら、いつかこの十勝をテーマにした映像作品を自ら企画して制作したいと思っていた頃、「馬橇の花嫁」の写真と出会いました。

帯広百年記念館所蔵 荘田喜與志撮影

帯広百年記念館所蔵 荘田喜與志撮影

出会いは偶然で、見かけた際に思わず立ち止まってしまいました。
一瞬にしてモノクロの世界観に引き込まれ、映画的だと感じたのです。寒さが厳しい雪景色の中を花嫁が馬に乗せられて祝福されるーーあらゆる感情が湧き上がり、当時の花嫁の心情について想像を膨らませていました。
このイメージを映画に昇華させたいと思いました。

映像が残るからこそ、自分たちの土地がどのように開拓され、発展していったのかを当時の情景を浮かべながらより関心を寄せることができるのではないでしょうか。
十勝では地域史料としての映像作品はほとんど残っていません。先人たちの苦労や楽しみ、思いなどを含めて歴史に目を向け、丁寧に映像として残すことで、観た人の心の中に先代が確かにこの地で暮らしてきた記憶が残されていくはずです。
映画が永く残れば残るほど観る人は増えていきます。時間をじっくりかけながら、過去と未来がつながっていく。
そういうきっかけとなる映画をつくりたいです。

馬と共にあった地域・十勝について

「馬橇の花嫁」とは、昭和30年代中頃まで北海道や東北地方の農村地域で行われていた風習です。花嫁が嫁入り道具と家族と一緒に馬が引く橇(そり)に乗り、花婿のいる家まで運ばれるという、今でいう結婚式の風景でした。

写真の撮影者である荘田喜與志(しょうだ・きよし)さんは2020年に亡くなり、会うことは叶いませんでしたが、荘田さんが撮り続けた十勝の町や人の記録は帯広百年記念館に所蔵されています。

私はリサーチのためにすべての写真に目を通し、映画の世界観に近そうな当時の写真を複写して資料づくりを始めました。
その後、十勝の各町村の図書館にも足を運ぶと、荘田さん以外にも当時の生活を記録して写真集としてまとめている方が数名いることがわかりました。
そのページをめくると、「馬橇の花嫁」や馬との生活の風景がいくつも現れてきました。

私の生まれ育った北海道・十勝は言わずと知れた農業王国です。馬と共に開拓された歴史を持つ当時の十勝では、「馬橇の花嫁」はよく見られる光景だったようです。
また、現在でも十勝には世界で唯一残っているばんえい競馬があり、北海道遺産として知られています。
開拓時代より続く馬と十勝の人との結びつきは、非常に強固なものなのです。

この写真と出会い、モチーフとした映画の制作を進めるにあたって「とかち馬文化を支える会」の方や牧場を経営している方など、馬とともに生きる方にも話を聞きながら、実際に馬橇の花嫁として嫁いだ方にも数名会うことができました。
当時の心境や恋のはじまりのエピソードを伺い、現代とは異なる種類の純粋さや美しい価値観に共感できる部分がありました。
僕が当初感じた、昔の農家の苦労や暗さのイメージではなく、もっと晴れ晴れとしたものだったのだと思うようになりました。

戦後から間もなく、車が一般家庭にまだない時代。馬橇の花嫁の儀式や祭りなどの催しは、貧しい生活をしていたなかで人々が知恵を絞って生まれた祝儀だったのではないかと思います。
そんな人間の想像力を感じられる映画を制作したいと思っています。

映画を通して過去と未来をつなげ、十勝の新しい文化を作りたい

地域視点で映画をつくるというのは今後地方にとって重要な取り組みになると感じています。
暮らしている人の目線で、暮らしている・暮らしていた人たちのものを遺していく。
この映画を制作する過程で、十勝に住んでいる方はもちろん出身者などのゆかりのある方、十勝が好きな方などできる限り多くの方に関わっていただき、一緒に地域の歴史への理解を深めていきたいとも考えています。

映画の中では、現代とは大きく異なる戦後の十勝を描きます。
物質的に豊かではなかった時代を生き抜いた人々の姿を通して、現在に繋がる私たちがこの地で暮らしを続けていける喜びや先人たちへの感謝を改めて感じてほしいです。
親や祖父母、もしくはもっと上の先代がどんな暮らしをしていたのかを想像して、家族間で会話が生まれたりもしてほしい。と同時に、当時を生きていた世代には懐かしんでもらいたい。
十勝に暮らすさまざまな世代の方に観てほしいと思っています。

ゆくゆくは、公共財のように地域の財産として映像を遺し、十勝や北海道の歴史・文化を伝え残すことを目標にしています。
国内外の映画祭などにも出品して、馬橇の花嫁という独自の風習があったことを世界にも発信していきたいです。
地域史料として映像を遺していくことを今後も継続的に取り組みたいと考えています。

全国から集まった共感

今年6月に主演女優を公募し、全国から200名を超える応募をいただきました。そのなかで、映画のあらすじと掲載した荘田氏の写真に対し思いを綴ってくれた応募者も多くいました。

「『馬橇の花嫁』の中で描かれるこの時代は現代よりも豊かなこころを持っていたのではないかと思いました。この時代に流れた空気や生き物同士の知恵に触れた感触は、きっといま自分が生きることへ、もっと深く純粋に、向き合う時間になるのではないかと感じています

「写真を拝見し、とても心が温まる感覚がありました。人と出会うことや選択肢の数が今ほど多くない時代の人と自然や動物との距離の近さ、過ごす時間の濃さや人が出会い向き合うことへの熱量を写真とあらすじから感じ、とても興味を持ちました

「写真を見て、この一日が一生のうちでどれほど大切な日であったのかが伝わってきました。その時代にできるだけのお祝い・お別れをという人々の気持ちを思うと胸が苦しくも温かくもなりました。時代を超えて、私たちの代になってもそうした精神が流れ続けているんだと嬉しくもなりました。魂の形を記録する仲間になりたいです」

本当はこのようなメッセージをいただいたすべての方と仕事をしたい気持ちですが、オーディションによって出会えた出演者とスタッフ皆でこの思いを背負って撮影に取り組んで参ります。

<逢坂芳郎 プロフィール>

1980年北海道・幕別町生まれ。帯広柏葉高校を卒業後渡米し、ニューヨーク市立大学ブルックリン校で映画製作を学び学士号を取得。帰国後、フリーランスの映像作家として東京を拠点に活動を開始。コマーシャルやドキュメンタリーなど多岐にわたるジャンルの撮影・編集・製作を行う傍ら、自主映画を製作。近年はアジアを舞台としてプロジェクトに積極的に参加。2014年と2016年に十勝の魅力を発信することを目的とした短編映画『my little guidebook』(マイ・リトル・ガイドブック)を製作し、2作とも札幌国際短編映画祭で北海道監督賞を受賞。2021年にコロナ禍のカンボジアを舞台とした『リトルサーカス』を製作し、国内外の10以上の映画祭で上映され、上海国際映画祭金爵賞(Golden Goblet Awards)短編部門に選出された。2022年より帯広市在住。

<今までに手がけた作品>
my little guidebook
リトルサーカス

<スケジュール>
2023年秋 撮影開始
2023年9月末 クラウドファンディング終了
2024年2月 冬の撮影開始・撮影現場同行など制作中に履行されるリターン実施
2024年夏 作品完成・作品完成後に履行されるリターン実施
2024年秋 DVD発行

<制作資金について>
美術セット:500,000円
衣装:1,000,000円
制作準備に係る人件費:750,000円
撮影部:500,000円
照明部:350,000円
録音部:300,000円
キャスト出演料:500,000円
馬に関する諸費用:350,000円
エキストラに係る諸経費:200,000円
へアイメイク費:500,000円
キャストやスタッフの宿泊費・交通費・食費:1,585,000円
機材運搬費:150,000円
車両費:200,000円
ロケーション費:150,000円
カラーグレーディング・CG:200,000円
MA:400,000円
音楽制作費:300,000円
DVD制作費:225,000円
ポスター制作費:150,000円
海外映画祭出品料:90,000円
映画宣伝費:250,000円
計9,050,000円に対し、目標金額500万を総額使用いたします。
目標金額を超えた場合に関しても、総制作費9,050,000円に対して使用いたします。

<募集方式について>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。

<映画制作に関するご協力>
協力・後援:十勝地区農業協同組合長会、帯広市、幕別町、とかち馬文化を支える会、帯広百年記念館、とかちフィルムコミッション、十勝毎日新聞社、北海道新聞帯広支社、十勝シティデザイン、SUPERMARKET、一般社団法人 ドット道東、FM JAGA、おびひろ市民ラジオ FM WING

  • 2024/01/24 22:08

    支援者の皆様、遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。クラファン終了からしばらく時間が経ちましたが、その間、映像の編集作業、冬のシーンに向けたリサーチと脚本の直し作業を進めてきました。そして今週から撮影に向けた準備を開始しました。十勝は今年は雪が少なかったのですが、一昨日久々に雪が降...

  • 2023/11/01 22:35

    昨日クラファンが終了しました。最終日だけで全国各地から70名以上からご支援をいただき、総勢379名、合計5,626,500円の支援金を承りました。皆様、本当にありがとうございました。ロケ地の十勝、北海道の各方面、全国各地の馬文化従事者、俳優を応援する方、スタッフを応援する方、皆様からいただいた...

  • 2023/10/31 15:49

    クラファン最終日となりましたが、本日お昼ごろ目標額を達成しました!この数日間だけで100名近くの方々から支援が続き、一気に目標額達成となりました。この企画が多くの方から期待されていることをこのクラウドファンディングをもって強く実感しています。来年の冬の撮影へ向けて、改めてスタッフ一同丁寧に準備...

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