社会課題の解決をみんなで支え合う
無料掲載をご検討の方はこちら

プロジェクトオーナーの手数料の負担は一切なく、支援者さまからのご協力費(12%+税)により運営しています。

▼本プロジェクトの目指す未来

2015年にメディアを賑わせた「文系学部不要論争」に象徴されるように、日本社会における人文・社会科学は、昨今厳しい状況に置かれているといえるでしょう。

「何の役に立つのかわかりづらい」「評価指標が明確でないために社会的意義が示しづらい」──ふだん人文・社会科学に関わる機会が多くない人の中には、こうしたイメージを持たれるケースも少なくないのではないでしょうか。

実際に、文系学問を取り巻く環境をみると、常勤職のポスト減少やキャリアパスの不透明さを背景に2021年の大学院進学率が人文科学4.1%、社会科学2.2%に留まるなど、社会的意義が認められにくく、予算獲得も難しい現状があります

しかしながら、私たち一般社団法人デサイロ(De-Silo)は、文系学問のなかには、いまの社会から一定の距離を置き、社会を相対化しながらも真理を探ろうとする営為があると考えています。

人文社会科学領域の豊かな知が生まれる土壌を耕すことで、“文系学問”とともに「次なる社会」を探索していきたい──本プロジェクトでは、その第一歩として文系学問を取り巻く課題解決に向けた支援者を募集します。

また、プロジェクトのアウトプットとして人文・社会科学分野における課題と機会領域を探り、体系化して公開する「リサーチレポート」の制作に取り組みます。

▼アカデミアを取り巻くサイロ化の問題

デサイロは、人文・社会科学分野の研究者を伴走支援し、社会との多様な接点をつくるアカデミックインキュベーターです。「いま私たちはどんな時代を生きているのか」を研究者とともに探り、そのなかで立ち現れるアイデアや概念を頼りに、来るべき社会の探索と構想を目指して活動を行っています。

研究者との協働を進めるなかでは、いまの人文・社会科学分野の研究を取り巻く構造的課題──アカデミックポストの減少や研究を評価するための指標の未整備、社会とアカデミアでの人材の流動性などに向き合うことの重要性が明らかになってきました。

例えば、慶應義塾大学大学院社会学研究科との共催イベントで、独立研究者として活動する人類学者・デサイロの理事も務める磯野真穂さんは、人文・社会科学の現状を次のように表現しています。

「アカデミア、特に人文・社会科学の世界は、研究者が大学の常勤職員であることが前提となってデザインされています。常勤職になると生活は安定し、研究費も取りやすくなるけれど、そのトラックに乗れないと生活自体が不安定になる──ずいぶんな格差社会です」


関連記事:人文・社会科学の研究者に「大学の常勤職員」以外の選択肢を。アカデミア外にも広がるキャリアの可能性を考える:磯野真穂 × 藤嶋陽子 × 岡原正幸

また、デサイロがForbes Japanと共同で企画・編集した特集「人文・社会科学と次なる社会像」(『Forbes JAPAN』2023年5月号)において、デサイロで研究プロジェクトを進める関西学院大学神学部准教授・柳澤田実さんは、人文・社会科学分野の研究者を取り巻く負のサイクルを指摘しています。

「人文科学は、シビアな問題を抱えているように感じています。ポストの減少、領域全体の先細りはもちろん、それに伴って「学問的な研さんを積むより、一般向けの本を書いたほうがいい」という風潮すら生じているように見えます。

自戒を込めてですが、研究者側も依頼を受けると、一般的な評価に意識が取られてしまって研究がおろそかになり、結果として学界が細る……そんな悪いサイクルが、特に研究者としての就職に不安を抱える若い世代に根付いてしまっているように感じます」


関連記事:雑誌『Forbes JAPAN』2023年5月号に、デサイロが協力した特集「人文・社会科学と次なる社会像」が掲載

こうした況に立たされる現代日本の人文・社会科学における重要課題として、「サイロ化(=組織やシステムなどが連携せずに孤立してしまう状態)」があるとわたしたちは考えています。

人文・社会科学の生み出す知についてのアカデミア外での認識が十分になされておらず、企業やNPO/NGOといった民間機関、あるいは国・行政といったアカデミアの外のステークホルダーと、アカデミアの間での連携や人材の行き来が活発に起こっていない。結果として過度な専門分化や研究者のキャリアの不安定さ、研究環境の停滞が引き起こされてしまっている。

このような人文・社会科学の置かれる「サイロ化」という現状を打開(=De-Silo)することが、デサイロが「研究“知”とともに、次なる社会を探索する」というミッションの達成するためのアプローチのひとつです。

▼本プロジェクトの目的

こうした課題認識を背景に、今回のプロジェクトでは人文・社会科学分野における課題と機会領域を探り、体系化して公開する「リサーチレポート」の制作に取り組みます。

リサーチレポートの内容としては、次のようなかたちを想定しています。

【レポート概要】
現在、人文・社会科学分野の知見を社会に還元しようとする動きが進んでいます。経済学の知見を生かしたコンサルティングを提供する企業や、人類学の知見から調査・マーケティング、課題発見をサポートする企業などが生まれ始めました。

日本学術振興会などのファンディング・エージェンシーも、未来社会が直面するであろう諸問題に係る有意義な応答を社会に提示することを目指す研究テーマを支援するプログラムを立ち上げ、研究者とNPOや行政、産業界などの多様なセクターでのコラボレーションを促進しようとしています。

こうした背景を踏まえ、本調査では既存の文献調査に加えて、このようなアカデミアの内外で研究知の社会実装を試みる実践者や当該領域の専門家へのヒアリングを行うことで、人文・社会科学の知が生み出すインパクトの体系化や課題解決に向けた機会領域の提示を行います。また、制作したレポートはオープンソースとして広く公開します。

【ヒアリング対象者(予定)】
※具体名が出ている方は既に許諾をいただいております※

<人文・社会科学という領域における専門家の方々>
・人文・社会科学を対象に研究を進めている有識者の方
 ex.標葉隆馬様(大阪大学・社会技術共創研究センター・准教授)、南了太様(京都精華大学 国際文化学部 准教授)など

<国・行政にかかわるプレイヤー>
・行政として人文・社会科学の振興に携わる担当者
・公募により優れた研究開発課題を選定し、研究資金を配分する「ファンディング・エージェンシー」の担当者
・大学経営や運営に携わる機関・担当者、国公立大学のURA(リサーチ・アドミニストレーター)部門の担当者様など

<民間のプレイヤー>
・人文・社会科学の知の“活用”に取り組む企業様
 ex.株式会社アイデアファンド様など
・人文・社会科学の研究のエコシステム支援に取り組む企業様、財団様など

<課題の当事者である研究者の方々>
・新たなキャリアパスを模索している研究者の方
・人文・社会科学領域の現役大学院生の方

【レポート構成】
※あくまでも現状の想定であり、調査プロセスの中でブラッシュアップ予定です※

・はじめに
・人文・社会科学を取り巻く課題マップ
・人文・社会科学の現在地
  人文・社会科学の意義にまつわる議論
  人文・社会科学の歴史的経緯
  人文・社会科学が置かれている現状(大学/民間/国・行政)
・人文・社会科学の知の“活用”や支援におけるトレンド
  研究知の活用(企業や実践する研究者の紹介)
  研究のエコシステム支援(企業や実践する研究者の紹介)
・人文・社会科学のこれから
  人文・社会科学の役割
・デサイロがインキュベーションしたい機会領域
・おわりに

将来的にはリサーチ・レポートで得られたインサイトを活用し、研究知を生かした社会課題の解決を目指した「アカデミックインキュベーション・プログラム」の立ち上げを計画しています。「研究知を生かした社会課題の解決を目指す」ことを中心テーマとして掲げ、研究者(やプロジェクト)の支援を通じて、家族や子ども、まちづくりなどの領域の課題解決に貢献していきたく考えています。

▼人文・社会科学を取り巻く課題マップ

人文・社会科学分野における機会領域を探るための第一歩として、デサイロでは「人文・社会科学を取り巻く課題マップ」の制作を行いました。

本マップはあくまでも、制作過程の仮説となっています。今後、マップをもとに識者や当事者の方々にインタビューを重ねることでアカデミアを取り巻く構造的課題の全体像を解き明かしていきます。

※課題マップ制作には監修協力として、標葉隆馬さん(大阪大学 社会技術共創研究センター 准教授)と南了太さん(京都精華大学 国際文化学部 准教授)に参加いただいております。

標葉隆馬(しねは・りゅうま)
大阪大学・社会技術共創研究センター・准教授。専門社会調査士。専門分野:科学社会学、科学技術社会論(STS)、科学技術政策論、科学計量学。特に、生命科学と社会、遺伝子組換えや幹細胞を巡る議論、科学技術に関するメディア言論動向分析、Public Engagement、科学技術イノベーション政策のための科学、東日本大震災を巡る構造的課題など。

南了太(みなみ・りょうた)
京都精華大学国際文化学部准教授。1980年、京都市生まれ。同志社大学大学院総合政策科学研究科 技術・革新的経営専攻修了。博士(技術・革新的経営)(博士論文「人文社会系産官学連携の普及と定着」)。

▼今後のスケジュールと必要な費用

レポート制作に必要な費用は下記の通りです。
予定している予算を超える支援が集まった場合、デサイロの運営や活動に活用させていただきます

・リサーチの実行(60万円)
・レポートの執筆/編集費(70万円)
・レポートのデザイン費(30万円)

・関連イベントの開催(10万円)

___________________________

今後のスケジュールとしては、下記を想定しています。

■スケジュール
2023年1月末:クラウドファンディング終了
2023年12月~3月:レポート制作期間
2024年4月:レポート発表
2024年6月:デサイロ アカデミックインキュベーション・プログラム 2024」の立ち上げ

▼リターン内容について

0.5万円
・お礼のメッセージ
・活動報告ニュースレターの配信

1万円〜5万円
・お礼のメッセージ
・活動報告ニュースレターの配信
・レポートへのお名前の掲載
・人文社会科学分野の研究のエコシステムを豊かにするべく、本領域に関わる多様な方々をお招きしたミートアップイベントへのご招待

10万円
・お礼のメッセージ
・活動報告ニュースレターの配信
・レポートへのお名前の掲載
・人文社会科学分野の研究のエコシステムを豊かにするべく、本領域に関わる多様な方々をお招きしたミートアップイベントへのご招待
・研究知の社会実装の一貫としてのコラボレーションプロジェクト/イベントのコーディネート

50万円(スポンサー枠)
・お礼のメッセージ
・活動報告ニュースレターの配信
・人文社会科学分野の研究のエコシステムを豊かにするべく、本領域に関わる多様な方々をお招きしたミートアップイベントへのご招待
・研究知の社会実装の一貫としてのコラボレーションプロジェクト/イベントのコーディネート
・レポート及びデサイロWEBサイトにスポンサーロゴを掲載

<募集方式について>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。

▼デサイロについて

「いま私たちはどんな時代を生きているのか?」

一般社団法人デサイロ(De-Silo)はこの問いを研究者のみなさんと考えていくために始まりました。研究により生み出される知は、いま私たちが生きている時代を読み解く、あるいは社会がこれから直面する課題発見のための重要なリソース(資源)であるはず──。こうした課題意識のもとで、時代と社会に応答した研究テーマを持つ研究者とのプロジェクトを進行してきました。

その一例を上げるならば、歴史社会学や家族社会学の研究を通じて、21世紀型のパートナーシップのあり方や事実婚などのあり方を探索する阪井裕一郎さん(大妻女子大学准教授)、ろう者の身体性を起点に「私たちの生きているという実感はどこから生まれるのか」を探るメディア研究者の和田夏実さん(東京大学大学院総合文化研究科 研究員)、政治の不在以前の「私たち性 we-ness」の喪失という日本の課題に対して哲学や心理学の知見を用いて研究する柳澤田実さん(関西学院大学准教授)などの方々と協働を進めてきました。

磯野真穂さん、柳澤田実さん、山田陽子さん、和田夏実さんの4名の研究者と、コラボレーターとなるアーティストとともに「いま私たちが生きている時代」を探求し、社会に届けています。

関連記事:人文・社会科学の知を頼りに「いま私たちはどんな時代を生きているのか」を考える。デサイロの軌跡と展望【De-Silo Meetupレポート】

人文・社会科学分野の研究と社会の新しい接点を模索し、研究活動を総合的に支援することを目指した「デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム」を運営中

関連記事:いまこそ「時代」と「社会」に応答する人文・社会科学の研究を──デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム審査員の目線

協働を進めるなかで見えてきたのは、人文・社会科学の研究は、社会における課題発見と探索のひとつの指針になるのではないかということでした。上記のような方々の研究テーマからは、少子化、脱家族化、21世紀型のパートナーシップ、私たち性と社会の分断、企業における外国人雇用などの課題が見えてきます。

こうした認識からデサイロは、いま私たちが直面する社会の課題に応答する研究者と協働することで「次なる社会」を探索しています。

このプロジェクトの問題報告はこちらよりお問い合わせください