はじめにご挨拶
はじめまして。監督の阿部はりかと申します。
本作品『暁闇』は、MOOSICLAB2018 という企画に向け制作される⻑編映画作品です。
自分の最新作である舞台『あおみのゆいごん』をSPOTTED PRODUCTIONS 主宰の直井卓俊プロデューサーに拝⾒いただいたご縁で制作が始まりました。
舞台『あおみのゆいごん』場面
MOOSICLAB とは
『MOOSIC LAB』は2012 年頃から始まった新進気鋭の映画監督とアーティストの掛け合わせによる映画制作企画を具体化する⾳楽×映画プロジェクトであり、それらをコンペ形式・対バン形式で上映する異⾊の映画祭です。
昨年2017 年は『聖なるもの』『少⼥邂逅』『なっちゃんはまだ新宿』と3本が単館上映を果たしました。
MOOSICLAB 公式HP
作品について
タイトル『暁闇(ぎょうあん)』
脚本・監督 阿部はりか
コラボミュージシャン LOWPOPLTD.
公開:2018 年11⽉ 新宿K's cinema
その他映画祭への出品を予定しています。
ストーリー
教師である⽗親の、⽣徒からいじめを受ける姿を⽇常的に⽬にして過ごすコウ(15)。
学校では誰ともあまり話さず、夜、⾃室で⼀⼈楽曲制作に打ち込み、インターネットで公開をして過ごしている。
そんな息をひそめるような⽇常の中で、コウは突然、楽曲の全てを削除する。
メインキャスト
コウ:⻘⽊柚
プロフィール
2001年、神奈川県生まれ。主な出演作にドラマ『リーガル・ハイ』(CX/2012年)、映画『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』(監督:柴﨑貴行/2014)、『14の夜』(監督:足立紳/2016年)、 『アイスと雨音』(監督: 松居大悟 /2018年) 『コーヒーが冷めないうちに』(監督:塚原あゆ子/ 2018年)など多数。また、声優としてハリウッド映画『GODZILLA』(2014年)では吹替えを担当、「MOOSIC LAB 2017」でメインモデルを務めるなど、映像作品を中心に幅広く活動している。
コメント
コウ役を務めさせていただきます、青木柚です。コウは僕が今までやらせていただいた役の中で一番繊細な気がします。なので誰よりもコウを愛して、阿部はりか監督の世界の中のコウを越えられるように、そしてコウとして生きれるように精一杯やらせていただきます。暁闇、よろしくお願いします。
サキ:越後はる⾹
プロフィール
生年月日:2000年10月19日
出身地:兵庫県 身長:158cm
趣味:映画鑑賞、読書、乗馬
特技:チェロ、スキー
■映画
「明日にかける橋」(太田隆文監督)みゆき役
■ドラマ
WOWOW 連続ドラマW「イノセント・デイズ」
CX/KTV「FINAL CUT」 3話ゲスト萌役
NTV/YTV「ブラックリベンジ」6話ゲスト綾子役
コメント
越後はる香です。阿部組に参加出来て興奮しています。撮影に向けサキと向き合い、リハーサルを含めてユウカ、コウとの空気感、距離感、を感じながら撮影に挑みたいと思います。今からとてもわくわくしています。よろしくお願いします。
ユウカ:中尾有伽
プロフィール
instagram:@yuuka_nakao
1996年9月13日生まれ 東京都出身
昨年より本格的に女優活動開始。
ミステリアスなルックスでも注目を集めている。
~映画~
「ふゆとゆき」本編(青山学院大学卒業製作作品) 主演:大河原ふゆ役
「monologe」タナカシンゴ監督 秦役
~ドラマ~
CBCテレビ「祭り戦士ワッショイダー」:nanami 役
CX 系列「スカッとジャパン」~3股男にサプライズ~:水野レナ役
~舞台~
「らん」お玉役 脚本・演出 秦建日子
「あおみのゆいごん」 続編
「あおみのことづて」 森川鈴役
コメント
映画「暁闇」主演のひとりを務めさせていただけること、本当に嬉しいです。
阿部監督とは前作の舞台に出演させていただいてからのお付き合いで、一緒に作品を作ることが今回で3作目、舞台と映画ではまた違ったものになるとは思えども、喜んでオファーを受けました。
心の一番やわらかい部分がビリビリと痺れるような感覚が阿部監督の作品にはあって、わたしはそれが大好きです。
他キャストさんも素敵な方ばかりで、みなさんと一緒にひとつの作品を作ることが本当に楽しみです。
彼女が私をひとつの窓にして、見出す光や闇を知った時、私は生まれたときからその子として生きていたと錯覚してしまいます。しばらくはその感覚が抜けません。今回も、きっとそうなのだろうなと、脚本を読んで実感しています。「暁闇」が、いろんなかたちになって、皆様の元へ届きますよう。
コウの彼⼥・トモコ:若杉凩
プロフィール
1998年、愛知県生まれ。
2016年夏より俳優としてキャリアをスタート。
主な出演作に、映画『アイスと雨音』(監督:松居大悟 /2018年)、 『デッドエンドの思い出』(監督:チェ・ヒョンヨン/ 2019年)、 JY「星が降る前に」MV(監督:岩井俊二)、 宇多田ヒカル「初恋」MV、 乃木坂46・個人PV「鏡の中の十三才」など多数。また、ミスiD2017「キャッチコピー賞」の受賞や、 スウェーデンのオンラインマガジン「The Forumist」にてファッションモデル、絵描きや文筆業など、活動の場は多岐にわたる。
コメント
智子でいた時間はそう長くはありませんでしたが、撮影期間中常に自分の拠り所でした。
世の中では後ろ暗いとされているものたちだってそれを拠り所にして強く信じる人が美しく成り得ると思います。
現場で見た光景の全てが美しくて、短い期間ではありますがこの座組の中に居られた事をとても光栄に思います。あなたの拠り所が見つかりますように。
音楽:LOWPOPLTD.
プロフィール
2016年8月16日から活動中。64MIND所属。
監督:阿部はりか
プロフィール
東京芸術⼤学美術学部先端芸術表現科卒業。これまで四作の演劇作品の脚本・演出を⼿掛ける。『なっちゃんはまだ新宿』に美術として参加するほか、美術や役者として多数映像の現場に参加。MOOSIC LAB2014ではオープニング映像で主演。本作が映画初監督作品となる。
コメント
これまで生きてきて、インターネットにいる名前や顔のわからない人たちに壊されたり、救われたりしてきました。ニートで、元パチプロで、ヒモで、3人くらいしか視聴者のいない配信でギターで弾き語りをしてる男の人の言葉を聴きながら、どうしてこんなに正直なんだろうって泣いてました。多分人を殺したりする方向に向かってしまう孤独の感覚がわかります。私のことをそうさせないでいてくれるのは、何かをつくることであり、何かをつくることのところにいる人たちです。
前回舞台を作ったときに、「皆が光っていること、それだけが全てだ」と心から思った瞬間がありました。今回もその気持ちを持って、「画面の中が光っていること、それだけが全てだ」と思って、やります。
今回の脚本においてミュージシャンとしてコラボが成立するのは、全曲一人での宅録という楽曲の制作方法としても、曲の作風としても、LOWPOPLTD.さんしか居ませんでした。そのLOWPOPLTD.さんに快くコラボをお引き受けいただけて、しっかりとピースがはまりました。
この映画を見たいなという気持ちで、起き上がれずに布団で丸くなっているひとが、家から出てこれたら、それ以上嬉しいことはないです。
2018年5月10日
資⾦の使い道
ロケ地費⽤
撮影・照明機材レンタル代
⾞輌費
キャスト費
▼リターンについて
【映画「暁闇」限定壁紙】
ニメイによる、CAMPFIRE完全限定壁紙です。
【オリジナルステッカー】
ニメイによるイラストのステッカーです。
【オリジナルトートバッグ】
ニメイによるイラストのトートバッグです。
(※画像はイメージです。)
【フォトセット】
写真家・飯田エリカ撮影のスチールフォトセットです。
【監督過去台本4点セット】
阿部はりかの過去の演劇作品4作品の上演台本のCAMPFIRE完全限定セットです。
【LOWPOPLTD.完全限定音源】
LOWPOPLTD.書き下ろし主題歌のデータです。CAMPFIRE完全限定配布です。
最後に
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
改めまして、監督の阿部はりかと申します。
今回の制作にあたってクラウドファンディングの実⾏を決断するのは、私にとって、とても勇気の要ることでした。
これまで私は演劇作品を制作してきているのですが、いつもお⾦の問題には突き当たっていて、その度に誰にも相談をせずに⼯⾯をしてきました。規模的にぎりぎり⼀⼈でどうにかできる額だったというのもあります。
今回は初めての映画制作で、想定していた以上にどんどんとお⾦が消えていくのを⽬の当たりにしました。
前⽇にいきなり「明⽇18 万⾜りない」と判明し、⾃転⾞であちこち⾛り回ってお⾦を集め、どうにか乗り切れた⽇もあります。
そんなぎりぎりの状況の中で6⽉の撮影を乗り切り、あとは7⽉の終盤に少しの撮影を残すのみとなりました。
これまでの私だったら、どんな額でも、意地でも⼀⼈でどうにか⼯⾯しようと頑張ったと思います。
でも、今回は、⾃分の⼒と、この映画に関わってくれている本当に素晴らしいキャスト、スタッフのみなさま、そしてこの映画に少しでも興味を持ってくださって今この⽂章を読んでくださっているみなさまの気持ちを、全⼒で信じようと思いました。
初監督の私の作品を⽀援することは、皆様にとっても勇気のいることだと思います。
ご⽀援いただいた⼀⼈⼀⼈に対する気持ちは、⼀⽣忘れられないです。
撮影の⼤部分が終わってからのクラウドファンディングの開始ですが、いただいたお⾦は1 円1 円、⼼からの感謝の気持ちを持って、機材費や⼈件費の⽀払いにあてさせていただきます。
皆様の貴重なお⾦、絶対に無駄にはしません。
どうか、よろしくお願いいたします。
2018 年7 ⽉2 ⽇ 阿部はりか
最新の活動報告
もっと見る戸田真琴×首藤凜×阿部はりか 映画『暁闇』特別鼎談
2018/08/03 19:36首藤 作品内容は戸田さんは知らないんだよね。 阿部 伝えてない。戸田さんには、脚本段階よりも映画としてを観てもらいたいっていう気持ちが優先してしまった…。 戸田 っていう話自体もなんか、阿部さんがどういう人かみたいなことに、なりますね。でも、阿部さんがどういう感覚持っている人で、どういうものが作りたくてみたいなまでのことは…。このクラファンのページで情報を拾おうとすると、阿部さんがめちゃくちゃ、自分でお金を工面することを頑張って来たという事実だけが…きらきらしていて…胸が痛んでしまう(笑)こんな子がお金無いのって何なんだよっていう…(笑) 首藤 (掲載している)阿部のコメント、最初に書いてたコメントと違うよね?インターネットのこと書いてた…あのコメントは、なんかすごい、よくわかる感じだった。 阿部 なるべく作品内容を出さずに、と思って、短く簡潔に変えちゃったんだよね。 戸田 そのコメントって…。 阿部 えっと、これです。 戸田 ……めっちゃ観たくなるじゃないですか。これ載せた方が絶対いいと思う。どういう人で、どういう人のための映画を作るのかすごいわかる。これだけで、観たい、って思う。 首藤 うん。この時代にインターネットを見ていた気持ちって、今もうあんまり無いものだし。でもこれって結構20代くらいは共通言語みたいなところもあると思うから。 阿部 おお、変えます!この鼎談を載せるときに一緒に変えます(笑)【監督のコメント欄が更新されています→●】 首藤 この感じ、もうなくなりましたよね。 戸田 無い。もっとインターネットがみんなのものになっちゃって。ちょっとやばい人が夜中に見てるみたいなイメージもなくなったし。もっとなんか…よくわからない人が、これが正しいこれが正しく無いって大声で言うようになっちゃった。 阿部 自分の精神性としても無くなっていく、みたいなのも感じる。 首藤 それもなんとなくわかる。時代と一緒に自分も変わっていってるんだって言う感じがする。 普段ネットに居るけど今日学校に来てます 戸田 私この間ROCK CAFE LOFTっていうところで音楽のトークイベントをしたんですけど。思春期とかに、それこそ夜中3時とかまで、親に隠れてYou tubeとかニコニコ動画とか配信とかを聴いて、それで気になった人のCDを買ったりしてた時代があって。そういう時の話をして。インターネットが家族間の窮屈な気持ちから出られる唯一の場所だったんですよね。学校の授業よりもネットの方が救いがあるような気がしていた。そういうのをすごい思い出したんです。『暁闇』で出てくる音楽って、そういう意味での音楽なんだろうなって思います。音を楽しむっていう音楽っていうよりは、フェスとかで盛り上がる音楽でもなく、映画の気持ちいいサウンドトラックにするというのでもなく…。 阿部 そうですね。これ登場人物が、全員イヤフォンでしか音楽を聴かないんですよ。結構そういう、イヤフォンでしか聴かれない音楽みたいなジャンルがあるのをすごく感じていて、まさにそれの話…だからライブシーンも無いし。ライブしないから。 戸田 映画も音楽も個人のものであってほしいっていう願望がすごくあって。個人のものである前提で、たまたま共有できたときにみんなで楽しむっていうのは素敵だと思うけど、基本的には個人で向き合うものであってほしい。音楽とそれを聴いている人っていうのは1対1で、音楽を生んだ作者も、その1対1の関係に干渉はできないと思っていて。そういう意味でも、この映画はすごく観たいっていう気持ちになる。 首藤 戸田さんが高校時代とかにすごくネットで音楽を聴いていたっていう話を、前に聞いていて。私阿部と中高一緒なんですけど、阿部も結構本当にそういう感じの子だったんですよ。むしろ、普段ネットに居るけど今日学校に来てますみたいな雰囲気だった。それはもしかしたら戸田さんと結構似てるのかなと思ってました。 戸田 うん、なんかこの(コメントの)文章の感じはすごくわかる。 首藤 私は、阿部がちょっと教えてくれたのを聴くくらいで。ネットの音楽って結構独特な文化だから、知らない世界の感じを教えてもらうみたいな感じでした。 戸田 どんなの聴いてたんですか? 阿部 その時のことって、覚えていないことがすごく多いんですけど…。神聖かまってちゃんとか、ミドリとか…。 首藤 それこそ禁断の多数決とかも、ネットで出会ってるよね? 阿部 あ、そうだ。禁断の多数決とかは本当、あれこそインターネットみたいな音楽…。高校二年生くらいの時に、メンバーになったんですけど。 首藤 あの出会いはどういう感じだったの? 阿部 リーダーの人がデヴィッド・リンチがすごく好きで。ツイン・ピークスとか、ああいう擬似家族的な世界観を、バンドの活動全体として作りたいみたいなことで、誘われました。だから音楽をやろうっていう出会い方とはちょっと違いましたね。 首藤 それってその頃ネットであった考え方なのかな。なんか『紀子の食卓』とかも…? 阿部 あ、そうだよね。疑似家族の話だったね。なんかインターネットのつながりとかって、すごく家族っぽさが発生する気がする。私は小学校五年生くらいからずっとネットをしているんですけど。一番最初は、ハンゲームっていうオンラインゲームのサイトにハマって。そのサイトで、地方の大学生と、地方の高校生と、小学生の私の三人ですごく仲がよくなったり……顔三人とも全然知らないけど。みたいな事を、ずーっとやってきているから…。 戸田 確かに、世代が全然違う人と…っていう。 首藤 そういうのって、自然に解散していく感じになるの? 戸田 ログインする回数がなんとなく減っていったり…? 阿部 そうだね。いつの間にか。…でも、多分、実際会ったら全然仲良くなれないっていうのもなんかわかるんですよ。 首藤 最低限の…コミュニケーションツールだから。実際会うと、喋り方が嫌だとか声が嫌だとか、そういうのが無数に出て来ちゃうけど…。 阿部 実際好きになる人って、喋ってる内容云々っていうか、声の出し方とかですごく好きになる。 戸田 ネットで人を好きになっちゃう人がこんなにいるっていうのは、本当に、会ったことがないからだと思う。情報少ない方が人って好きになりやすい。今の仕事してて、ファンの人とか、いろんな人に会うんですけど、この仕事する前よりも人をめちゃめちゃ好きになれるようになったんです。会う人たちを。好きだな判定がすぐに置けるようになったっていうか。それってお互いを良く見せようとしてる瞬間だけ会ってるからなのかなと思ってて。この短い時間だからなるべく良い気持ちだけ持って帰ってもらいたい、っていう思いであったり。それが好きで、今の仕事好きだなと思っていて。良いところだけ見せようとするのってすごく素敵だなって思うんですけど…それがネットだともっとやりやすいのかなっていうか。妙に世界観のあるツイッターとかやってる19歳くらいの女の子とかいるじゃないですか。私も高校生の頃からツイッターやってたんですけど、昔のパソコンとか見ててその時のスクショとか出てくると、今よりよっぽどミステリアスに見えるんですね。雰囲気がある、何か目に見えない魅力を持ってるんじゃないかって思わせるような女の子に見えるんです。言葉を語りすぎなかったりとか、なんか意味深なアイコンにしていたりとか。 首藤 それ、超わかります。 一同 (笑) 戸田 今、そこからだいぶ離れてしまって、感覚も全部。ツイッターもそういう、謎の世界観の形成みたいなものに使うものではなくなっているし。それをつつけば何も出てこないってことがもうわかっちゃってるし。ただ、その頃って、他人に対しても、あんまり意味なくついているものに対して、ものすごくこういう意味があるんじゃないかとか、それこそ見つけた音楽とかに対しても、全然ちがう意味で書かれた言葉でもたまたま自分にあてはあまったら、この人は全てわかってるんじゃないかって思ったり…なんかそういうことの繰り返しだったような気がして。それがどんどんたまたま重なり続けて、運命なんじゃないかって思ったり、自分には不思議な何かがあるんじゃないかって思いこんだりとか、この人のことすごく好きなんじゃないかとか…ネット上で出会った誰かが落ち込んでいたりしても、自分こそが助けるべきなんじゃないかって思ったりとか、いろんな勘違いを生んでると思うし、でもそれで生まれた縁っていうものある。 首藤 好きな小説で、ジュンパ・ラヒリって人の小説なんですけど。その中ですごく良いと思う部分があって。不倫に疲れた女性が、若い男の子に「あなたはすごくセクシーです」って言われるんだけど、それに対して「セクシーってどういう意味?」って聞き返すと、男の子が、「知らない人を好きになること」って答える…っていう。なんか、めちゃくちゃ腑に落ちるっていうか。 戸田 本当にそうかも。インターネットでの出会いってセクシーなのかもしれないですね。 首藤 そういうことかもしれないですね。あんまり知らない、っていうのが…。 戸田 でも今は、ネット上で名前とか、めっちゃ出しますよね。 阿部 みんな本名になりましたよね。普通に。それが嫌だったみたいなのはありますよね…匿名の場所が欲しいみたいなことは、昔は明らかにあったと思う。自分としてもだけど、多分、社会全体の、何かとしても。『暁闇』の話は、結構、そういう環境の終わりについてのことでもある。 首藤 そうだね。だからこそ今のタイミングで、っていうのはあるかなってすごく思った。 阿部 ていうか多分この辺で作らないと、もう誰も作らないような…。 戸田 これ以降になっていったら、忘れちゃうような気がするし…。 阿部 でもそういう、インターネットに関してすごい…ある種囚われてるくらいな印象がある映画って、そんなに無くないですか? 首藤 『リリイ・シュシュ』とか? 阿部 ああ、そうか。それは、めっちゃそうだね。 戸田 コラボしたアーティスト(LOWPOPLTD.)さんは、阿部さんにとってどういう出会いで、どういう存在だったんですか? 阿部 インターネットに音楽をあげている人で…。本当にライブとかしていなくて。(ミュージシャン本人に)作曲方法を聞いた時に、寝れない夜にしか歌を録らないとか、録るときも、部屋の電気を消して布団にもぐって録る、とかを話してくれて……すごい不思議な人なんです。まだ21歳なんですけど。ほとんど不登校だったらしくて。で、それこそ、本当に、今のLOWPOPLTD.って名前を使って楽曲を発表するようになるまでは、中高生の頃とか、名前を毎回変えて曲をあげては消してみたいなことをやっていたらしいです。 戸田 そういう話を聞く前に、この脚本を書いていたっていう…。 阿部 そうなんですよ。 戸田 すごいですね…。 阿部 しかも、これ屋上がすごい重要なモチーフなんですけど、その男の子も実際、いつも学校の帰り道に屋上に寄っていたっていう…。だから、謎のリンクがすごく発生している…。その男の子本人と喋った時に、僕はずっと僕みたいな人って居ないんだって思っていたけど、居るんだ、って驚きましたって言われて…そういう言葉があっても、やっぱり掴めない人なんですけど。 聖域みたいな作り方をしていたけど、今回は全然そういう感じじゃない 戸田 阿部さんの演劇を私は『あおみのゆいごん』を観せていただいて、終演後に、本当に綺麗な世界というか、蒸留された世界だなみたいな話をして。心が綺麗な人しか出なくて、それが私はすごく嬉しくて、っていう話を。 阿部 そうですね。綺麗な人しか出ないですね。…自分が演劇をずっとやってたのは、空間を確保できるからで。空間と時間を、その日時絶対自分が確保できる。だからそこだけは、その時間だけは、絶対安全な場所に、っていう…その場所の安全さをどうやって作っていくかみたいな感じなんです。演劇の時の気持ちって。だから、蒸留されたとか、みたいなのはすごくそうで。 首藤 1回目の公演の時に…作品に興味あるわけじゃないけど来ちゃった、みたいな人が来て、阿部号泣してて…。 阿部 それの時は…やばかったよね…。 首藤 なんかめっちゃ泣いてて(笑)そんな弱いこと言っちゃだめだよ(笑)みたいな感じで諭したりして(笑)でもそういう、確保するっていう感覚だとしたら、そういう異分子みたいな存在が急に入って来たら、結構汚されるって思う感覚になるっていうことだったのかもしれないね。 阿部 そうだったと思う。あの時は本当に色々拙い状態で…。 戸田 見られるってことも、暴力になる時があるなって思います。 阿部 それはすごい思います。多分、私はそれで結構、映像を撮るとかも、割とためらいというか…やっちゃいけないこと感が凄かったんですよ。映像を撮ることの攻撃性がすごく怖かったんです。空間を作るみたいなのって、結構、明確にその瞬間その瞬間で、今はちゃんと大丈夫とか今はおかしいとかをすぐわかって、それを一個一個丁寧にやっていくみたいなところが結構、あるんですけど。それを重ねて行ってちゃんと目指す空間ができあがったら、その空間に居た人にとって、それから生きていく時間の中で力になる何かになれると思うんですよ。記憶そのものとして。形を残さずに。でも、撮るってことは…その人から離れたその人を残すってことじゃないですか。そうなったときに、その人は変わっていくのにその人が残っている。映像の中に。それってすごく傷つける可能性が高い。だから……多分単純に、そこに居る人が生きていくためのこととしてやりたかったんだと思うんですよ。ものをつくるみたいなことを。ってなったときに、映像じゃなくて演劇だったんですけど。 首藤 そうだね。阿部は、演劇の出演者に、役者じゃない子を使うことがすごく多くて。その女の子が今どうか、とかすごい言うもんね、脚本の段階とかで。 阿部 そうだね。今どうかとかがすごい一番大事。 戸田 撮る側に「いや、これは綺麗だから」っていうエゴがあったりするのは、めっちゃ怖いなって思います。 阿部 それは本当にそうですね。自分も若干、出演者とか被写体になるタイミングのあった人なので…(被写体って)写っちゃえば自分に決定権はないから、それがすごく嫌なときはあって。それを10代で経験してから作る側に入っているから、余計に、被写体側として存在する人間の、存在することの危険さとか、見られることに抗えないこととか、をすごく意識して作っていて…。だから、何があっても、被写体が傷つかないことしか大事じゃない…ってやっぱなっちゃうんですよね。 首藤 それは、映画やるのはすごいハードルがあるよね。 阿部 そう。だから今回やる時に、やっぱこれまでとはちょっと違うのが一個入って…それで初めて男の人が登場する作品になった。空間として守ろうってことじゃなくて…現実に行こうっていう。 首藤 確かに、今までやっていた演劇は、かなり狭い場所での、心が綺麗な人しか出てこないっていうような感じ…聖域みたいな作り方をしていたと思うけど、今回は全然そういう感じじゃないのかな、って思ってた。でも、阿部本人を知っていると、今回の映画が阿部本人に一番近いと思う。演劇の阿部の世界観って、阿部にとってとても大切な女の子が沢山出て来るんだけど、阿部にそんなに女の子の友達が居たところを私は見たことがないし…。 阿部 居ない(笑) 首藤 居ないじゃん?(笑)どちらかというと、分化した阿部、阿部自身が本当に何人もいるみたいな意味での聖域みたいな空間なのかなって思っていたから、今回みたいに男の人が出て来たりとか、ネットで繋がったりとかっていうのは、より本人に近いって言う印象はしている。 阿部 それは本当にそうで…『あおみのゆいごん』って、私がこれまで作った舞台の中で、多分一番純度が高く守ろうとした空間だったんですよ。そこに行き着くに当たって、私のイマジナリーフレンドたちを守るために、リアル私がめっちゃ辛い思いをするみたいな現象がやっぱり発生してくるんですよ。そうなったときに、めっちゃ辛い自分を救えるのが、それこそインターネットとかの、全然視聴者数が居ない、「今日、パチンコ行ってぇ」みたいに話してる配信とかで…なんか一番自分と近いんです、位置として。それに救われたことを、言葉にしないことが、すごい酷いことな気がしたんですよ。それは、映画に作るにあたって、思ったんだけど…。 首藤 それを言わないことが酷いっていうのは、誰に対して酷いことだっていう…傷ついてる自分に対して? 戸田 なんかその、綺麗な空間っていうのが、無償で誰の犠牲もなく守られているものだって言う風に、思われることが、絶対おかしいっていうこと…。 阿部 それです。 戸田 もともと綺麗な空間で、綺麗な人達しかいないから綺麗なものができました、っていうふうにされちゃうと、すごくバランスがとれてないっていうか。「ああ、じゃあ綺麗なところは綺麗なところでいいですね」で終わっちゃうっていうか。誰しも何かを、自分の中の何か成分みたいなものを、ある一定のものだけをどこかに寄せるとかしたら、そこだけは綺麗になるけど残りは汚くなると思うし、何かのために努力して何か一つをガッて守ったら、そうじゃない自分とか、それによってないがしろにされたものとかが絶対あるし…(そうして出来上がった)世界に近づこうとしたときに、誰も近づけなくなっちゃう。 * * * 戸田 『あおみのゆいごん』を拝見した後お話した時に、ムーラボの話をしたと思うんですが、その時阿部さんが、心が綺麗な人以外も映画には出さなくちゃいけないって仰って悩んでいて。でも綺麗な人しか出さない映画もやろうと思えばできると思いますよって話をして。でも舞台が現実世界だとやっぱり…っていうのを話してらして……その葛藤と、演劇の世界を守り抜くときに発生する辛さみたいなもの、があいまって今回の映画になったんだろうなと思っていて。今まで演劇を作ってきた作者としての阿部さん自身の見てきた救い、っていうのが多分この映画の救いになっているんだろうなっていう。 阿部 そうですね。このまま演劇を作ってきたような形で今回映画を作ったら、多分もう自分の乖離がもっと酷くなるんですよね。それをしたら、もう、死ぬしかなくなっちゃうから…引き止めなければならないみたいな、ある種の自分自身に対する使命感みたいなものはありました。 首藤 あらゆる人に死んじゃうルートってあるよね。 阿部 存在として、死が繋がっている。 首藤 例えば戸田さんは、今まで…死ぬコースに入りかけたかも、みたいな出来事とかって、なにかあったりしますか? 戸田 めっちゃあるような気がするんですけど…なんで死んでないのかな逆に。 首藤 それ思いますよね(笑) 阿部 それしか思わない(笑)私は今回(の映画に至るに当たって)…結構明確に一回、死のルートを見たんですよ(笑)だから余計に何で今死んでないのかがわかんないです。 (2018年7月23日 新宿某所にて収録) 戸田真琴 2016年にSODクリエイトの専属女優として処女のままAVデビュー。ブログをきっかけにKAI-YOU.netにて映画とお悩み相談のコラム『悩みをひらく、映画と、言葉と』を連載開始。2017年にはクラウドファンディングを達成し映画「ミステリートレイン」のロケ地メンフィスにて写真集を撮影。同年11月にミスiD2018を受賞。人生の夢は映画を撮ること。 首藤凜 1995年東京生まれ。大学入学後、早稲田大学映画研究会にて映画制作をはじめる。中編『加賀谷だけが好き』が第八回下北沢映画祭で日本映画専門チャンネル賞を受賞。続く三本目の監督作品『また一緒に寝ようね』がぴあフィルムフェスティバル2016で映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)と審査員特別賞のW受賞を果たす。初長編『なっちゃんはまだ新宿』はMOOSIC LAB2017で準グランプリ、女優賞、ベストミュージシャン賞の三冠に輝き、劇場公開された。 (写真撮影:飯田エリカ) もっと見る
コメント
もっと見る