少し前回の報告から日が空いて申し訳ありません。今回からは現場で使われるAI開発についてご紹介します。といっても、情報工学や数学といった難しい話しではなく、AIがどのように現場で活用できるのかのイメージをご紹介します。
虐待対応の現場ではその場その場で判断が求められます。その瞬間毎に、現場の方々は、今までの経験から、
1「このケースは○○という背景があるのだろう」と問題を分析します。
2「だから、きっとこのケースは□□になるだろう」と予測(見立てともいいます)を立てます。
3「今は、□□という判断が必要だ」と意思決定と必要な対応をします。
これは、私達の生活においても、ほとんど同じ思考&行動パターンです。
ただ、問題の分析と予測を立てることは、1と2のように「~だろう」という推測になります。ここには、その人がどのような教育や研修を受けてきたのか、どのような考え方をする人なのかという要因が反映します。またそもそも未来は誰にも正確に予測できません。不確定な要因がとても多いのです。
これはどんな優秀な人でも、自らが体験した事例の質と量から判断するため、バイアス(誤差)が入ります。一方、AIであれば、全データを元に判断するため、そのバイアスを小さくすることに役立ちます。
今回のプロジェクトで用いるAIでは、今まさに発券した子どものケースについて、過去の似たような事例(データ)と比較検討し、どのようなリスクがあるのかをリアルタイムに算出します。
以下が開発イメージの一コマです。
ユーザーインターフェイスやデザインはこれからですが、例えば
・現時点のリスク:
現時点での危機リスク(再発の傾向)を数字で表します。100%に近づくほど危険、0%に近づくほど子どもが安全という意味です。
・過去の同一リスク事例からの今後の再発予測率
過去の同リスク事例と比較し、次にどのような対応を取ると危機リスク(再発)がどう変動するのか予測値を算出します
・リスクランク
担当者または各組織内でのリアルタイムのリスクランクを色で表示します。
・担当ケース優先順位
担当者が担当しているケースで対応の優先順位を表示します。
一画面に沢山の情報はいっぺんに載せきれませんので、今回は情報が少ない不確定時点で、今後の危機リスクを予測するAI機能について紹介しました。
基本的にAIはデータがないと何の意味もありません。データを積むことで、その判断がどんどん精度が高くなっていきます。まさに人間と同じですが、学習のスピードと量が早いのです。
また、対人支援の領域では、新しい技術やAIに不安を持たれる方もいらっしゃいますが、このAIが何かを命令するということではありません。
現場支援者の判断をサポートすることが目的です。実際に現場で大事なのは、正確なケースの理解(見立て、アセスメントやプロファイル)と、実際にどのように対応するか(危機対応や支援の工夫といった実際の行動)です。
このAIはまさに、その見立てと行動のアイデアをサポートします。
現場にいる方々は、隣にいる先輩や経験者の方にどう対応したらいいのか相談することがあります。このAIを用いれば、全国の支援者の経験をリアルタイムでデータから推定することができます。
例えば、緊急のケース会議で、データから分かっている範囲でその後どうなるかを知っておくことは、子どもを守る会議を効率的に進める上でも大切です。
忙しい現場では、研修会に出続けられなかったり、最新の論文を読む時間がありません。ですが、このAIは最新知見の情報も提供することができます。
このAIは、学校の先生、幼稚園や保育園の先生、病院のお医者さんや看護師さん、まちの保健師さんや子どものケースワーカーさん、児童相談所の職員さん、警察官や消防士さんなど、子どもを実際に守る人を支えます。
次回以降もAI利用のイメージをお伝えしていきます!
寒くなってきましたが、みなさまお身体お気をつけ下さい。