西田卓司です。
新年最初の読書報告です。
「本を贈る」(三輪舎)1月1日、新年最初の1冊はこの本にする、と決めていました。
本への愛が詰まった1冊。
「本を贈る」を読むと、じわじわとあったかい気持ちになってきます。「本」がどのようなリレーを経て、いま目の前にあるのか、そんなことに思いを馳せるようになります。
サンクチュアリ出版で営業をしていたとき、僕は駅伝の第3走者を走っていると感じながら営業していました。
著者→編集者→営業→書店員→読者。
僕は本を届ける第3走者を走っているんだ、って思っていました。
ところが、その編集者と営業のあいだに、つまり本が原稿から本というカタチあるものになるまで、何人ものリレーを通ってきているということがこの本を読むとじわじわと感じられてきます。
2017年に長野県・木崎湖の「アルプスブックキャンプ」で藤原印刷・弟こと藤原章次さんに出会い、その後東京のオフィスにお邪魔をし、一言に衝撃を受けました。
「それって作品って言えるのかな」
「本を贈る」では、藤原印刷・兄こと藤原隆充さんが語っています。章のテーマは、心を刷る「心刷」。
創業者である藤原さんの祖母、輝さんは、タイプライターを習い、タイピストとして独立。タイプライターで原稿を打ちこむ。著者の原稿がタイピストの介在によって熱量を失ってしまうことに違和感を持った輝さんは、「一文字一文字に心を込めて打つ」ことの大切さに気がつく。ここから「心刷」というコンセプトが始まった。
そして、やはり印象に残ったのはこの部分です。
「情報を伝えるためだけの紙メディアがインターネットの普及で激減するのは当然のことです。
一方で残っていくものとはなにか。それは、作品としての本だと思うのです。」
そうそう。
それが藤原印刷が支持される理由なのだろうなと思いました。
印刷物を刷っているのではなく、「作品」を刷っているのだ。
と。
「本を贈る」はこんな風に、1冊の本がどのようにできていくのかを本になったつもりで旅をするように読むこともできるし、本を手渡す一人のランナーとして、本の流れに身を委ねることもできる、そんなあったかい気持ちになれる1冊。こんな本を僕は仕入れて届けたい本だなと思いました。
「かえるライブラリー」に並んでいるのは、そんな風に、誰かが「届けたい」と思った本。その本たちは、それより前に、たくさんの「届けたい」をリレーしているんだ。
そんな本が、思いが、並んだ本棚がつくる空間を、僕は見てみたい。