「本の処方箋」というコンテンツがあります。(写真は「シーナと一平」(椎名町)での様子)
「問診票」を書いてもらい、話を聞きながら、3冊ほどの本を提案します。
1つ目が悩みにストレートで応える本
コミュニケーションに悩んでいればコミュニケーションの本。
2つ目が悩みに対して変化球で応える本
こういう見方もできるんじゃないか?っていう本。
3つ目が話とは全然関係ないけど、話していて頭に浮かんだ本。
夏の長野・木崎湖での「アルプスブックキャンプ」では好評の企画で4年連続で処方箋をやっていいて、白衣や聴診器といった小道具も用意しています。
僕がこのコンテンツの本当の力を知ったのは、ツルハシブックスでイベントをやっているとき、初めて来店したお客さんに声をかけたときでした。
大学4年生。就職活動中。
「いま、本の処方箋っていうのをやっているんで、よかったら」
当然、就職活動の悩みから話が始まりました。
ところが、その後、彼女の口から出た言葉に驚きました。
「お姉ちゃんと違って、私は母から愛されていない気がするんです」
衝撃を受けました。
いま、会ったばかりの本屋の店主に、そんな悩みを相談するだろうか。
いや、何より、本屋のおじさんにそんな話をしても、解決するはずがない。
僕はただ、話を聞いていました。たしか、1冊の本も処方していません。
(まさか「嫌われる勇気」(岸見一郎)とかを差し出せないでしょう。笑)
「すごい。」
と思いました。
「本の処方箋」がすごいって。
初対面の人にそんなにも話ができるっていうのがすごい。これは、「オープンマインド」をつくるコミュニケーションデザインとして非常に優れているツールだと思いました。
人に悩みを話す。
その悩みが重ければ重いほど、根源的であればあるほど、話しづらい。
まわりの友人には気楽には話せない。
ところが、
「それを聞いて本を選ぶ」と言ってきた本屋の店主には、それを話すことができる。
それは、本くらいでは、その悩みは解決するはずがないと思っているから。気分が楽なのだ。
もうひとつ。「旅する図書館」企画で一緒だった岡島さんに言われて、気が付いたことがあります。
「そうやって若者と向き合ってるんですね。」
「!!!」
「向き合う」という言葉への違和感。
気づいた。向き合ってない。僕は向き合ってなかった。
話を聞いているフリをしながら、もう半分の脳は、「何の本にしようかなあ」って本を選んでいる。
「本の処方箋」のとき、2人の視線というか感覚は本棚のほうを向いている。それが重要なのではないかと思いました。
「本の処方箋」というコミュニケーション・デザインのチカラ。
1つ目に、その人間関係がインスタント(その場限り)であること
2つ目に、その悩みが本くらいでは解決しないと思っていること
3つ目が、向き合わないで本棚の方向を見ていること
この3つによって、ホントの悩みが引き出せる。それが「本の処方箋」のチカラではないかと思います。「かえるライブラリー」でもいろんな人がそんなことをやっていけたらいいなあ。
「愛とはお互いに見つめ合うことではなく、いっしょに同じ方向を見つめることである」
(サン・テグジュペリ)