2019/04/04 11:31

VOICE SPACEはどのようなことを目指して「詩と音楽のコラボレーション」をしているのか?メンバーにはどんな人たちがいるのか?私たちのことをより知っていただけるように、今日からメンバーそれぞれがリレーで記事を執筆します。

第1回目の記事の執筆者は、結成当初からVOICE SPACEの創作を支えてきた作曲家、中村裕美です。私たちの活動の根底にあるコンセプトや、今回CDに収録する楽曲について紹介しています。

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こんにちは。作曲、ピアノ等を担当しています中村裕美です。

VOICE SPACEは「詩と音楽のコラボレーション」をする集団です。

では詩と音楽のコラボレーションってなんでしょう。
詩に歌をつけている楽曲は大昔からたくさんあります。それとは違うの?
…いや、そうなんです。それもコラボレーションだと思います。それもありです。
でも、それだけじゃないことをしたいな、というか。

今からするのはあくまで私の心構えの話ですが。
私がVOICE SPACEの作品をつくる際の心構えのひとつとして、「声と器楽の対等性」があります。
歌の人と楽器の人が立っていたとしたら、歌がフロントマンで楽器はバックだと自然にお考えになると思います。
VOICE SPACEの音楽は必ずしもそうではない、と言えばいいんでしょうか。
私は、詩を朗読するスタイルの曲、歌うスタイルの曲、いずれの場合でも
歌と伴奏という考え方ではなく、音楽に声を寄り添わせるという考え方で作品づくりをしています。

この「りんごへの固執」なんかがそうで、これはフルートソロの音楽を基盤に、
それに語りを添えているスタイルの楽曲です。




こちらの楽曲はVOICE SPACEの「声のまぼろし」というCDに収録されています。
今回のクラウドファンディングの5000円以上のプランで入手することもできます!

現在のメンバーが加入してきた初期の頃には、
既存の器楽曲を部分的に使用して朗読を重ねる、といったこともしていました。

などなど、さまざまな方法で詩を音楽にしてきたVOICE SPACEが今回放つ、
新しいCD「アラベスクの飾り文字」に収録される予定の作品についてここからご紹介していきますね。
●「リビング」(詩:暁方ミセイ)
2011年刊行「ウィルスちゃん」収録。この詩集は2012年に中原中也賞を受賞しました。
主に6人の声が入れかわり立ちかわりに、ソロで朗読したり歌い上げたりラップしたり、
2人でユニゾンしたり、また別の2人でハモったり。
たくさんの楽器も入れ替わり立ちかわりに登場し
この、言葉が浮遊しているように配置されている詩に挑んでみた楽曲。

●「これが私の優しさです」(詩:谷川俊太郎)
1993年刊行の同名詩集収録。
もともとの言葉のリズム感が生かされたメロディー。
小林沙羅が近くで語りかけてくれいているように聴かせてくれます。
ソングライター小田朋美のセンスが光る洒落た楽曲。

●「どこの どなた」(詩:まど・みちお)
1981年刊行「まど・みちお少年詩集 いいけしき」収録。
チェリスト関口将史をフィーチャーした、完全に楽器メインの楽曲。
倉敷インスピレーションというイベントでジャズピアニスト谷川賢作さんとご一緒した際に、何かコラボしたいなと思って作りました。

●「有明」「蠕虫舞手」(詩:宮沢賢治)
1924年刊行「春と修羅 第1集」収録。
「蠕虫舞手」は今回のCDのために新たに制作した新曲。
チェリスト関口将史がVOICE SPACEの楽曲を初めて手がけました。
VOICE SPACEとしては今までやったことのない音の作り方をしてみました。お楽しみに。
「有明」は「蠕虫舞手」の前奏曲的位置付け。
お経って二人以上のお坊さんが同時に違う音程で唱えていたりするとハーモニーが生まれますよね。
VOICE SPACEは二人の声楽家によるハーモニーにしてみました。

●「蝉」(詩:中原中也)
中原中也の草稿詩篇より。(1933年)
「呪文」「うしのうしろに」(2ndアルバム「声のまぼろし」収録)などに続く
VOICE SPACE式アカペラ曲。普段は楽器を演奏しているメンバーも歌います。
テノール鈴木准の表現力、パフォーマンスにご注目。
この楽曲はまだ山口市でしか演奏したことがありません。

●「北の海」「六月の雨」「春と赤ン坊」「曇天」「月夜の浜辺」(詩:中原中也)
2015年に山口市にオープンした湯田温泉観光回遊拠点施設「狐の足あと」のために書き下ろした楽曲。
「狐の足あと」1Fの足湯カフェにて3年の間BGMとして起用されました。
「狐の足あと」から数歩の土地で出生した中原中也の詩を、
VOICE SPACEの基本スタイルであるクラシック、アコースティックを基調にしつつも
カフェで楽しく聴ける音楽になるように仕上げました。
「六月の雨」あたりは私のソウル音楽好きが歌の節回しに少し出ていますね。笑
「北の海」のみ、楽器のアレンジを少し変えて今回新たに録音。
他の4曲は「狐の足あと」で使われていたままの音源です。

【中村裕美 Yumi Nakamura プロフィール】埼玉県立大宮光陵高校音楽科ピアノ専攻卒業。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。2004年、韓国芸術総合学校(KNUA)での「NONG Project 2004」にて室内楽曲が演奏される。2006年、奏楽道日本歌曲コンクール作曲部門中田喜直賞の部入選。