2019/04/25 14:52

「クラウドファンディング」はひとつのメディアだと思います。
特に新しい事業やコンセプトを発表するときに有効なメディアだと思います。

今回は、「オルタナティブ就活」というコンセプトの発信と、「就活の違和感」の言語化と共有、何より自分自身が「就活」という違和感について一定期間考えたかったから。

「クラウドファンディング」自体がひとつのプロジェクトだと思います。
「プロジェクト」とは、新しい価値を生み出すための期限のある取り組みのこと。

「就活の違和感」という問いを投げかけ、そこにレスポンスを繰りかえす中で、新たな発見や気づきが現れます。

影山知明さんが「続・ゆっくり、いそげ」を発売した後に定期的に開催している「続・ゆっくりいそげ」コール&レスポンスの会(現在は続・ゆっくり、いそげの朝あるいは夜)も、1冊の本を題材に、参加者が話し合い、まだ書かれていない章をみんなで書き足していくような、そんな会。

3月14日(木)の「続・ゆっくり、いそげの夜」@西国分寺クルミドコーヒーから始まった「就活の違和感」ウィーク。

そこに出るために上野駅に降り立った時に、飛び込んできた1冊の本。

「仕事選びのアートとサイエンス」(山口周 光文社新書)

今回のクラウドファンディングでの一番の収穫は、スピノザ「エチカ」(NHK 100分de名著)に出会えたこと。その予告編ともいうべきことがこの本にはすでに書いてあったのです。

本というのは、本屋というのは、そんな「奇跡」が起こるツールであり、場なのだと、あらためて思いました。

あらためてこの本から引用します。

~~~以下引用
スピノザは「本来の自分らしい自分であろうとする力」を「コナトゥス」と呼びました。

その人の本質は、その人の姿形や肩書きではなく、「コナトゥス」によって規定されると考えました。当然のことながら、コナトゥスは多様であり、個人によって異なることになります。

この世の中に存在しているあらゆるものは、それ自体として「良い」とか「悪い」とかいうことはなく、その人のコナトゥスとの組み合わせによって決まる、とスピノザは考えたわけです。

私たちは極めて変化の激しい時代に生きており、私たちを取り巻く事物と私たち個人の関係性は、常に新しいものに取って代わられていくことになります。

このような時代にあって、何が「良い」のか「悪い」のかを、世間一般の判断に基づいて同定することはできません。自分なりの「良い」「悪い」の評価軸をつくっていくこと。

自分の姿形や立場などの形相を「エイドス」と呼びます。私たちは往々にして自分の属性や立場といった「エイドス」に基づいて「私はこうするべきだ」「私はこうしなければならない」と

かんがえてしまいがちですが、このようなエイドスに基づいた自己認識は往々にして個人のコナトゥスを毀損し、その人がその人らしく生きる力を阻害する要因となっています。

私たちは自分のコナトゥスを高める事物を様々に試していくことが必要になります。
~~~以上引用

2018年3月、僕は「会社員」的な働き方を卒業しました。
「コナトゥス」よりも、「組織」や「立場」を大切にした働き方をしていていいのだろうか?

そう思ったのは、山口周さんの前著「世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?」(光文社新書)を読んだとき。

「ああ、美しくないな、今の働き方は。」そんな風に思ってしまいました。

前職と並行して行っていた、東京・練馬「暗やみ本屋ハックツ」、川崎・武蔵新城「book & café stand shinjo gekijo」のミーティング時に、私は「場のチカラ」や「チューニング」などの大切さを語ってきました。

ひとりひとりの「いま」を大切にして、予測不可能性を高め、心を開くこと。そうやっていい場が作られていくのだと実感していました。

ところが自分自身は職場において、そのような「場」を、「いま」を生きていない。この船がどこに向かっているかもわからずにただ、船を動かしている。自分が自分らしくあろうとする「力」、つまり「コナトゥス」に耳を傾けようとしない。

これは僕自身の苦しさでした。
実は、「就活の違和感」の正体も、近いところにあるのではないでしょうか。

自らの本質である「コナトゥス」から目を背け、交換可能なひとりの人材として面接を受ける、その違和感。

そうではなく、ひとりひとりの声に、力に、コナトゥスに耳を傾け、感じ合い、場のチカラを高めて、目指すところを共有し、ともに仕事をし、成果を上げていくような、そんな働き方も可能なのではないか、と僕は思うのです。

そんなメッセージを、企業に、そして大学生にどのように届けるか。
その方法論のひとつが「耳をすませば」でした。

企業の先輩から、社会人、組織人の先輩から、本を通じてメッセージを届ける。本をきっかけに、共感をきっかけに、大学生と出会い、未来を見つめて、語り合う時間。

そんな瞬間をつくることができたら、と思ってプロジェクトを立ち上げました。

「耳をすませば」に限らず、「かえるライブラリー」の仕組みのある様々な場所で、そんな瞬間をつくっていけたらと思います。

来月から、僕はまた、もうひとつの船に乗り込みます。
地域に1つしかない小さな高校を中心とした舞台が用意されています。

乗組員は4名。
小さな船です。

乗組員たちのコナトゥスを感じる小道具として、また船の行き先を決めるコンパスとして、「本」が、そして「本棚」がそこにあればいいと心から思います。

僕が「耳をすませば」で贈りたい本、それは100分de名著 スピノザ「エチカ」(解説:國分功一郎)です。

本への添え書きはこちらです。

哲学無しでは生きられない時代を僕たちは生きている。本質である「力」を知ること。自分の声に耳を傾けること。他者のコナトゥスを感じること。そんな船に乗るような人生を歩みたい。よき旅を。