▼「何をしたいか?」よりも「誰と働きたいか?」
2018年夏、大学4年生の小春が言った。就職決まってない、と。
そもそも就職活動をしていない。
「何をしたいか?」と言われても、答えられない。
「何をしたいか?」よりも「誰と働きたいか?」が大切な人はどうしたらいいのか?と。
小春は9月のはじめ、「にいがたイナカレッジ」の取材班として、1週間ほど新潟に滞在することになる。「にいがたイナカレッジ」は1か月のあいだ、大学生3名が新潟県内のけっこう田舎な集落に飛び込んで、集落の人たちと一緒に何かアウトプットをつくるプログラム。その価値の言語化が彼女の宿題だった。
出てきたキーワードは「自分を知る」だった。普段住んでいるところから遠く離れたところで共同生活を通して、あるいは地域の人たちとの「暮らし」を通して、自分を知ることができる。それが一番の価値なのだと彼女はまとめた。
https://inacollege.jp/blog/2018/10/01/%E3%80%8C%E6%9A%AE%E3%82%89%E3%81%99%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E6%97%85%E3%81%AB%E5%87%BA%E3%82%8B%EF%BD%9E%E5%A4%A7%E5%AD%A64%E5%B9%B4%E7%94%9F%E5%B0%8F%E6%98%A5%E3%81%8C%E8%A1%8C%E3%81%A3/
▼「就活」の違和感
こんにちは。「かえるライブラリー」発起人のニシダタクジです。新潟を中心に各地で本のある場づくりを行っています。2007年に大学生の地域企業でのインターンシップ「起業家留学」プログラム提供のため起業し、2011年に「ジブン発掘本屋 ツルハシブックス」をオープンしました。
2015年からは関東のとある大学でコーディネーターとして勤務しながら、各地で本をツールとしたコミュニケーションデザインの仕組みをつくってきました。個人的には、ツルハシブックスのときから「本の処方箋」と題して、大学生・20代の悩みを聞き、本を3冊提案するという活動を各地で続けてきました。
そんな活動をしていて、多くの大学生が話してくれたのが、「就活の違和感」です。
企業研究、自己分析をして合同説明会に行き、エントリーシートを書き、エントリーして、何次にもわたる面接、届くお祈りメール。それの繰り返し。「就活」ってなんだろう?って少なくない大学生が思っています。
その最初の違和感が「私は何をしたいのか?」という問いです。
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私は「何をしたいか?」よりも「誰と働きたいか?」が大切で、この人と一緒に働けるなら、っていう人に出会ったら、仕事内容はなんでもいいんです。
エクセルを1日中入力することがミッションならそれをやるし、営業電話をかけてアポイントを取ることがその会社にとって必要ならそれをやります。何をするか?ではなくて誰とやるか?が大切なんです。
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▼「職種」ではなく「人間関係」のミスマッチ
「誰と働きたいか?」が大切であったとき、現在の就活のシステムはまったくそれに対応していません。
いまの「就活」システムは、企業(それもかなり大規模な企業)が効率的に新卒学生を採用するために設計・最適化されています。
「誰と働きたいか?」を重視する学生にとって、システムに適応して、面接を2次、3次と通過していくことはなかなか難しいことです。
しかも、そこには大きな罠が潜んでいます。「人事担当者が素敵な人だった。」「説明会に来ていた先輩が楽しそうだった」ということで、会社を選択するときに最終的に「人」で決めてしまう人がいます。
多くの会社において、人事担当者は、「この人と一緒に働きたい」と思われる人を配置しているので(そうしないと業績が上がりません)、魅力的な人に見えます。ところが、実際入社してみたら、その人と同じ部署に配属される(つまり一緒に働ける)可能性はほとんどありません。こうして入社したのちに人間関係に疲れ、会社を辞めていく人は少なくありません。早期退職の理由は、「職種」のミスマッチではなく、「人間関係」のミスマッチによるものではないでしょうか。
▼「耳をすませば」
そこで、「就活」ではなく、フラットに学生と経営者や先輩が出会える仕組みがないのか?と考えたのが、「耳をすませば」です。
図書館の中でのワンシーンのように、本を手に取り、それがきっかけで出会い、物語が動いていく。これを「就活」(的な何か)でもできないだろうか、と考えました。
つまり、経営者や先輩から(もちろん大学生自身からも)本を預かり、並べて、気に入った人が購入または貸出をして、それをきっかけに人と出会うことができないだろうかということです。
本の背表紙の裏に、図書館貸出カードのような入れ物をつけて、そこにカードが入っていて、本を読んで響くものがあったら、本の持ち主にアクセスできる、そんな本棚をつくろうと思います。
今回のクラウドファンディングで集める資金の使い道は次の通りです。
・「耳をすませば」システム・小物等作成費 30万円
・「かえるライブラリー・ラボ」運営費 12万円
・お返し、その他手数料等 13万円
計:55万円
※本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。
▼「耳をすませば」に参画しませんか?
※個人の方
今回のメインのリターンは、「耳をすませば」への参画です。誰かへの手紙を託すように、メッセージを書いて、本を預けます。
本を読んで、何かが伝わった人から、なんらかのリアクションが来るかもしれない。そんな形での企画への参画をお待ちしています。もちろん、大学生自身も参加・参画できます。
1口(1冊)3,000円より、本をお預かりします。
※企業の方
「耳をすませば」の趣旨に賛同する企業の方、一緒に「耳をすませば」システムを作っていきたいと思います。「誰と働きたいか?」を重視して採用活動を行っている企業の方、参画をお待ちしています。
1口(1企業)30,000円より、本をお預かりし、仕組みを構築していきます。
※「耳をすませば」本棚を地元につくりたい方
地域の若者が活躍するプラットフォームなどをすでにやられている、これから計画中の方で、「耳をすませば」システムを実験してみたい方、「かえるライブラリー」への関心がある方もお待ちしています。現在、宮城県仙台市、石川県七尾市で計画中です。参画をお待ちしています。
※実施スケジュールについて
すでに文京区湯島での「かえるライブラリー・ラボ」の実験的なイベントは2018年12月よりスタートしていて、2019年3月現在、本棚を整備中です。2019年5月より「耳をすませば」の本棚を徐々に整備していき、大学生が動く2019年8月までには稼働させていく予定です。
▼「かえるライブラリー・ラボ」で「オルタナティブ就活」を実験する
「就活の違和感」を多くの大学生が抱えている。それを僕なりに考えてみたのが、次の3つです。
1 自分自身を「交換可能」な商品としてつくりあげ、「個人戦」を戦うことを余儀なくされること
2 インターンシップなど、多くの活動が「就職」というゴールに一元的に向かっていること
3 採用する側(企業)と採用される側(学生)のコミュニケーションがフラットではないこと
これをひっくり返すことができないでしょうか。
そこで「オルタナティブ就活」です。日本語訳すれば「もうひとつの就活」「代替可能な就活」。
「就活」そのものが代替可能なのではないか?
ということです。そんなことを実験してみるラボ(実験室)を学問の神様、菅原道真を祀った湯島天神の下でつくりたいと思っています。(東京都文京区湯島3-28-1 エリートイン湯島204)
購入可能な「かえるライブラリー」には、「耳をすませば」を導入し、本を通じて、趣旨に賛同するいろいろな人にフラットに会いに行けます。そこには地方企業の経営者もいるかもしれません。
また、「ラボ」スペースでは現在、「にいがたイナカレッジ」が月に1度、「イナカレッジ・ラボ」を開催しています。
地方のほかの企業・団体も、首都圏の大学生へ向けて、「就職」に直接結びつかなそうな活動をPRしながら、イベントをしたり、一緒に企画を考えたり、ツアーをしたり、本を置いてもらえればと思います。
「就職」を直接のゴールにしない活動に出会える場所、自分自身を試す「実験」の入り口をそこでつくっていきたいと思います。
▼「実験」からアイデンティティを始めてみる
これまで10年以上、大学生とかかわる活動・仕事をしてきて、彼らにとって最も大きな課題は、アイデンティティの危機なのではないか?と感じています。そしてそれが「所属」によって満たされない時代・社会の中で、どのように生き抜いていくのか?ということが大きな課題となっているのではないか、と。
僕自身が、2018年、そんな課題の真っ只中にいました。大学を辞めてフリーになり、時間に大きな余裕ができました。でも、当たり前なのですけど、僕が辞めても、所属していた職場は何一つ問題なく回っている。世の中もまわっている。そんな事実を目の前にして、気づかないうちに大きなショックを受けていました。
大きなシステムにとって、交換可能であることは価値があります。その人が辞めたら同じサービスを提供できなくなるようでは、お客さんは困ります。しかし、頭では分かっているのですけど、「自分は世の中に必要とされていないんじゃないか?」という気持ちは、退職して無職を経験した人は少なからず感じるのだと、退職後の無職を経験した多くの人が言っていました。
僕は気づかないうちに「旅依存症」になっていました。日常に戻るのが怖くて、非日常の旅を続け、新しいものを生み出し続けることに逃げていました。何者でもない自分を認められなくて、ずっと旅をしていました。そんな中で生まれた企画が「かえるライブラリー」であり「かえるライブラリー・ラボ」でした。
「就職」に必ずしも向かっていない、「就活」のようで就活ではない「オルタナティブ就活」を通して「実験」してみること。本を読むこと。人に会うこと。旅をすること。いま目の前にいるメンバーで、目の間にある資源を活用して「顧客」と「価値」を設計して、期限のある小さなプロジェクトを始めてみること。そして、振り返ること。プロジェクトや他者との関係性の中で自分を知ること。
その集合、積み重ねがその人にとってのアイデンティティの形成につながるのではないか。そんな実験をするラボをつくっていきたいと僕は思っています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
(2019年2月28日福岡県福津市津屋崎「なまことかえるライブラリー」にて)
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